ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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元気全開アイゼンテック(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

梨子「千歌ちゃんが転校生をスカウトする一方、克海さんと功海さんはウルトラマンのあり方について喧嘩してしまう。そんな時、内浦に新しい怪獣が出現! 二人は変身に曜ちゃんを巻き込むひと幕がありながらも怪獣を撃破! そして、新たな事件が……」

 

 

 

 綾香。静岡県綾香市の中心地であるが、かつては偶龍璽王伝説が伝わっているだけでこれといった見所のない極々普通の市街地であったが、十五年前にアイゼンテック社の本社が移転してからは、その恩恵により急速に発展。今ではすっかりアイゼンテックの企業城下町の様相を成している。

 

「へぇ~、ここがアイゼンテック本社ビルかぁ」

「何だかんだでここに来るのは初めてだな」

 

 そして功海と克海は今、そのアイゼンテック本社前に来ていた。

 事の発端は、兄弟たちが所有するルーブクリスタルをひと目見た母親が、アイゼンテック社長の愛染正義が同じようなものを持っていたのを見たと発言したこと。ウルトラマンの名前を言い当てたことと言い、愛染はウルトラマンについて何かを知っているのではないかと考えた兄弟は、母親に頼んで愛染とのアポイントを取ってもらったのであった。

 

「それはいいんだが……何で千歌たちが俺たちについてきてるんだ?」

「すっごいね、アイゼンテック本社って! 何かアンテナみたいなのが立ってる!」

「正式名称は、アルトアルベロタワーっていうらしいよ」

 

 克海がチラリと目を横に向けると、そこではアイゼンテック社パンフレットを広げた千歌と曜がはしゃいでいた。二人と一緒にいる梨子は克海にペコペコ頭を下げる。

 

「ごめんなさい。お邪魔しちゃって……」

「ああいや、邪魔って訳じゃないけど……。ただ、どうしてかってだけで」

「も~、忘れちゃったの克海お兄ちゃん?」

 

 ぷくっと頬を膨らませた千歌が克海に告げる。

 

「言ったじゃない、私たちがスクールアイドル部始めるためには、ライブで体育館をお客さんで満員にしなくちゃいけないんだよ!」

「ああ、そういやそんなこと言ってたな……」

 

 千歌たちは千歌たちで、新しい試練にぶつかっていた。未だ定員の足りないスクールアイドル部(仮)だが、突然やってきた浦女の新理事長が部の設立を許可してくれたのだ。ただし条件があり、浦女の体育館でデビューライブを開催し、そこを観客で満員に出来なければスクールアイドルをあきらめることとなったのであった。

 しかし今の浦女は全校生徒を集めても体育館を埋めるには到底足りない。そのため千歌たち三人は何としても満員にすべく、様々な手を打って観客を集めているところなのであった。

 

「愛染さんってアイドル養成校の理事長もやってるでしょ? そこの会社の人たちもきっとスクールアイドルに興味あるはず! それでアイゼンテックの人たちにチラシ配ることにしたの!」

「アイゼンテックなら人いっぱいいるしね!」

「そんな上手く行くもんか?」

 

 期待いっぱいの千歌と曜に対し、克海は半信半疑であった。

 

「ところで、みんなのグループ名ってもう決まってんのか?」

 

 ふと功海が質問すると、千歌が胸を張って答える。

 

「うん! Aqoursと書いて、『アクア』!」

 

 それを聞いた途端、克海の肩がピクリと震えた。

 

「へぇ? aquaとoursを掛けたのか? 洒落た名前思いつくじゃん。誰が考えたんだ?」

 

 と聞くと、梨子が訝しげに眉をひそめた。

 

「それが、分からないんです」

「は? 分からない? 自分たちで考えたんじゃないのか?」

「浜辺で考えてたんですけど、いつの間にかこの名前が書いてあって。それを千歌ちゃんが採用したんです」

「おいおい……そんな怪しい名前にしちゃっていいのかよ。って克兄ぃ、そんな顔してどうしたんだ?」

 

 功海が振り向くと、克海が妙に真剣な表情をしているのに気づいた。

 

「いや、ちょっとな……」

「功兄ぃ、もうアポの時間じゃない? 遅れたら印象悪くなっちゃうよ!」

「いっけね! 立ち話してる場合じゃなかったな。みんな行こうぜ!」

「おぉー!」

「っておい……! 置いていくなよ!」

 

 功海たちがアイゼンテック・アルトアルベロタワーのエントランスに突撃していくのを追いかける克海。最後に梨子が、克海のおかしな様子に首を傾げながらも社内に足を踏み入れていった。

 その様子を見下ろすように、綾香上空をアイゼンテックの飛行船が巡回していた。

 

 

 

『元気全開アイゼンテック』

 

 

 

「あら克海たち、本当に来たのね」

「お母さん、お邪魔しまーす!」

 

 受付でアポイントを確認してもらうと、愛染より先に高海家の母がやってきた。千歌は元気よく母親に挨拶する。

 

「母さん、愛染さんは?」

 

 功海が周りをキョロキョロしながら尋ねると、母に代わって受付嬢が回答した。

 

「社長はただ今、飛んで参ります」

「飛んで参ります?」

 

 およそ聞き慣れない案内にキョトンとする克海たち。その直後、

 

「ハ―――ハッハッハッ!」

 

 上から異様なテンションの高笑いが響いてきた。思わず見上げると、吹き抜けから見える空より、白いスーツの男が飛行装置を使って降下してくるところであった。受付嬢は旗とホイッスルで彼の着陸を誘導する。

 

「ホントに飛んできた!」

「すごーい!」

「本物だ! すげー!」

 

 克海と梨子は唖然としたが、千歌たちは大興奮であった。

 

「仕事の後の空は気持ちいいな~! そう、私が愛染正義です!」

 

 受付嬢に飛行装置とヘルメットを渡した白いスーツの男が振り返り、見得を切った。この人物こそが、アイゼンテック社社長の愛染正義である。

 

「おッ、ティンと来た!」

 

 克海と梨子が反応に困っていると、愛染は急に懐から短冊を取り出し、筆でサラサラと文章を書き上げた。

 

「『一難去ったら全身で翔ばたけ』! ウッチェリーナ君、これ私の格言集に加えてくれ」

[はい、社長!]

 

 どこからともなくひよこ色のドローンが飛んできて言葉を発したので、梨子たちは仰天する。

 

「また何か飛んできた!」

「愛染社長のAI秘書のウッチェリーナよ」

「AIが秘書なんてすごい! 流石アイゼンテックの社長さん!」

 

 高海母の説明に、千歌たちはますます興奮。高海母は愛染に、克海たちを紹介しようとする。

 

「社長、こちらは面会に来た」

「おーおー! 我がアイゼンテックへようこそぉー!!」

 

 しかし愛染は最後まで聞かずに克海たちに近寄っていく。

 

「もちろん知ってるとも~! 高海君、君からよーく話を聞いたからね~! 高海君の子供の……んー……ここまで出てるんだけどね~」

 

 自分の喉を指した愛染の態度から察した克海が自ら名乗り出る。

 

「長男の高海克海です!」

「あ、愛染さん、俺は……」

「弟の功海です!」

 

 功海は憧れの愛染を前にして上手くしゃべれなかったので、克海が代わりに名乗った。

 

「そーそー! 会えて光栄だよ~! 高海君の自慢の息子さん諸君!!」

 

 二人に腕を回して大仰に抱き着いた愛染は、次いで千歌たちに目を向けた。

 

「こちらのお嬢さんたちは?」

 

 克海と功海は千歌たちを前に出して紹介した。

 

「妹の千歌と、その友達の渡辺曜ちゃんと桜内梨子ちゃんです!」

「私たち、スクールアイドル『Aqours』やってます! よろしくお願いします!」

 

 ペコリとお辞儀する千歌たちAqours。すると、愛染は一歩引いて高海母に尋ねかけた。

 

「高海君、キミ娘さんいたの?」

「あれ? 言ってませんでしたか?」

「言ってないよ~! 水臭いなぁもう~! いやぁ、スクールアイドルやってるとは素晴らしいねぇ! よろしく……!」

 

 千歌たちと握手しようと手を差しのべた愛染だったが、その瞬間何かが降ってきて彼の頭頂にぶつかり、ばったりと昏倒した。

 

「あ、愛染さん!?」

「大丈夫ですかぁー!?」

 

 突然のことに騒然とする功海たち。克海は、愛染にぶつかったものを拾い上げる。鳥の形の石像だった。

 

「石の鳥……?」

「何でこんなものが空から……」

 

 梨子と訝しむが、愛染はすぐに起き上がって何事もなかったかのようにスーツを正した。

 

「なぁ~に、私のことは心配ご無用! じゃあ行こうか! アイゼンテックを案内してあげようッ!」

「ホントですか!? ありがとうございまーす!」

「あッ、ちょっと……!」

 

 功海たちが愛染について行ってしまうので、克海と梨子は慌てて追いかけていった。

 

 

 

 愛染は克海たちを連れてアイゼンテック社内を回りながら、すれ違う社員たちに声を掛けていく。

 

「小島君、髪切ったね? う~ん素敵だぁ~! あ~豊竹君、来週娘さんが誕生日だったね。美味しいジェラートを贈っておくよぉッ! おお大杉君、こないだの寿司美味しかったね。今度は釣り行きましょうよねッ!」

 

 社員一人一人に声を掛ける愛染の姿に功海は感動を覚える。

 

「さっすが愛染さん、すげぇ気さくだなぁ」

「お忙しいでしょうに時間取らせちゃって、申し訳ないです」

「全然構わないよ~! 愛と正義のアイゼンテックはね、いつだって未来を夢見る若者たちの支援に惜しみない! ラブライブ出資だって、愛と正義の精神を全国に伝えるために……」

「あっ! この写真何ですか?」

 

 愛染が話している途中で、千歌が通路の壁に飾ってある写真の前で立ち止まった。

 古ぼけた白黒写真を拡大したもので、「愛染鉄工」という表札の小さな工場の前で作業着の男性たちが横一列に並んでいる。

 

「おお~。これは創業者である父と、その会社、アイゼンテックの前身の愛染鉄工だよ」

「へぇ~! こんな小さな会社だったんだ」

 

 今の大企業ぶりとの違いに驚く功海。

 

「この頃はまだ小さな町工場だったんだ。それを私の代で事業拡大し、綾香市にやってきたんだよね」

 

 その時のことを懐かしむかのようにしみじみ語る愛染。

 

「ここまで会社を育てるのは実に大変だった。困難なことの連続だったよぉ。けど私たちは一つのスローガンの下に励み、あきらめずに努力し続けた。今でもそのスローガンは大事な社訓だ。アイゼンテック、ファイトぉーッ!」

「あっ!」

 

 そのフレーズに千歌が反応し、いたく興味を引かれた。

 

「それって穂乃果ちゃんの決め台詞から来てるんですよね! 流石スクールアイドル学校の理事長さんですっ!」

「え? ああ、うん」

 

 愛染のそっけない返事に、梨子は一瞬首をひねった。

 

「千歌ちゃん、そろそろ私たちの用事を……」

「あっ、そうだった!」

 

 曜が千歌に囁きかけると、自分たちの用件を思い出した千歌は手作りのチラシを差し出しながら愛染に申し出た。

 

「愛染さん、実は私たち、今度の日曜日にデビューライブするんです!」

「へぇ? それはめでたい話だ!」

「よかったら愛染さんも来て下さい! チラシも、アイゼンテックの人たちに配ってきていいでしょうか!」

「こら千歌、そんな不躾に……」

 

 克海がたしなめようとしたが、チラシを受け取った愛染が許可を出す。

 

「いいんだよぉ~! 私は希望を抱くアイドルの卵の味方だからねぇ! そんなことでいいのなら、いくらでも構わないよぉッ!」

「やったぁ! ありがとうございます、愛染さん!」

 

 快諾に千歌たちは喜び、曜と梨子が克海たちと愛染にお辞儀した。

 

「それじゃ、私たちはこれで。また後でね、功兄ぃ克兄ぃ!」

「愛染さん、私たちはこれで失礼します」

「うむ、頑張ってくれたまえ!」

「曜ちゃん梨子ちゃん、早く行こう! アイゼンテックの社員さんみんなに宣伝しよう!」

「ああ、待ってよ千歌ちゃん!」

 

 意気揚々とチラシ配りに行く千歌たち三人の後ろ姿を、ウッチェリーナが見送って独白した。

 

[あの子たち、とても仲がよさそうねぇ。とってもいいわぁ……隠れたところではもっと仲睦まじいことしてるんじゃないかしら。たとえば……ああん、そんなっ! ダメよウッチェリーナ! あんな無垢な子たちでそんなこと考えちゃうなんて!!]

「ど、どうしたんだ……?」

 

 突然ウッチェリーナが一人で声を荒げ出したので面食らう克海。愛染はそれに何でもないことのように告げた。

 

「気にしないでくれたまえ。ウッチェリーナ君には妄想癖があるだけなんだねぇ」

「AIが妄想……?」

「すっげぇ技術! やっぱアイゼンテックは進歩してるな~!」

 

 克海はそれが何の役に立つのかと呆気にとられたが、功海は素直に感心した。

 千歌たちを見送ると、愛染は兄弟たちの方に向き直る。

 

「さてでは、私たちも本題に入ろうか。君たちの用件は何だい? 遊びに来たんじゃないんだろう?」

 

 問われると克海たちはたたずまいを直して、話を切り出した。

 

「実は……こういう形のもの、見覚えありませんか?」

 

 功海と克海がルーブクリスタルの形を写したスケッチを愛染に見せると、愛染は頻りにうなずいた。

 

「あぁ~、これかぁ。よろしい、社長室に案内しよう」

 

 そう言って、愛染は兄弟をアルトアルベロタワー最上階、展望室となっている社長室に連れていった。

 

 

 

「私たち、新しいスクールアイドルAqoursです!」

「日曜日にライブやります! 是非来て下さい!」

「よろしくお願いします!」

 

 千歌、曜、梨子のAqours三人はアイゼンテック社内を回りながら、出会う社員たち一人一人にチラシを渡して宣伝していった。その内の女性社員が強く興味を示す。

 

「へぇ~、スクールアイドルね。社長が好きな奴。私の妹もやってるのよ!」

 

 チラシを渡した曜が彼女と話を交わす。

 

「そうなんですか? その子はどこの学校ですか?」

「社長の経営するとこ。アイゼンアイドルスクールよ。この子なんだけど」

 

 懐から一枚の写真を取り出す社員。それには、ロングヘアを金色に染めた美少女が写っていた。

 

「へ~、お洒落でかわいい子ですね!」

「ありがと。社長も妹のことを高く評価してくれたみたいで、新しい特待生コースに勧誘してくれたって言ってたわ。ラブライブにエントリーするのなら、あなたたちとはライバルになるかもね」

「その時はいい勝負できるように頑張ります!」

 

 手を振り合いながら女性社員と別れると、チラシを配り切った梨子と合流した。

 

「曜ちゃん、そっちは配り終わった?」

「うん。千歌ちゃんは?」

「終わったみたいけど、何かパワードギアとかいうのの試着をやらせてもらってるわ。しばらくはあれに夢中そう……」

 

 やれやれと肩をすくめる梨子。曜も苦笑を浮かべた。

 

「克海さんと功海さんの方は?」

「愛染さんと上の階に行ってたけど。向こうもそろそろお話し終わったんじゃないかな?」

 

 と話していたら、噂をすれば影と言うべきか、克海と功海が二人の元に戻ってきた。

 

「曜ちゃん、桜内さん、ここだったか」

「千歌の奴は?」

「千歌ちゃんはもうちょっと掛かりそうです……」

「それで功兄ぃ、克兄ぃ……」

 

 曜は声を潜めると、周囲に耳がないことを確認してから、兄弟に尋ねかけた。

 

「愛染さんから何聞いたの? 聞いてきたんでしょ? ……ウルトラマンのこと」

 

 ウルトラマンの名前を出すと、梨子も緊張の面持ちとなった。克海と功海も神妙な顔で、曜たちに告げる。

 

「ウルトラマンのことが直接分かったって訳じゃないが……」

「愛染さんが、妖奇星の伝説を調べてたってことは話してもらったぜ」

「そうだったんだ……!」

 

 兄弟は愛染から伺った話を、二人に説明した。

 まず、綾香の土地に1300年前に落下した妖奇星の伝説だが、一般的には隕石ということになっているものの、愛染は別の仮説を立てていた。それは、妖奇星の正体が争いながら地球に落下してきた三つの巨大生命体だというもの。その二つが光の巨人、ウルトラマンであり、もう一つの戦っていた相手が、グルジオの正体である怪獣。

 

「妖奇星の正体が巨大生物……。突拍子のない話みたいですけど……」

「俺も以前までだったら、全然信じなかっただろうけどな……」

 

 腕を組む克海。愛染の仮説は、兄弟が幻視したウルトラマンと怪獣の様子に一致していた。

 そして二人のウルトラマンは落下の際の衝撃で無数のクリスタルとなって飛び散った。それが正しければ、兄弟が持っている二つのクリスタルはその一部ということになる。

 

「ってことは、ウルトラマンのクリスタルって他にもたくさんあるってこと?」

「そうなるな。愛染さん、あくまで研究してただけで、実物は持ってないって言ってたけど……」

 

 曜の質問に功海が答えていると、四人の視界の端に奇妙なものが映った。

 

「? 何だ、あれ……」

 

 窓から見える綾香の風景の晴天に、不自然な稲妻が走ったのだ。その稲妻の中心に、空間の穴とでもいうべきものが開き、中から蛇の化け物のような巨大怪獣が出現。真下のビルを踏み潰して地上に降り立った!

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

「あれは!?」

「また怪獣!?」

 

 梨子が焦った声を上げると、アイゼンテック社内にアラートとウッチェリーナの放送が流れた。

 

[危険です! 巨大生物が急接近しています! 直ちに地下シェルターへ避難して下さい!]

 

 突如綾香の中心に出現した巨大怪獣ガーゴルゴンは、立ち並ぶビルを薙ぎ倒しながら一直線にアルトアルベロタワーに向かって進撃し始めた!

 

「やばッ!」

「みんな、急ごう!」

 

 アイゼンテックの社員たちが血相を抱えて一階へ走っていく中、克海と功海も梨子と曜を連れて避難していく。

 が、階段で二階まで下りてきたところで、克海たちは足を止めて梨子と曜に振り向いた。

 

「二人はシェルターに避難してくれ。千歌ももうそっちに行ってるはずだ。功海、行くぞ!」

「了解だ、克兄ぃ!」

 

 克海と功海はシェルターとは別方向に向かっていこうとする。その背中を、曜が呼び止めた。

 

「待ってよ功兄ぃ克兄ぃ! 怪獣と戦うつもりでしょ!」

「そうだ! だから曜ちゃんたちは安全なところに……」

「だったら、私も連れてって!」

「曜ちゃん!?」

 

 曜の突然の言葉に梨子たちは仰天した。

 

「何言ってるの!? すごく危ないことよそれ!」

「功兄ぃたちはその危ないことをしに行くんだよ! 心配なんだって!」

 

 止めに掛かった梨子に反論すると、曜は克海と功海に訴えかける。

 

「私も力を貸すよ! 私がいれば、功兄ぃ何かパワーアップするんでしょ!?」

「確かにそうだったな……。よーしじゃあ……!」

「馬鹿言うな功海ッ! 駄目だ!」

 

 一瞬うなずきかけた功海だが、すぐに克海が咎めた。

 

「曜ちゃん、気持ちは嬉しいがこれは俺たちだけが背負うべき責任だ。君まで危険な目に遭わせる訳にはいかない」

「でも……!」

「大丈夫だ、俺たちは必ず勝って帰ってくるから。功海もいいな?」

「……ああ、分かったよ克兄ぃ。曜、ありがとな」

 

 克海は考え直した功海を連れて、今度こそ迫り来るガーゴルゴンの方向へと走っていった。

 

「あっ……!」

「曜ちゃん、行こう……! 千歌ちゃんが待ってるはずだよ……」

 

 一瞬二人に手を伸ばしかけた曜だったが、梨子に腕を掴まれ、後ろ髪を引かれながらもシェルターの方向に踵を返したのだった。

 

 

 

 地下シェルターの入り口前には愛染が立ち、腕を振って社員たちを中へと誘導していた。

 

「こっちこっち! 押さないようにね! 大丈夫、シェルターはみんな入れるから!」

 

 人の波が途切れてきたところで、愛染は最後に走ってきた眼鏡の男社員に問いかける。

 

「氷室(ひむろ)君、これで全員かな?」

「社員はそうですが、高海さんのご子息二名と娘さんのご友人がまだです」

「何と!?」

 

 愛染と氷室の傍らでは、千歌がハラハラとした表情で梨子たちを待っていた。

 と、そこに梨子と曜の二人が駆けてきたので反射的に飛び跳ねた。

 

「梨子ちゃん、曜ちゃん! こっちこっちー! ……あれ? お兄ちゃんたちは?」

「功兄ぃと克兄ぃは……その、行くところがあるって!」

 

 本当のことを言えない曜はそうはぐらかした。

 

「えぇー!? こんな時にどこにぃ!?」

「し、心配しないで先に行っててって言ってたわ。さぁ千歌ちゃん、行きましょう」

 

 梨子と曜は半ば強引に千歌を連れてシェルター内に避難していった。が、その後ろで、

 

「へぇー…そっかぁ……」

 

 三人の話を耳に入れた愛染が何かを得心したように目を泳がせ、氷室は眼鏡を光らせた。

 

 

 

 梨子と曜と別れた克海と功海の兄弟は、アルトアルベロタワーから外へ出て、こちらに接近しつつあるガーゴルゴンを視界に収めた。

 

「止めるぞ、功海!」

「オッケー!」

 

 二人は手を叩き合わせて息を合わせると、ルーブジャイロを取り出して構えた。

 

「「俺色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 ルーブジャイロとクリスタルを使って変身し、ウルトラマンロッソとブルがガーゴルゴンに向けて飛び出していった!

 

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