ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

38 / 70
まとうは極 君の胸に(A)

 

「ぐッ……うぅ……!」

「つぅぅ……!」

 

 瓦礫の山と化した綾香の一画の中で、変身を解かれて満身創痍のありさまの克海と功海が、肩を寄せ合いながら起き上がった。

 サルモーネが変身した新たなる大怪獣、グルジオキングに立ち向かった二人。しかし未知のクリスタルを巡って対立していた最中で、足並みが全くそろわなかったこともあり歯が立たずに完全敗北。グルジオキングはそのまま猛威を振るい、綾香の街を破壊し続ける。

 

「ギュオオォォ――――ン!!」

 

 無差別に火炎を振りまいて街をどんどん焼き払っていくグルジオキング。再戦できるほどの体力が残っていない兄弟は、それを悔しげに見上げるしかない。

 ――そんな時に、氷室がウッチェリーナに向かって命令した。

 

「ウッチェリーナ。対怪獣拘束システム、実行」

[対怪獣拘束システム、実行します!]

 

 アルトアルベロタワーの頂点に立つリング状のアンテナから、光線が照射された。それがグルジオキングに命中すると、途端にグルジオキングの神経系の働きが鈍らされる。

 

『「あぁ~! 痺れるぅぅ~……!」』

 

 瞬く間にグルジオキングは沈黙し、うずくまって動きを止めた。

 

「どういうことだ……?」

 

 突然のことに克海らが戸惑っていると、アイゼンテック飛行船から綾香市街に向けてウッチェリーナの声が放送される。

 

[親愛なる綾香市民の皆さん! こちらはアイゼンテックです! 怪獣が我が社の防衛システムにより、完全拘束されました。危険ですので近づかれないようお願い申し上げます!]

 

 立ったまま完全に停止したグルジオキングを、唖然として見つめている克海と功海を、沙紀が黙したまま密かにながめていた――。

 

 

 

『まとうは極 君の胸に』

 

 

 

『現在、怪獣はアイゼンテック社によって捕獲され、ここ、綾香市の中心部に拘束されています』

 

 高海家の茶の間に、テレビからの生中継映像の音声が流れている。それを苦い顔で見ているのは、梨子たちから手当てを受けている克海と功海。

 グルジオキングが拘束されたことにより、綾香市全域には警戒態勢が敷かれ、浦の星も臨時休校。既に登校していた生徒たちには皆帰宅指示が出され、Aqoursは敗れた兄弟の手当てのために『四つ角』に集合したのであった。

 テレビのインタビューでは、市民からウルトラマンへの厳しい声が流される。

 

『正直、怪獣にもウルトラマンにもウンザリです!』

『オレらの街を守るのは、ウルトラマンじゃないんですよ。やっぱ、愛染さんなんですよね!』

 

 功海はそれにいら立ってテレビの電源を切る。

 

「あぁー頭来るッ! それもこれも全部あの野郎の仕業だってのにッ!」

「あの男、今度は何をたくらんでいるのかしら……?」

 

 善子が気取った動作で額に指をやって思案するが、そこに克海が意見する。

 

「何か、変じゃないか?」

「あぁ変さ! 俺たち頑張ってんのに、街の人からウンザリとか言われて……!」

「オーブダークとの件は、何も知らない人たちからはウルトラマン同士の喧嘩としか見られてないからねぇ……」

「歯がゆいずら……」

「いやそうじゃない」

 

 功海の吐き捨てに曜と花丸が同調するが、克海は首を振って皆に告げた。

 

「今回の件は本当にサルモーネの仕業なのか……?」

「えっ……それってどういうことですか?」

 

 ルビィが聞き返すと、克海は己の推理を述べる。

 

「あの目立ちたがり屋が、今回に限って表に出てこない。ひょっとしたら、別の誰かに踊らされてるんじゃないか?」

「別の誰かって……例のクリスタルの女の子と?」

「確かに……偶然にしては出来すぎている気がしますわね」

 

 ダイヤが顎に指を掛けてうなずいた。克海は手の平の上の光と闇のクリスタルに目を落とす。一縷の望みを懸けたが、結局使用できなかったものだ。

 

「あの時、もっと慎重に行動しなきゃいけなかったんだ」

 

 そのひと言に功海が強く反発。

 

「慎重にたって他にどんな選択肢があった! これに頼るしかなかったろ!」

「そもそも使えなかったじゃないか!」

「結果論じゃんそれは! 克兄ぃはいつもそうだよ! ふた言めには慎重にとか待て待てとか……!」

「お前は突っ走りすぎなんだよ! 何でも一人でやってるなんて思うなよ!」

「ち、ちょっと二人とも……!」

 

 またも口論になる克海と功海を梨子たちがなだめようとするも、二人の勢いは止まらない。

 

「いいか? お前はみんなに支えられてるんだそれを忘れるなッ! 父さんも母さんも、お前を大学にやるのがどれだけ大変か分かるだろ! そのために俺だって……!」

「進学あきらめたって言うんじゃないだろうな? 克兄ぃは恩着せがましいんだよ! 俺に夢を背負わせないでくれ!」

「何だと……? もう一辺言ってみろッ!」

「か、克海さんっ!」

「功兄ぃも言いすぎ……!」

 

 功海の胸倉に掴みかかった克海を梨子と曜で止めようとする。そこに、

 

「いい加減にしなよっ!!」

 

 騒ぎを聞きつけて戻ってきた果南が、言い争う兄弟に雷を落とした。二人の声よりも大きい怒声に、克海も功海も思わず固まる。

 

「か、果南……」

「果南ちゃん……」

「そんな風に二人でいがみ合ってたから、あんなボロ負けしたんでしょ!? まだ分かんないの!? 兄弟喧嘩してるせいで敵にやられるなんて、馬鹿らしいよ!!」

 

 果南の叱責に、克海たちは言い返せず押し黙る。

 更に鞠莉が言い聞かせた。

 

「どんな理由があるにせよ、ちゃんと相手の気持ちを考えないと駄目よ。自分の考えばかり押し通そうとしたって、何の解決にもならないわ」

「ええ。お二人には、わたくしたちのようにはなってもらいたくありませんわ」

 

 三年生組からの説得で、流石に克海たちも落ち着くが、それでも完全に相手を許した風でもなかった。

 最後に、千歌が克海と功海の手を取って訴えかける。

 

「克海お兄ちゃんも、功海お兄ちゃんも、私たち三人だけの兄妹だよ? 喧嘩なんて、チカ嫌だよ……」

「……」

 

 だが功海は千歌の手をほどいて、玄関の方へ足を向ける。

 

「功海お兄ちゃん!」

「ちょっと頭冷やしてくる」

「待ってよ功兄ぃ! そんな身体で……!」

 

 ズカズカと外に出ていく功海のことは曜が追いかけていった。克海は、旅館の奥の方へと引っ込んでいく。

 

「倉庫の整理あるから」

「克海お兄ちゃんまで……!」

「克海さん、無茶したら駄目ですって……!」

 

 梨子が克海の背中を追っていって、残された善子たちは眉をひそめながら互いに顔を見合わせる。

 

「困ったわね……。二人があんな調子じゃ、もしまたグルジオが動き出したらどうなってしまうか……」

「克海さんと功海さん、性格は正反対だから……」

「今回は、それが悪い方向に働いたわね……」

 

 花丸も鞠莉も困り果てた様子。ルビィはダイヤの袖を引いた。

 

「お姉ちゃん、どうにかならないかな……?」

「難しいですわね……。一番の問題は、グルジオの存在ですわ。あれをどうにか出来ないことには、解決にはなりませんから……」

 

 ダイヤたちが強敵グルジオキングをどう攻略するかで頭を悩ませる中、千歌は何かを案じた様子で克海と功海が去っていった後を見つめていた。

 

 

 

 倉庫に入って片づけを行う克海を、梨子がどうにか説得しようとする。

 

「克海さんが慎重にならなくちゃと言うのも分かります。けど、まず一番にしなくてはいけないのはグルジオを倒す方法を見つけることです。功海さんと反発してたって、何も解決はしませんよ」

「……」

「ここは力を合わせるべきです! お互いに歩み寄ってですね……」

 

 いくら言い聞かせても、克海は背を向けたまま。努力が空振りになって、梨子は思わずため息を吐いてしまう。

 そこに千歌が倉庫に入ってきた。

 

「千歌ちゃん」

「克海お兄ちゃん、機嫌直してったら。ずっと功海お兄ちゃんと仲良しだったじゃん」

 

 千歌は二人の幼い時の写真を持ってきて、克海に見せつける。

 

「ほら、こんなにぴったりくっついて! 梨子ちゃんも見て。お兄ちゃんたち、とっても仲良しさん!」

「ほんとね。これいつの時の写真?」

「……克海お兄ちゃん、いつの?」

 

 千歌が克海に聞き返すと、克海は写真を一瞥して答えた。

 

「功海が幼稚園の時の……。昔は大人しい奴だったのにな……」

「ふーん……。じゃあ、私はどんな子だった?」

 

 不意にそんなことを聞く千歌。

 

「千歌か? 今とあまり変わらないかな。甘えん坊で、手を焼かされてばかり……」

「あっ、ひどーい。……もっと具体的には? 私が生まれたばかりの頃とかは」

「生まれたばかりの……? さぁ……あんまり昔のことは、よく覚えてないからな……」

「そうなんだ……」

「……千歌ちゃん……?」

 

 何だか様子が妙な千歌のことを、梨子が少々訝しんだ。

 

 

 

 功海はグルジオキングを中心に封鎖された区域まで戻り、双眼鏡で現場を監視していた。それについてきた曜がうんざりした調子で問いかける。

 

「功兄ぃ~……こんなことしててどうなるの? それより、克兄ぃと一緒に作戦考えた方がいいんじゃ……」

「うるさい。今回の件には、きっと何か裏があるんだ。その陰謀を暴いてやる……!」

「はぁ……こんな場所を監視してたって、何も分かりようないと思うけど……」

「嫌ならお前だけで帰れ」

 

 曜が肩をすくめていたら、千歌が二人を捜してこの場にやってきた。

 

「やっぱりここだった」

「あっ、千歌ちゃん」

「功海お兄ちゃん、ご飯食べてないでしょ。お弁当持ってきたよ」

 

 千歌はタッパに入れた弁当を功海に差し出すが、功海は双眼鏡を手から離さない。

 

「別に腹減ってねーし」

「そう言わないで。ほら、功海お兄ちゃんの大好物のおかかとチーズのおむすびだよ。デザートにはミカン!」

 

 功海の前に回り込んで、監視を邪魔しながら弁当を押しつける千歌。功海も根負けして、弁当を受け取る。

 

「出た~、おかかとチーズのおむすび。功兄ぃ、変なの好きだよね~」

「うっせーな曜。母さんの得意料理を馬鹿にすんじゃねーよ」

「ああ、味覚はおばさん譲りだっけ。よくピクニックで取り合いになってたよね」

 

 おむすびを話題に功海と談笑する曜。それをながめ、千歌が不意に尋ねかける。

 

「……そのピクニック、私もいたよね?」

「え? 千歌ちゃんどうしたの。そんなの、当たり前じゃん」

「ああ。一緒におむすび食べてたろ」

「……それって、初めからだった?」

「初めから……? 変なこと聞く千歌ちゃん」

 

 質問の意図がよく分からない曜と功海が首をひねる。

 

「多分そうだったんじゃねーかな。よく覚えてないけどさ」

「うん、私たち小さかったからねぇ。もう忘れちゃった」

「……そっか……」

 

 二人の回答に、千歌はどこか寂しげに微笑んだ。

 

 

 

 克海は、果南が持ってきた絵の数々を見せられていた。幼稚園の時分の功海が描いたものだ。

 

「克兄ぃ、見てよ。功兄ぃの絵、どれも克兄ぃが描いてあるよ」

「……お兄ちゃんとぼく……」

「功兄ぃ、口ではいつも克兄ぃを鬱陶しがるけど、今も克兄ぃのことを尊敬してるはずだよ」

「……功海……」

 

 功海との思い出の数々を、じっと見比べる克海。梨子も隣から絵を観察して口元をほころばせる。

 

「千歌ちゃんの言った通り……克海さんと功海さん、仲良しだったんだね」

 

 ただ……果南は、絵に描かれている克海と功海に目を落として、複雑な表情をした。

 

「お兄ちゃんとぼく……これも、これも……お兄ちゃんと、ぼく、か……」

 

 

 

 翌日。政府は拘束されたグルジオキングの調査のために、調査団を結成。チームを綾香に派遣してきた。

 アルトアルベロタワーの社長室で、氷室がウッチェリーナに問いかける。

 

「ウッチェリーナ、状況は」

[政府の怪獣災害調査団が現場入りしました]

「よし。では……」

 

 うなずいた氷室が、次の指示を出す。

 

「対怪獣拘束システムを解除」

[それはいけません! 調査団に被害が及び、アイゼンテックの信用問題に関わり……]

 

 反対するウッチェリーナだが、氷室はそれを手で制する。

 

「だからやるのだ。社長命令。対怪獣拘束システム、解除」

 

 

 

 グルジオキングは全身をワイヤーで縛り上げられ、地面に縫いつけられていたが、急にそのワイヤーが次々引っこ抜かれていく。そしてグルジオキングの眼が赤く光り、拘束をほどいて起き上がった。

 

「ギュオオォォ――――ン!!」

 

 ちょうど調査チームがすぐ側で報道陣のインタビューを受けていたところであり、彼らは前触れなく復活したグルジオキングに仰天する。

 サルモーネはパニックに染まっていく彼らを見下ろしてけらけら笑う。

 

『「ハロー? 皆さんハロー? “HELLO!!”いーってみよー!!」』

 

 集っていた人々が必死に逃げ出す中で動き出したグルジオキングは、起き抜けにギガキングキャノンを発射してビルを何棟か纏めてぶち抜いた!

 

 

 

 沙紀は暴れ始めたグルジオキングをバックに、スマホを自分の正面に構えてパシャリと写真を撮った。

 

「……これが女子高生の言う、盛れる角度という奴か」

 

 グルジオキングの咆哮する様を収めた自撮り写真を確かめて、そうつぶやいた。

 

 

 

 今日も監視に来ていた功海は、グルジオキングが行動を再開したのを目撃して身体を強張らせた。

 

「怪獣が目覚めた……! 千歌たちは逃げろッ!」

「功海お兄ちゃんっ!」

「一人で戦うつもり!? 無茶だよぉっ!」

 

 千歌と曜の制止を振り切って、功海がグルジオキングに向かって駆け出す。接近して奇襲を掛ける作戦であるが、

 

「俺色に……!」

「ギュオオォォ――――ン!!」

 

 あまりに近づきすぎて、火炎の射程範囲内に入ってしまう。グルジオキングは今にも炎を吐き出そうとしていた。

 

「やべッ……!」

「功海ぃッ!」

 

 放たれた灼熱の火炎から、克海が飛び込んできて功海を助ける。

 

「克兄ぃ……!」

 

 爆発から救った功海に、克海は一番に謝った。

 

「昨日は怒鳴って悪かった……!」

「……俺も、ちょっと言いすぎたよ」

 

 互いに謝罪し合った二人の元に、梨子と追いかけてきた曜がやってくる。

 

「克海さん、功海さん。あなたたちは、一人で戦ってるんじゃありません!」

「みんなの力を合わせよう!」

「……ああ!」

 

 起き上がった克海と功海は、梨子と曜を後ろに控えさせながら手と手を打ち合わせる。

 

「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 ルーブジャイロを構えて、克海と功海がクリスタルを選択する。

 

「セレクト、クリスタル!」

「セレクト、クリスタル!」

 

 克海が火、功海が水のクリスタルを選び取ってジャイロにセットした。

 

[ウルトラマンタロウ!]

[ウルトラマンギンガ!]

 

 火と水の力をジャイロに宿して、変身を行う。

 

「纏うは火! 紅蓮の炎!!」

「纏うは水! 紺碧の海!!」

「ビーチスケッチさくらうち!」

「ヨーソロー!」

 

 二人がグリップを三回引いて、エネルギーを解放!

 

[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]

[ウルトラマンブル! アクア!!]

 

 梨子と曜をそれぞれのインナースペースに収めて、暴れまわるグルジオキングの正面に着地した。

 

『『はッ!』』

 

 堂々と見得を切ってグルジオキングを威嚇。兄弟のリベンジマッチが開始された!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。