いきなり目の前に出現したウルフファイヤーの威容に、克海たちはそろって仰天。
「狼男! 実在したなんて……しかもマッチョ!」
「べ、ベルセルクだわ!
自分たちの倍以上はある腕や胴の太さに目を見張る克海、善子。ウルフファイヤーはそんな彼らに対して牙を剥き出しに威嚇している。
「グルルルル……!」
「あ、あぁぁぁ……!」
「梨子っ! 気をしっかり!」
元より犬に弱い梨子は、ウルフファイヤーの面構えに恐れおののいていた。卒倒しそうな彼女を、善子が肩を抱いて励ます。
「ガルルルルッ!」
三人をにらんでいたウルフファイヤーは地を蹴り、鉤爪の生えた腕を構えて飛びかかってきた!
「こいつッ……!」
咄嗟にルーブジャイロを取り出す克海だったが、使用する前にウルフファイヤーの横殴りを食らって吹っ飛ばされる。
「うわぁぁぁッ!」
「克海さん!?」
「克海!!」
動揺する梨子と善子だが、克海に気を向けていることは出来なかった。ウルフファイヤーは倒れた彼には目もくれず、二人ににじり寄ってくるのだ。
「何でこっちを狙ってるの!? ヨハネが堕天使だから!?」
「ひぃぃぃ……!」
善子が後ずさるが、足がすくみ上がっている梨子をかばっているので、逃げ出すことが出来ないでいた。ウルフファイヤーは、二人に一体何をしようとしているのか!
「あんっ! あんあんっ!」
絶体絶命の状況下で、ウルフファイヤーに向かって吠え立てる声があった。
「ライラップス!」
「ノ、ノクターン……!?」
善子たちが連れていた犬だ。二人の正面で、ウルフファイヤーへと必死に威嚇している。
「ガルルルルッ!」
しかしそれが逆にウルフファイヤーの神経を逆撫でさせて、牙を剥き出しにして犬に飛び掛かろうとする!
「あぁっ!?」
大声を上げる善子。そして、梨子は、
「ダメぇぇぇぇ―――――――――っ!!」
「梨子!?」
勝手に身体が動き、犬を抱え上げて背にかばう。ウルフファイヤーは自然と、彼女に襲い掛かる形となり――。
「うらぁぁーッ!」
「ギャインッ!」
横から飛び込んできた功海がバットで殴りつけたことで、ウルフファイヤーが横に倒れて梨子は助かった。
「功海っ!」
「ああ、ありがとうございます……でも、どうしてここに?」
「バイブス波を検出したのさ。克兄ぃ、大丈夫か?」
「あ、ああ……」
呼び掛けられた克海がどうにか起き上がり、梨子たちの前まで回ってくる。そこで梨子の腕の中の犬に気づいた。
「梨子ちゃん、それ……」
「え? ……きゃっ!?」
「おっと!?」
我に返った梨子が反射的に犬を放したので、克海が咄嗟にキャッチして地面にそっと降ろした。
「もう、危ないわね」
「ご、ごめん……」
善子にたしなめられてつい頭を下げる梨子。事情を知らない功海はきょとんとしている。
「グルルルル……!」
そこでウルフファイヤーが起き上がったため、克海と功海が梨子たちをかばいつつにらみ合い。ウルフファイヤーも流石に二人が相手では迂闊に飛び込んではこないが、その時、
「あ、あれ見てっ! 天覆う黒影!」
善子が夜空を指差す。顔を上げると、いつの間にか彼らの頭上に円形の巨大な飛行物体が漂っていた。
「何だあれ!」
「UFOじゃん!?」
功海の言葉通りの円盤は、下部から怪光線を照射してウルフファイヤーに浴びせる。
「アオ――――――――ンッ!」
その途端、ウルフファイヤーは瞬く間に天衝くほどの身長にまで巨大化した!
「お、大きくなった!」
「フェンリル!?」
「克兄ぃ!」
「ああ……!」
改めてルーブジャイロに手を掛ける克海だが、梨子を気に掛けて振り向く。
「梨子ちゃん……怖かったら、逃げてていいんだぞ」
そう告げられた梨子だが、足元の犬に目を落とす。
「くぅ~ん……」
巨大化したウルフファイヤーに震えている犬を見て、決意を固めた。
「いいえ……行けますっ!」
「そうか……じゃあ行くぞ!」
「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」」
梨子と、善子とともに、克海と功海が変身を行う。
「「セレクト、クリスタル!」」
[ウルトラマンタロウ!]
[ウルトラマンティガ!]
「ビーチスケッチさくらうち!」
「堕天降臨!」
それぞれ火と風のクリスタルをセットして、グリップを引いていく。
[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]
[ウルトラマンブル! ウインド!!]
二人のウルトラマンが変身して飛び出していき、巨大化してウルフファイヤーと対峙した。
『『はッ!』』
「グルルルル……!」
――アイゼンテック社の飛行船が飛んでくる夜空を背景に、構えを取るロッソとブルに、牙を剥き出しにするウルフファイヤーが襲い掛かる。
『はぁッ!』
『うりゃッ!』
ロッソとブルは角からルーブスラッガーを抜いて、左右から挟み込むように斬りかかるが、
「アオ――――――――ンッ!」
ウルフファイヤーは軽々と跳躍して二人の斬撃を跳び越えた。
『何ッ!?』
『身軽な奴……! 見た目に反して……!』
攻撃をかわされてもロッソたちは即座に振り返り、ウルフファイヤーを追撃する。
「ガルルルルッ!」
だがウルフファイヤーはスラッガーをそれぞれ片腕で受け止め、膂力を込めて二人を押し返した。
『「うっ……! 力も強い……!」』
『「強敵ね……!」』
ホロボロスを思い出させる挙動とパワーに、善子のこめかみに冷や汗が流れた。
「アオ――――――――ンッ!」
ウルフファイヤーは更に、口から火炎を吐き出して遠隔攻撃してくる!
『うわッ! 熱ちッ!』
『このッ!』
かわすブル。ロッソがストライクスフィアで反撃するが、火球は火炎放射の前にかき消えてしまう。
『「押し負けたっ……!」』
『向こうの火力の方が上ってことか……!』
ロッソに代わって、ブルが手の平から風を放つ。
「『ストームフォース!!」』
火炎を吹き消し、ウルフファイヤー本体の足止めも狙うも、
「グルルルルッ!」
ウルフファイヤーは横に転がって風から逃れ、起き上がりざまにブルへダッシュ。
「アオ――――――――ンッ!」
『うわぁッ!!』
腰に組み着くとそのまま担ぎ上げ、背後に叩きつけた。
『功海ッ!』
『「善子ちゃん!」』
『「よ、ヨハネ……!」』
梨子はルーブスラッガーロッソに雷のクリスタルを嵌め込む。
[ウルトラマンエックス!]
「『ザナディウムソニック!!」』
X字の光刃を繰り出すが、ウルフファイヤーはそれを跳び越えた上に、ロッソの頭上も取る。
「ガルルルルッ!」
『ぐわッ!!』
背後へと跳び越えながらの爪の一撃をロッソの肩に入れ、痛手をもらったロッソが倒れ込んだ。
『ぐッ、強いな……!』
『二対一で、翻弄されっぱなしだぜ……!』
体勢を立て直しながらもうめくロッソとブル。強靭な筋力と、自在に跳び回る脚力を併せ持つウルフファイヤーには、数の有利はさして意味を成していない。
『なら、こっちの力を一つにするっしょ!』
『よしッ!』
ロッソたちの言葉を合図に、梨子が極クリスタルを掴み取る。
『「「セレクト、クリスタル!!」」』
[兄弟の力を一つに!]
そしてクリスタルを、善子が掲げるジャイロにセット。
『『纏うは極! 金色の宇宙!!』』
『「「サンシャイン!!」」』
二人でグリップを引いて、エネルギーを解放!
[ウルトラマンルーブ!!]
「デュワッ!」
ロッソとブルが融合して、ウルトラマンルーブへと変身を遂げた!
二人から一人になった相手に一瞬驚愕するウルフファイヤーだが、すぐに地を蹴って飛びかかっていく。
「アオ――――――――ンッ!」
「ハァッ!」
鋭い爪を振り下ろすもののルーブに片腕でガードされ、胸に手の平を当てられて押し返される。
「『ルーブコウリンロッソ!!」』
ウルフファイヤーがよろめいている隙に梨子がコウリンを握り、更に極クリスタルを「桜」の字に変化させた。
[ルーブ・ブロッサム!!]
形態変化するルーブに、ウルフファイヤーが火炎放射を仕掛ける。
「ガルルルルッ!」
それにルーブは、火に包まれたコウリンの回転する刃を押し当てることで火炎を霧散させながら接近していく。
「アウッ……!?」
「ハァァッ!」
ウルフファイヤーの口に火炎を押し込めると、ボディにコウリンの袈裟斬りを叩き込む。爆発と同時にもらって大ダメージを食らうウルフファイヤー。
「グ、グルルルル……!」
流石に危険を感じて、ルーブから必死で距離を取る。機動力を活かして、ルーブを近づかせない考えのようだ。
「『ルーブコウリンブル!!」』
だが善子が梨子と交代して、クリスタルを「天」の文字に変える。
[ルーブ・ヨハネ!!]
「オオッ!」
ルーブが風を纏って駆け出し、ウルフファイヤーに瞬く間に追いついて水平斬りを浴びせた。
「アオ――――――――ンッ!!」
最早勝機なしと判断したか、ウルフファイヤーは尻尾を巻いて逃走を図る。
[高まれ! 究極の力!!]
その時に善子が極クリスタルをコウリンにセットし、光輪を作り出していく。
「『「『ヨハネ・コウリンショット!!!!」』」』
疾風を纏う光輪が投げ飛ばされた。背を向けて逃げるウルフファイヤーは高く跳躍してかわそうとする。
だが光輪はその後をぴったりと追尾していき、ウルフファイヤーを貫いた上に円盤をも両断した。切断された怪獣と宇宙船は爆破され、破片が地面へと堕ちていった。
「シュワッ!」
敵を打ち破ったルーブは夜の空へと飛び上がって、姿を消していった。
『ぬぅッ……失敗かッ!』
『新米ウルトラマンだと、甘く見過ぎたか……!』
ウルフファイヤーの敗退を、二人の宇宙人が無人のビルの屋上から密かに見届けて悔しがっていた。
彼らはガルメス人。ウルフファイヤーと円盤を操り、梨子たちを狙った黒幕である。
『スクールアイドル……歌って踊る地球人の娘は最近のブーム。さらって売り飛ばせば金になる』
『特に人気が急上昇中のグループなら価値が高いと踏んだが……少々高望みし過ぎたか』
ガルメス人たちは一敗地に塗れながらも、野心はあきらめていない。
『仕方ない。価値は下がっても、ウルトラマンの目が届かないところの娘を狙うか』
『ああ。この町から遠く離れたところで事を……』
「そうは行かない」
いきなり、第三者の声がガルメス人たちに浴びせられた。
『誰だッ!』
二人は振り向いた先にいたのは、スーツ姿の男……現アイゼンテック社長、氷室仁である。
「こちらの領域で、勝手な真似は控えてもらおう。宇宙警備隊にでも目をつけられたら、計画が台無しだからな」
『何だぁ、お前は……。訳の分からんことを言いおって』
『たかだか地球人如きが、偉そうに……』
ガルメス人たちは氷室を脅威と見ず、余裕に構えていたが……氷室はその二人に両手の平を向ける。
『んッ!? いや! 貴様は……
「部外者には消えてもらう」
その手の平から――電撃が発せられ、ガルメス人二人を撃つ。
『ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?』
ガルメス人たちは瞬く間に焼き焦げ、灰燼に帰されてしまった。
「愚か者どもめ……。だが、いい当て馬にはなった」
一瞬で宇宙人たちを葬った氷室は、ルーブが去った空を見上げる。
「もっと光の力を磨くといい……
その氷室の頭上を、飛行船が横切っていった。
その後、肝心の犬はどうなったかと言うと……。
「へぇ~……で、その犬は結局、飼い主がいた訳だ」
「ああ。元の飼い主のところに帰されたよ」
居間で話し合う功海と克海。
犬はやはり、克海が予想した通りに迷子であった。それが発覚すると、本来の飼い主を無視して世話し続ける訳にはいかないので、ちゃんと返却されたのであった。
「けど、話に聞いた限りじゃ、ヨハネも梨子も相当愛着持ってたんだろ? 千歌の話じゃ、奇行が続いてるみてぇだし……二人は大丈夫なのか?」
「まぁ、ショックは受けてるみたいだが、こればかりはどうにもな……。その内立ち直ってくれるといいんだが……」
心配する克海たち。その時……。
「ひぃっ!」
「ん?」
「今の、梨子ちゃんの声……?」
玄関先から悲鳴のような声が響いてきたので、気になった二人は見に行く。
正面玄関の戸を開くと――犬小屋の前で、梨子がしいたけに怯えながらも、触れようと手を伸ばしている姿が目に飛び込んだ。
「梨子ちゃん……!」
「あっ、克海さん、功海さん……」
「何やってんだよ。まさか、犬嫌いを自分から克服しようと……?」
「はい……試してみようと思って。これも出会いだから……」
「出会い?」
一瞬きょとんとする克海と功海に、梨子は語る。
「私も善子ちゃんも、たまたまあの子を見つけた訳ですけど……もしかしたら、この世界には偶然ってないのかもと思ったんです。色んな人が、色んな思いを抱いて……その想いが、見えない力になって、引き寄せられて、運命のように出会う。全てに意味がある……! だから、この出会いも大事なものに変えようと思うんです!」
「運命……」
その言葉に、克海たちはルーブジャイロとの出会いを思い返した。あれも、ただの偶然の出来事だとは思えない。
「……俺たちがウルトラマンになったのも、偶然じゃないのかもな……」
「俺と克兄ぃだけじゃなく、梨子も、曜たちも……何かに引き寄せられたのか……」
「きっとそうですよ……。何かが、私たちを導いたんじゃないかって、今はそう思います……」
梨子は犬用のクッキーを手の平に載せ、しいたけに差し出す。しいたけは舌を出して、クッキーを口に運んだ。
「千歌ちゃんも……たとえどこから来たとしても、私たちと出会うべくして出会った……。そう思えば、素敵じゃないでしょうか……!」
梨子は反対側の手で、ゆっくりとしいたけの頭を撫でる――。
「そして、私たちの出会いを――未来につなげていきましょう!」
「……ああ!」
「そうだな……!」
遂にしいたけに触れた梨子に、克海も功海も自然と笑顔が綻んでいた。
『Aqoursのウルトラソングナビ!』
善子「堕天降臨! 今回紹介するのは『ウルトラマンガイア!』よ!」
善子「『ガイア』のオープニングソングであるこの歌の一番の特徴は、何と言っても独特な歌詞ね。あくまでヒーローであり個人であるウルトラマン、それを欲しいと力いっぱいに叫ぶなんてのは、並みの発想じゃ出てこないでしょうね」
善子「この歌詞はウルトラマンをただのヒーローではなく、勇気の象徴として捉えてると言えるわね。それを得ることで、どんなことが起きようとも立ち向かっていける……そんな思いが込められてると言えるんじゃないかしら?」
善子「ドラマ本編も、それまでのシリーズになかった要素がいくつも取り入れられた、意欲的な作品だったら。何事にも挑戦する姿勢は、いつの時代にも大事なものね!」
克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『MY舞☆TONIGHT』だ!」
功海「テレビ第二期第三話の挿入歌で、アイドルものには珍しい和ロックだぜ! 劇中ではAqoursの歌は千歌と梨子が手掛けてる設定だが、これは一年生組と三年生組が作ったものなんだ!」
克海「一年生組と三年生組は歳が離れてるからか、初めは折り合いが上手く行かなかったが、それがひと晩の体験を元に一つに纏まっていく。その結果がこの歌という、なかなか感慨深い一曲だ」
善子「それでは次回で、堕天しましょう?」
花丸「ハッピーハロウィン! ずら! マルたちは不思議な仮装の人に誘われて、森の奥のハロウィンパーティに参加したずら」
ダイヤ「ですがその方たちは、本物の宇宙人!? どうやら普通のパーティにはなりそうにありませんわね……!」
花丸「またまた大変なことになりそうな予感ずら……」
ダイヤ「次回、『HAPPY PARTY FRIENDS』!」
花丸「お花ーまるっ!」