\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/「ヨーソロー!」
曜「浦の星の統廃合が確定しても、ラブライブ優勝目指して最後まで頑張ることを決めた千歌ちゃん! それはそれとして不思議なハロウィンパーティーに参加したけど、宇宙人が大暴れでもう大変! でも本当に大変なのはその後だった。アイゼンテックがいきなり――地球爆破を宣言したの!!」
『その作戦の実施の結果、地球は跡形もなく爆散します』
――アイゼンテック社の氷室社長が発表した突然の地球爆破宣言に、社会は騒然としています。
(アルトアルベロタワー前に群がる、氷室の辞任を要求するデモ隊)
これを受け、株式市場は乱高下を繰り返し、先行きへの不安が広がっています。街の声も様々です。
(街頭インタビュー)
――地球爆破宣言についてどう思いますか?
(会社員)『ひどいですよね!』
(会社役員)『お陰でさ、アイゼンテックの株が紙屑同然だよ』
(主婦)『いわゆる炎上商法って奴なんじゃないですか?』
(バド星人)『地球も大変だねぇ。こないだ、そこの惑星も爆発してたよ』
(大学生)『SNSで、シェルターにかくまってくれる人を見つけて……』
(ナックル星人)『地球が消滅する前に、子供たちと観光に行こうかなって』
(女子高生)『たとえ世界がどうなろうとも、私は……私たちAqoursは、歌い続けます! 浦の星が存在した証拠を、最後の一瞬まで刻み込むために!!』
(マイクを奪って熱弁する女子高生を、二人の青年がなだめる)
――地球爆破の影響が広がっています。CMの後は、『宇宙移民問題について考える』です。
(ナレーター:ピット星人)
(『突撃!隣の銀河系』「実行の日迫る! 渦中の惑星 地球の住民たちは」より)
『四つ角』の居間にて、曜が神妙に語る。
「……私たちはこれまでずっと、浦女を存続させようと努力して、それに失敗しても、浦女の名前をラブライブの歴史に残そうと決意して、ずーっと頑張ってきた。――けれど……その必要はなかったんだね……。だって……」
後頭部に手をやり、明るく笑う。
「ラブライブ本選を待たずに、地球が木っ端微塵になってなくなっちゃうんだもん! いや~参った参った!」
「ほんとずらね~!」
「こんなことになるなんて、ルビィ全然思わなかったよ~!」
「これは一本取られたデース!」
わはははは! とわずかの間に盛り上がると、急激に静まり返り――。
「なんて笑いごとじゃないよ―――――う!! 嘘でしょ!? 地球を爆破するって!!」
「たたた大変ずら―――――! は、早く避難するずらっ!!」
「どこに逃げればいいの花丸ちゃん!?」
「Oh My God!! Oh My Goooood!!!!」
「落ち着きなさいまし! 狼狽し過ぎですわ、皆さん!!」
ドタバタとパニックになる曜たちを、ダイヤが一喝した。
「で、でもダイヤさん! パニックになるなってのが無理だよこれは! 地球そのものが吹っ飛ぶんだよ!? もう学校がどうとかってレベルじゃないよ!」
「気持ちは分かりますけれど……! だから今、克海さんがおば様にお話しをお聞きになっているところですわ。少し静かになさって下さい」
ダイヤが視線で指した居間の隅で、克海がアイゼンテック社にいる母親に電話を掛けていた。
『あれが本気かどうかなんて、聞きたいのはこっちよ! 私たちだってびっくりしたわ。何も聞かされてなかったんだもの』
「そうなんだ……。で、肝心の氷室社長はどうしてるの?」
『それが、あれから社長室に籠もりっぱなしで……一向に顔を見せてくれないのよね。連絡事項は全部ウッチェリーナ経由で……。全く、何を考えてるのかしら……こんなに世間を混乱させて、会社の株まで暴落させて。お陰でこっちはてんてこ舞い……!』
はぁぁ、と受話器越しに重いため息を吐き出す母親。
『あんな冗談を言う人じゃないんだけどねぇ。……と言うか、あの人のことはほとんど知らないんだけど。昔から、自分のことは全然話さない人だから……。ああ、ごめんね克海。そろそろ、クレーム処理に戻らないといけないから……』
「うん……ごめんな母さん、忙しいところ邪魔して。ありがとう」
多忙そうな母親を気遣って通話を終えた克海が、皆に向き直った。
「あの宣言が本気かどうかは、母さんたちも知らないみたいだ。あれは完全に氷室社長の独断だったらしい」
「この際、本気でも冗談でもどっちでもいいよ。問題は、マジで地球を吹っ飛ばせるかってとこだ」
功海のひと言に、善子が引きつった笑みを浮かべつつ手を振った。
「い、いくら何でも、矮小な人の身で終末の喇叭を鳴らすなんてこと、出来る訳ないじゃない……」
「……そうとも限らないんじゃないかな……」
果南が、極めて真剣な面持ちで反論。
「アイゼンテック社は、怪獣拘束システムなんて代物、秘密裡に用意してたとこだよ。それに、元々は宇宙人が社長やってたような会社だし……どんなオーバーテクノロジーを備えてるものか……」
「だ、だからって地球破壊するなんて……そもそも自分はどうするつもりなのよ……」
「そこまでは分からないけど……」
「千歌ちゃんはどう思う? ……千歌ちゃん?」
梨子が振り向くと……千歌は皆の輪の中から外れて、テレビのチャンネルを頻りに切り替えていた。
「あれぇ? おかしいなぁ……」
「おい何やってんだよ千歌、こんな非常時に」
功海がリモコンを取り上げると、千歌は首をひねりながら返答する。
「この間、テレビのインタビューに答えたでしょ? だけど、どの局もやってないの。今日のこの時間って、ちゃんと聞いたんだけど……」
「どうせカットされたんだよ。Aqoursや浦の星の名前出しちゃってたからな」
肩をすくめる克海。功海は皆を見回して問いかける。
「それより知ってるか? あれから未確認飛行物体の目撃情報が急増してるって」
「それって、地球のこの騒動を見に、宇宙人の野次馬が集まってるんじゃないかしら?」
「それか、AqoursのCDを買いに来てるんだよ! ここ最近で売り上げすっごい上がってるし!」
「まさか。そんな俗な目的で、はるばる宇宙の果てから飛んでくるはずがありませんわ」
鞠莉と千歌の推測に、ダイヤが呆れて肩をすくめた。
ところ変わって、ここはテレビ局の放送スタジオ。
ただし――地球人のものではない、宇宙人による宇宙放送用の局である。
『インパクト足りないでしょ! 爆破宣言で一番注目されてる星じゃん?』
『ですよねー……』
立体映像を飛ばして叱っているのは、プロデューサーのチブル星人。それにヘコヘコ頭を下げているのは、メフィラス星人ディレクターとザラブ星人ADである。
『侵略なんて飽きてるくせに、消滅するって聞いた途端、宇宙から大勢観光に来てますからねぇ』
『今の地球は視聴率取れるよねぇ! そういうことだから、後はいい感じによろしくね』
そう言い残して、チブル星人の立体映像が消える。その途端にメフィラス星人はドカッと椅子に腰を落として、ぶつくさ愚痴をこぼした。
『はぁ……偉そうなこと言っといて、結局丸投げだよ! 現場知らないと気楽でいいよなぁ。もう氷室社長本人に取材するしかないぞ』
『でも氷室社長は、マスコミどころか自社の社員にすら面会してないそうですよ』
『だったらどうするってんだよ!』
バシッ、とザラブ星人の頭をはたくメフィラス星人。
『いてッ!』
『出来ませんがこの業界で通るか! そこから先を考えるのが仕事ってもんだろ!? ボケッとしてないで、何か案出せ!』
『そう言われましても……』
先日の街頭インタビューの映像を再確認するザラブ星人が、ある顔に目を留めた。
『あれ? この子……スクールアイドルの高海千歌ちゃんじゃないですか!』
『何!? あのAqoursのかッ!』
メフィラス星人も画面に飛びついてきた。
『四年前、宇宙人バイヤーが発信したスクールアイドルグループ、μ'sの楽曲が宇宙中でスマッシュヒット。以来、宇宙では地球人アイドルブームが巻き起こってる。バド星では、一枚のスノハレのCDをきっかけに、革命が起きたとか……!』
『Aqoursは最近だと一番注目度が高いグループですね。何でも、この星のウルトラマンの仲間でもあるそうで』
『おい、それを早く言えよッ!』
再びザラブ星人の頭がはたかれる。
『痛ッ!』
『それだよ、視聴者が求めてるのは! ウルトラマンはいつの時代でも話題の的だ。それと共にあるシンデレラたちが、地球爆破で宇宙に散っていく……。その悲しみが、視聴者の共感を呼ぶんだよ! よし、これで行くぞ!』
番組内容を決定したメフィラス星人が、ザラブ星人に指を突きつける。
『Aqoursの密着取材だ! ウルトラマンの仲間って部分も含めてな! お前は過去の活動洗って、情報集めてこいッ!』
『えッ、今からですか!?』
『当たり前だろッ! ほら、さっさと行けっての!』
メフィラス星人はバシバシ頭を叩いて、ザラブ星人を情報収集に押し出していった。
「はーい! それじゃあ高海千歌さん、いつも通りにお願いしまーす!」
「分かりましたっ!」
後日、メフィラス星人たちは地球人に化け、『四つ角』で千歌の登校風景を撮影していた。
玄関の前で宇宙カメラを回しているメフィラス星人たちに、克海が怪訝な目を向ける。
「何だ? 朝っぱらから、この騒ぎは……」
「千歌たちに、テレビの密着取材の依頼が来たんだってさ、克兄ぃ」
功海が事情を説明する。
「密着取材……? 予選突破直後でも、本選直前でもない、こんな半端な時期にか?」
「まぁテレビだし、色々と都合があるんじゃね? ともかく、全国放送に浦女が流れるから、千歌張り切ってんだぜ。ほらあの通りに」
「行ってきまぁぁ―――すっ!!」
ぴょーんっ! と走り幅跳びのように玄関から飛び出した千歌。
「……いや、いつも通りの登校でお願いします」
「えぇ~? いつもこんな感じですよぉ。普段が元気ないんです」
千歌が無茶を唱えている一方で、功海のスマホがバイブス波検知のアラートを鳴らし、功海と克海が確認する。
「すげぇバイブス波が、近くから……!」
「近く!? もっと詳しく分からないか……?」
穏やかでない報せに、思わず辺りを見回しながら克海が聞き返した。功海はスマホを操作して、バイブス波発信源を絞り込む。
「ほんとにいつもこうやって家出てるんですって! ねぇしいたけ」
「わふ……」
その結果――発信源は、メフィラス星人たちの宇宙カメラだということを突き止めた。
「あのカメラからだぜ……!」
「カメラ……? 変な形だけど……」
奇妙な結果に、克海が眉間を寄せた。
スタジオでの編集作業中に、メフィラス星人とザラブ星人はウルトラマンロッソとブルに接触した宇宙人へのインタビュー映像を見返す。
(GDL星人)『ええ、確かに……。高海千歌の兄二人は間違いなくウルトラマンです。つまり、高海千歌、あの子は……ウルトラマン妹という訳なんですよ』
顔にモザイクが掛かっている、手がハサミの白い宇宙人のインタビューを見て、ザラブ星人が顔を上げる。
『この星のウルトラマンが高海千歌ちゃんの二人の兄で、Aqoursの八人はウルトラマンと一緒になって戦ってる、って、ここまでの情報を纏めるとそうなりますね』
『ほほーう。かの765プロの再来のようだな。これはますます視聴率に期待できるぞ!』
期待に胸を躍らせるメフィラス星人が、ザラブ星人に尋ねる。
『で、高海千歌にはどんな特殊能力が?』
『ありません』
『は?』
『それらしい力を発揮したって情報は、確認できませんでしたねー』
『この馬鹿ッ!』
バシィッ! と強めにザラブ星人の頭をはたくメフィラス星人。
『いったッ!』
『ウルトラマンの妹でだよ? チームメイト全員がウルトラマンの仲間で! それで何もなしって訳ないだろ!』
『けど、実際に……』
『高海千歌には、そりゃあもうすごい力が隠されてるんだ! あんまりにもすごいんで、滅多なことじゃ見せないんだよ! そうに決まってる!』
『そうでしょうか……?』
半信半疑のザラブ星人とは違い、メフィラス星人はすっかりその気になっている。
『俺たちの番組も、視聴率低迷が続いて打ち切りの瀬戸際なんだ! こんくらいのでかい花火を一発打ち上げれば、首もつながる! 高海千歌を俺たちで、この明日なき世界の新たなヒーローにするんだッ!!』
夕刻、千歌が『四つ角』に帰宅してくる。
「たっだいまー」
「高海さーん!」
そこに、メフィラス星人が化けているディレクターが走ってきた。
「ディレクターさん!? どうしたんですか? そんな急いで……」
「それが、例の地球爆破計画! 爆弾の場所が分かったんですよ!」
「えぇーっ!?」
「しーッ! 声が大きいですよ!」
思わず大声を出した千歌を静かにさせるメフィラス星人。
「解除できれば、地球は救われます!」
「で、でも、いきなりそんなこと言われても……まずは、お兄ちゃんたちに相談して……」
「そんなことしてる余裕はありませんよ!」
「え?」
メフィラス星人が小型のモニターを千歌に見せる。そこに映っているのは、
『緊急告知!』
十字架に磔にされた曜の姿であった!
「よ、曜ちゃん!?」
同時に、町外れの工場へのルートも表示される。
「早く行かないと、お友達の命がありませんよ……!」
「た……大変だぁ――――――っ!!」
冷静に考えれば、あまりにも怪しい状況であるが、取り乱した千歌は勢いのままに駆け出していった。
その後に、玄関から克海が顔を覗かせた。
「千歌? 帰ってないのか? 変だな……さっき、声が聞こえたんだが……」
「克兄ぃ、大変だ!」
首を傾げていると、功海がノートパソコンを抱えながら飛んできた。
「この前のバイブス波が気になって、電波拾ってたんだけど……その中に、こんな映像が!」
『果たして、高海千歌は地球を救えるのか!』
画面に映っているのは、たった今生中継されている、千歌が工場に向かって必死に走っていく姿……メフィラス星人たちの宇宙テレビ番組の映像であった。
「そういうことか……。あいつら、宇宙人だったんだ」
「千歌のこと、見世物にしやがって……」
静かにいら立つ功海と克海だが、切り替わった映像に目の色を変える。
『そして、渡辺曜の運命はッ!』
「曜!?」
「何で捕まって……! 急ぐぞ、功海ッ!」
「ああッ!」
「待ってろよ、千歌!!」
二人もすぐに飛び出していこうとするが、その前に梨子がやって来る。
「克海さん、功海さん? 千歌ちゃん、帰ってないんですか? 今日は、この前の取材の番組をみんなで見ようって……」
「それどころじゃないんだ!」
「今、曜の奴が人質にされてて……!」
「何なにー? 私がどうかしたの?」
梨子の後から、曜がひょっこりと顔を出した。
「「あれ?」」
克海も功海も、思い切り面食らった。