「比企谷はそいつらを守れッ!」
「ああ……!」
八幡を千歌たちの護衛に回し、デュエスは棍を構えてズール星人と対峙する。
『フェッフェッフェッ……ルパーツ星人の小童が。お前のことは聞いてるぞ』
ズール星人はデュエスを見据えると、正面から嘲笑を向けた。
『宇宙の支配者の後継を自称しながら、紛い物のウルトラマンに散々打ちのめされた挙句、絆されて光の側に寝返った恥知らずの出来損ない! お前のような中途半端のゴミクズがトレギア様に盾突こうとは片腹痛いわ!』
罵倒されたデュエスが目を吊り上げる。
「俺のことは好きなだけ言え。だがジードたちを侮辱するのは許さんッ!」
『ワッハハハッ! 許さなかったら、何が出来るというのだぁ!? トレギア様のお力に捻じ伏せられるだけの貴様らにッ!』
スネークダークネスがジェット噴射で飛び回りながら、高空よりブルとジードに集中砲火を浴びせた。
『うわあああぁぁぁぁぁぁ―――――――――――ッ!!』
耐久力の限界を超えて、二人は元の姿に戻って地上に投げ出された。
「功海お兄ちゃんっ!」
「リクッ!」
「キュオオォォ――――――――ッ!」
スネークダークネスの猛威は止まらず、街ごと一同を消し去ろうと迫り来る。
「くッ……!」
『ハァ――――ハハハハハハッ! 星を追放された私を拾って下さったトレギア様のお力は絶大ッ! 貴様ら木っ端如きとは格が違うわぁッ!』
ズール星人は最早見切りをつけ、そのまま退散。
デュエスはそちらを追わず、スネークダークネスの破壊行為をどうにか食い止めようと青い箱型の機械を取り出す。
「頼む、キングオブモンス!」
[バトルナイザー、モンスロード!]
機械からカード型の光が射出され、スネークダークネスの目の前で巨大怪獣の姿に変化した。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
「キュオオォォ――――――――ッ!」
デュエスの繰り出したキングオブモンスがスネークダークネスに組み着いて押し返すが、クローに肩を挟まれて悲鳴を発する。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
「キュオオォォ――――――――ッ!」
「早くブルとジードを連れて逃げるぞッ!」
「ああ……!」
キングオブモンスがスネークダークネスと格闘している間に、デュエスが八幡たちを先導して功海とリクを救出しに向かった。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
「キュオオォォ――――――――ッ!」
キングオブモンスのクレメイトビームがスネークダークネスのトラジェディシャウトとぶつかるが、押し返されて熱線を腹に食らう。
「ヴォオオオオオオオオオオ!」
膝を突いたキングオブモンスはもう立ち上がれず、デュエスに回収される。対するスネークダークネスも体力を使い果たしたか、その場に立ったまま動かなくなった。
「二時間も、よく頑張ってくれた……」
デュエスはバトルナイザーに戻したキングオブモンスを労うも、表情は浮かなかった。
「活動停止に追い込むのが精いっぱいか……状況は厳しいな……」
「大丈夫、リク……?」
「うん……ありがとう」
危険な状態だったリクと功海は、ペガたちの手当てでどうにか回復した。今はアルトアルベロタワーの社長室を借りて、綾香市を襲う敵たちを打ち倒すためにも克海の行方を捜し続けている。
「克兄ぃ、聞いてるか? 返事してくれ!」
功海が無線機に呼び掛け続けるが、返事は一向になかった。ウッチェリーナが報告する。
[通信衛星を介して電波を地球上全土に飛ばしてますが、応答はありません!]
「この分だと、ロッソは宇宙のどこかに飛ばされちまったみてぇだな……」
険しい顔のデュエスに、千歌たちが一縷の望みを込めてすがりつく。
「克海お兄ちゃんを見つけ出す方法はないんですか!?」
「何かこう……魔術でパーッと……!」
「無理だ、そこまで万能じゃない……。どこで拉致されたかも分かんねぇのに、広い宇宙からアテもなく見つけ出そうなんて、砂漠に隠れるダリーを探すようなもんだ……!」
望みが断たれて、善子らが絶望に打ちひしがれる。
「無線の電波を増幅して、宇宙に発信は出来ねぇのか!?」
功海が問うも、デュエスは沈痛の顔で首を振った。
「隣の星系だけで何光年離れてると思ってんだ!? 返事が来るのに、何十万年掛かるか……!」
「くそぉ……!」
完全に八方ふさがり。誰もがどうすることも出来ず、沈黙する一同……。
しかしその中でただ一人、八幡が声を発した。
「克海さんのとこに、一瞬で電波を届けることが出来るかもしれないぞ!」
「何だって!?」
全員が驚いて八幡に振り向く。
「ど、どうやって!?」
「ペガのダークゾーンを使えば、もしかしたら……!」
「ボク!? 役に立てるの!?」
八幡の閃きはこうだ。
「ダークゾーンは虚数次元って言ったろ? つまり三次元と物理法則が違うってことだ。その虚数次元と三次元を上手いことつなげば、電波を宇宙のあらゆる場所に同時に飛ばせるんじゃないか?」
デュエスが少しの間ブツブツと計算し、力強く顔を上げた。
「それならいけるぞ! 流石比企谷……俺の尊敬する男だ」
「ああ! 流石の発想力だよ八幡!」
「比企谷さん、ありがとうっ!」
「わッ!」
希望が見えて大喜びするリクたち。千歌は感極まって八幡に抱き着き、八幡が赤面した。
「よし、すぐ取り掛かるぞ!」
「うん、みんなで克海お兄ちゃんを助けよう! Aqours!」
「「「サンシャイーン!!」」」
千歌たちが声をそろえて気合いを発し、全員で作業に取り掛かった。
「うぅッ……!」
無人の大地の上をあてどなくさまよう克海は、体力的にも精神的にも限界に達し、遂に倒れてしまった。
もうこのまま、誰にも知られることなく朽ち果ててしまうのか……。そんな絶望に駆られる中、彼の口に水が注がれる。
「うッ……?」
「キュウッ、キュウッ」
「ホアーッ」
水を運んできたのは、彼に助けられた三体のピグモンたちだ。
「……」
ピグモンの存在でわずかにでも希望が湧いた克海の耳に、聞き慣れた声が届く。
『……Aqours-1、Aqours-1! 聞こえるか克兄ぃ!』
『克海お兄ちゃん! 返事して!』
「!?」
功海と千歌の声。顔を上げると、リクたちとの出会いからポケットに突っ込んでいたままだった無線機を、ピグモンの一体が持ってきていた。
克海はすぐに無線を受け取って、返答を送った。
「功海! 千歌! 聞こえるか!?」
『よし……!』
無線の電波を増幅する装置のコードを、ペガがダークゾーンに入れて電波を宇宙中に発信している。そしてこちら側のスピーカーが、克海の声を発した。
『功海! 千歌! 聞こえるか!?』
「克兄ぃの声だっ!!」
「ご無事だったのですね……!!」
遂に望んでいた返事が来て、果南たちはわぁっ! と歓声を上げた。ダイヤは目尻の涙をぬぐい取る。
デュエスはマイクを手繰り寄せて克海に尋ねる。
「今どこだッ! 周囲の特徴は!?」
『太陽が三つある……あと、空にいくつも縦筋みたいなのが……』
「そいつはその惑星の外輪だ! 他には!? どんな生き物がいるとか!」
『今、周りに……赤いヒダの動物が……前にあんたが連れてた……』
『ホアァーッ!』
克海の声に混じって聞こえたピグモンの鳴き声に、ハッと顔を上げるデュエス。
「ピグモンだ……。外輪とピグモンがいる惑星がある、恒星が三つの星系といえば……!」
空中に立体星図を出し、その内の惑星を示す点の一つを指差す。
「ホスター21星系! ここだッ!」
「ウッチェリーナ、ハドロン衝突型加速器のターゲットをその星の、電波の発信源に!」
功海の指示で、ウッチェリーナが座標を特定する。
[入力完了しました! 磁気パルス上昇、発射準備完了です!]
準備が整い、功海が命令を発した。
「目標、ホスター21! ハドロン加速砲、発射!!」
タワーのアンテナから空へ光線が放たれ、時空間のゲートを開く――。
時空のゲートは星と星をつなぎ、克海の頭上にも開いた。
「……ありがとう……!」
ゲートへと引っ張り上げられる中、克海は助けてくれたピグモンたちに感謝の言葉を送った。
「ホアーッ!」
「キュウッ! キュウッ!」
ピグモンたちはブンブン手を振り、地球へと帰っていく克海を見送った。
功海たちが地下の時空間ゲート発生装置のところへ駆けつけると、ちょうど克海がゲートをくぐって帰還してくるところであった。
「克兄ぃ!!」
「功海ぃー!!」
真っ先に手を伸ばす功海と、克海の手と手が重なり合い――克海を引き戻す。
「うわぁッ!」
投げ出されて、もつれ合って倒れる兄弟。その周りに集まる千歌たち。
「克海お兄ちゃんっ! 良かった……!」
「克海さぁん……!」
「克兄ぃぃ……!」
「克海さん……!」
「克兄ぃ……!」
「克海……!」
「克海さん……!」
「オォウ……克海……!」
「克海さん……うぅ……!」
千歌が、梨子が、果南が、ダイヤが、曜が、善子が、花丸が、鞠莉が、ルビィが、感涙しながら克海の帰還を静かに喜んでいる。
克海と功海は、言葉も使わずに意志を交わし合って、ガッガッ! と手を合わせた。
「行こう! 綾香市が俺たちを待ってる!」
復帰した克海の一番の台詞は、それであった。
「キュオオォォ――――――――ッ!」
スネークダークネスは体力を回復すると、すぐに火を吐いて破壊行為を再開する。
その現場に駆けつける、ウルトラマンと仲間たち。スネークダークネスに立ち向かう前に、克海が皆に告げる。
「あの怪獣の中には、俺の大事な友達がいるんだ! 何とかして助けたい……! みんな協力してくれ!!」
リクたちが固くうなずく。
「ああ!」
「そういう経験もある……やってやるぜ」
「それでこそウルトラマンだ……!」
克海と功海は、Aqoursの八人が見守る中、拳を打ち鳴らし合ってルーブジャイロを構えた。
「「俺色に染め上げろ! ルーブ!!」」
リクと八幡はうなずき合って、光とともに二人の身体を重ね合った。
『ジーッとしてても!』「ドーにもならねぇ!」
克海たちは極クリスタルに手を伸ばし、八幡はホルダーからウルトラカプセルを取り出す。
[極クリスタル!]
「「セレクト、クリスタル!」」
「ユーゴーッ! アイゴーッ! ヒアウィーゴーッ!!」
[兄弟の力を一つに!]
[フュージョンライズ!]
極クリスタルをジャイロにセットして六人のウルトラ戦士のビジョンを召喚し、ジードライザーは装填ナックルをスキャン。
「「纏うは極! 金色の宇宙!!」」
「ジィィィ―――――――ドッ!」
ジャイロのグリップが三回引かれ、ライザーのエネルギーが八幡の身体と融合し、変身!
[ウルトラマンルーブ!!]
[ウルトラマン! ウルトラマンベリアル!]
[ウルトラマンジード! プリミティブ!!]
「デュワッ!」
「シュアッ!」
ウルトラマンルーブとウルトラマンジードが飛び出していく!
[グルジオレギーナ!!]
千歌は撃のクリスタルをジャイロにセットして、グリップを引く。
「カン! カン! ミカン!!」
千歌の身体が超鎧装獣グルジオレギーナのものに変身!
「イッツ! アワー! ショウタイム!!」
[フュージョンライズ!]
デュエスは怪獣カプセル二本をライザーでスキャン。
「おおおおおおおッ! はぁッ!」
[ゴモラ! レッドキング!]
[ルパーツ星人デュエス! スカルゴモラ!!]
デュエス融合獣スカルゴモラとなり、二人のウルトラマン、二体の怪獣が並び立った!
「克海さんっ! 功海さんっ!」
「千歌ちゃぁーんっ! がんばれぇ―――!」
「リク! 八幡! デュエス! 行けぇーッ!」
仲間たちが彼らの背中に向けて、力いっぱいの声援を送る。
「キュオオォォ――――――――ッ!」
『『行くぞ!』』
『「決めるぜ! 覚悟!!」』
向き直ったスネークダークネスに、ルーブとジードが向かっていく!
『『ルーブコウリン!』』
「ハァッ!」
スネークダークネスのクローをジードが掴んで止め、ルーブがコウリンを胸に打ち込む。そして交互に斬撃と平手打ちを浴びせて隙を作る。
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
「ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!」
そこにグルジオレギーナのエルガトリオキャノンとスカルゴモラのスカル超振動波が放たれた!
二体の攻撃は、守りががら空きのスネークダークネスを撃ち抜いたかに見えたが――青い腕に打ち払われる。
「あれは……!」
険しい顔となるAqours。スネークダークネスの前に、トレギアが全身を現して乱入してきたのだ!
『よくあの星から戻れたねぇ、運のいい奴だ』
トレギアはルーブを指差し、克海に向けて言った。克海は毅然と言い返す。
『運なんかじゃない! 家族の絆が呼び戻したんだッ!』
ジードもトレギアには怒り心頭だ。
『人の心をもてあそぶお前を許さないッ!』
『「ウルトラマンだろうが、おふざけが過ぎるぜッ!」』
八幡はベリアルカプセルとキングカプセルをスキャンして、召喚したキングソードにキングカプセルを装填する。
『「ジィィィ―――――――ドッ!」』
[ウルトラマンジード! ロイヤルメガマスター!!]
ジード・ロイヤルメガマスターにフュージョンライズし、キングソードを武器に飛び出す。
『「変えるぜ! 運命!!」』
『お前たちの運命など、スネークダークネスには通用しないッ!』
ジードを迎え撃とうとするトレギアだが、突進してきたスカルゴモラに足を止められた。
『「ジード! お前は怪獣の方をッ!」』
『ハッ……悪の心を捨てた搾りかす風情が、私を足止め出来るとでも? 笑わせるッ!』
トレギアは平手打ち一発でスカルゴモラを弾き返した。
『「ぐッ……!」』
『悪とは力だ。お前の今の魂は元の半分以下しかない。もう以前のような力は発揮できないのだろう?』
トレギアの指摘は、デュエスの図星であった。
『だから中途半端のゴミクズなのさ。いっそのこと、元の状態に戻れば幾らかマシになるかもしれないぞ?』
指を向けて嘲るトレギアに対して、デュエスははっきり言い返す。
『「たとえ中途半端のゴミクズでも……俺はもう闇には沈まねぇッ! 友達が示してくれた光の道を、歩み続ける覚悟を決めたんだッ!!」』
それを聞いたトレギアは、侮蔑を込めて吐き捨てる。
『あーあー甘い甘い甘ったるい……! 光とか唱えれば、罪にまみれた過去が消えるとでも!? 話にならないねッ!!』
スカルゴモラに光線攻撃を向けようとするトレギアを、ビルの屋上に現れたズール星人が呼び止める。
『トレギア様、そんなカスをあなた様自ら相手なさるまでもありません。私が始末しましょうッ! おおおおおおッ!!』
ズール星人の肉体が闇とともに膨れ上がっていき――怪獣の姿と変わり果てた!
「ピポポポポポポ……!! ゼットォーン……!」
『「あれは……!?」』
絶句するデュエス。ズール星人は複製融合獣ダークオーヴァーゼットンに変身したのだ!
『『ワハハハハハハッ! これが偉大なるトレギア様のお力だぁッ! ルパーツ星人如きが必死こいて生み出したものなど、トレギア様の御手に掛かれば容易いもの!!』』
『「ちッ……! 当てつけかよ……!」』
ジードが剣を構えてオーヴァーゼットンに斬りかかろうとするのを、スカルゴモラが制止する。
『「あれは俺の罪だ。俺が相手するッ! お前たちには手出しさせねぇ!」』
『無理はしないでくれ……! はぁッ!』
ジードとスカルゴモラは立ち位置を変え、ジードがトレギアと、スカルゴモラがダークオーヴァーゼットンと衝突する。
「ハァァッ!」
「フッ……!」
「ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!」
「ゼットォーン……! ピポポポポポポ……!!」
ルーブはグルジオレギーナとともにスネークダークネスと戦う。
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
「オオオオッ!」
兄妹の息の合った連携でスネークダークネスの攻撃を封じ込み、ルーブのドロップキックを炸裂させる。
高海兄妹は恐ろしい怪獣スネークダークネスにも善戦しているが、トレギアはウルトラマンキングの力を宿すジード相手に互角以上の戦いぶりを見せている。
「ハァッ!」
ジードの剣戟を跳んでかわし、後ろ蹴りでジードを押しのけると、空中に飛び上がって高速回転を始める。
「シュアッ!!」
回転キック、ギアギダージでジード、ルーブ、グルジオレギーナを纏めて吹き飛ばした!
「ギュオオオォォォ―――――ン!!」
『『うわぁぁッ!!』』
途轍もない衝撃を食らい、ルーブがロッソとブルに分離され、ジードはプリミティブの状態に戻ってしまった。
『「お前らッ!」』
焦るデュエスだが、こちらもオーヴァーゼットンの猛攻を食らう。
「ピポポポポポポ……!!」
『「ぐぅッ!」』
鉤爪でスカルゴモラの体表を連続で切り裂く。後ろに下がったスカルゴモラは、角からスカル超振動波を発射。
「ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!」
「ゼットォーン……!」
だがバリアで呆気なく防がれ、暗黒火球をお返しされた。
『「がぁぁぁッ!」』
膝を撃ち抜かれたスカルゴモラが倒れ伏し、その頭をオーヴァーゼットンが踏みつける。
『『ウワハハハハハハハッ! 光だ何だの言って、これが現実よッ! どうだ悔しいかぁ!!』』
『「ぐぅぅぅぅッ……!」』
デュエスの覚悟を、ズール星人が嘲りながらぐりぐりと踏みにじる。
「そんな……克海さんたちが、こんなに簡単に……!」
「こんなことってある……!?」
梨子、曜たちは、トレギアの軍勢に蹴散らされるロッソたちに絶句していた。ウルトラマンたちはカラータイマーが鳴り、既に追いつめられている。
『千歌、お前だけでもみんなを連れて逃げてくれ……!』
『お前は妹なんだから……!』
ロッソ、ブルはせめて千歌を逃がそうとするが、千歌はそれにはうなずかなかった。
『妹だからなんて理由にはならないよっ! 言ったでしょ……? 私たち、ずーっと一緒だって!!』
叫んだその時――千歌の精神体から光の粒子が溢れ、一人の少女の姿となって向かい合った。
『古き友は言った。天使は苦悩する者のために戦う。フローレンス・ナイチンゲール』
『沙紀ちゃん!!』
それは千歌の前世……魂に今なお残る、沙紀の記憶が具現化したものだ。
『沙紀ちゃん、ほんと物知り……本当に私って沙紀ちゃんなのかな?』
『紛れもなく、千歌は私さ。いや、私を超えていく』
沙紀が千歌に寄り添う。
『さぁ行こう、私が至れなかった境地へ。けれど、私はずっとすぐ側にいる』
『うん!!』
グルジオレギーナを覆う装甲に――突然ヒビが入った!
「何!?」
目を見張るAqours。何が起きているのか!
『カン! カン! ミカン!!』
割れていくグルジオレギーナの肉体の中から何かがゆっくりと起き上がってきて、掛け声とともに立ち上がった!