ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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幕間「予備予選と学校説明会」

 

 あくる日の、『四つ角』の居間にて。

 

「何? また問題が発生したって?」

「Aqoursは大変だなー。次から次へと」

 

 二学期に入って早々、様々な障害に見舞われた克海たち。しかし合体戦士ウルトラマンルーブへの変身や、より深め合った兄妹の絆などを以て乗り越え、やっと平穏が戻ってきた。

 そう思われた矢先に、今度はAqoursの活動の方でまた問題が起きたという。千歌たち九人は真剣な面持ちで居並び、克海と功海と向かい合っている。

 

「で、その問題というのは? そもそも何でそんな話を俺たちに?」

「実は……」

 

 克海が聞き返すと、鞠莉が代表して事の経緯を説明し始めた。

 

「学校説明会のことなんデースが……」

 

 一時は統廃合が確定となり、学校説明会も中止となってしまった浦の星。しかし鞠莉の必死に取り留めたことでどうにか保留で踏みとどまってもらい、学校説明会も開かれることとなった。Aqoursは浦の星女学院のアピールのために、説明会でライブをする予定である。

 しかし先日、内浦は折悪しく大雨に見舞われ、道路に損害が生じてしまった。その復旧作業の影響で、日にちが一週間ずれ込むことになったのだという。

 

「ん? それの何が問題なんだよ。準備期間も伸びる訳だから、むしろ好都合なんじゃね?」

 

 ピンと来ない功海が小首を傾げると、曜と克海が呆れた。

 

「千歌ちゃんと同じこと言ってる……」

「忘れたのか。説明会の一週間後が、何の日か」

「え? ……あぁッ!」

 

 カレンダーに目をやり、問題の正体に気がつく功海。

 

「ラブライブの予備予選か!」

「そうデース……」

「被っちゃったずら……」

 

 困り果てたように眉を寄せる花丸たち。

 

「確かにそりゃあ問題だ。片方に出てたら、もう片方には出られないって訳だ。これぞ、こちらを立てればあちらが立たずって奴」

「どうにかして両方のステージに出場することは出来ないのか?」

「それが難しいから困ってる訳で……」

 

 克海の問い返しに果南が肩をすくめ、ダイヤがその理由を話す。

 

「予備予選の会場は、バスも電車も通ってない山の中……。移動に時間が掛かりすぎるのですわ……」

「そのことを相談し合ってたら、千歌ちゃんがいい考えがあるって言って……」

 

 梨子に目を向けられた千歌は、克海と功海にねだるように呼び掛ける。

 

「お兄ちゃん、チカからのお願~い」

「な、何だよ」

 

 何を言い出すものかと若干身構える克海。

 

「私たちを助けると思って、協力して! 予選会場から学校まで、ウルトラマンに変身してピューッて私たちを運んでほしいの!」

「はぁぁ!?」

 

 あまりの内容に、克海は思わず目をひん剥いた。

 

「直線なら大した距離じゃないの! それにウルトラマンのスピードがあれば、余裕で間に合うから! ねっねっ、いいでしょ?」

「しょうがねぇ奴だなぁ。まぁ他ならぬ千歌たちの頼みなら、やってやらねーことも……」

「おい馬鹿言うなッ!」

 

 引き受けかける功海を、克海が半ば慌てながら制止した。

 

「そんなことしてみろ! 内浦中大騒ぎで、ステージどころじゃなくなるぞ!」

「ですよね……。ウルトラマンに運んでもらったなんてこと、どう説明すればいいものか……」

 

 梨子が冷や汗垂らしながら苦笑いした。ルビィが肩を落としながら千歌へ振り向く。

 

「千歌ちゃん、やっぱり無理があるよ、今の……」

「ダメかぁ……。いいアイディアだと思ったんだけどなぁ」

「そもそも、善子ちゃんが堕天使の翼だとか言い出すからおかしな話になったずら」

「善子言うな! こっちだって、本気のつもりじゃなかったわよ!」

「空路なら、ヘリ使えばいいんじゃね? 鞠莉が乗り回してたろ、確か」

 

 功海がそう聞くと、鞠莉が大きく肩をすくめた。

 

「いくら何でも私が操縦してた訳じゃないデス。あれは小原家のもの。廃校撤回の条件は自力で入学希望者を100人集めること、家の力に頼るなんて出来まセーン」

「そっかぁ……難しいもんだな」

 

 皆が頭を悩ませていると、ダイヤが発言する。

 

「現実的に、説明会とラブライブ予選、二つの会場を間に合わせる方法は一つだけ。予備予選を一番で歌ってすぐに出れば、ギリギリで浦の星行きのバスに乗れるのです」

「ほんと!?」

「ええ。ただし、そのバスに乗れないと次は三時間後。二番目以降では間に合わないのですわ」

「けど、そんな都合よく一番になれるのか?」

「順番どうやって決めるんだ?」

 

 克海と功海が心配して尋ねる。

 

「そ……」

「それはっ! 抽選です!!」

 

 横から割り込んだルビィが台詞を乗っ取った。

 

「抽選!」

「うゆ。グループの代表がクジを引くんです! ちなみに私たちのところの出場校は、全部で36です」

「それで一番を引けなきゃダメって訳か……。責任重大じゃんか」

「しかも36分の1の確率……。大分希望が薄いな」

「でも、これ以外に方法はないよ」

 

 固唾を呑む果南。

 

「問題は、誰がクジを引くのかだけど……」

 

 流石に誰もが二の足を踏んでいる。すると、

 

「しょうがないわね……。ここは堕天使界のレジェンドアイドル、このヨハネがっ!!」

「ないずら……」

「ぶっぶーですわ」

 

 せっかくやる気を出したのに、反応は冷ややかだった。

 

「どうしてよー!」

「だって、じゃんけんずっと負けてるし……」

「何もないところでつまずいて海落ちちゃうし」

「普段は運を溜めてるのよ! いざという時は、それを開放して……!」

「結局、数学的には誰が引いても同じだけどな」

 

 やいのやいのと騒ぐ善子らに、功海が淡々と突っ込んだ。克海は眉をひそめて腕組みする。

 

「どうなることやら……」

 

 

 

 そして、結果は、

 

「24番だってよ、克兄ぃ」

「まぁ……そうそう上手く行く訳ないよな」

 

 ある意味では予想通りの結末に、克海は半目になりながらつぶやいた。

 

「しかし、そうなるとどうするんだ? 千歌たちは」

「どっちか片方だけじゃ、今から入学希望者を100人も集めるなんて無理だろうし、グループを半分に分けるしかねぇだろうなぁ」

「けど、それだと中途半端にならないか? 二兎追うものはって言うだろ」

「そう言ったって、他に取れる手なんてねぇじゃん? まさかほんとに空飛ぶ訳にはいかないしさ」

「それもそうだが……」

 

 眉を寄せながら、克海がテーブルに広げた綾香市の地図に目を落とす。予備予選会場と浦の星を示すピンの間には、山地を示す等高線が挟まっている。

 

「せめて、まっすぐに移動できればどうにかなるかもしれないんだけどなぁ」

「そいつは無理だろ。思いっ切り私有地だぜ? 勝手に入ったら補導もの。そしたら全部おじゃんになっちまう」

「だよなぁ……」

 

 うなずきつつも、山地に畑の地図記号があるのに克海は目を留めた。

 

「ん……? そういえば、ここってミカン畑だよな……」

 

 

 

 問題の日曜日――ラブライブ予備予選の会場に、克海と功海は応援にやってきた。

 

「予備予選は予定通りに出場。一方で、説明会もステージあり。ってことは、やっぱ半分ずつに分けたって訳か」

 

 つぶやく功海が顔をしかめる。

 

「けど、浦の星の子たちは説明会の方だし、克兄ぃの言った通り、今回ばかりは厳しいかもな。しょうがない事情があったって、そんなんお客には関係ないことだし」

「……ともかく、千歌たちを精一杯応援しよう。俺たちに出来るのはそれだけだ」

 

 何やら含みのある表情ながら、克海がそう言い聞かせて会場に入っていった。

 

 

 

 そして、Aqoursの順番になると――功海は丸くした目をステージ上に向けた。

 

(♪MY舞☆TONIGHT)

 

「あれ!? 全員いるじゃねーか!」

 

 着物をモチーフにした衣装姿でステージに立っているのは、間違いなく九人。Aqoursのフルメンバーだ。ということは、説明会の方には誰も行っていないということになる。

 

「ってことは、説明会は捨てたってことか? けど、さっきはステージあるって聞いたんだが……」

「そのことについては、千歌に考えがあるらしい」

 

 物知り顔で克海が告げる。

 

「問題は、本当に間に合わせられるかって点だが」

「克兄ぃ、何聞いたんだよ。もったいぶらずに教えろよ!」

「まぁ静かにしとけって。今はみんなの舞台を、しっかりと見届けろ」

 

 功海をいさめて、二人はAqoursのステージに見入っていった。

 そして歌い終えると会場が興奮に包まれるが、Aqoursの九人は余韻に浸る間もなく、すぐにステージから飛び出していった。

 

「まさか、ほんとに走っていこうってのかよ!? そんな無茶な……」

「俺たちも行こう。学校の方でのステージには間に合わないだろうけど……」

 

 千歌たちに続くような形で、克海と功海も会場を出て車に乗り込んでいった。

 その車内で、克海が種明かしする。

 

「えッ! 許可取ったのかよ! 畑突っ切る」

「そう言ってたな。あそこのミカン畑の持ち主の娘さんが、浦の星に通ってるんだよ。この内浦の人の縁あってこその解決策だな」

「解決策って言うか、力業だろ。ぐるりと遠回りするよかマシとはいえ、それでも足なら結構な距離あるぜ? 無茶すんなぁ、みんな」

 

 功海が感心するような、呆れるような声を上げると、克海が苦笑を浮かべた。

 

「それだけ本気だってことだよ。奇跡を起こすのに」

 

 

 

 ――そうしてAqoursは一日の内に、隔てられた二つのステージで歌い切るという離れ業をやってのけ、予備予選と説明会と、両方を成功させた。

 説明会でのステージの終わりに、千歌が仲間たちに対して語った。

 

「二つに一つ、どっちにするかなんて選べない。どっちも叶えたい! だから行くよ! あきらめず、心が輝く方へ!!」

 

 

 

 ――学校説明会のステージは、沙紀が樹の陰に隠れながら見届けていた。

 

「……大事な場所を守るために、全力を尽くす……いや、全力以上を出し尽くすか」

 

 Aqoursの二つのステージの成功は、沙紀も把握していた。それに感心する一方で、やや残念そうに独り言つ。

 

「輝いているな。その輝きが、遠くない内に宇宙の塵に帰してしまうことも知らずに……」

 

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