地球に迫り来る大怪獣ルーゴサイトは、秋月律子の手によってクリスタルに封印された。しかし、遂に正体を現した氷室仁……宇宙生物グラキエスに奪い取られてしまう。グラキエスが差し向けてきたカミソリデマーガはウルトラマンルーブが撃破したが、グラキエスはすぐに制御装置を取りつけ支配下に置いたルーゴサイト・ナイーブを召喚。活動時間が残されていないロッソ、ブルは窮地に立たされる――!
ルーゴサイト・ナイーブはロッソ、ブルに向けて、再びトゲミサイルを雨あられと飛ばして攻撃してくる。
『走れッ!』
『うおおおおおおッ!』
瞬間、ロッソとブルが散開して駆け出し、ミサイル攻撃から逃れる。
『足を止めるなよ! 止まったら狙い撃ちにされるッ!』
『おうッ!』
ロッソたちはひたすら止まらずにミサイルをかわしつつ、クリスタルチェンジする。
[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]
[ウルトラマンブル! グランド!!]
『「お花ーまるっ!」』
二人は回避行動を取りながらルーゴサイトの側方に回り込み、反撃を試みる。
「『フレイムスフィアシュート!!」』
「『アースブリンガー!!」』
火球とエネルギー攻撃が、手も足も出ておらず突っ立っているだけのルーゴサイトに激突して、爆発を食らわせた。その衝撃によるものか、トゲミサイルの雨が途切れる。
『「やりましたわ!」』
『「ずらっ!」』
『へへーん! どんだけパワーがあったって、動かねぇんだったらいい的……』
攻撃が通用することから一瞬喜色を浮かべたブルたちであったが……すぐに、ルーゴサイトに変化が起こる。
立方体の制御装置の表面に複雑に線が走り……観音開きするように変形し出したのだ。
『何ッ!?』
『うえッ!?』
制御装置の中から四肢が現れ、鎌状の首をもたげ……細身の龍人の全身に、灰白色の拘束具が覆い被さったような形態に変化した。
氷室が独白するように言い放つ。
「今のはただの待機形態に過ぎない。戦いはここからが本番だ」
戦闘形態に移行したルーゴサイト・エフェクターが改めて、ロッソたちに襲い掛かってくる!
ルーゴサイト・エフェクターは重力を無視した、滑るような動きでロッソ、ブルに接近しつつ、両腕より触手を伸ばして鞭のように振るってくる。
『うわぁッ!』
『ぐわぁぁッ!』
触手を叩きつけられて吹っ飛ばされるロッソたち。更に、トゲミサイルも再び飛んできて二人を攻め立てる。
『『わぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』』
『「あうぅぅぅっ!」』
『「ず、ずらぁぁぁっ!」』
動けるようになったことでルーゴサイトの攻撃の手が激しくなり、ロッソたちは反撃の余地すら与えられなくなった。
「お兄ちゃんたちがっ!!」
ロッソとブルがなす術なくやられるありさまを見せつけられ、顔面蒼白となる千歌たち。沙紀はルーゴサイトを憎々しげに見上げながら、ジャイロに手を掛けた。
「グラキエスめ……お前たちの好きにはさせんっ!」
だがクリスタルを嵌め込む前に、空から怪光線が降ってきて、彼女たちのいる地帯を薙ぎ払った。
「うあぁっ!?」
「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」
『みんなッ!!』
沙紀たちが纏めて吹き飛ばされ、地面に横たわる。
今の攻撃は飛行船からのものではない。新たに出現した、四機のバラバラの形状の円盤から成る編隊の砲撃であった。
『あれは、見覚えが……!』
『まさか……!』
四機の円盤は縦一列にジョイントして、地上に着地。一体の巨大ロボットに変貌した。
以前ルーブによって破壊されたロボット兵器、キングジョー。それはグラキエスが回収し、強化改造を兼ねた修復を施されたキングジョーⅡとなって今この場に投入されたのだ!
駄目押しの絶望を叩きつけられて、歯噛みするブルとロッソ。
『ま、マジかよ……! この状況で、まだ増えるとか……!』
『くぅぅッ……!』
バドッ、バドッ……!
駆動音を上げながら、ルーゴサイト・エフェクターとロッソたちを挟み撃ちにしたキングジョーⅡは、同時に怪光線を放つ!
『『ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――ッ!!』』
前後からの攻撃に、ロッソとブルはとうとう耐えられなくなって、変身解除に追い込まれた。克海と功海、ダイヤと花丸が地面に投げ出される。
「大変……!」
律子が直ちにその場に駆けつけ、急いで失神した克海と功海を車の中に引き上げる。
だがAqoursの方は間に合わず、キングジョーⅡが照射したトラクタービームによって九人がかどわかされていく。
「あっ……! くっ……!」
一瞬動揺した律子だが、今の彼女の力ではどうすることも出来ず、克海と功海を連れて離脱するのが手一杯であった。
「千歌……!」
「お姉様、Aqoursが……!」
「どうして、あの子たちを……!?」
沙紀、聖良、理亞は狙われず、キングジョーⅡはAqoursを奪い取ると分離して飛び去っていく。ルーゴサイトもクリスタルに戻されて飛行船に回収され、飛行船もこの場から去っていった……。
「「……はッ!?」」
克海と功海は、マイクロバスの車内で目を覚まし、ガバッと身体を起こした。
「気がつかれましたか……」
二人の手当てをしていた聖良と理亞がほっと安堵したが、状況が状況だけに、表情は暗い。
「お、俺たちは、どうして……」
「……みんなは!? 千歌たちがいないッ!」
気を失うまでのことを思い返した克海は、グルリと車内を見回して血相を抱えた。ここにいるのは聖良と理亞、律子、沙紀だけであり、Aqoursの姿がない。
「……落ち着いて聞いてちょうだい……」
律子は重い口調ながら、事のあらましを兄弟に伝えた。当然ながら、克海たちは多大なショックを受ける。
「そ、そんな……!」
「千歌たちが、さらわれたなんて……!」
「ごめんなさい……私の見通しが甘かったわ。グラキエスが、ルーゴサイトを制御するほどの用意をしてたなんて……」
謝罪した律子を、激しくいら立っている沙紀が弾劾する。
「全くだ! 何が作戦だ。状況は最悪だぞ! 一体どうしてくれるつもりなんだっ!」
「……」
「やめて下さい! 今、この人を責めたところでどうしようもありません!」
「ああ……! すぐに千歌たちを助けに行かねぇと!」
功海が腰を浮かすが、克海は疑問を提示する。
「しかし、氷室……グラキエスは、どうして千歌たちをさらっていったんだ? 俺たちのことは放っといて……」
ジャイロとクリスタルを持つ自分たちならばともかく、千歌たちをわざわざ捕まえる理由が分からない。そう思っていると、律子が推測で答える。
「Aqoursのみんなは、あなたたちと一緒に何度もウルトラマンに変身してる。……人はそれぞれ、心の中に光の力を持ってるわ。私たちがそうだったように、彼女たちも克海さんと功海さんと絆を結ぶことで、光の力を強めてる。グラキエスはそれを利用しようとしてるのかもしれない」
「みんなの、光を……!?」
「光と闇は表裏一体。相転移させることで、希望の光は絶望の闇になり得る。グラキエスは強い感情を持たないから……他人から奪い取ろうと考えるのはあり得る話だわ。最初にμ'sを狙ってたのも、そこにあるのかも……」
「けど……千歌だけは一度も変身したことはないですよ?」
聞き返す功海。その理屈だと、千歌にさらわれる理由はないはずである。
「いいえ……千歌さんには何か秘密があるということは、あなたたちも気づいてるでしょう?」
「……秋月さんは、千歌がどこから来たのか、知ってるでしょうか」
真剣に、やや恐怖心も抱いて、克海が問うた。律子の回答は、
「残念だけれど、私もその点については何も知らないわ。ただ……」
「ただ?」
「……一度、千歌さんが何者なのかを気に掛けて、いけないことだとは分かってたけど内緒で調べたことがあるの。その結果、事実だけを述べるなら……」
少々ためらいを覚えつつも、律子は正直に話す。
「千歌さんとあなたたちには、血のつながりはないわ。血縁上では、赤の他人よ」
「……やっぱり、そうなんですか……」
半分分かっていたこととは言え、明言されると、克海たちはやはり心が乱されるのを抑え切れなかった。
「千歌さんは十二年前、奇しくも私と同じ時期に綾香市に現れ、どうやったかは知らないけれど、初めからいたかのようにあなたたちの家庭に溶け込んだ。……これが現状、はっきりとしてる事実」
「……」
「……私からは、あえて何も言わないわ。今のを聞いた上で、これから千歌さんとどう向き合うかは……あなたたち次第よ」
沙紀も、聖良も理亞も、兄弟の問題に立ち入ることは出来ず、ただ克海と功海の様子をじっと見ている。
そして、二人が出した答えは――。
誘拐されたAqoursの九人は、アルトアルベロタワー展望台の隠し部屋で、十字架に掛けられて身動きが取れない状態にあった。千歌は部屋の中央から少しずれたところに、他の八人は壁際に並べられている。
部屋の中央には奇怪な装置が置かれ、そのコードに千歌を除いた八人はつながれていた。
「これより、計画の最終段階を発動する。これにより、我々が欲する力が全て手に入る」
装置の起動スイッチのレバーに手を掛ける氷室に、まだ回復し切っておらず、呼吸が弱い鞠莉が問いかける。
「力……? あなたたちは、私たちから何を得ようとしてるの……?」
「いいだろう。お前たちは当事者なのだから、計画の全容を知る権利がある」
氷室が――グラキエスが、彼女たちをこのような目に遭わせる理由を語り出した。
「我々はかつて、並行世界の地球の人間社会の陰に入り込み、情報を供給、操作する立場になることで繁栄を築いていた。だが、我々は敵対した光の巨人に敗北し、その地球から逃れる他なくなってしまった」
空間に立体モニターが浮かび上がり、闇夜に立つ真紅の巨人――刃のクリスタルのウルトラマンに酷似した戦士の姿が表示された。
「支配体制は完璧だった。それなのに何故敗れ去ったか、その答えは明白だった。――我々には力が無かった! だから今度は、力を手に入れることを優先した。あの戦士に負けないだけの力……同じ光の力、それを宿したクリスタルを求めて、この並行世界へと」
「それって、サルモーネと同じ……!」
梨子がつぶやく。最初に彼女たちが相争った敵、サルモーネもクリスタルを目的としていたと語っていた。
「確かにサルモーネ・グリルドも同じくクリスタルを求めていたので、我々は奴と協力する姿勢を見せた。だが、奴は明らかに大いなる光の力を使いこなす器ではなかった。だから、我々が選び出す器を磨くための当て馬にした。やがて利用価値がなくなったので捨てた。それだけのこと」
「……何てことを……!」
果南が怒りを覚える。サルモーネも非道な輩ではあったが、それを知った上で利用し尽くし、呆気なく切り捨てたグラキエスは、外道そのものだ。
ダイヤはハッと、律子から聞いたことを思い出す。
「では、四年前にμ'sのことを狙ったというのは……!」
「その通り。あの娘たちは、人間の身でありながら光の領域に到達した、765プロの娘たちと同じ資質があった。器として最適。だが捕獲計画は、当の765プロによって阻止された。だから四年後、ターゲットを別の者たちに変更した。つまり、お前たちにな」
青ざめるAqours。自分たちは初めから、この冷酷なる宇宙人に目をつけられていたのだ。
「お前たちは、この星に墜落したウルトラマンを継承した兄弟と協力する身。その構図は、765プロと同じ。ウルトラマンを直接狙うのは、リスクが高いこともある。まさに打ってつけの対象だ。だからサルモーネ、美剣沙紀を通して戦闘の経験を重ねさせ、我々が必要とするだけの光のエネルギーを発揮できるだけの器に鍛え上げた。そうして今、その力を我々が収穫する。――この一連の計画こそが、ルーゴサイト捕獲と並行して進めていた我々の最重要計画」
氷室が悪魔の計画の名を唱える。
「Aqours PROJECT」
「……ふざけないでよ! 私たちを、家畜か何かみたいな目で見てっ! そんなことのために、私たちは頑張ってたんじゃない! 許さないんだから!!」
曜がたまらずに喚き散らしたが、完全に拘束されており、手も足も出すことが出来ない。
「我々からすれば、お前たち人間と家畜に違いなどない。このようにな……!」
氷室が躊躇なく、レバーを動かして装置を起動させる。
途端、八人は十字架からエネルギーを吸い上げられ、高海兄弟とともに過ごし、戦うことで高めていた心の光を強奪されていく。
「あああああああああああ―――――――――――――っっ!!?」
無理矢理生命エネルギーを抜き出されるので相当な苦痛が伴い、八人の絶叫が室内にこだました。
「み、みんなっ! やめて、やめてよぉっ!!」
ただ一人、手をつけられていない千歌が懇願するが、氷室は一切気にも留めない。
八人から抜き取られる光のエネルギーは、部屋の中央の装置に集められ、そしてグラキエスの記憶と混ぜられることでクリスタルの形に実体化していく。
「計画は成功だ……! 我々のクリスタルが出来上がる……!」
そうして完成したのは、映像にあった真紅の巨人と同じ戦士の姿が刻み込まれた、刃のクリスタル。――だが、その戦士の身体は漆黒に染まっていた。
エネルギーを奪い取られた八人は、ぐったりとうなだれる。
「これでルーゴサイトの力、ウルトラマンの力の両方が手に入った。――しかし、まだ一つ、不安材料がある。それがお前だ、高海千歌」
「あうっ!?」
千歌を拘束する十字架に一瞬電流が走り、千歌が悶絶した。
「お前の正体、それだけが不明だ。いくら調べても明瞭としない。以前は予期せぬ事態によって敗北を喫した。だから不安材料は全て取り除いておく。――答えろ、お前は何者だ」
「そ、そんなの、知らない……」
と答えても、電流を浴びせられるだけであった。
「うあぁっ!」
「己でも忘れているというのなら、ショックを与えて思い出させてやろう。記憶は必ず、脳内に残っている」
氷室は全く容赦することなく、千歌を苛み続ける。
「いやあああぁぁぁぁぁぁっ!」
「答えろ。お前はどこから現れた? 何故あの兄弟は、十二年前のあの日、いきなり現れたお前を妹と呼んだ? 何故誰もお前の存在を疑わない? どうやって記憶を操作し、コミュニティに入り込んだのだ。全て答えろ!」
「や、やめて……千歌ちゃんに、ひどいことしないで……!」
梨子たちが力を振り絞って頼むが、こちらも電流で黙らされる。
「あぁぁっ!!」
「み、みんな……!」
どれだけショックを与えても千歌の様子が変わらないので、氷室は言葉責めも浴びせ始める。
「見ろ。そこの奴らは、お前のために苦しんでいるのだ。あの兄弟のことも、ずっと騙し続けて、お前は何と残酷なのだろうな。人間の倫理観で許されることではない。他人の好意につけ込み、利用するなど」
「わ、私は……お兄ちゃんたちの妹で……!」
「まだそんなことを言うか! 最低だな! 恥というものがないのか! 罪悪感があるというのなら、己の本当の姿を思い出せ! さぁ! さぁッ!」
一方的に、身体と心を傷つけられていく千歌。
「あっ、あ、あぁぁ……!」
千歌は耐え切れなくなって――心のままに絶叫した。
「助けて!! お兄ちゃん!!」
『『おおおおおッ!!』』
隠し部屋の壁が外から破られ、二つの巨大な握り拳が突っ込んできた。氷室は後ろに下がって鉄拳をよける。
二つの手が開かれ、千歌たち九人をグラキエスから奪い返して、展望台から引き抜かれる。外に浮いているのは――ロッソとブルだ。
「お兄ちゃん……」
『みんな、大丈夫か!? 遅くなってごめん……!』
『何てひどいことを……テメェ許さねーぞッ!!』
ロッソとブルは磔にされ、息も絶え絶えの千歌たちの状態に、氷室へ憤怒を向けた。かつてないほどに、怒りのボルテージが上がっている。
対照的に、氷室は平然と二人へ言い放つ。
「何故そいつまで助ける。高海千歌は、いや正体の知れないその不審人物は、お前たちを騙し続け、気持ちをもてあそんでいた。妹などと嘘っぱちだ。全てが偽物――どこに助ける義理があるというのだ」
ロッソは、ブルは、ありったけの想いを込めながら言い返した。
『嘘なんかじゃないッ! 俺たちは紛れもない兄妹だ!!』
『血のつながりとか、そんなもんは関係ねーよッ! 俺たちは、心が千歌を妹と認めた! それ以外に必要なもんがあるかッ!!』
『騙されてなんかもいない! 千歌が気持ちをもてあそんでるとか、侮辱するなッ! 俺たちが過ごした時間を、絆を否定する権利なんかお前にはないッ!!』
『誰が何と言おうとッ! 何の証拠もなくてもッ! 誰にも俺たちの関係を偽物だなんて言わせねぇッ! 心が認めてるんだッ!!』
『『俺たちは、家族だと!!』』
ロッソとブル――克海と功海の魂の言葉に、グラキエスは、
「くだらん」
ひと言吐き捨て、漆黒の戦士のクリスタルを、暗黒のジャイロに嵌め込む。
「邪魔者は全て排除する」
グリップを一回、二回と引き、三回目で奪った光を変異させた闇のエネルギーを解き放つ!
[ウルトラセブンXダーク!]
「ウオオオオオッ!」
氷室のボディが暗黒戦士のものに変貌し、猛烈な速度で地上に降り立つ。着地の震動で、周りの建物が薙ぎ倒された。
『『はッ!』』
ロッソとブルも着陸し、千歌たちを拘束から解放して、偽りの巨人と対峙する。
これ以上、家族に指一本触れさせやしない。その熱い想いを胸に。