ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

45 / 70
激突!TONIGHT(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

果南「ラブライブ予備予選を突破した私たちだけど、活動費が足りなくなった。そんな時ダイヤの、ダイヤちゃんと呼ばれたいなんて悩みが明らかに。色々頑張っても上手く行かないダイヤ。だけど、事件を通じて今の自分でいいと悟ったのだった」

 

 

 

 ある雨足の強い晩、『四つ角』で千歌が克海と功海に尋ねかけた。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、狼男って本当にいると思う?」

「何? 狼男?」

 

 克海と功海は、突然のことにきょとんとしながら振り向いた。

 

「また変なことを聞くな……。何で狼男なんだ?」

 

 克海の聞き返しに、千歌が訳を話す。

 

「今、綾香の方で噂になってるんだって。狼男を見た! っていう人がチラホラ出てきてるって」

「へぇ……。また妙な噂が立ったもんだ」

「それで、その狼男が本物なのかなって。お兄ちゃんたちはどう思う?」

 

 興味津々に尋ねた千歌に、克海は大きく肩をすくめた。

 

「馬鹿言え。狼男なんてコテコテのモンスター、実在する訳がない」

 

 頭から否定する克海に、功海が茶々を入れる。

 

「よく今になってもそんなことが言えるもんだな、克兄ぃ。怪獣と直に戦ってる身なのに」

「だよねー。怪獣がいて、狼男がいないなんてどうして言えるの?」

「うッ、それもそうだが……。けど、何か被害が出たとかいう話じゃないんだろ?」

「まぁ、そんな噂は聞かないけど」

 

 千歌がうなずくと、功海の方もネットを軽く検索して調べた。

 

「ここんとこは怪獣とかのニュースはないぜ」

「なら気にすることもないだろ。それより千歌、ラブライブの方は大丈夫なのか? 次は前突破できなかった地区予選だろ」

 

 Aqoursの進捗具合を気に掛ける克海。

 

「うん……今度は絶対合格しなくちゃ! そのために、次のパフォーマンスをどうするかをみんなで相談してるんだ」

「早いところ決めた方がいい。練習の時間も考慮しないとダメだぞ」

「分かってるってぇ」

「次は観客をあっと言わせるようなので勝負したらどうだ」

 

 狼男の話題は短く終わり、兄弟はラブライブ地区予選に挑む妹を激励し。

 

 

 

『激突!TONIGHT』

 

 

 

 功海と曜がしいたけの頭をなでて落ち着かせていた。

 

「よーしよしよしよし、いい子だしいたけ。そのままじっとな」

「いける! 大丈夫! 絶対動かないから!」

 

 曜がそう告げたのは、階段の手すりに身を隠すようにしている梨子。彼女は曜の言葉を信じて、そろそろとしいたけに近づいていき、頭に震える手をかざす。

 

「わんっ!」

「ひぃぃぃぃっ!」

 

 しかししいたけが鳴き声を出すと、途端に怖気づいてものすごい勢いで後ずさっていった。

 

「やっぱり無理ぃぃぃ~!」

「こらしいたけ! じっとって言っただろ!」

「くぅ~ん……」

「……何やってるんだ、そこ」

 

 功海に叱られたしいたけがうなだれていると、二階に上がってきた克海がこの現場を目にして呆れ顔を作った。

 

「梨子ちゃんが、しいたけと目が合って触れるかもって」

「ほんと!?」

 

 曜の言葉に反応したのは、部屋から顔を出した千歌だ。バババッと梨子の元へ駆け寄ると、その手を取る。

 

「どうぞどうぞ♪」

「あっ……!」

 

 そのままぐいぐい引っ張って、しいたけに近寄らせていき、もう一度触れさせようとするが……。

 

「わうっ!」

「ひぃぃぃぃ~!」

 

 しいたけが鳴くと、またもすごい勢いで逃げていった。

 

「ダメ~! やっぱり無理~!」

 

 音を上げる梨子に肩を落とす千歌。

 

「はぁ~……しいたけ、梨子ちゃんのこと大好きだと思うんだけどなぁ」

「確かに、率先してじゃれつこうとするよな」

「そんなことないでしょ~!」

 

 千歌のひと言に功海は同意したが、梨子は拒むように否定。しかし千歌は言い切る。

 

「そんなことある。犬は見ただけで、敵と味方を見分ける不思議な力があるって」

「ええ……?」

 

 そう言われても、梨子は信じがたい様子。このやり取りを見届けた克海が軽く肩をすくめた。

 

「相変わらず、梨子ちゃんは犬が苦手なんだな」

「けど、そろそろ慣れてほしいぜ。ウチに来る度に、しいたけをつないでたらしいたけがかわいそうだろ?」

 

 とつぶやく功海。しいたけは基本、『四つ角』の中で放し飼いだ。

 

「まぁそれもそうだが……」

「いい加減会議始めるよー」

「はーい」

 

 克海と功海が話していたら、果南が顔を出して千歌たちに呼びかけた。

 

「それじゃお兄ちゃんたち、また後でね」

「おーう」

 

 しいたけのことを功海に任せ、千歌たちは部屋の中に入っていった。それを見送った克海と功海が向かい合う。

 

「千歌たちは今日もラブライブへの作戦会議か」

「けど、なかなか案が纏まらないみたいだぜ。まぁ、地区予選ともなるとレベル高くなってくるしな」

「ああ……そう簡単には合格を勝ち取れないよな」

 

 前回の地区予選での他のグループのステージを思い返す二人。比較的競争の小さい千歌たちのブロックでさえ、出場校のレベルが高いと感じさせられた。本選まで視野に入れれば、頂点に立つのは並大抵のことではないだろう。

 

「まぁ、実際どうするかは千歌たちに任せよう。俺は仕事に戻る」

「ほーい。んじゃあ行くぞしいたけ」

「わんっ」

 

 克海が階段を下りていき、功海もしいたけを連れてこの場から離れていった。

 

 

 

 しかし数分後、

 

「おーいしいたけ~、おやつだぞ~……あれ?」

 

 功海が餌を盛った皿を手に廊下に出てくるが……しいたけの姿が忽然と消えていた。

 

「変だな。ついさっきまで、そこに待たせてたのに……ん?」

 

 奇妙に思って辺りをキョロキョロと見回していると……二階にいるはずの善子が、コソコソしながら裏口より外へ出ていこうとするところを発見した。

 

「おいヨハネ、もう帰るのか? さっき会議始めたとこだろ?」

 

 その背中に声を掛けると、善子はビクゥッ! といやに大仰に肩を跳ね上がらせながら振り返った。

 

「よ、ヨハネは天界の勢力の波動を察知したため、現空間より離脱するわっ! それじゃっ!!」

 

 と言い残して、善子はすたこらさっさと裏口から出ていった。

 功海はポカンと、その後ろ姿を見送った。

 

「何だ何だ、変な奴だな……まぁ変な奴だけど」

 

 

 

 それから数日後、克海と功海が千歌からある相談を持ち掛けられていた。

 

「えッ、梨子ちゃんが?」

「うん。どうも様子が変で……」

 

 千歌はそこまで深刻でもないが、気には掛けているといった具合に眉を寄せながら告げた。

 

「この頃、練習が終わるとすぐに帰っちゃうの。それどころか、終わりが近くなるとそわそわして早く帰りたがってるし。去り際も、何だかウキウキした顔してて。急にどうしたのかなって……」

「最近何かいいことあった? とか聞いてみたか?」

「聞いたけど、何かはぐらかされちゃうの。隠すようなことでもあるのかな、梨子ちゃんに……」

 

 千歌が首をひねっていると、功海があーと声を上げつつ言う。

 

「そう言や、こないだヨハネの方がいやに早くウチから帰ってたよな」

「あーそれ! あの時は突然善子ちゃんいなくなっちゃったから、ビックリしちゃった。どうしたのかなぁ、二人とも……」

「まッ、そんなの理由は一つしかねぇだろ」

「え? 何なに?」

 

 功海は下世話な笑いを浮かべながら語った。

 

「男が出来たに決まってんだろ!」

「えぇー!? 梨子ちゃんに、彼氏ぃ!?」

「女子高生がすぐに帰りたがるってことがあったら、十中八九はそうなんだよ。帰って男とデートに行ってんだって」

「彼氏なんて……そんな気配、全然なかったのに……。それに、だったら善子ちゃんはどうなるの?」

「同じだって。いや、もしかしたら相手も同じかもしれねぇぞ?」

「えぇぇ―――!!?」

 

 功海の勝手な推論に大仰に驚く千歌。

 

「時系列的に言って、梨子の方が横恋慕で略奪愛。それに怒り満々のヨハネ、やがて爆発して梨子と泥沼の女の戦争に……やべーぞ千歌! Aqoursまで分裂しちまうかも!」

「た……大変だよぉぉぉぉ―――――! やめて梨子ちゃん善子ちゃぁぁんっ!」

「……馬鹿を言うのはよせ。昼ドラの見すぎだ」

 

 千歌をからかって遊ぶ功海に、克海が呆れ返った。

 

「そんな大したことでもないだろ。明日、梨子ちゃんの親御さんにでも何か知らないか聞いてみるよ」

「ありがと、克海お兄ちゃん! お願いね」

 

 と克海が請け負い、千歌がお礼を言った。

 

 

 

 翌日の夕方、申し出た通りに克海がお隣の桜内家を訪問。インターホンを鳴らす。

 

「すみませーん」

「あら克海君、いらっしゃい。どうしたのかしら?」

 

 応対に出た桜内家の母に、克海が尋ねかける。

 

「お宅の梨子ちゃんは、もう帰ってますか?」

「梨子? ええ、今は部屋にいるけど……」

 

 この遅くもない時間に帰宅しているということは、やはり男とデートしているということではない模様だ。

 

「そうそう。さっき、善子ちゃんが遊びに来てね」

「善子ちゃんが?」

 

 ここで意外な名前が。彼女も様子が妙だったと聞いたが、何かつながりがあるのだろうか?

 と思っていると、二階の方から何やら言い争う声が聞こえてくる。

 

「何だか騒がしいですね……」

「あらやだ、お恥ずかしい……。梨子ったら、善子ちゃんと何やってるのかしら」

「お邪魔します」

 

 気になった克海は桜内家に上がって、梨子の部屋の扉を開いた。

 すると、目に飛び込んできた光景は、

 

「大体何よ! 犬苦手だったじゃないの!?」

「苦手だけど、仕方ないでしょ! 面倒見てほしいって言ったのは善子ちゃんよ!?」

「ヨハネ!!」

 

 梨子と善子の二人が面と向かって、激しく言い争っているものであった。

 

「……二人とも、一体何を……ん?」

「あっ、克海さん……!?」

「克海……!?」

 

 一瞬呆気にとられた克海だが、その目が二人の持っているある物に向けられる。

 持ち運び用の、ペットのケージ。その中には、一頭のシェルティ犬が入っていた。

 

 

 

「……なるほどねぇ。隠れて犬を飼ってたと、そういう訳だったか……」

「はい……」

 

 日が落ちる中、梨子と善子が言い争いしていた原因たる犬を外で散歩させながら、二人から事情を聞いた克海が吐息を漏らした。

 事の発端は数日前。善子はひょんなことから綾香で、飼い主もなく街をさまよっていたこの犬を保護。しかし彼女のマンションはペット禁止であったため、やむなく外で隠れながら世話をしていた。そこを梨子が偶然発見し、新しい飼い主が見つかるまでの条件で協力させられていた、と、そういう経緯だったのである。

 

「けど、どうして梨子ちゃんのところに頼んだんだ?」

「ズラ丸とルビィの家は厳しいそうだし、鞠莉の家はホテルで、果南はお店あるし……克海のところはしいたけがいるでしょう? この子が怖がったらいけないから……」

「ということで、消去法で押しつけられたんです……」

「なるほど。でも梨子ちゃん、いくら怖いからって、犬をずっとケージの中に入れてたら駄目だぞ。定期的に散歩させないとストレスが溜まってしまうんだ」

「そ、それは分かってたんですけど……」

 

 梨子が注意されていると、善子が何故か勝ち誇ったように微笑んだ。

 

「だから言ったでしょう? やっぱりライラップスはヨハネの家で預かるわ」

 

 そのひと言に強く反発する梨子。

 

「だからっ! マンションで駄目だから私に頼んできたんでしょ!? ノクターンのお世話は私がするから!」

「ちょっとくらいなら平気よ! っていうか、この子の名前はライラップスよ!」

「いいえ、ノクターンよ! 善子ちゃん!」

「だからヨハネ!」

 

 名前を巡ってぎゃあぎゃあ口喧嘩する二人に克海が苦笑い。それから口を挟んだ。

 

「いや……そもそもこの犬、元の飼い主がいるんじゃないか?」

「「え?」」

 

 虚を突かれて同時に振り向く梨子と善子。克海はしゃがみ込んで、チッチッと舌を鳴らして犬を手招きする。

 

「きゃんきゃんっ!」

 

 犬は初対面の克海にも物怖じすることなく近寄って、彼に頭を撫でられた。

 

「ほら、こんなに人間慣れしてるし、捨てられたとかじゃなさそうだ。となると、迷子になったか……。もしかして、綾香でこの子を捜してる人がいるんじゃないか?」

「そ、それは……」

 

 そんなこと、考えもしなかった……という風に口ごもる梨子と善子。

 それとともに二人は、あからさまに迷いの色を見せる。

 

「……とにかく、明日綾香の交番にでも行って、迷子の犬を捜してる人がいないか聞いてみよう」

「う、うん……」

 

 梨子たちの返事は歯切れが悪かった。その様子を見て取った克海は、少し肩をすくめた。

 

「愛着が湧くのも分かる。けど、やっぱり元の飼い主がいるなら、帰してあげるべきだ」

「……そうですよね……」

「お前も、帰る家があるなら帰りたいだろう」

「あんあんっ!」

 

 克海に喉をくすぐられ、犬は気分良さそうに鳴き声を上げた。

 

「いい子だ」

「アオ――――――――ンッ!」

「……ん?」

 

 唐突に、犬の遠吠えらしき声が聞こえて、克海は訝しげに顔を上げる。

 

「今の、この子か?」

「いいえ……」

「もっと別のところから聞こえてきたわよ……」

 

 善子たちが辺りをキョロキョロと見回した、その時、

 

「アオ――――――――ンッ!」

 

 近くの建物の屋上を蹴り、何かの影が彼らの側に飛び降りてきた!

 

「きゃあっ!?」

「何だッ!」

 

 咄嗟に警戒して梨子たちをかばう克海。いきなり現れた影は、頭部に三角形の耳を生やし、顔がごわごわの毛で覆われている。

 

「こっちも犬!?」

「いや――!」

 

 上半身は犬のようであるが、二本の足で立ち上がっている。毛の色は燃えるように赤く、その面は犬の原種たる狼に近い野性味に溢れていた。

 

「狼男!?」

 

 先日、千歌から聞いた噂話を思い出して、克海が口走った。

 狼男の正体、それは――サイボーグ獣人ウルフファイヤー!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。