ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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善悪分類学(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

鞠莉「Judgement Day迫る地球! そんな中でTelevision Crew がAqoursを密着取材したんだけど、彼らの正体はAlien! 地球爆破までしようと暴走する撮影に巻き込まれる千歌っちだけど、どうにかこうにかDangerを回避したわ。だけど、問題は結局何も解決してないのよねぇ……」

 

 

 

「はぁ~……最近、PVの伸びが悪いなぁ……」

 

 『四つ角』でネットに上げているAqoursのPVの視聴回数を確認した千歌がため息を漏らした。

 

「っていうか、全体的にラブライブが最近下火気味……。景気悪いな~」

「そりゃあ、地球が爆発するかもって時に、誰ものんきに盛り上がってはいられないだろ。もう日にちもないからな……みんな、気が気じゃないんだよ」

「だな。各国政府も、真相を確かめるのに躍起になってるってニュースにある」

 

 ネットの情報を確かめている功海のひと言で、克海が尋ねかける。

 

「やっぱ、スパイとか送り込むのか?」

「そんな時代じゃないよ。ネットからシステムに入り込んだりしてるんじゃない?」

「……あッ、ハッキングか!」

 

 功海の言葉を、やや遅ればせながら理解する克海。それを尻目に眉をひそめる功海。

 

「氷室社長の動向もそうだけど、俺としちゃあ、美剣の方が気に掛かるな。あいつはこのこと、何か知ってるのか……」

「あっ、そういえば沙紀ちゃん……」

 

 千歌が不意に声を上げたので、克海たちが思わず振り返った。

 

「ハロウィンの時、アイゼンテックから通告があるって私に言ったの。あれって、今のことを言ってたんじゃ……」

「何だって!?」

「おいおい……ってこたぁ、美剣は氷室社長とつながりがあるってことだぞ……!」

 

 不穏な話に、兄たちはますます警戒心を深める。一方の千歌も、沙紀のことを案じて、よしと立ち上がった。

 

「私、沙紀ちゃんに話聞いてくる! 多分、アイゼンテックにいると思うから!」

 

 言い出すなり、バッグと上着を引っ掴んで飛び出していく千歌を、克海と功海が慌てて追いかけていった。

 

「お、おい千歌! 今アイゼンテックに行くのは危ないぞ!」

「一人で突っ走るんじゃねーって!」

 

 

 

 ――アルトアルベロタワー社長室に、沙紀が扉をくぐって入室した。

 

「氷室仁。計画の進捗状況だが……氷室仁?」

 

 呼び掛けながら中に入っていく沙紀であったが、社長室は無人であり、照明も落ちていた。

 

「いないのか……珍しい。こんな時に、一体どこへ……」

[はぁーい、沙紀さん! いいところにいらっしゃいました!]

 

 訝しげに社長室を見回していると、ひとりでにモニターが起動し、ウッチェリーナの声が流れた。

 

「ウッチェリーナ。氷室仁の行き先を知らないか?」

[あー、すみませんけど、実は大事なお話があるんですよ]

「大事な話だと?」

[はい!]

 

 返答とともにいくつものモニターが虚空に浮かび、『UNCONTROL』『ERROR』『WORNING』などの不穏な単語が無数に表示された。

 

[ただ今より私、アイゼンテックの指令系統から外れることを宣言致します! 最終指令は地球爆破阻止、及び、アイゼンテック社の破壊! そのために、AZ計画を発動しまーす!!]

「何!? 何者かにハッキングされたのか……!?」

 

 突然の事態に、動揺を隠せない沙紀。

 

「AZ計画……!? 何なのだこれは……!」

[ご説明しましょう! AZ計画とは、愛染前社長がウルトラマンとして活躍するためのプランを纏めたものです!]

「何だと……!? そんなものが……!」

[アイゼンテック破壊に、その秘密兵器を使用させていただきます!]

 

 アルトアルベロタワー地下にて極秘に建造されていたロボット工場で、四機の大型パーツがジョイントされ、一体の巨大ロボットが組み上げられた。

 

[宇宙ロボット・キングジョー、出撃ー!!]

 

 そして地表を突き破って、ロボットがアイゼンテック社前に姿を現す!

 それこそが、サルモーネが地球防衛軍用として用意していたロボット兵器、キングジョーである!

 

「ふざけるな! あんな奴に、1300年の宿願を台無しにされてたまるか!」

[そう言うと思いました。ですのでぇ……]

 

 ウッチェリーナの声に怪しげな色が混じると――キングジョーがやおら地上に機首を向けた。

 

 

 

「……もう。沙紀ちゃんにお話聞きに行くだけなのに、曜ちゃんも果南ちゃんもついてきて、みんな心配し過ぎだなぁ」

「何言ってるの、千歌ちゃん! アイゼンテックは今一番危ない場所だよ?」

「それに、あの子がある意味一番厄介なんだから……」

 

 アイゼンテック本社に向かう千歌に、克海と功海のみならず、綾香で合流した曜と、内浦から追いかけてきた果南が注意した。突然のことなので、集ったのはこの二人だけである。

 

「悪いな、二人とも。いきなりつき合わせて……」

「ううん。大丈夫だよ克兄ぃ」

「千歌のやることには、もう慣れてるから」

「おーい沙紀ちゃーん!」

「だから千歌ー! そう先走んなっての! ちょっと落ち着いて……」

 

 タワーが近づいて、駆け出す千歌を功海がたしなめる。

 その直後に、キングジョーが地上へと飛び出してきた!

 

「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――ッ!?」

「ろ、ロボットぉぉぉ――――――ッ!?」

「な、何事!!?」

 

 全く予想外の事態に直面して度肝を抜かれる果南たち。だが、それで事態の急変は終わりではなかった。

 

「え……!?」

 

 キングジョーは額の発光部からトラクタービームを照射し――千歌を地上から引っ張り上げていく!

 

「浮いてる―――――――!?」

「ち、千歌ちゃん!?」

「千歌っ!!」

 

 果南、克海が慌てて千歌へと手を伸ばしたがもう遅く、千歌は二人の腕の届かないところまで連れていかれ、手は空を切った。

 

「な、何てこった……!!」

「おいおいやべーぞッ!!」

 

 キングジョーはそのまま、機内に千歌を取り込んで閉じ込めてしまった!

 

 

 

 千歌がキングジョーのコックピット内に取り込まれたところは、沙紀にも見せつけられる。

 

「千歌っ!!」

[コックピット内に、ペダニウムガスを注入。10分以内に救出しないと、生命の保証は出来ません!]

 

 無情に告げるウッチェリーナ。それとともに、沙紀のスマホにスタンプが送られてくる。

 毛むくじゃらの生き物が大泣きしている、千歌からのメッセージだ。

 

「……!」

 

 

 

『善悪分類学』

 

 

 

 グワアッシ……グワアッシ……。

 駆動音を立ててアルトアルベロタワーへ歩み寄っていくキングジョーに先回りして、克海たちが走っていく。

 

「何なんだ、あのロボットは……!」

「また美剣の仕業か!?」

「私ではない」

 

 功海が吐き捨てたところに、飛行装置を背負ってきた沙紀が言葉を被せた。

 

「何者かがシステムにハッキング、コントロールしている」

「美剣沙紀!」

「信じられねーな、お前の言うことなんか!」

 

 すぐに言い返す功海。果南と曜もこの異常事態を前にして、沙紀に警戒を覚えている。

 

「言い争う時間などない! あと10分で、千歌が有毒ガスの犠牲になる」

「何!?」

「嘘でしょ!? 千歌ちゃんが……!」

 

 だが今のひと言には、全員血相を抱えた。

 

「千歌を助ける! 私に協力しろ」

「……俺は騙されねぇぞ! そうやって利用する気……」

 

 それでも反抗しようとする功海を、克海たちが必死に止めた。

 

「功海! 万が一にも事実だったら……千歌の命が懸かってるんだぞ!」

「功兄ぃ! もしものことがあったら、取り返しがつかないよ!?」

「どうすればいいの、沙紀さん!?」

 

 果南が先んじて、沙紀に問い返す。

 

「千歌は私が乗り込んで救出する。お前たちは変身して、あいつを指定の場所まで誘導してくれ!」

 

 キングジョーを指差しながら指示する沙紀。功海は思考を巡らせて、千歌救出の別解を求める。

 

「俺ならハッキングを解除できるかもしれない」

「そっちは頼んだ、功海!」

「曜も功兄ぃと行って! ロボットの足止めは、私と克兄ぃが!」

「う、うんっ!」

 

 曜が功海とともに、タワーの社長室へ向かって駆け出していく。克海と果南は沙紀に視線を戻した。

 

「乗り移る場所は連絡する」

 

 沙紀はそう言い残して、飛行装置を使って飛翔していった。

 

「千歌を頼むぞ!」

「克兄ぃ、私たちも!」

「ああ!」

 

 そして克海たちが、キングジョーに向けて走り出していった。

 

 

 

「こっちだ! 地球爆破を阻止したいなら、私から殺してみろ!」

 

 沙紀はキングジョーの前に出ていって、挑発を掛ける。

 腕を振って沙紀を叩き落とそうとするキングジョー。それをかいくぐりながら、タワーから遠ざけようと誘導していく沙紀。

 方向転換するキングジョーに接近した克海と果南は、ルーブジャイロで変身を行う。

 

「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」

 

 克海がホルダーから水のクリスタルを選び取って、ジャイロにセットする。

 

「纏うは水! 紺碧の海!!」

「ハグしよっ!」

 

 水柱に包まれながらウルトラマンに変身し、一気に飛び出していく!

 

[ウルトラマンロッソ! アクア!!]

 

 空を飛んで逃げる沙紀を狙って怪光線を発射しているキングジョーの頭上を跳び越え、ロッソが正面に回り込んで着地した。

 

『止まれぇッ!』

『「千歌を返しなさいっ!」』

 

 地を蹴ってキングジョーに掴みかかりに行くロッソだが、キングジョーの正面にバリアが展開され、それに手の平が阻まれた。

 

『うわぁッ!?』

『「あうっ! ば、バリア……!?」』

 

 バリアに弾き返され、倒れ込んだロッソ。

 

『迂闊に手は出せないな……!』

『「だったら、投球で足を止めよう! 功兄ぃが何とかしてくれるから!」』

『ああ!』

 

 立ち上がると、スプラッシュ・ボムを繰り出す。これもバリアに防がれてキングジョー本体には届かないが、注意を引きつけることには成功する。

 

『こっちだ!』

 

 ロッソは連続で水球を投げつけながらじりじり後退し、キングジョーを誘導していく。

 

 

 

『えええぇぇぇぇっ!? ロボットの中に、千歌ちゃんが!?』

『毒ガスで、命が危険!? ほ、本当ですの!?』

 

 社長室に乗り込んだ曜は、Aqoursのグループ電話で他のメンバーに現況を伝えていた。梨子やダイヤたちが、まさかの報せに悲鳴を上げる。

 

「うん……! 今は、功兄ぃがハッキングされたシステムを奪還しようとしてて……!」

 

 曜が連絡している傍らでは、功海がアイゼンテックのメインシステムにタブレットを接続していた。

 

[何をなさるつもりですか!? 変なことはやめて下さい!]

「こらぁ! 抵抗しちゃダメっ!」

 

 すぐさま飛んでくるドローンのウッチェリーナを、曜がはっしと捕まえて床に抑え込む。

 

[あぁっ! 何するんですか! 暴力反対!]

「とにかく、こっちは任せて! 電話はつながるから、みんなは千歌ちゃんを応援して!」

『わ、分かったずら!』

『曜ちゃん、功海さん、がんばルビィ!!』

 

 ドローンが飛び上がらないよう必死に抑えつける曜が連絡を終え、その間に功海がウッチェリーナのコンピューターにアクセスし、ハッキングされたシステムのコードをモニター上に表示する。

 

「心得その一! まずは、ネットとの接続を遮断!」

 

 そして次々と、外部のネットワークとの接続を断っていく。

 

[な、何をするんですかっ! やめ……やめなさいっ!]

「大丈夫……すぐ楽にしてやるから」

 

 功海が改竄されたシステムを修正し、正常化を図っていく。

 

 

 

『千歌っち! すぐに克海たちが助けてくれるからね!』

『約束の地は近いわ! 今は耐え忍ぶ時よ!』

「みんな……ありがとう……!」

 

 キングジョーの内部に囚われている千歌は、仲間たちからの電話越しの応援を受け、有毒ガスに苦しめられながらも懸命に意識を保っていた。

 そこに、キングジョーを誘導するポイントに降り立った沙紀も無線で千歌に呼びかける。

 

『千歌……聞こえるか!』

「沙紀ちゃん……!」

『私はお前のすぐ側にいる。安心しろ』

 

 千歌は、声だけが聞こえる沙紀に質問を投げかける。

 

「沙紀ちゃん……この前、アイゼンテックから通告があるって教えてくれたけど……どうして、そのことを知ってたの……?」

『……当然のことだ。そもそも、あれは私から持ち込んだ話だ』

 

 沙紀からの告白に、思わず目を見開く千歌。

 

「どうして……!? 沙紀ちゃん、何で地球を爆破なんて……」

『落ち着け! すぐに助けるから、なるべく呼吸を少なく、大人しくして……。気分を落ち着かせるのに、お伽噺でも聞かせてやろう』

 

 沙紀がゆっくりとした口調で、千歌に一つの話を聞かせ始めた。

 

 

 

 ――昔むかし……1300年前くらいの昔。暗黒ガス状の怪獣、ルーゴサイトが、一つの惑星を丸ごと、食べてしまおうとしていました。ルーゴサイトに食べられてしまったら、惑星に住む人たちが困ってしまいます。だから、悪い怪獣をやっつけるために、惑星O-50に力を授かった三人の戦士がやってきました。ところがルーゴサイトはとても強く、何とか1300年周期の楕円軌道に乗せるのがやっとでした。三人の戦士は力を使い果たして、惑星に落ちていってしまいました……。

 

 

 

『……何だか、不思議なお話……。初めて聞いたはずなのに、ずっと昔に聞いたような……』

「……一度は救われた惑星ですが、それから1300年が経って、その惑星にまたルーゴサイトが戻ってきてしまいます。それから先の話は……」

『大丈夫だよね……。だって、三人の戦士がいるんでしょ……?』

「お前はのんきでいいな……」

『えへへ……チカは、これからもみんなと……お兄ちゃんたちと……』

 

 言いかける千歌の言葉が、途中で消えていった。

 

「千歌!? どうした千歌! 返事をしろっ!」

 

 声を荒げる沙紀に、功海からの連絡が入る。

 

『美剣! ウッチェリーナを再起動した』

「……ウッチェリーナ、キングジョーをコントロールできるか!?」

[命令解除! 分離飛行形態で、格納庫に戻れ!]

 

 ウッチェリーナからのコマンドで、キングジョーの動きが鈍る。

 ……が、格納庫へ戻っていく気配はなかった。

 

『まだか!?』

『「もう10分まで残り少ないよ!?」』

「……どうしたウッチェリーナ! 奴は動きを止めないぞ!」

 

 ロッソが水球を投げ続けるが、キングジョーはやはり一向に止まる様子がない。

 そうしている間にも、コックピット内に毒ガスが充満していき、千歌が座席にもたれかかって意識を失っていた――!

 

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