ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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善悪分類学(B)

 

 グワアッシ……グワアッシ……。

 上空にアイゼンテック飛行船が旋回する綾香の街の中で、ロッソとキングジョーの戦いが続く。

 

『はぁッ!』

 

 どれだけ効かなくとも懸命に水球を放って攻撃を続けていたロッソだが、キングジョーを覆っていたバリアが消滅し、水球が機体表面に炸裂した。

 

[ボディ表面のバリア解除に成功しました!]

『「バリアがなくなった!」』

『止まれぇッ!』

 

 すかさず接近して取り押さえようとしたロッソだったが、喉元に突きを食らって返り討ちにされる。

 

『うあッ……!』

[しかし、キングジョーのコントロール不能! こちらの操作を受けつけません!]

「奴のコンピューターは既に汚染され暴走してる!」

 

 キングジョーは倒れたロッソのマウントを取って、顔面に向けて拳を振り下ろす。

 

『「こ、このっ……!」』

 

 ロッソが振り払おうとするも、果南の力を足してもキングジョーのパワーはすさまじく、抵抗が出来ずに殴られ続ける。

 

『うわあぁぁッ!』

「功兄ぃ! 克兄ぃたちがまずいよっ!」

「分かってるよ……! くそ、どうにかならねぇのか……!」

[う~ん、これは困りましたねぇ]

 

 状況を無視しているようにのんきな声を出すウッチェリーナに、思わず怒鳴る功海。

 

「何のんびりと言ってんだよ! 千歌の命だって危ねぇんだぞ! お前も、前に千歌で妄想したりしてたじゃねーかッ!」

[いや、あれは前社長からああいう風に振る舞えって言われてただけで、ホントに妄想癖がある訳ではありませんので……]

「くそッ! 冷淡な奴だッ!」

 

 吐き捨てた功海が、社長室の出入り口へ踵を返す。

 

「遠隔操作じゃもうどうしようもねぇ……! 俺たちも現場に行くぞ、曜!」

「わ、分かった!」

 

 功海と曜が社長室を飛び出していく中、沙紀が飛行装置を操作して飛び立つ。

 

「待ってろ千歌!」

 

 ジェットを効かせ、キングジョー目掛けまっすぐ飛んでいく沙紀。その接近に気づいて、ロッソをタコ殴りにしていたキングジョーがマウントポジションから離れた。

 

『うッ……果南ちゃん、大丈夫か……!』

『「何とか……。それより、沙紀さん……!」』

 

 沙紀はキングジョーの額の発光部へと手を伸ばす。

 

「私を中へ!」

 

 キングジョーからトラクタービームが放たれ、沙紀をコックピット内に取り込んだ。

 

「千歌!」

 

 コックピットへの侵入を果たした沙紀は、すぐに気を失ったままの千歌に駆け寄る。

 

「千歌! しっかりしろ!」

 

 千歌を抱えた沙紀は、超能力を発動してコックピットから脱出。しかしキングジョーが叩き落とそうと腕を振る。

 

「うっ……!!」

 

 鋼鉄の指が飛行装置を破壊したが、どうにか工事現場に積まれていた段ボール箱の山に落下して衝撃を和らげる。

 

「千歌……! 千歌っ! 目を覚ませ! 生きるんだ!」

 

 救出した千歌に必死に呼び掛け、その胸元に手の平を当て、エネルギーを送った。

 

「こふっ……!」

 

 その結果、千歌が大きく空気を吐き出し、意識を取り戻す。

 

「……沙紀ちゃん……」

「良かった……」

 

 千歌が目を覚ましたことで緊張の糸が切れた沙紀は、入れ替わるように失神して倒れ込んだ。

 

「沙紀ちゃん! しっかり……!」

 

 キングジョーは倒れた沙紀を狙って進撃してくるが、その前方に持ち直したロッソが回り込んで立ちはだかった。

 

『うおぉッ!』

『「いい加減、止まりなさいっ!」』

 

 キングジョーのボディに拳を叩き込むロッソ。だが、バリアが無くなってもキングジョーの装甲は非常に強固であり、打撃はほとんど通用していない。

 

『くぅぅッ……!』

 

 腕を掴まれて万力の如く締めつけられても、ロッソは決してめげず、キックを胸部に打ち込んで押し返す。

 ロッソが奮闘している間に、功海と曜が千歌たちの元に駆けつけた。

 

「千歌ちゃんっ!」

「大丈夫か千歌!」

「曜ちゃん、功海お兄ちゃん……」

 

 千歌がうなずき、ほっと胸を撫で下ろす曜。功海はロッソへ振り向いて叫んだ。

 

「克兄ぃ! そいつの装甲は強力だ! 克兄ぃたちは冷凍光線で、俺たちは高熱で、温度差で奴の装甲を弱めるんだッ!」

『よしッ!』

 

 ロッソが了解し、果南がクリスタルホルダーに手を伸ばした。

 

『「セレクト、クリスタル!」』

[ウルトラマンビクトリー!]

 

 土のクリスタルをジャイロにセットして、タイプチェンジする。

 

[ウルトラマンロッソ! グランド!!]

 

 功海と曜の方も変身を行う。功海が風のクリスタルを選択して、ジャイロにセット。

 

「セレクト、クリスタル!」

[ウルトラマンティガ!]

 

 風を纏って、ウルトラマンブルに変身。

 

[ウルトラマンブル! ウインド!!]

 

 キングジョーの背後に着地して、ロッソと挟み撃ちの状況を作り上げる。

 更にロッソとブルは角からルーブスラッガーを抜いて、それぞれクリスタルをスラッガーにセットしていく。

 

[ウルトラマンギンガ!]

[ウルトラマンタロウ!]

 

 相反する属性の力を刃に込め、光線にして発射!

 

「『クロススパークシュート!!」』

「『ダイナマイトスラッシュ!!」』

 

 左右から冷凍光線と灼熱光線を浴びせられたキングジョーは、急激な金属疲労を起こして、装甲の表面に亀裂が走った。

 

『よしッ!』

『「一気に押し込もう!」』

 

 果南が極クリスタルを取り出し、起動させる。

 

『「「セレクト、クリスタル!!」」』

 

 クリスタルを開いて、曜の掲げるジャイロにセット。

 

『『纏うは極! 金色の宇宙!!』』

『「「サンシャイン!!」」』

 

 二人でグリップを引いて、兄弟の合体を行う!

 

[ウルトラマンルーブ!!]

 

 合体変身したルーブが、まっすぐにキングジョーへぶつかっていく。

 

「ハァァッ!」

 

 タックルを決め、キングジョーと激しく殴り合うルーブ。しかしロッソとブルの力を合わせたルーブに対しても、キングジョーは互角に渡り合う。

 

「ハァッ!」

 

 ルーブとキングジョーのパンチが交差し、互いによろけ合った。

 が、キングジョーはすかさず両目から怪光線を発射し、ルーブに食らわせる。

 

「ウゥッ!」

 

 光線に押されたルーブが、背後のビルに衝突してめり込んだ。

 

『「何て奴……!」』

『「ここは私に任せて!」』

 

 曜が極クリスタルを握り、文字を「航」に変化させる。

 

[ルーブ・クルーズ!!]

 

 青と水色のラインを走らせたルーブが立ち上がり、ジェットスキーを効かせてキングジョーの周りを疾走。キングジョーはそのスピードについていくことが出来ず、足が止まった。

 

「ウッチェリーナ、怪獣拘束システムを起動。キングジョーに」

[了解! 怪獣拘束システム、起動!]

 

 その隙を突いて、沙紀がウッチェリーナに命じて、拘束光線をキングジョーに浴びせた。

 ルーブに気を取られていたキングジョーはこれをまともに受け、機能が停止して立ち尽くした。

 

『「今だっ!」』

 

 即座に、曜がルーブコウリンを握り締める。

 

「『ルーブコウリンブル!!」』

 

 水のジェットで疾走しながら、キングジョーの装甲の亀裂にコウリンを走らせるルーブ。その一撃により、キングジョーのヒビが更に広がる。

 

『「とどめだよっ!」』

[ルーブ・オーシャン!!]

 

 曜から果南に交代して、極クリスタルをコウリンにセットする。

 

[高まれ! 究極の力!!]

「『「『オーシャン・ボルテックバスター!!!!」』」』

 

 螺旋状の紺碧の奔流がコウリンから発射され、キングジョーの背面に命中。

 砕けた装甲を突き破って、爆発四散させた!

 

『「やった……!」』

『「ふぅ~、終わったぁ……!」』

 

 キングジョーの暴走を食い止めて、どっと息を吐く果南と曜。一方で、ブルの意識がロッソに呼び掛ける。

 

『克兄ぃ、ちょっと気になることがあるんだけど……』

『何だ?』

『アイゼンテックのシステムの修正の時に、ネットの遮断をしたんだけど……外部のネットワークの接続を切っても、ハッキングが止まらなかったんだ』

『え……!?』

『どう考えても、内部の犯行としか思えねぇんだよ』

『内部犯だと……? 一体誰が……』

 

 一瞬思案したロッソが、ハッと息を呑む。

 地球爆破声明を出してから、ずっと社長室に籠もり切りと言われていた氷室が、今日に限って全く姿を見せていない。このような大事態が起こったにも関わらず、だ。

 

『まさか……けど、何のためにこんな……』

 

 千歌はルーブを見上げて、嬉々と呼び掛ける。

 

「お兄ちゃん! みんなの力を合わせて、ルーゴサイトって怪獣を倒せば、地球は爆発しないで済むんだよ! ね、沙紀ちゃん」

 

 笑顔で、沙紀に振り返った千歌だが、

 

「ウッチェリーナ。――ビームをウルトラマンに」

「え……?」

 

 アルトアルベロタワーから放射された拘束光線が、油断していたルーブの背中を撃った!

 

「ウアァッ!?」

『「わぁぁぁぁっ!? し、痺れ……!」』

『「な、何を……!」』

 

 全身のエネルギーの循環を妨げられたルーブは変身を保てなくなり、消滅。元の姿に戻った克海たちは、光線の影響が抜けずにがくりと伏せっていた。

 

「う、うぅ……立てない……!」

「沙紀さん……何の真似を……」

 

 身体に力が入らず、息を荒げるばかりの果南たち。克海は震える手を伸ばして、地面に転がったジャイロを掴み取ろうとするが――その手を、沙紀の足に踏みつけられた。

 

「うぅッ!? あぁぁぁ……!」

「沙紀さんっ! 克兄ぃに何てこと……!」

「私たち、あなたを信じて力を貸したのに……!」

 

 果南の抗議の声も聞かず、沙紀は冷酷に克海たちをにらんで、言い放った。

 

「その汚い手で触るな! これはお前たちのような偽者が持つべきものではない!」

「偽者……!? 克兄ぃたちが……!」

「一体、何の話を……」

 

 沙紀は憤然と、宣告する。

 

「これは私の……兄たちのジャイロだっ!」

「え……!?」

 

 絶句する曜たち四人。それに構わず、沙紀は二つのジャイロを奪い取る。

 沙紀を追いかけてきた千歌は、その背中に困惑の眼差しを向けていた。

 

「何で……? 沙紀ちゃんは、悪い子じゃないのに……」

「……古き友は言った。彼らが出す最大の害は、人々を善人と悪人に分けてしまうことだ。オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド」

 

 沙紀はそう言い残して――その場に立ち上がれない克海たちと、呆然としている千歌を置いて、激闘の爪痕が残る街の向こうへと歩み去っていった。

 無情なる戦いの結末を、空の上から見下ろすように、飛行船が巡回を続けていた。

 

 

 

『Aqoursのウルトラソングナビ!』

 

果南「ハグしよっ! 今回紹介するのは、『ULTRA SEVEN』だよ!」

果南「この歌は前回の『進め!ウルトラマン』みたいに、主題歌候補として作られた歌なの! その結果、主題歌には『ウルトラセブンの歌』が選ばれたって訳だね」

果南「この歌は、主に満田かずほ監督が手掛けたエピソードの中で、セブンが人間大で活躍するシーンやウルトラ警備隊の出動シーンでBGMとして用いられてるから、印象に残ってるって人も多いと思うわ」

果南「もう一つ、以前の紹介の通り、主題歌候補には『ウルトラセブンの歌 パート2』と呼ばれてるものがあるの。これは後の作品、『A』や『タロウ』でゾフィーが登場する場面でテーマ曲代わりに使われてるわね」

克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『ときめき分類学』だ!」

功海「果南、ダイヤ、花丸の三人のユニット、AZALEAのシングル「トリコリコPLEASE!!」のカップリング曲だ! タイトルの通りにときめきの甘酸っぱさを表現した歌だぜ!」

克海「AZALEAは電子音を主な曲調としてるのが特徴のミニユニットだ」

果南「それじゃ、また次回でね!」

 




功海「美剣の奴にジャイロを奪われるなんて!」
克海「一体何をたくらんでるんだ! これも地球を爆破するために必要だっていうのか!?」
千歌「沙紀ちゃん、どうしてお兄ちゃんたちのことを、そこまで……!」
克海「行くぞ功海! 目の前の救える命を見捨てる訳にはいかない!」
功海「次回、『GALAXY MemorY』!」
千歌「かんかんみかん!」

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