浦の星女学院。Aqoursの日課の朝練の直前、千歌が皆に「ちょっと見てもらいたいものがあるの」と言って、部室に集合してもらっていた。
そしてそこで、スマホに撮っておいた光と闇のクリスタルの写真を披露する。
「これって、新しいクリスタル!?」
「しかも二枚も!」
写真を見せられた仲間たちは、梨子と曜を始めとして皆驚愕。ダイヤは顔を上げて千歌に尋ねる。
「千歌さん、これをどこで?」
「昨日、沙紀ちゃんが忘れていったの」
「沙紀……? そんな人、浦女にいましたか?」
「どなたなの? 千歌ちゃん」
はてとダイヤが首を傾げ、ルビィが問い返す。千歌はスマホを操作して、沙紀と撮った写真を表示した。
「この子。昨日、お友達になったばっかりなんだ」
写真の顔をひと目見た曜と鞠莉が――途端にギョッと目を剥いた。
「えっ!? この子、あの時の子だ! ねぇ鞠莉ちゃん!」
「オーウ! 間違いありまセーン!」
二人の反応に驚かされる千歌たち。
「知ってるの?」
「知ってるというか、何というか……この前、鞠莉ちゃんといる時にいきなり話しかけてきたの。変な子だなぁとは思ったけど……」
「ええ。見るからに普通じゃない雰囲気だった。だけど、まさかクリスタルを持ってるなんて……」
「謎の少女……まさか、天界より差し向けられし刺客……!」
善子のひと言はスルーして、花丸が千歌に尋ねる。
「新しいクリスタルは、今どこずら?」
「功海お兄ちゃんが持ってる。本物か調べるって、昨日大学に持ってったっきり……。今朝、克海お兄ちゃんが迎えに行ったけど」
「調べるだけのことに、ひと晩がかりですの?」
意外そうに聞いたダイヤにうなずき返す千歌。
「よく分かんないけど、功海お兄ちゃん、家を出る時大分張り切ってたし……色々調べてるんだと思う」
「あー……功兄ぃが張り切りすぎてると決まってろくなことにならないからなぁ……。ちょっと心配……」
眉をひそめてぼやいた曜に、梨子が首を向けた。
「……曜ちゃん、ちょっと前から気になってたんだけど」
「えっ、何?」
「曜ちゃんと果南ちゃんは、克海さんたちのこと、克兄ぃ功兄ぃって呼ぶよね」
「うん。私たち幼馴染で、家族ぐるみのつき合いだったからね。けど、それがどうかしたの?」
質問の意図が分からない曜に、梨子は、
「でも、千歌ちゃんだけお兄ちゃんって呼ぶわよね」
「あー……言われてみれば。気にしたことなかったけど……一人だけ呼び方違うね」
同意しながらも、曜は肩をすくめる。
「けど、千歌ちゃんは実の妹なんだし? 私たちと呼び方が違くても、別におかしくはないんじゃないかな」
「そうなのかしら……」
首をひねりながらも、些細な疑問なので梨子はそれ以上気にしなかった。
それよりも、どこか寂しげな様子の千歌をルビィが気に掛ける。
「千歌ちゃん、どうかしたの? 何だか元気ないみたいだけど……」
声を掛けられた千歌がハッと我に返る。
「あっ……ううん! 何でもないよ。ただ、お兄ちゃんたち早く帰ってこないかなー、って考えてただけだから」
「そうなの……? 何もないなら、いいんだけど……」
ルビィは引き下がったが、果南が千歌の横顔に一瞬浮かんだ、陰りの色を見止めて息を呑んだ。
「千歌……まさか……!」
――沙紀が取り出してみせた、配色は高海兄弟のものとは異なるが、紛れもないルーブジャイロを目にして、サルモーネは唖然となった。
「そ、それはジャイロ……三つ目があったのか……!」
立ち上がって沙紀と向かい合ったサルモーネは、彼女自身に疑問を抱く。
「何故これを持ってる? 君は何者なんだ?」
「使うのか? 使わないのか?」
だが沙紀は答えず、ジャイロを突き出して聞き返してきた。
サルモーネはゴクリと息を呑むと、おもむろにジャイロに手を伸ばす――。
功海からの連絡を受けた克海は、彼の大学を訪問して功海の下へとやってきた。
「功海、何だ。忙しいのに……」
「克兄ぃ! これれっきとした本物だ!」
功海はやたらと興奮した様子で、分析を終えた光と闇のクリスタルを克海に見せつける。
「これを構成する分子は、今までのクリスタルと同じ。なんだけど! バイブス波の線量が通常の何と六倍なんだよ六倍!」
「それってそんなにすごいのか?」
「当ったり前だろ! パワーが六倍ってことは性能も六倍、いや、それ以上かもしれない……!」
二枚のクリスタルを手に、笑みがこぼれる功海。
「未知の力を持つクリスタル……! ゾクゾクするだろ!? 早速試しに使ってみようぜ!」
と打診する功海であったが……克海は険しい表情であった。
「賛成できない」
「え?」
「誰かも分かんない奴が置いてったものだろ? 怪しすぎる」
功海は克海の態度が信じられないという風に笑い飛ばした。
「はぁぁ? 大丈夫だって! 分析結果におかしいとこはなかったからさ!」
「お前がそう言って大丈夫だった試しはない!」
未知のクリスタルを巡り、克海と功海の意見が徐々に紛糾していく。
沙紀からジャイロを受け取ったサルモーネは、興奮した様子でそれに魔のクリスタルをはめ込んだ。
[グルジオボーン!]
しかし、すぐに沙紀に取り外された。
「え?」
沙紀は代わりのように、「鋭」と刻まれたクリスタルをジャイロにはめ込む。
[強化! グルジオキング!!]
「き、キング……!?」
ギョッとしたサルモーネに、沙紀が嗤って告げた。
「激熱だぞ、これは……!」
更に側に控えている氷室も、促す。
「どうぞ、社長。初めての本物のジャイロを」
克海と功海のやり取りは、激しい口論に変わりつつある。
「何? そんなに俺のこと信用できない!?」
「お前は無鉄砲すぎるんだよ! 誰かが制御してやんなきゃ駄目なんだよ!」
「俺は俺でしっかりやれる! 克兄ぃの助けなんていらねぇ!」
「……そんな風に思ってたとはなぁ。俺がお前のためにどれだけ我慢してッ!」
「我慢!? 我慢って何だよッ!」
二人に促されたサルモーネは、気分を昂らせながらジャイロのグリップを引き始めた。
「あふれるぅー! 本物のぉー! 初体けぇぇ――――んッ!! Let’s Go!!!」
グリップを三回引き、ほとばしるエネルギーを解放したサルモーネの姿が消え、綾香の中心へとテレポートしていく。
――それを見届け、沙紀が氷室に問うた。
「これでいいのか?」
氷室はおもむろにうなずく。
「ええ。後はどのように転ぶか……」
「何だよ! 言いたいことあるならはっきり言えよッ!!」
「だからお前は……ッ!!」
最早人目も気にせず口喧嘩になっていた功海と克海だが、その時に強い震動が彼らを襲った。
「今のは……!」
二人が急いで外を見やれば、綾香の市街の中央に、見覚えのある威容の怪獣が出現していた。
「ギュオオォォ――――ン!!」
骨格がそのまま肉体を形作っているような形態はグルジオボーンに酷似しているが、体色が金色となり、全身のシルエットがより鋭角化している。何より最大の違いは、背面に巨大な砲身のようなものを背負っていることだ。
『「力がみなぎってくるぅーッ! 本物ジャイロ最高ぉ―――ッ!!」』
グルジオボーンが強化され、新たな姿となった怪獣、グルジオキングに変身したサルモーネが叫び、昂ったテンションのままに火炎を辺り一帯に振りまき出した。
部室にしたAqoursの面々は、スマホに飛び込んできた緊急怪獣速報のメールに驚きを見せる。
「みんな、見てこれ! 怪獣が出たって!」
「綾香の方で……この怪獣は……!」
梨子たちがスマホの画面に表示した、怪獣災害現場の生中継映像に食い入る。
「グルジオ!!」
「だけど、何か前と違くない!? 大砲背負ってるよ!」
「進化して、更なる怪物と化したと言うの……!」
曜の指摘に、善子が息を呑んだ。
そして映像の中に、グルジオキングと対峙する形でウルトラマンロッソフレイムが出現した。果南が声を上げる。
「克兄ぃ!」
「もう出動しましたのね」
「……だけど、功海さんは?」
ルビィが首を傾げたのと同じように、ロッソがいつものように振った手が空振りして戸惑っていた。ブルが隣にいないのだ。
そのウルトラマンブルアクアは、グルジオキングに背後から飛びかかってルーブスラッガーを浴びせていた。
「あっ! もう攻撃してるずら!」
ブルはそのままスラッガー片手にグルジオキングに立ち向かっていくが、ロッソはその場に突っ立ったまま動こうとしない。
「ちょっとちょっと! 何で克兄ぃ動かないのさ!」
思わず慌てる曜だが、その声がロッソに届くはずはなかった。
鞠莉はロッソとブルの様子を見比べて、眉間に皺を刻み込む。
「……そもそも、息がそろってない感じね。二人の間に何かあったんじゃ……」
「まさか、さっき千歌ちゃんが言ったクリスタルが関係してるんじゃ……」
推測する梨子。千歌は、困惑しつつも兄たちの戦いを片時も見離さないようにじっと見つめている。
「お兄ちゃん……」
ブルがスラッガーを振るってグルジオキングを繰り返し斬りつけるが、効いている様子は見られない。やがてスラッガーをはたき落とされ、首根っこをグルジオキングに鷲掴みにされた。
「ああっ! 功兄ぃ!」
ブルを掴む腕から電流が放たれ、ブルが痛めつけられる。そして顔面に張り手を食らって突き飛ばされた。
「何てこと……本当に強くなってるわ……!」
ブルを一蹴したグルジオキングに、善子が背筋を震わせた。
今度はロッソが攻撃を行う。ブルが接近戦で押し負けたので、フレイムスフィアシュートによる遠距離攻撃を繰り出した。
だが、グルジオキングに一瞬で握り潰される。
「ちっとも通用していませんわ!」
「何て硬さ……!」
ロッソの必殺技が何のダメージにもならないグルジオキングの防御力に、ダイヤと果南が目を見張った。
手招きするグルジオキングの挑発に乗せられ、ロッソが飛びかかっていくも、やはりブルと同じように接近戦でも歯が立たない。尻尾の足を払われ、踏みつけをかわすも、いくら叩いてもグルジオキングには効かず、逆に手を痛める始末。掴みかかられ、散々に打ちのめされる。
「ぴぎぃっ! 克海さんが危ないよぉ!」
「功海さん! 助けに行くずらー!」
ルビィが悲鳴を上げ、花丸がたまらず叫ぶものの、ブルの方もどれだけロッソがやられても見ているだけだ。
「あぁーいい加減にしてよっ! 二人とも状況分かってるのぉ!?」
「ちょっと、果南ちゃん落ち着いて……!」
「ここで怒っても仕方ないから!」
頭をかきむしって喚き散らす果南を曜と梨子がなだめる。
グルジオキングが火炎を吐いて攻撃してくるのを、ロッソはバク転でどうにか逃れた。すると、グルジオキングは頭を下げて背負った大砲の砲口をロッソたちに向け、エネルギーを集中させ始めた。曜に冷や汗が流れる。
「な、何かやばそうな雰囲気……!」
「危ないっ!」
鞠莉が叫んだ直後に、グルジオキング最大の攻撃、ギガキングキャノンの砲撃が放たれた!
ロッソとブルは咄嗟に突っ伏して回避。外れる砲撃だが、地面を爆破して深々とえぐり込んだ。大地を引き裂いてしまいそうに見えたほどの破壊力に、Aqoursは絶句。
「な、何て威力……! 煉獄の火焔もかくや……!」
「あんなのが当たったら、ただでは済みませんわ!」
今の一撃により、ロッソたちも危機感を抱いて力を合わせる。炎と水の力を一つとした、フレイムアクア・ハイブリッドシュートを繰り出すも……。
口からの火炎によりあっさりと相殺された。
「そんなっ!」
ハイブリッドシュートが軽々と破られて驚愕する梨子。グルジオキングは更に、ギガキングキャノンを再度発射しようと構える!
「危ないずらぁっ!」
花丸が絶叫する。しかしロッソとブルも、オーブリングNEOを用いた全力の一撃を準備していた。二人の背後にオーブのビジョンが生じる。
「トリプルオリジウム光線! あれなら!!」
「いっけぇぇぇ――――――!!」
ぐっと手を握る曜とルビィ。Aqoursの応援の中、トリプルオリジウム光線とギガキングキャノンが衝突する!
しかし押し負けたのは、オリジウム光線の方だった!
「嘘!!?」
ホロボロスやギャラクトロンを破ったトリプルオリジウム光線までもが破られたことに、一同は仰天。倒れたロッソたちはいよいよエネルギーが無くなってきて、カラータイマーが点滅し出した。
「あんな怪物に、どうやれば勝てるの……!?」
ロッソたちと同様に焦燥する鞠莉。千歌も焦りを浮かべつつも、ひたすら戦いを見守っていた。
グルジオキングの規格外のパワーを前に、完全に追いつめられるロッソとブル。するとブルがハッと思いついた。
『そうだッ! さっきのクリスタルを使おう! あの力を纏えばきっと勝てる!!』
豪語するブルだが、ロッソは頑なに反対する。
『待て! あれは危険だッ! 罠かもしれないんだぞ!』
『まだそんなこと言ってんのかよッ!』
二人が言い争っている間にも、グルジオキングは三度目のギガキングキャノンの発射用意を行う。
「ギュオオォォ――――ン!!」
『迷ってる時間はねぇぞ克兄ぃ!』
『……分かった!』
もう後がないことで、ロッソも腹をくくった。
そしてロッソが光、ブルが闇のクリスタルへと手を伸ばしたが……。
『『うわあああぁぁぁぁぁぁぁッ!?』』
クリスタルからほとばしった莫大なエネルギーを制御することが出来ずに、はね飛ばされて倒れ込んだ。
『何で駄目なんだよ!?』
『だから危険だって言ったろッ!』
立ち上がる二人だが、最早時間は残されていなかった。
『「これで……Good Luck To You!!」』
放たれたギガキングキャノンの砲撃が、ロッソとブルを纏めて呑み込む!
『『うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――ッッ!!!』』
二人の姿が爆炎の中に消えていったことで、浦の星の千歌たちは完全に言葉を失った。
外に出て戦いの一部始終を見ていた沙紀が、ひと言つぶやく。
「やはり……その程度だったか」
アルトアルベロタワーの社長室では、氷室がウッチェリーナに向かって呼び掛けた。
「ウッチェリーナ」
[はーい]
「見ての通り、愛染正義にはもうまともな業務執行能力がない。今この時より、私がアイゼンテック社社長となる。そのように登録情報の変更を」
氷室の命令を、ウッチェリーナはあっさりと受ける。
[アイゼンテック社長の登録情報の更新、完了致しました!]
「ギュオオォォ――――ン!!」
ロッソとブルが消え去り、様々な思惑が渦巻く中、グルジオキングは勝利に酔いしれるように火炎を吐き散らし、空にギガキングキャノンの祝砲を打ち上げてひたすらに暴れ続けた――。
『Aqoursのウルトラソングナビ!』
善子「堕天降臨! 今回紹介するのは、『星のように…』よ!」
善子「これは映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』の主題歌よ。歌うのは、何とあのMISIAさん! MISIAさんが設立したChild AFRICAの特別サポーターにウルトラマンが就任した縁で起用されたそうよ」
善子「プロモーションビデオはドラマ仕立てで、校庭に倒れた初代ウルトラマンに小学生たちが光を当てて復活させようという様子になってるわ。撮影をしたのは、当時の円谷プロ社長大岡進一さん自らというから豪華よね」
善子「歌詞も、何億年もの時間を隔てようとも変わることのない気持ちという、ウルトラマンの世界観を意識した詞となってるわ。MISIAさんの歌声が流れる映画のラストは、感動必至よ!」
克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『コワレヤスキ』だ!」
功海「『Guilty Kiss』のセカンドシングルの表題曲だ! ヘヴィメタルサウンドがよく効いてる、まさにロックな一曲だぜ! 「愛にとどめを刺す」のキャッチコピー通り、アダルトさがふんだんに詰まってるぞ!」
克海「けど一方で、歌詞は直球に愛の気持ちを歌い上げてるぞ。壊れやすいからこそ、守らなくてはいけないということだ」
善子「次回もヨハネと一緒に、堕天しましょう?」
曜「グルジオキングの圧倒的な力の前に敗れた功兄ぃと克兄ぃ……。どうすればあの怪獣を倒すことが出来るの!?」
果南「克兄ぃ! 功兄ぃ! 忘れないで! 兄弟が力を合わせれば、出来ないことなんてないんだから!」
曜「そして二人が手を取り合った時、奇跡が起こる……!」
果南「次回、『まとうは極 君の胸に』!」
曜「全速前進ヨーソロー!」