『これで最後だっ!!』
ロッソとブルに狙いを定め、グランドキングメガロスが口から破壊光線を発射する!
「『フレイムミラーウォール!!」』
これに対しロッソは咄嗟にバリアを張り、光線を防御。バリアの表面は鏡面になっており、反射された光線は上空へとそれて飛んでいく。
『「うぅぅ……!」』
『もう一発ッ!』
ロッソが反射角を修正して光線をグランドキング自身に返すのと、ブルが二度目のアースブリンガーを繰り出すのは同時であった。
『あぁぁぁぁッ!』
「『アースブリンガー!!」』
己の攻撃にブルの攻撃を上乗せされて食らったグランドキングは、遂に装甲を突き破られた。
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!」
激しく爆発して消滅していくグランドキング。一瞬の間の逆転劇に、曜たちは目を見張った。
「や、やった……!!」
しかし同時に、ロッソたちもとうとうエネルギーを使い果たし、その場で変身が解けて消えていった。
「克兄ぃ! 功兄ぃ!」
「ずら丸、リリィ!」
果南たちはすぐにウルトラマンたちが消えた場所に向かって駆けていった。
グランドキング爆散の跡地では、同じく変身解除に陥った沙紀が忌々しそうに身体を起こす。
「引き分け……? あんな素人ども相手に……っ!」
「沙紀ちゃんっ!」
その元には、千歌が駆けつける。
「沙紀ちゃん、もうやめようよ……。こんなことしてても、どうにもならないでしょ……?」
「……」
千歌の再三の説得にも、沙紀は渋面のまま。
「しっかりして、四人とも……!」
そこに、鞠莉らに支えられながら克海たちが向かってくる。
「克海お兄ちゃん、功海お兄ちゃん!」
「……!」
克海たちの顔を見た沙紀は、すぐにアルトアルベロタワーの方へと逃げ出した。
「待ちやがれ……ッ!」
「待てッ……!」
すぐ追いかけようとした功海と克海だが、身体が痛んで表情が歪んだ。
「うッ……!」
「だ、駄目ですよ、今は無理しちゃ……! もうがんばれる状態じゃないです……!」
二人を慌てて止めたルビィの言葉にうなずくダイヤ。
「ええ……。梨子さんも花丸さんも、疲弊し切ってます。今は、ジャイロを取り戻しただけで良しとしましょう……」
「くッ……」
克海たちはやむなく追跡を断念した。
こうして沙紀との激闘は、痛み分けという形で幕を下ろした。
近くの公園で、千歌たちから応急手当を受けながら、功海が憮然と克海の問いかける。
「まだ美剣と話し合おうと思ってんのか?」
「……」
額に濡れタオルを当てたまま返事をしない克海に、功海がいら立って立ち上がった。
「地球がどうなってもいいのかよ!? 見た目が女子高生だからってデレデレしやがって……1300歳以上の美魔女じゃん! こんだけの本物に囲まれてるってのに、まだ物足りねぇのかよッ!」
「年齢にこだわりは……何の話だよッ!」
「ち、ちょっと功兄ぃ、落ち着いて……!」
「わたくしたち、そんないかがわしい目的でいるのではありませんし……!」
興奮しすぎておかしなことを口走る功海を、果南やダイヤが赤面しながらもなだめる。
一方で、息を整えた梨子と曜が、暗い面持ちの千歌を気遣った。
「千歌ちゃん、大丈夫?」
「……沙紀さんのこと、考えてるの?」
「うん……。どうすれば沙紀ちゃん、分かってくれるのかなって……」
千歌はアルトアルベロタワーを見やって、沙紀に思いを馳せた。
「くっ……ここまでのダメージを負うとは……」
タワーの内部によろよろと戻った沙紀の前に、氷室がザッと現れる。
「惜しかったですね。もうひと押しというところで、詰めを誤りましたか」
「……黙れ」
「こう言っては何ですが、あの兄弟と刺し違える程度で、ルーゴサイトを完全に仕留めることが出来るのでしょうか? やり直しは利かないのですよ」
「黙れと言っているっ!」
氷室の苦言を一喝した沙紀が、彼の横を憤然と通り抜けていく。
「認めない……! あのような者たちが、ウルトラマンなど……!」
そのままタワーの奥へ引っ込んでいく沙紀の背中を、氷室がじぃっと見つめ続けていた。
怪獣ルーゴサイトと目される未知の宇宙物質の地球到達まで残り三日という日に、Aqoursの元を訪ねてきた人たちがいた。
「聖良さん! 理亞ちゃんも!」
「お久しぶりです」
Saint Snowの姉妹である。二人は『四つ角』でAqoursの面々と、克海と功海に面会する。
「すっかり大変な事態になってしまいましたね……。こちらでもスクールアイドルのイベントが次々延期や中止になってしまって、ほとほと困ってます」
「お互い大変なんですね……。ところで、どうして内浦に?」
千歌が代表して尋ねると、聖良は真剣な顔つきで答える。
「アイゼンテック社長が語った、地球に飛来する物の正体が怪獣だということ、そして地球がこのままだと、あと三日で爆破されること……全て、真実なんですよね?」
「……はい」
もう時間が残されていないというのに、未だに解決の目途が立っていない現状に、千歌たちが沈痛の面持ちになると、理亞がたまらないといったばかりに感情を爆発させた。
「冗談じゃないわっ! 怪獣だか何だか知らないけど……このまま消し飛ばされるのを待ってるなんて、絶対嫌っ!!」
「……そういうことです。私たちも、非日常の世界に片足を突っ込んだ身。何か出来ることはないかと、いてもたってもいられずやってきたという訳です。一度は、皆さんに迷惑をお掛けしてしまったことですし……」
「そんな、改まって謝ってもらうことなんてないですよ! お二人のせいじゃありませんから……!」
サルモーネに利用されていたことを未だ気に病む聖良に、梨子や曜たちがむしろ申し訳なくなった。
克海は聖良たちに向き合いながら言葉を掛ける。
「わざわざ来てくれてありがたいんだけど……悪いけど、これはウルトラマンの力がないことにはどうしようもならないことだ。君たちに何かしてもらうことは……」
「だけど、どうにも出来そうにないから、こんなお通夜みたいな雰囲気なんでしょ?」
理亞の手厳しいひと言に、克海も思わず言葉を詰まらせた。
「理亞。……おおまかな事情は、千歌さんから伺ってます。美剣沙紀さんという人も、ジャイロを持ってるんでしょう? その人と力を合わせられれば、まだ可能性が……」
「あんな奴ッ! 力を合わせろなんて無理な話だっての! これっぽっちも話聞く気もねぇってのにッ!」
途端に声を荒げる功海を咎める克海。
「功海! 何度も言うが、俺たちでいがみ合っても仕方ないだろ!」
「克兄ぃこそ、まだそんなこと言ってんのかよ! 甘すぎんだよ克兄ぃは!」
「けど、それ以外に方法があるのか! そもそもこれからやって来るのは、先代が追い払うだけでやっとっていう格の違う怪物なんだぞ!」
「何だよ克兄ぃ、戦う前からビビってんのかよッ!」
「そんなつもりで言ったんじゃ……!」
「ちょっと、やめなさいよ……!」
「二人の前で恥ずかしいわよ……!」
すぐ口喧嘩になりかける兄弟を、善子、鞠莉まで注意する始末を前にして、聖良が克海たちにはっきり告げた。
「お二人は、どうしてしまったんですか?」
「「え?」」
問いかけの言葉に、二人が我に返って振り向いた。
「私と理亞が知るウルトラマンの兄弟は、自分たちよりずっと実力が上の相手にも折れず、力と心を合わせて、協力してたくさんの人たちを護る正義のヒーローでした。それが今は、簡単に内輪揉めして……失礼ですが、お二人を支えてくれてるAqoursの皆さんが不憫に感じます」
聖良の忠言に、理亞も固くうなずいた。
克海と功海は、思わずAqoursの仲間たちの顔に振り返る。
「そ、それは……」
「その……」
あまり関わりを持っていない相手からの言葉だからこそ、二人の心に突き刺さり、克海たちは深く恥じ入った。
そんな時に、裏口のインターホンが鳴る。
「お客さん……?」
「私が出るね!」
千歌が裏口の方へ走っていき、すぐ後に驚きの声が届いた。
「えっ、沙紀ちゃん!?」
「何だって!?」
途端に克海たちが腰を浮かし、慌てて裏口の玄関に押し寄せていく。聖良と理亞も驚きながら、後に続いた。
果たして、来客は本当に沙紀であった。彼女はSaint Snowの姿を見止めて、ひと言言う。
「邪魔をしたか」
「ううん、いいの。それより沙紀ちゃん……」
「何しに来やがったッ! っていうか、何持ってきてんだよ!」
沙紀の姿にまた牙を剥き出しにする功海が、沙紀の抱えている立方体の包みを指差した。
「つまらないものだ」
沙紀は短く答えて、包みの結びを解く。
「ッ!? 千歌ッ!」
「みんなッ!!」
危険を感じた克海と功海が、咄嗟に千歌たちを背にかばった。
が――包みの中から現れたのは、
「そ、それは……!?」
「綾香市名物、銘菓あやかほし饅頭ずらー!!」
花丸が感激の声を上げた。
Aqoursが声をそろえる。
「「「あ~やか♪ あ~や~か~♪」」」
「商業180年、星から舞い降りし味と伝説を今につなぐ、匠の技」
「「「あ~やか♪ あ~や~か~♪」」」
「ほしのやの、銘菓!」
「「あやかほし饅頭~♪ わんだば~♪」」」
ダイヤの語りと七人の歌に、沙紀とSaint Snow、梨子は呆然。
「……何今の?」
理亞のツッコミをよそに、功海が沙紀へ険しい目を向ける。
「そんなもん持ってきやがって、俺たちを買収するつもりか! 誰がそんなもん……」
「功海さん、よだれ出てるずら」
「花丸ちゃんも垂れてるよぉ」
「ルビィもですわよ」
「わぁ~! ありがとう、沙紀ちゃん!!」
「そんなにいい物なのか?」
過剰なくらいの反応に、持参した沙紀の方が聞き返した。
「綾香に生きる民草の魂の餐よ!」
「饅頭など、パッケージが違うだけで、どれも味は同じじゃないのか?」
「違うッ! あやかほし饅頭を馬鹿にするな!!」
「綾香の人は、みんな大好きあやかほし饅頭デース!」
「すぐ売り切れちゃうんだよね~。克兄ぃ、お茶淹れてよお茶!」
「あ、あのっ!」
あやかほし饅頭に湧く曜たちをかき分けて、梨子が話を先に進める。
「それで、何の用なんですか?」
「ああ。一体どういうつもりなんだ」
克海も問いかけると、沙紀はこのように答える。
「他人に頼み事をする時は、礼を尽くす。それがこの星の、この国のやり方なんだろう?」
「頼み事?」
「あやかほし饅頭と引き換えに、ジャイロを渡せってか?」
功海も顔を引き締めると、沙紀は首を振る。
「いや。高海功海……高海克海……お前たち、死んでくれ」
「「「は!!?」」」
全員の表情が、ギョッと強張った。
今度は聖良と理亞も克海たちの側に回って、沙紀と向かい合って机を囲んだ。
「あっ、これほんとに美味しい」
「でしょ、梨子ちゃん? 聖良さんたちも食べて食べて! はいっ♪」
「……何で食ってんだよ! 美剣が持ってきたんだぞッ!」
皆で饅頭を頬張る姿に、一人手をつけない功海が突っ込んだ。
「お前も食え功海。饅頭に罪はないだろ」
「いつ食べても美味しいずら~」
「これぞ禁断の味……!」
「それは分かってっけどさ~……!」
功海がいら立っている一方、理亞は聖良に肩を寄せて、沙紀を観察しながら耳打ちした。
「姉様……あの人、どこかで会ったことない……? 何だか、既視感が……」
「理亞もそう思う? 私も、初めて会った気がしないんだけれど……でも、そんなはずは……」
二人が首をひねるのをよそに、沙紀が話を切り出す。
「ジャイロを取り返そうなどと、覚悟が足りなかった。初めから殺してでも奪うべきだった」
「そんな過激な……!」
「たまげルビィ……」
沙紀の言動に果南たちが戸惑う一方、克海は再三説得する。
「ジャイロが必要なら、三人で協力すればいいだろ?」
功海はキッと沙紀をねめつける。
「いや、俺たちがこいつから奪えばいいんだよッ!」
「駄目だよ! 奪ったり奪われたりじゃ、何の解決にもならないよ! 沙紀ちゃん、みんなで幸せになれる方法を考えようよ」
千歌がみかんを差し出しながら誘うが、沙紀は受け取らなかった。
「ルーゴサイトには、偉大な真のウルトラマンである兄たちでさえ敗れたのだ。お前たち如きが勝てるとでも?」
「それは……!」
「やってみなきゃ分かんねーじゃんッ!」
「いい加減なことをっ! 宇宙の運命が懸かっているのだぞ?」
「だから力を合わせてッ……!」
克海が何度も言い聞かせると、沙紀はすっくと立ち上がる。
「まだ現実が見えていないようだな……。いいだろう、今日こそ雌雄を決してくれる。表に出ろ」
「沙紀ちゃんっ……!」
千歌が身を乗り出しかけるが、沙紀に制される。
「どの道、私一人に勝てないようでは、ルーゴサイトを倒そうなどと夢のまた夢だ。地球を爆破する以外の方法があると言うのなら……最低限の証拠は見せてもらおうか」
「ッ……!」
「克兄ぃ……もうやるしかねぇよ」
話はどこまでも平行線であり、克海も腹をくくらざるを得ない。
「……分かった。だが、場所はこっちが選ばせてもらう」
「いいだろう。一切の言い訳が出来ないよう、邪魔の入らないところを選ぶといい」
緊迫の空気の中、克海も立ち上がって外へ出ていく。Aqoursもゴクリと息を呑みながら、彼らに続く。
「姉様……」
「……私たちも見届けましょう。地球の運命を決める対決を……!」
聖良と理亞もまた、決闘の証人となるべく、一行の後についていった。
克海たちは内浦の外れの、人を巻き込む心配がない山間にまで場所を変えた。
「これが最後の勝負だ。私が勝てば、お前たちは死ぬ。全ての力を出し尽くして掛かってくるといい」
宣言する沙紀を前に、梨子と曜が克海たちの側につく。
「だったら、私たちの参戦も認めますよね」
「私たちはみんなでウルトラマンなんだから!」
「もちろん。だがその代わり、お前たちの命の保証もないぞ。それでもいいのだな?」
「……覚悟の上ですっ!」
「みんなは安全なとこまで離れてて!」
「ええ……!」
鞠莉たちが、これから決闘を始める克海たちから距離を取っていく。
「沙紀ちゃん……」
「千歌、行くよ!」
「……うん」
千歌は沙紀を見つめて後ろ髪を引かれていたが、果南に腕を引かれて、ついていった。
「行くぞ……! 私も全力だっ!!」
全ての準備が整うと、沙紀がジャイロに魔のクリスタルを嵌め込む。
[グルジオボーン!]
それをすぐに外し、鋭のクリスタルに換える。
[強化! グルジオキング!!]
――更に外し、撃のクリスタルを嵌め込んだ!
[進化!! グルジオレギーナ!!!]
見たことのないクリスタルのセットの仕方に、克海たちが一瞬動じた。
「これが私の、最強の姿……!!」
沙紀がグリップを三回引いて、肉体を変貌、巨大化していく――!
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
骨格のような肉体だったグルジオボーンが、全身に厚い鎧装を纏ったようにより巨大に、より強堅になった大怪獣。最早全身が武器のように発達しており、胸部と肩部からは三門の砲身が突き出ている。
これこそが沙紀の変身形態である怪獣グルジオの最終形態であり、最強戦闘形態の、グルジオレギーナだ!
「ッ……!」
グルジオレギーナが尋常ではない怪獣であることは克海たちも肌で感じ取ったが、それでもひるまずに、こちらもルーブジャイロを構えて変身の態勢を取る。
「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」」
克海が火のクリスタル、功海が水のクリスタルをジャイロにセット。
「ビーチスケッチさくらうち!」
「ヨーソロー!」
[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]
[ウルトラマンブル! アクア!!]
変身したロッソとブルが、グルジオレギーナと向かう合う――!