Aqoursの九名をさらったグラキエスは、彼女たちの光を利用して闇の巨人の力を手に入れた。更に、謎に包まれた千歌の正体を探ろうと彼女を拷問に掛けるが、そこにロッソとブルが救出に駆けつける。光と闇の巨人の激突は、Saint Snowが変身したオーブスノウの助力もあり、ルーブサイドに軍配が上がりかけていた。だがその時、ルーゴサイトが自身を再召喚するという異例の手段で自由の身となってしまう。地球は滅亡の時を迎えてしまうのか……!
空に不気味に浮かぶルーゴサイトの姿を、ルーブ、オーブスノウ、セブンXダークが立ちすくみながら見上げている。
「ウオオォォ――――――――――……!!」
三人の巨人を見下ろしているルーゴサイトは、己の前に破壊エネルギーを渦巻く雲のように発生させると、ビーム状にして発射! 全てを滅ぼし消し去ってしまう、恐るべきゲネシスレクイエムだ!
その矛先は、セブンXダーク!
「!!」
「ウアアアアァァァァァァァ―――――――ッ!!」
直撃を食らったセブンXダークは、一瞬の内にバラバラにされ消滅してしまった。曲りなりにもボルテックバスターに耐えた相手がたった一撃で抹消されたことに、ルーブたちは戦慄する。
『な、何て威力だ……!』
『さっきまでと全然違げぇぞッ!』
セブンXダークを瞬殺したルーゴサイトは地上に降りてくると、翼を収納して陸戦モードと化す。
「ウオオォォ――――――――――……!!」
今度は長い尾から大量のトゲミサイルを発射し、ルーブとオーブスノウに纏めて攻撃を仕掛ける!
「グワアァァァッ!」
『「「きゃあああああっ!」」』
ルーゴサイトの攻撃は、制御されていた時とは破壊力もスピードも訳が違い、ルーブたちはなす術なく蹂躙される。
そして腕から伸びた触手に鞭のように打たれて、大きく宙を舞った。
『『うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――!!』』
ルーブとオーブスノウはダメージが限界を超え、変身が維持できなくなって消え失せていった……!
「お兄ちゃん!! 聖良さんたちまで……!」
「つ、強すぎるずら……! 一方的に、瞬く間に……!」
「桁が違いすぎますわ……!」
ルーブたちがあっさり打ち負かされたことに衝撃を禁じ得ないダイヤらに、律子は冷や汗まみれになりながら告げる。
「惑星を丸ごと呑み込む規模のエネルギーが、ほんの70メートル程度のサイズに凝縮されてるのよ……それも当然だわ……!」
巨人たちを退けても、ルーゴサイトの破壊の手は止まらない。周囲にトゲを雨あられと無差別に降らせて、綾香の街を片っ端から破壊していく。
「ま、街が!!」
「もうどうしようもないの!?」
曜と梨子の悲痛な叫びの後に、沙紀が起き上がってジャイロを拾い直した。
「奴は、私が葬るっ!」
[グルジオレギーナ!!]
「沙紀ちゃんっ!」
千歌が止める間もなく、沙紀はジャイロの力を使ってグルジオレギーナに変化。単身、ルーゴサイトにぶつかっていく。
『うわあぁぁぁぁっ!』
グルジオレギーナが全体重を乗せてルーゴサイトに突進したが、ルーゴサイトには意にも介されないように軽くあしらわれる。
「沙紀ちゃんまで……!」
「これまずくない……!? 仮に美剣沙紀が勝てたとしても……結局地球は終焉を迎えてしまうわよ!」
「何か方法はないの……!?」
善子、鞠莉らが焦りを浮かべていると、律子が踵を返しながら皆に呼び掛ける。
「みんなは克海さんたちのことを頼むわ!」
「先生は!?」
「私はアルトアルベロタワーに行ってくる!」
律子の目がアイゼンテック本社に向く。
「私がルーゴサイトをクリスタル化したのは、グラキエスの予定外。元々の捕獲計画があるはずだわ。それが使えるかもしれない……!」
「わ、分かりました! お願いします、先生っ!!」
懸命に頼む千歌たちに、律子は振り向いて忠告した。
「これだけは言っておくわ……私が許可するまで、誰もウルトラマンにはならないこと! 克海さんたちもよ!」
「!?」
「あれほどの怪物相手……勝算もなしに立ち向かったら、命の保証はないわ! 必ず間に合わせるから……!」
「……分かりました!」
固唾を呑みながら、その指示を受け入れる千歌たち。
返事を聞いてから、律子は車に乗り込んでタワーに急行していった。
「うぅ……!」
「お兄ちゃんっ!」
「大丈夫ですか!? しっかりして下さいっ!」
気絶していた克海は、千歌や梨子らの呼び掛けで目を覚ました。側では、功海や聖良たちがまだ横たわっている。
「ここは……」
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
一瞬記憶が混濁していた克海だが、遠くから轟くグルジオレギーナの咆哮と激しい戦闘の音で、すぐに意識が鮮明になった。
「おい功海! 起きろッ! 目ぇ覚ませッ!」
「か、克兄ぃ……? ……!!」
功海を叩き起こして、ともに小高い場所に駆け上がっていく。
見えたのは、綾香の真ん中でグルジオレギーナとルーゴサイトが争っている光景。
「ウオオォォ――――――――――……!!」
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
ルーゴサイトが口から発した光線により、グルジオレギーナがバランスを崩して転倒。グルジオレギーナ側からの攻撃は全て、ルーゴサイトには通用していなかった。
「美剣までが……!」
「あんな化け物と戦うのかよ……!」
これまでの如何なる敵をも突き放した、圧倒的な戦闘力を見せつけるルーゴサイト。しかし克海たちの覚悟は決まっていた。
「やるしかない……! 行くぞッ!」
二人はすぐに変身しようと構える。
「「俺色に……!?」」
だが、肝心のルーブジャイロを掴み取ろうとする手が、空を切った。
「克兄ぃ、ジャイロがないッ!」
「俺のも……!」
「克海お兄ちゃん、功海お兄ちゃん……!」
千歌の呼び声で振り向くと――二人のジャイロは、彼女が抱えていた。
「千歌、何のつもりだ! 早くこっちに!」
「駄目だよ、二人とも! そんな身体で……!」
「無謀すぎるわっ! 本当に死ぬわよ!?」
千歌に詰め寄ろうとする克海たちを、曜や善子らがさえぎる。
「無謀でもやるしかないだろ!」
「遊びじゃねぇんだぞッ!」
「お待ち下さい! これは律子先生の指示でもあるのですわ!」
血気に逸る二人を、ダイヤがそう言って制止した。
「秋月さんの……?」
「先生は今、アイゼンテック社へ行ってルーゴサイトを止める手段を探しています。きっと何とかして下さいますわ……」
「それでいいのか!? あの人に頼りっぱなしで!」
「ここは俺たちの世界だ! 関係ねぇ人が命懸けで頑張ってくれてんのに、俺たちが何もしねぇなんて……」
「じゃあどうするというの!?」
食い下がる克海と功海を、鞠莉が一喝した。
「……死ぬ気で頑張っても、どうしようもないことはあるのよ……! 克海たちには、死んでからの次があるとでもいうの……!?」
「……それは……」
下唇を噛み締めながら絞り出した鞠莉の言葉に、克海たちは何も言い返せず押し黙った。どうしようもないことに実際に直面した彼女たちに、無責任なことが言えるはずもない。
沈痛の静寂が流れていると、千歌のスマホに律子からの連絡が入る。
「先生からだっ!」
すぐに応対する千歌。画面にアップになる律子の顔を、皆が詰め寄るように覗き込む。
『みんな、ちゃんとそろってるわね。私の方は無事にアイゼンテック社に入ったわ。グラキエスは、もうここにいないみたい』
「先生、ルーゴサイトを止める手段はありますか!?」
『今探してるところよ。大丈夫、ウッチェリーナさんも協力してくれてるから、すぐに見つけ出してみせるわ。だから、克海さんと功海さん』
律子が兄弟の名を呼ぶ。
『もう聞いてると思うけど、変身しては駄目よ。グラキエスも、アバターのアンドロイドが破壊されただけで健在。みんなに危険が及ぶ恐れはまだまだあるわ。だから、あなたたちは仲間を守ることに専念して。それじゃあ、また後で』
念押しして、返事を聞く間もなく電話を切る律子。――しかし、克海と功海の顔には不安が残っていた。
「……秋月さんは本当に大丈夫なのか? あそこが一番危険なところだろ……」
「あの人に何かあったら、今度こそお終いだぜ……! やっぱ、俺たちもタワーに……」
「やだっ!」
不意に、千歌の両手が克海と功海の腕を掴んで、引き止めた。
「お兄ちゃん……どこにも行かないで……! チカ、何だか怖いの……」
「千歌……?」
涙ながらに訴えかけてくる千歌に、克海たちは戸惑いを浮かべた。
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
グルジオレギーナがエルガトリオキャノンを発射する。だが、ボルテックバスターと相殺したほどの砲撃が、ルーゴサイトの張るバリアにいとも簡単に遮断された。
「ウオオォォ――――――――――……!!」
ルーゴサイトの尻尾から絶えることなく撃たれるトゲミサイルが、グルジオレギーナを撃ち抜いて苦しませる。
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
しかしこれを耐え、グルジオレギーナは相手の背後に回り込んで長い尾を抱え込んだ。そのまま力の限り引っ張る。
トゲミサイルを至近距離から撃たれて抵抗されても、その腕は決して離そうとはしなかった。
タワーの社長室まで潜り込んだ律子は、ウッチェリーナとともにアイゼンテックのネットワークを洗いざらい調べ、その中からあるデータを見つけ出していた。
「AZ計画……!」
それは、宇宙から地球に飛来してくる最大の脅威――ルーゴサイトに対抗するためのプラン。グラキエスが持ち込んだ技術による、大型ハドロン衝突型加速器を用いて生み出したエネルギーを水分子に照射し、特殊な振動を起こすことで異次元のゲートを開く装置を使い、ルーゴサイトを異次元空間に封じ込めることで地球を救済するという内容である。サルモーネはこれを自身のヒーロー化に利用するだけのつもりだったようだが、グラキエスの魂胆はその先の、捕獲したルーゴサイトを自身の駒にするところにあった訳だ。
「多次元世界のゲートを開く装置か……そりゃ、あるに決まってるわよね」
因縁の始まりが異次元空間だったことに納得を抱く律子。
同時に、これを使ってルーゴサイトを永遠に封印する作戦も頭の中で組み立てていた。
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
グルジオレギーナは必死にルーゴサイトに抗いながら、ある地点へと誘導しようとしていた。
『まだ……もう少し……!』
その地点に向かって――いくつもの角度から、地表に光る線が走って集まっていく。
『来た……! レイライン!』
[レイライン、発動しました!]
全速力で計算を構築している律子にウッチェリーナが報告すると、律子に一層の焦りが生じる。
「まずいわ……! まだ計算の途中なのに!」
地表に走る光のラインは、克海たちも目撃している。
「何だ、あのラインは……!?」
「アイゼンテックの一点に集まってるけど……!」
「先生が言ってましたわ……」
ダイヤがその正体について、律子から教えられたことを復唱する。
「1300年前の先代ウルトラマンの墜落時に、二人の先代の肉体はクリスタルとなって、生命エネルギーはレイラインという地球を巡るラインとなって飛び散ったと……。美剣さんは1300年間でそのライン全てを逆流するようにし、エネルギーを元の一点に集めた……つまり、墜落現場のアイゼンテック社に……!」
「レイラインを集めると、どうなるんだ……!?」
薄々感づきながらも、問いかける克海。返答は、
「集結したレイラインと、美剣さんの生命エネルギーが結びつくことにより……地球爆破が可能になると……!」
「……!!」
とうとう目前まで迫った地球爆発の時を前に、皆の顔が青くなる。
――千歌が踵を返して、戦場へ走っていこうとするのを、克海が引き止める。
「千歌! どこに行くんだッ!」
「放してっ! 沙紀ちゃんは、友達なの! 死んでほしくない! 何も出来なくても……沙紀ちゃんを止めなきゃ!!」
曜や梨子たちが慌てて千歌を止めに掛かる。
「駄目だよ千歌ちゃん! みんなで先生を待たなきゃ、同じだよっ!」
「あそこに行ったら、千歌ちゃんこそ命がないわ!!」
「それでも、じっとしてられないっ!!」
「千歌ッ!!」
錯乱するように喚く千歌に、克海が強く呼び掛ける。
「俺たちも同じだ……!」
「……!」
「美剣は死なせない……いいや、誰のことも犠牲になんかさせないッ! お前の想い、兄ちゃんたちに任せてくれ……!」
「ああ……俺と克兄ぃで何とかする……!」
功海がAqours、Saint Snowの皆へ振り向く。
「俺と克兄ぃは捨て鉢になってんじゃない。俺たちは、美剣を救いに行く! 分かってくれ……!」
「千歌……ジャイロを俺たちに!」
克海たちの言葉で……千歌は、震える手で二人のジャイロを差し出した。
ジャイロを受け取った克海と功海がうなずき合い、駆け出そうとするのを果南が呼び止める。
「待って! 行くなら、私たちも一緒だよっ!」
その言葉に、曜も、梨子も、善子もルビィも花丸も、ダイヤ、鞠莉、Saint Snowもうなずく。
「みんな……!」
「お兄ちゃん……」
千歌も、克海と功海の袖をぎゅっと握り締める。
「……ああ! みんなで美剣も、地球も救おう!」
兄弟は全員の気持ちを胸にして、全ての命運を決するアイゼンテック社へと全員で向かい出した。