克海たち十人は、駆け足で千歌の前へと近寄っていく。
「千歌お前ー、心配したじゃねぇかよ……」
「駄目じゃない千歌っち、無断欠席なんて……」
功海や鞠莉が努めて明るく呼び掛けようとしたが……千歌の側にいる沙紀に気づいて、言葉がしぼんでいった。
「あの子……!」
「千歌ちゃんに見せてもらった写真の……!」
「うん、間違いない……! 私が会ったのも、あの人だよ……!」
謎多き人物である沙紀の顔を目にして、梨子や曜たちは思わず身構えた。克海が代表して、沙紀に呼びかける。
「美剣沙紀さんですね。妹から離れてもらえますか?」
克海たちは正体が知れない沙紀のことを強く警戒していた。対する沙紀は、どうしてか克海と功海に向けて険しい眼差しを送っている。
「今更兄弟面か」
「あなたは敵ですか? それとも味方?」
「敵か味方か白黒つけたい。それが若さというものか」
「歳そんな変わねーだろ! どこ目線だよ」
沙紀のひと言に功海が突っ込むと――何を思ったか、沙紀がルーブジャイロを取り出す。
「それは!?」
動揺が走る克海たちの目の前で、沙紀がクリスタルを嵌め込んだジャイロのグリップを引いていく。
「見るがいい、若輩ども……!」
ジャイロからエネルギーが放出され――公園の側の駐車場を引き裂きながら、ネロンガが実体化して出現した!
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
「怪獣! また出たずら!」
「あの人まで、怪獣を召喚することが出来たなんて……!」
功海は花丸、ルビィらを自らの背後にかばいながら、沙紀をにらみつける。
「やっぱり敵だったのか……! 千歌、離れてろ!」
「でも、沙紀ちゃんは……!」
「千歌ちゃん、早く!」
「危ないですわよ!」
ためらう千歌だったが、駆け寄った曜とダイヤに腕を引かれて沙紀から引き離された。
「功海、行くぞ!」
「ああ!」
「今回はヨハネが出るわよ!」
「……私も、ここまで来て邪魔なんてさせられないっ!」
アイゼンテック飛行船が背景の空に飛んでくる中、克海と功海は善子、果南とともにネロンガの方向へ飛び出し、そしてルーブジャイロに手を掛けた。
「「セレクト、クリスタル!」」
「ハグしよっ!」
「堕天降臨!」
克海と果南がウルトラマンロッソアクア、功海と善子がウルトラマンブルウインドに変身して立ち上がる。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
『『はっ!』』
ロッソとブルはルーブスラッガーを手にネロンガに斬りかかっていくが、
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
ネロンガの姿がいきなりかき消えて、スラッガーが空振りした!
『「消えた!?」』
『「やっぱり透明になれるんだわ! 幻惑の道化師!?」』
動揺する果南と善子。ロッソたちは辺りにスラッガーを振ってネロンガの行方を捜すが……正面から尻尾を叩きつけられる。
『『うわぁッ!』』
二人そろって殴り飛ばされるロッソとブル。
「ああっ!」
「お兄ちゃん!」
戦いを見守る千歌たちが悲鳴を発する。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
更にネロンガは、空中で姿を現して二人に勢いよくのしかかってきた。
『『うわぁぁぁッ!』』
『「「きゃああああっ!」」』
痛恨の一撃に、四人の叫び声が響いた。あまりに痛々しいありさまに、千歌とルビィが沙紀へ懇願する。
「やめて! やめさせて!」
「どうしてこんなことするんですかぁ!?」
「これは運命だ」
ロッソたちがネロンガの電撃攻撃をかいくぐる中、沙紀はそう言い切った。
「運命……!?」
「私たちは運命という大きな河に翻弄される、力なき木の葉に過ぎない」
「一体何を言ってるの!?」
「善子ちゃんみたいなこと言ってないで、止めるずら!」
梨子や花丸が声を荒げる一方で、ネロンガの電撃が千歌たちの方へ飛んでいくのでロッソがその背を盾にしてかばった。
「『うわぁっ!!」』
「克海! 果南っ!」
目をひん剥く鞠莉たち。沙紀は微塵も動じず、冷淡に言い放つ。
「本来この運命に関わりを持たない者が、戦いに口を挟むな」
「何ですって……!?」
ダイヤが青筋を立てて身を乗り出しかけるのを、千歌が押しとどめた。
「喧嘩は駄目! 喧嘩したら、みんなが笑顔になれないよっ!」
「この世には笑顔では済まされないこともある!」
強情な沙紀に、それでも千歌は主張する。
「そんなことないよっ! みんなが手と手を取り合っていけば……みんなが救われる!!」
「……その言葉、友の言葉として覚えておこう」
そう言い残して、沙紀はこの場から離れていく。
「沙紀ちゃんっ!」
「千歌ちゃん駄目! 危ない!」
沙紀を追いかけようとする千歌だが、電撃の余波が飛んでくるので、梨子たちに止められた。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
『はぁッ!』
ネロンガが電撃を球状にして発射した。それをブルが両断するが、勢いは止められずに半分となった電撃がブル、ロッソに命中した。
『『うわあぁぁぁぁぁッ!』』
スパークを食らって倒れ込む二人。
『「つ、強い……!」』
『「今までの怪獣とは、根本的な力の源が異なるわ……!」』
ネロンガの手強さに果南と善子もうめいた。本物のジャイロによって実体化した怪獣は、模造品のAZジャイロのそれとは再現度が違うのだ。
電流によって身体が麻痺し、苦しむロッソたちに向けて、千歌が声の限りに叫ぶ。
「克海お兄ちゃん! 功海お兄ちゃーん! がんばってー!!」
『千歌……!』
「果南ちゃん! 善子ちゃーん! 負けないでー!!」
『千歌……』
『ヨハネ……いや、何でもないわ』
善子が空気を読んで押し黙る中、千歌の声援によってロッソとブルの眼差しに活力が戻っていく。
『聞こえるか、功海……?』
『ああ……俺たちの妹の声だ……!』
『たとえ生まれが違ってたとしても、千歌はそこにいる……! 俺たちのすぐ傍に!』
『だったら……守るしかないっしょ!』
ロッソとブルが気力を振り絞って、麻痺を振り払い、堂々と立ち上がった!
「やりましたわ!」
「いっけぇー! 功兄ぃ、克兄ぃー!」
その姿にダイヤたちがわっと歓声を上げた。千歌もにっこりと笑顔となる。
『「だけど克兄ぃ、透明な相手とどう戦うの? 闇雲に挑んでも返り討ちだよ!」』
身体が絶え間なく透き通り、挙動を捉えられないネロンガを強く警戒する果南。
『大丈夫だ、俺に作戦がある。クリスタルチェンジだ!』
ロッソは強い語気で応じて、果南に指示を出した。
『分かった!』
果南はロッソに従い、土のクリスタルを取り出す。
『「セレクト、クリスタル!」』
ロッソグランドにタイプチェンジすると、ルーブスラッガーロッソを両方とも地面に突き立てた。
「『グラインドロックス!!」』
スラッガーの刃先を中心に、膨大な量の土煙が巻き上がる。これを見たブルが意図を理解。
『なるほどね……次は俺たちの番だ!』
『「ええ! 堕天の風よ、吹き荒れなさい!」』
ルーブスラッガーブルを水平に振り、旋風を生じさせた。
「『サンドストーム!!」』
風は土煙を乗せて透明の状態のネロンガに降りかかる。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
すると土埃がネロンガの全身に付着して、その姿が浮かび上がった。着色されたネロンガは激しくうろたえる。
『「見えた!」』
『電気を発する奴の全身は静電気まみれだ。汚れがつきやすいって訳だ!』
『狙い通りだ。行くぞ!』
ネロンガの居場所を掴めるようになったことで、ロッソが駆け出す。同時に果南が雷のクリスタルをスラッガーにセットした。
[ウルトラマンエックス!]
ロッソが両手のスラッガーでX字を描き、クロスした光刃を作り出す。
「『ザナディウムソニック!!」』
飛ばされた光刃がネロンガに命中し、大きく弾き飛ばした。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
『「今だ!」』
その瞬間に、果南が極クリスタルに手を伸ばす。
[極クリスタル!!]
『「「セレクト、クリスタル!!」」』
極クリスタルの力でロッソとブルのインナースペースがつながり、果南と善子が並んだ。果南の指がクリスタルに触れると、三本角が展開されて「極」の文字が現れる。
[兄弟の力を一つに!]
果南がクリスタルを、善子の掲げるジャイロにセットした。六人のウルトラ戦士のビジョンが二人の背後に立ち上がる。
『『纏うは極! 金色の宇宙!!』』
果南、善子がそれぞれ左右のグリップを握って、息をそろえてジャイロを回していく。
『「「サンシャイン!!」」』
極クリスタルが金色に輝き、高まったエネルギーが解放される!
[ウルトラマンルーブ!!]
「デュワッ!」
ロッソとブルが融合し、超戦士ウルトラマンルーブに変身!
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
ネロンガが起き上がってくるが、ルーブは胸に手をやってルーブコウリンを取り出す。
『「「ルーブコウリン!!」」』
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
ネロンガが電撃球を五つ作り出して飛ばしてきたが、ルーブはコウリンでそれらを空にはね返し、最後の一つは素手で握り潰した。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
遠距離攻撃を防がれたネロンガは、自らの身体に電流を纏いながら突進してくる!
『「そうはさせないよ!」』
それに対して果南が前に出るとともに、極クリスタルの文字が「洋」に変化してルーブの身体に青と翠色のラインが走る。
[ルーブ・オーシャン!!]
コウリンの円周に水が纏わり、ネロンガに盾のように突き出すと、コウリンの中心から水球が生じて射出される。
「『「『オーシャン・ジャイアントスフィア!!」』」』
紺碧の水球は突進してくるネロンガを完全に包み込んで、一歩も動けなくする。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
水球のバリアを破ろうとするネロンガだが、水は体当たりをはね返し、更に電撃も反射してネロンガ自身を痺れさせた。
「『ルーブコウリンブル!!」』
ネロンガの動きを封じ込んだところで、善子がコウリンを手にして前に出る。クリスタルの文字は「天」に変わり、紫と白のラインが走る。
[ルーブ・ヨハネ!!]
ルーブが風を纏いながら超高速で飛び出し、ネロンガにコウリンの一閃を叩き込んだ。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
駆け抜けたルーブが振り向き、善子が極クリスタルに触れる。
[高まれ! 究極の力!!]
クリスタルをコウリンにセットし、コウリン下部を握り込んでエネルギーを解放する。
「『「『ヨハネ・コウリンショット!!!!」』」』
紫電の疾風を纏った光輪が発射され、猛然とネロンガの胴体を突き抜けていった。ネロンガは両断されて上半身が堕ちていく。
「ゲエエゴオオオオオオウ!!」
そのまま大爆発! ネロンガは消滅し、戻ることはなかった。
「やったぁぁぁぁ――――――――!!」
大はしゃぎのルビィたち。彼女たちが見守る中で、ルーブは大空高くに飛び上がって去っていった。
「シュワッ!」
戦いが終わり、千歌の元に克海、功海が駆け寄った。
「千歌……」
じっと互いを見つめながら、対面する三人。これからどうなるかとハラハラ見守る梨子は、つい前に出ていこうとするが、それを鞠莉に制止される。
「これは兄弟間の問題よ……私たちがしていいのは、見守ることだけ」
しばし見つめ合っていた三人だったが、やがて千歌が口を開いた。
「お兄ちゃん、ごめんなさい……。私、本当はお兄ちゃんたちの妹じゃないの……。ずっとだましてたの……。怒ってるよね……」
すると、克海と功海は柔らかく微笑む。
「何言ってるんだよ。千歌がここにいる。ずっと、俺たちの側にいた。それ以外に、お前が家族だってことの証明なんかいらないだろ?」
「で、でも……それって、私に遠慮して言ってるんじゃ……」
「なーに言ってんだ! こんなかわいい妹がいる。それに何の疑問を挟めばいいんだ?」
兄たちの気持ちを受け取り、沈み切っていた千歌の表情に、色が戻っていった。
「――千歌っ!」
途端に、果南が千歌に飛びついていって思い切り抱きしめる。
「ごめんね……ごめんね千歌! 昔のことになんかこだわって……!」
「果南ちゃん!? ちょ、痛いよぉ……」
果南の勢いに、千歌は思わず苦笑い。
「今この瞬間に……この腕の中に、千歌がいる! それ以外に必要なことなんてない! 私たちは友達……仲間……Aqoursだよ!!」
「うん……うん!」
梨子たち七人も果南に苦笑しながら、千歌の元に集まる。
「お帰り、千歌ちゃん!」(曜)
「元気になってよかったずら!」(花丸)
「ふっ……これも堕天使の導き」(善子)
「これからもスクールアイドル、やっていこうね!」(ルビィ)
「もうおサボりはナッスィング! デースよー?」(鞠莉)
「今日一日サボタージュした分、明日は厳しくいきますわよ?」(ダイヤ)
Aqoursの仲間たち、そして兄たちに、千歌は笑顔で応じた。
「みんな……ただいまっ! 大好き!!」
――家族と、仲間に囲まれて笑顔いっぱいの千歌のことを、遠くの樹の陰から、沙紀がじっと見つめていた。
「……過去ではない、この瞬間が絆……か」
ひと言つぶやいた沙紀が、少しだけ、瞳に哀愁を漂わせた。
「幸せな奴だ……。私の絆は、とうに過去のものだ……」
『Aqoursのウルトラソングナビ!』
千歌「カンカンミカン! 今回紹介するのは、『エターナル・トラベラー』だよ!」
千歌「この歌は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』第一期の主題歌だよ! 『誓い』の時に紹介した通り、この作品は怪獣使いのレイと、怪獣のゴモラが主役の話で、毎回様々な怪獣と怪獣の対決が観られるの」
千歌「歌うのはProject DMMの皆さん! 歌詞は地球を遠く離れた無人の惑星での冒険と、謎に包まれたレイの真実が明かされてくドラマを反映したものになってるの。OPの映像でも色んな怪獣が対決するのが印象的だよ」
千歌「エンディングの『ジャンプ アップ』は、ウルトラシリーズでは珍しいラップ調の歌になってるの! ノリノリのこの歌、興味がある人は一度でも聴いてみてね」
克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『君の瞳を巡る冒険』だ!」
功海「初出はリアル脱出ゲームとのタイアップという異例の経緯の曲だ! だからもちろん『脱出』を強くイメージする内容になってるぜ」
克海「普通に歌を発表するだけじゃなく、こういうタイアップ曲がある方が歌のバリエーションが増えていいかもな」
千歌「それじゃあまた次回でね!」
善子「ヨハネたちが直面した険しき壁、それは……お金が足りなーい! 先立つものがなくてはスクールアイドルは出来ないわ。どうにかならないかしら」
ルビィ「一方で、お姉ちゃんに何か悩みがあるみたい。それは……みんなが他人行儀?」
善子「色々あるけれど、そんな時にも起こる怪獣騒動! 羽を落ち着かせる間もないわね!」
ルビィ「次回、『決戦!AQUARIUM』!」
善子「次回も堕天降臨!」