ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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コワレヤスキあなたはだぁれ(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

梨子「次のラブライブに向けて、新たなスタートを切ったAqours! しかし、そこに飛び込んできたのは、統廃合が決定したという事実。だけど、私たちは奇跡を起こすためにラブライブに挑み続ける! ……だけど、その矢先に果南ちゃんの様子がおかしくて……」

 

 

 

「グビャ――――――――!」

 

 綾香の街のど真ん中に現れた怪獣グビラ。それと対峙する、ロッソとブルのウルトラマン兄弟。その内部の、梨子と曜。

 怪獣出現の報を受けて飛び出していった克海と功海は、同じく報道をキャッチして駆けつけた梨子と曜の二人とともに、この現場に馳せ参じたのである。

 

『じゃあ俺たちから!』

『おい待て!』

 

 ロッソの制止も聞かず、ブルが指先からアクアジェットブラストを繰り出して先制攻撃を加える。

 

『はッ!』

 

 しかし水流は、全てグビラに飲み干される。

 

『「えっ!? 飲んじゃった!」』

 

 更にグビラは、頭頂部の孔から水を噴射して排出。空に見事な虹が出来上がった。

 

『お~虹だぁ!』

『「わぁ綺麗!」』

『「感動してる場合じゃないでしょ!」』

 

 のんきなブルたちに梨子が突っ込んだ。

 

「グビャ――――――――!」

 

 得意げなグビラに、今度はロッソが攻撃。

 

『よし! この一発で、決めるぜ!』

 

 大きく振りかぶって、ストライクスフィアを投擲。

 だがドリルに受け止められた。

 

『「刺さっちゃった!」』

『「熱くないの!?」』

 

 更にドリルの回転で火の輪の形で投げ飛ばされ、花火のように弾けた。

 

『おぉ~決まったじゃん!』

『「打ち上げ花火だぁ!」』

『うるさい! なめやがってぇ!』

 

 いら立ったロッソが近接戦闘に切り替えようと駆け出す。それを真っ向から迎え撃ちに行くグビラ。だが――。

 

 

 

「ふふ……いいぞぉ」

 

 グビラがロッソたちの技を無効化するところに喜んでいたサルモーネだが、不意にその手の中のAZジャイロがスパークした。

 

「ん? あちッあぢッ!?」

 

 スパークは一気に激しくなって持っていられないほど発熱。ボスンと音を立てて沈黙した。

 

 

 

「グビャ――――――――!」

 

 ジャイロと連動して、グビラもスパークに襲われて停止していた。

 

『「きゃっ!? ど、どうしたの!?」』

 

 突然のことに動揺するロッソたち。その彼らの目の前で――グビラがたちどころに縮んでいき、軽自動車と変わらないくらいのサイズになってしまった。

 

『ちっさ……』

『うそーん!?』

「グビャ――――――――!」

 

 すっかり小さくなってしまったグビラに唖然とするロッソたち。グビラは立ち上がってぴょこぴょこ跳ねた。

 

『お、何か踊ってる』

『「あはは、こうしてるとかわいいね」』

『「だけど、急にどうしたのかしら……」』

 

 梨子が何事だろうかと首をひねっていたら、グビラはそのままポンと煙とともに消え去った。

 

『えぇー……』

『「消えちゃった……」』

 

 グビラは元のクリスタルに戻り、道路の上に転がっていた。

 

 

 

「うわぁぁぁ―――――――――――――――――!!?」

 

 一方のサルモーネは――うんともすんとも言わなくなったジャイロを前にして、取り乱して絶叫していた。

 

 

 

『コワレヤスキあなたはだぁれ』

 

 

 

「千歌って……誰……なのかな……?」

「――え?」

 

 ロッソたちが戦っていた頃、『四つ角』に置いていかれた千歌は、果南からそんなことを言われていた。

 呆然とする千歌の反応に、果南はハッと我に返ると、ブンブン手を振る。

 

「あっ! ご、ごめんね! 今のなし! 変なこと聞いちゃったね! 私も疲れてるのかも! ちゃんと休まないとダメだよね、うんっ!」

「果南ちゃん……」

「気にしないで千歌! 忘れて! ちょっと私、おかしかっただけだから! そ、それじゃ、また明日!」

 

 強引にごまかした果南はそそくさと高海家から退散していく。

 しかし、そう言われても千歌は簡単には気持ちの整理がつかず、果南からぶつけられたひと言が延々と心の中に残っていた。

 

 

 

 戦闘終了後、克海と功海は梨子、曜と別れて『四つ角』に帰ってきた。

 

「結局何だったんだろうな。いきなり小さくなったかと思えば、そのまま消えて」

「向こうのジャイロがエラーでも吐いたんじゃね? ただいまー」

 

 二人はぼやきながら居間に上がってくるが、

 

「あれ? 千歌?」

「おーい? 千歌ー?」

 

 彼らの帰りを待っているはずの千歌の姿が、忽然となくなっていた。代わりに、テーブルの上に書き置きが残されている。

 

「書き置き? 『ちょっと出かけてます』……って」

「こんな時間にどこ行ったんだよ、あいつ」

 

 功海が窓から夕焼けに染まりつつある空を見上げて、首を傾げた。

 

 

 

 その頃、千歌は一人で喫茶店に入り、浮かない表情でスイーツを頬張っていた。

 

「……はぁ……果南ちゃんのあの言葉、何だったのかな……」

 

 果南には忘れてと言われたが、やはり心のもやもやを拭うことが出来なかった。曇った表情を兄たちに見られて気を遣われたり、詮索されたりするのも嫌だったので、一旦家から離れて気晴らしを試みているのであった。

 

「私が誰なのか、なんて。高海千歌以外の誰でもないのに。何であんなことを聞いてきたんだろ……? 分かんないや……」

 

 ビスケットを一つつまんでもぐもぐ咀嚼しながら独白し、考えを整理する千歌。

 

「……まぁ、気にしてたってしょうがないか。こんな時だし、果南ちゃんもナイーブになったりすることだってあるよね。うん、これ食べたらいつも通りのチカに戻ろう!」

 

 と自身に言い聞かせることで感情を落ち着かせ、普段通りの自分に立ち戻ることを決定する。

 が、その時、

 

「古き友は言った」

「ほえ?」

「人生は舞台である、人は皆役者。ウィリアム・シェイクスピア」

 

 いつの間にか、側に見知らぬ少女が腕を組んで立っていた。こちらの顔をじっと見つめると、次いで尋ねかけてくる。

 

「お前は誰だ? 何の役を演じている?」

 

 千歌は、妙に鋭い眼でこちらを観察するように見つめてくる少女に、視線を返し――。

 

「やだなぁ~! 誰かと間違えてない?」

「何?」

「私、スクールアイドルだけど女優さんじゃないよ。役を演じるとか、そういうことはしてないから。ただの女子高生だよ?」

 

 軽快に笑いながら手を振る千歌だが、少女は眉間の皺を増やして対面の椅子にどっかと腰を落とした。

 

「あっ、このビスケット食べたいの?」

「必要ない。それより、お前が『ただの人間』のはずがない」

「何~? その大袈裟な言い方ぁ。漫画の台詞みたい! あっ、この辺じゃ見ない顔だけど、もしかして私のファン!? いや~、Aqoursもすっかり有名になったなぁ――」

「聞けっ!」

 

 勝手に解釈して浮かれる千歌だったが、少女がドンとテーブルを叩いたので、驚いて口をつぐんだ。

 

「私は『お前たち』のことをある程度調べた。だが、お前のことだけが妙に引っ掛かる。他の者とは違うように感じるのだが……その違いが何なのかが、はっきりしない。何より……」

 

 少女は一旦言葉を切って、千歌の顔をまっすぐに凝視する。

 

「……お前とは、初めて顔を合わせた気がしない。こんな妙な気分になったのは、初めてだ。繰り返し訊く。お前は誰だ?」

 

 千歌はしばし黙っていたが、少女を見つめ返しながら口を開く。

 

「……言ってることはよく分からないけど、こっちもあなたとは初めて会った気がしない、って感じてるよ。何だか、ずぅっと前から知ってるような気がする! 不思議!」

「何?」

 

 少女の手を取って、ぎゅっと握る千歌。少女は少し戸惑う。

 

「私は高海千歌! あなたのお名前は?」

「……次までに考えておく」

「そんなもったいぶらないでよ~! 名無しの権兵衛じゃないでしょ? 教えて?」

 

 千歌にまっすぐな瞳を向けられ、少女は恐る恐るという風に答えた。

 

「じゃあ……美剣沙紀」

「沙紀ちゃん! カッコいいお名前だね! 素敵な友達が出来ちゃった!」

「友達……私たちが?」

「他に誰がいるのぉ? 遠慮しなくたっていいんだよ!」

 

 呆ける美剣沙紀に、千歌が興味を示しながら質問をぶつける。

 

「ねぇねぇ、沙紀ちゃんって私と同じくらいに見えるけど、何歳なの? 何年生?」

「……初めは数えていたが、忘れた」

「あはは、そのギャグ面白い! 今度私も使ってみよ!」

「ギャグ……?」

「お家はどこ? 内浦の人じゃないよね?」

「故郷は……はるか、遠く」

「わぁ、詩人さんみたい! 沙紀ちゃんってほんと面白いね~。スクールアイドルの才能あるよ!」

「スクールアイドル……?」

「うん! そのミステリアスな感じがウケそう! あっ、そうだ一緒に写真撮ろ? はいスマホ見て!」

 

 怒涛の勢いでまくし立てた千歌がぐいと沙紀の隣に近づき、スマホを握った手を伸ばした。

 

「はい、チーズ♪」

 

 パシャリと写真を撮って、すぐに写り具合を確認する。

 

「うん、よく撮れてる! 連絡先教えて? 後で送信するね」

 

 同時にスマホに保存している写真をいくつか沙紀に披露した。

 

「見てみて、これがAqoursのみんな! 知ってるよね? そう言ってたし。で、こっちの男の人は、私のお兄ちゃんたち! なかなかイケてるでしょ? でも手を出したらダメだからね~。私のお兄ちゃんだから!」

 

 克海と功海と写っている写真を見せると、沙紀の目つきが一層鋭くなった。

 

「この二人は、本当にお前の兄なのか?」

「え? 急にどうしたの? もちろんそうだけど」

「本当か? 最初からそうだったのか? 確かな証拠はあるのか?」

「ん~……何かさっきの果南ちゃんみたいなこと言うね。今日はよく変なこと言われるなぁ……」

 

 首を傾げた千歌だが、すぐにあることに思い至ってパンと手を叩いた。

 

「あっ、そうか! 証拠があればいいんだ! そしたら果南ちゃんも、私が紛れもない高海千歌だって分かってくれるよね。後で探そうっと。沙紀ちゃん、ありがとう――」

 

 お礼を言おうと沙紀に振り返った千歌だが、

 

「……沙紀ちゃん?」

 

 つい今しがた一緒にいた沙紀の姿が、綺麗に消えてなくなっていた。

 

「あれ……? もう帰っちゃったのかな……」

 

 きょとんとしながら、仕方ないので自分も家に帰ろうと立ち上がる。と、

 

「あれ……」

 

 ビスケットの皿に、いつの間にか二枚のクリスタルが置かれていた。

 それぞれ銀色と黒の超人――ウルトラマンの姿とともに、「光」と「闇」の文字が刻み込まれていた。

 

 

 

「ただいまー」

「千歌! 怪獣が出てたってのに、一体どこ行ってたんだ」

「ちょっと、喫茶店に……」

「喫茶店だぁ? のんきな奴だなぁ。晩飯入らなくても知らねぇぞ」

 

 帰宅した千歌を出迎える克海と功海。千歌の返答に功海が呆れていると、千歌は二人にあるものを差し出す。

 

「お兄ちゃん、これ……」

「え……?」

 

 沙紀が置いていったと思しき、二枚のクリスタルだ。

 

「千歌、これどうしたんだよ!」

「沙紀ちゃんが忘れていったの」

「沙紀? 誰だそれ?」

「学校の友達か?」

「ううん、さっき喫茶店で友達になった子。ほら」

 

 呆ける克海たちに、沙紀と撮った写真を見せる千歌。

 

「友達って……何でこんな子がクリスタル持ってるんだよ」

「それは分からないけど……やっぱり、それってクリスタルなんだ」

「本物ならな……」

 

 クリスタルをためつすがめつ観察した功海が、バッと踵を返す。

 

「本物かどうか、大学のスペクトル分析器で調べてくる!」

「功海お兄ちゃん!?」

「おい功海! こんな時間に……!」

 

 千歌と克海が止める間もなく、功海がバッグを持ってきてそのまま飛び出していってしまった。

 

「全く、功海の奴……気になることがあるとすぐ周りが見えなくなる」

「ごめん下さーい」

「あッ、いらっしゃいませ!」

「克海お兄ちゃん……!」

 

 肩をすくめた克海も、来客があったのでそちらの応対に出ていき、千歌だけが残された。

 

「……お兄ちゃんたちにも、私が千歌だって証拠探し、手伝ってもらいたかったんだけどな……。しょうがない、一人で探すか……」

 

 ふぅとため息を吐いた千歌は、気を取り直して家のアルバムを探しに行った。

 

 

 

 翌日、アルトアルベロタワーの社長室。

 

「……」

 

 サルモーネがうなだれた姿勢で社長の椅子に腰を落としている。その正面には、「故障中」の張り紙を貼ったAZジャイロ。

 

「……私は、『あの人たち』の素晴らしさを広めたいだけなのに……どうして誰も分かってくれないんだ……」

 

 ぐすんと涙ぐんだサルモーネが立ち上がりながら、机の裏に隠されたスイッチを押した。

 すると真後ろの壁がせり上がっていき――その裏に隠されていた『物』が、露わとなる。

 

「おおッ……! 我が崇拝する天使たちよッ! 真なるウルトラマンよッ!」

 

 それは――『765プロ』と銘打たれた無数のグッズ。ポスターやサイリウム、Tシャツ、ステッカー、タオル、フィギュアなど……多種多様の物品が壁の裏側の隠し部屋にところ狭しと並べられている。それも、どれも一種類につき三つずつ。

 それと同様に、ウルトラマンオーブの写真もいくつも貼って並べられている。

 これらをうっとりとながめたサルモーネが、己の想いを吐露した。

 

「765プロのアイドルたち! 欺瞞に満ちた星間連盟が支配する我が故郷の宇宙に、英雄に導かれて希望の光を差し込み、また数多の宇宙にも希望と笑顔を与える、まさしく女神! 四年前から理由不明の活動休止が続いてるのが気掛かりだが……彼女たちこそが、真実のアイドルなのだ! 故に、全てのアイドルを名乗る者は、彼女たちのようであらなくてはならないッ!! その真理を伝導するために、この愛と正義の伝道師は立ち上がったというのに……あんな兄弟どもの邪魔さえなければ、今頃は……」

 

 徐々に口調に熱が入っていくサルモーネは、右に左に跳びながら独り芝居を始める。

 

「765プロの皆さん! 私はあなた方に憧れ、ウルトラマンの力を手に一つの星に希望を伝導しました! きゃあ~サルモーネさんすごーい! いえいえこんなものではありません! 御覧下さい、これが私の育てたアイドルです! 更にアイドルのプロデュースまでなんて! 感動ですうっうー! そ、そんな、お褒めにあずかり光栄ですぅッ! 見事なもんだサルモーネ、どうやら俺の後継者はお前で決まりのようだな。そうなの、サルモーネこそがミキたちを新しくプロデュースしてくれる人なの! えッ、それってまさか! な、何という身に余る光栄ぃ~!!」

 

 恍惚の表情で、自分の身体を抱きしめてくねくねと小躍りするサルモーネ――。

 

「終わりましたか」

「おぉぉいぃッ!?」

 

 氷室のひと言で、ビクゥッ! と派手に身体が跳ね上がった。

 

「ひ、氷室君ッ! 君、いつからいたの!?」

「我が崇拝する天使たちよ――」

「最初からか―――いッ!! ノックしてから入ってよもうッ!!」

「申し訳ありません」

 

 顔を真っ赤にしながら、壁を閉ざして隠し部屋を元に戻すサルモーネに、氷室が淡々と告げる。

 

「それより、社長にお客様です」

「えッ、お客?」

「どうぞ」

 

 氷室に呼ばれ、社長室に入ってきたのは、

 

「あッ! 君は、こないだの看護師さん! 何の用?」

 

 白衣を身に纏った少女――美剣沙紀であった。

 沙紀はサルモーネの質問が聞こえなかったかのように、次のように言う。

 

「私は、弱いウルトラマンが嫌いだ」

「え?」

「何度負けても立ち上がる強さを持つ者こそ、ウルトラマンに相応しい……! そうだろう?」

 

 サルモーネは呆気にとられつつも、沙紀の問いかけにうなずく。

 

「そ、そうですよねぇ~! 私こそがッ……!」

 

 言いかけるサルモーネだが、故障したジャイロが目に入って途端に泣き崩れた。

 

「ダメだダメだぁ……! 私のジャイロは壊れてしまったのだぁ~! あれだけ作るのに苦労したのに……! 結局直せなかったッ! どうしよう~!!」

 

 おいおいと泣きじゃくるサルモーネをながめた沙紀が、ある『物』を取り出す。

 

「だったら、使ってみるか? 本物を」

「え? ほ、本物?」

 

 振り向いたサルモーネの目に飛び込んできたもの――。

 沙紀が握り締めているものは、色彩や模様が少し異なるが、紛れもなくジャイロの形状をしていた。

 

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