ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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勇気があったらダイジョウブ!(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

克海「アイゼンテックを襲った怪獣との戦いで、俺と功海は新しい武器、ルーブスラッガーを手に入れた。千歌たちの方もライブが大成功して、スクールアイドル部を出発できた! だが順風満帆とはいかないみたいで……」

 

 

 

 内浦と綾香の中間ほどの位置にある山間部。いつもなら小鳥がさえずる声が聞こえる程度の閑静な場所であるが、今は激しい地響きが山を騒がせていた。

 

『ぐはッ!』

『うわぁぁーッ!』

 

 ロッソアクアとブルフレイムが、敵に弾き飛ばされて地面の上に横倒しとなった。

 その敵の怪獣が、左手の鉄球と右手の鎌を打ち鳴らして咆哮を上げる。

 

「キィィィィィィィィッ!」

 

 五体の皮膚の形状が、つけ根を境に別々のものとなっている、一個の生命体としては不自然な肉体の怪獣。その名もタイラント! ロッソとブルは二人がかりでも、このタイラントの異様なまでの戦闘能力に追いつめられていた。

 

『克兄ぃ、あいつやばいよ! めっちゃ強えぇよ!?』

『けど俺たちは、逃げる訳にはいかないんだ! もう一度行くぞ!』

 

 既にカラータイマーが赤く点滅しているが、ブルとロッソは立ち上がって遠距離攻撃を仕掛ける。

 

『食らえッ!』

『いっけぇーッ!』

 

 ロッソがスプラッシュ・ボム、ブルがフレイムエクリクスを繰り出す。

 

「キィィィィィィィィッ!」

 

 だがタイラントの腹部にある五角形の口が開くと、二人の水と炎の攻撃を両方とも吸いこんでしまった。

 

『駄目だ、効かない!』

『ちっくしょう! 光線が駄目なら、武器で勝負だ!』

 

 ブルとロッソが角に手を添えて、ルーブスラッガーを引っ張り出した。

 

『ルーブスラッガーブル!』

『ルーブスラッガーロッソ!』

 

 一刀の長剣と二刀の短剣を構え、二人同時に斬りかかっていく。

 

『てやぁぁーッ!』

『はぁッ!』

「キィィィィィィィィッ!」

 

 が、タイラントの両腕の鎌と鉄球で易々と受け止められ、二人とも押し返された。

 

『うわぁぁッ! くッ……どの攻撃も通用しない……!』

『まずいよ克兄ぃ……! もう時間ないってのに……!』

 

 パワーでは圧倒され、光線も剣もまるで通じない。カラータイマーの点滅ばかりが早まっていく。手詰まりの状況にロッソもブルも、ジリジリと後ずさりする他なかった。

 

「キィィィィィィィィッ!」

 

 タイラントは口に炎を溜め、ロッソたちに吐き出そうとする。咄嗟に顔を腕でかばう二人。

 ……しかし、タイラントは突然ポンッと煙とともに消失した。

 

『あ、あれ……?』

『消えた……?』

 

 何の前兆もない事態に、ロッソたちはポカンと呆気にとられた。

 しかし待てども暮らせども、タイラントが再び二人の前に出てくることはなかった。

 

 

 

『勇気があったらダイジョウブ!』

 

 

 

 『四つ角』に帰宅すると、居間で功海がぼやいた。

 

「いや~、一時はどうなることかと思ったけどさ、怪獣いなくなってほんとラッキーだよな~。助かったぜ!」

 

 タイラントの突然の消失を楽観的に捉える功海を、克海が咎める。

 

「そんな気楽に構えてたら駄目だろ! 何でいきなり、どうやって消えたのかは分からないが、俺たちは倒した訳じゃないんだ。怪獣はきっと、また現れる」

 

 再出現の可能性を指摘され、功海がげんなりとした顔となった。

 

「うッ、だよな……むしろやられっぱなしだったもんな、俺たち」

「ああ……。次は助からないかもしれない。その前に、どうにかしてあの怪獣をやっつける手段を考えないと」

「そんな簡単に言うけどさー……実際どうすんだよ、あれ。こっちの攻撃がどれも、全然効かないんだぜ? 正直、手の打ちようがねーよ」

 

 すっかりお手上げの功海。克海も渋い顔。

 

「そこだよな、問題は……。あの怪獣と俺たちじゃ、地力が違いすぎる。そこをどうにかしないことには、きっと何したって無駄だぞ」

「地力の差ねぇ……。ほんと、どうすりゃいいんだろうな」

「お兄ちゃんたち、二人で難しい顔して何やってるの?」

 

 うんうんと頭を悩ませていたら、居間に入ってきた千歌がきょとんと克海たちを見比べた。二人は慌てて千歌に向き直る。

 

「ち、千歌! 帰ってきてたのか」

「ちゃんとただいまって言ったよー? 聞こえなかったの? 私の声が聞こえないくらい熱心に、何の話をしてたの? 教えて~チカにも教えてよ~」

 

 畳み掛けるような質問からのおねだりをしてくる千歌。しかし、本当のことを言う訳にはいかない克海たちは言葉を詰まらせた。

 

「そ、それはだな……功海」

「えっと……大人の男の話さ! 千歌にはまだ早えーよ」

 

 克海に振られた功海が適当にごまかしに掛かる。

 

「えー? 何それ。私だけのけ者にするつもりなのー!? ほんと、お兄ちゃんたち最近おかしいよ!」

「えぇーい、いいからいいから! それより、スクールアイドルの方は順調なのか? 確か部は承認されたんだったよな?」

「そうそう。スタートラインを切ってからが大変なんだぞ、千歌」

 

 話題のすり替えをして千歌の意識をそらそうとする功海と克海。果たして、千歌は二人の目論見通りに追及をやめた。

 

「うん! ちゃんと部室ももらえたし。まだ片づけがちょっと終わってないけど……でも、新しい部員候補の子たちも見つけたし! スクールアイドル部はこれからどんどん大きくなってくよー!」

「子たちってことは、何人かいるのか」

「まぁ二人だけどね。一年生で、国木田花丸ちゃんと黒澤ルビィちゃんって言うの!」

 

 黒澤ルビィという名前に、克海が千歌に振り向き直った。

 

「そのルビィって子……」

「うん。生徒会長の妹さんなんだって。だけど生徒会長と違って、スクールアイドル大好きみたい! とってもかわいいし、ここは是非ウチに入ってもらわないと~」

 

 うへへ、と嫌らしい表情をする千歌に功海は呆れ顔。

 

「あんま強引な勧誘すんなよー? 桜内さんの時は上手く行ったみたいだけど、そうそう何度も成功するとは限らねぇんだからな」

「分かってるってぇ」

 

 功海が千歌と話している一方で、克海は複雑な表情であった。

 

「……練習はちゃんとやってるんだろうな?」

「そりゃあもちろん! 毎日頑張ってるし、スタミナつけるために神社の階段の昇り降りだってやってるんだから! あの長いので!」

「へ~。毎日朝早くに家出るのはそれが理由か。あの千歌が、よくやるもんだなー」

「ちょっと功海お兄ちゃ~ん? それってどういう意味かな~?」

 

 千歌がむぅ~とむくれていると、今の話を聞いた克海が顎に手をやった。

 

「スタミナか……」

 

 

 

 翌早朝。梨子と曜は連れ立ってグルジオを祀る「偶龍璽王神社」の長い石段前へと向かっていた。

 

「千歌ちゃん、今日は先に行ってるみたいだね。何故か功兄ぃも克兄ぃも今朝は留守だったけど……」

「克海さんと、功海さん……。二人の身体は大丈夫なのかしら? 昨日は、大分危なかったみたいだし……」

「ああ、そっか……そうだったよね……」

 

 梨子が言外にウルトラマンのことに触れると、曜が複雑そうにうつむいた。

 

「どうなんだろ……。功兄ぃたち、何だかんだで弱いとこは見せたがらないからなぁ」

「怪獣との戦いなんか続けてて、身体が持つのかしら……。まぁ身体のことなら、私たちも壊しそうなことしてるけど……」

「今日は最後まで休憩なしで昇り切れるかなぁ……?」

 

 などと話しながら階段前に到着すると、意外な先客の顔を目にすることとなった。

 

「か、克兄ぃ……ちょっと休憩しようよ……。もう動けねぇって……」

「だらしないぞ、功海! もっと根性見せろ!」

「あれっ、功兄ぃ克兄ぃ!?」

 

 石段の上から克海が、ヘトヘトになっている功海を引っ張るようにしながら降りてきたのとばったり出くわし、曜たちは面食らった。

 

「ああ曜ちゃん、桜内さん」

「千歌なら、上で休んでるぜ……」

「そうなんだ……ってそうじゃなくて。克海さんたちまでどうして?」

 

 梨子が尋ねると、克海が功海を指差しながら答える。

 

「いや、最近こいつ運動不足でだらしないから、兄としてちょっと鍛えてやらなきゃと思ってな」

「……まぁ、そんな説明を千歌や果南にはしたんだけど……」

 

 つけ加える功海。兄弟の事情を知る曜たちは、本当の理由に察しがついた。

 

「……昨日の怪獣に対抗するための特訓って訳なんだ」

「知ってんのか?」

 

 功海が聞き返すと、曜はスマホを取り出して一本の動画を見せた。

 昨日の、二人がタイラントと戦い、追いつめられるまでの一部始終であった。

 

「うわッ、あれ撮ってる人がいたのか……」

「全然気づかなかったなぁ……」

「ねぇ、克兄ぃ、功兄ぃ……」

 

 呆気にとられる克海たちに、曜と梨子が恐る恐る尋ねる。

 

「何て言うか……大丈夫なの? すっごい一方的にやられてるじゃん……。また同じのが出てきたら、次はもしかしたら……」

「私も心配です……。失礼ですけど、階段を昇り降りするくらいで、勝てるようになるんでしょうか?」

 

 二人の意見に合わせるように、功海も克海に文句をつける。

 

「だから言ったろ、克兄ぃ。今から足腰鍛える程度でどうなるんだよ。何か別の方法を……」

「そんなこと言っても、他にいい手なんかあるのか?」

「そ、それもそうだけど……」

「うんうん考え続けて、結論が出なかったら結局時間の無駄だぞ。とりあえず、やれることをやるんだ」

 

 ピシャリと功海をはねつけた克海が、努めて明るく振る舞って曜たちに向き直った。

 

「心配してくれてありがとう。だけどこれは俺たちの問題だ。俺たちでどうにかしてみせるさ」

「だけど……」

 

 曜が反論しかけたところで、上から更にもう一人階段を駆け下りてきた。

 

「あっ、二人も来たんだ。急にここ、人気になったね」

「果南ちゃん!」

 

 階段を走って降りてくる果南の姿に、曜がまさかと驚く。

 

「もしかして往復してきたの? この長い階段!」

「一応ね。日課だから」

「日課!?」

 

 何でもないことのようなひと言にますます驚く梨子たち。だが果南は気にする様子もなく克海たちに向き直った。

 

「千歌たちはともかく、克兄ぃたちまでランニング始めるなんてね。どんな風の吹き回しか知らないけど、まぁ頑張って」

「ああ」

「じゃあ、店開けないといけないから。じゃあね!」

 

 ひと言残して、果南はそのまま走って神社前から去っていった。その後ろ姿を見送って、呆然とする梨子たち。

 

「息一つ切れてないなんて……」

「上には上がいるってことだね……」

「ほら功海! 果南ちゃんに負けてて悔しくないのか! もうひとっ走り行くぞ!」

「ち、ちょっと克兄ぃ、待ってよ~……!」

 

 克海から発破を掛けられた功海が、しぶしぶながら彼の後に続いて石段を駆け上がっていく。

 

「あっ……!」

 

 置いていかれる形となった曜は、梨子にこう話しかけた。

 

「やっぱり心配だな、功兄ぃたち……。やっぱり、前やったように私が力を貸せば……!」

 

 一瞬そう考えた曜だが、梨子に諭される。

 

「でも、それは当然危険なんでしょう? もしものことがあったら……スクールアイドルも出来なくなるかもしれない。そしたら、千歌ちゃんがすごく悲しむはずよ」

「うっ……それも、そうだけど……」

 

 言葉に詰まる曜。梨子も彼女の気持ちには同感するものがあったが、それでも危険なことはさせたくないという気持ちの方が強かった。

 

「……上で千歌ちゃんが待ってるわ。早く行きましょう」

「うん……」

 

 沈黙が流れた二人は、いたたまれなくなって階段を上がっていこうとする。が、その寸前、曜が不意に後ろに振り返った。

 

「?」

「どうかしたの?」

「いや……何か、誰かに見られてるような気がして」

 

 しかし、周りにはどこにも人の姿らしきものは見受けられなかった。

 

「や、やめてよ、変なこと言うの。さっ、行きましょ」

「うん……」

 

 首をひねりながらも、曜は梨子の後に続いて石段を昇っていった。

 ――その姿がなくなってから、近くの茂みの中からひよこ色のドローンが出てきて綾香の方向へ飛び去っていった。

 

 

 

 その日の放課後、千歌たちが立ち上げたスクールアイドル部に仮入部希望者がやって来た。千歌が目をつけた、国木田花丸と黒澤ルビィの二名である。特に千歌がこれに喜び、自分たちの活動を親身に紹介していった。練習場所など、まだ定まっていない部分もあったが……どうにか無事に解決していった。

 そして、偶龍璽王神社の階段の昇り降りも紹介する。

 

「これ、いつも昇ってるんですか!?」

 

 驚き混じりのルビィの問いに、千歌が自慢げに答えた。

 

「もちろんっ!」

「いつも途中で休憩しちゃうんだけどね」

「えへへ~……」

 

 曜のツッコミに、照れ隠しに頬をかく千歌であった。

 

「でも、ライブで何曲も歌うには、頂上まで駆け上がるスタミナが必要だし」

「じゃあ、μ's目指して……」

 

 スタートの合図を出そうとした千歌だが、その直前に、

 

「おーい! 君たちー!」

「ん?」

 

 上から大きな呼び声がしたので、五人が思わず顔を上げると……空から飛行装置を背負った人がゆっくりと降りてきた。

 

「愛染さん!」

「えぇーっ!? と、飛んでるよぉ……」

「み、未来ずらぁ……」

 

 愛染である。人が空を飛んでいるところを初めて目にしたルビィと花丸は驚き、花丸は思わず口走った言葉に慌てて口を閉ざした。

 

「どうも。愛と正義の伝道師、愛染正義です!」

 

 着陸してトレードマークのハートマークを手で作った愛染に、千歌が尋ねる。

 

「愛染さん、どうしてこんなところに?」

「いやぁ~、先日の君たちのライブがとっても良かったからねぇ! 退社ついでに、ちょっと様子見に寄ってみたという訳だよ」

「えぇ~!? 愛染さんに良かったなんて言ってもらえて、こっちこそ嬉しいですよぉ」

 

 にへへ~、とだらしなく破顔する千歌。

 

「その後順調かな? ん? おぉッ! 新しい部員がいるではないか~! うむ、良き哉良き哉!」

「いえ、二人はまだ仮入部者で……」

「ハッハッハッ。仮入部なんて、もう新入部員も同然だろうて!」

 

 梨子の訂正を軽く笑い飛ばしながら、愛染は花丸とルビィに向き直った。

 

「やぁやぁお初に。君たちもスクールアイドルは好きかい?」

「ぴぎっ!?」

 

 気さくに話しかける愛染だが、ルビィはその途端奇声を上げ、さっと花丸の陰に隠れた。

 

「おやおやどうしたんだい」

「すみません。ルビィちゃん、極度の人見知りで……」

「うーむなるほど。アイドルとしてはちょっと難点だが、そこも逆に個性! 頑張んなさい!」

 

 まともに話が出来ないルビィの代わりに謝る花丸だが、愛染は気にした風もなく、今度は梨子と曜に顔を向けた。

 

「ところで……そこのお二人は、何だか元気がないね」

「えっ……そうでしょうか?」

「何か大きな悩み事でもあるのかな? そうだろうねぇ。悩みのある人は、ちょうど君たちみたいな顔をする」

「そうなの? 曜ちゃん、梨子ちゃん」

 

 面食らって振り向く千歌。二人が何か答える前に、愛染が続けて話した。

 

「アイドルというものは、得てして重大な局面にぶつかるものだ。しかし、逃げていてはいけない! 真に人を笑顔にするアイドルとは、どんなことにもチャレンジして、試練を乗り越えて光り輝くのだ! たとえ、どんなことだろうとね」

 

 「どんなこと」を強調する愛染は、短冊を取り出して梨子たちに見せつける。

 

「そうッ! 『石橋にノンストップで行ってみましょ』だ! くれぐれもよく覚えといてね」

 

 梨子と曜は、思わず顔を見合わせた。

 

「おっと、すっかり邪魔しちゃったかな。いやぁ~失敬失敬」

「いえ、そんなことは全然……!」

「いやいや。スクールアイドルに時間は貴重だ。それじゃ、ラブライブ目指して頑張ってね~! バイバ~イ」

 

 謙遜する千歌に構わず、愛染は手を振りながら飛行装置で再び空に飛び上がり、五人の前から去っていった。

 

「はぁ~、相変わらず愛染さんはすごい人だなぁ。私たちも、負けてらんないよね!」

 

 気合いを入れ直した千歌が、スクールアイドルのトレーニングに皆の意識を戻す。

 

「それじゃあ改めて、よーいドーン!」

 

 そして今度こそ、皆で階段に向かって一斉に走り出していった。

 

 

 

 ――千歌たちの前から去って、帰ったものと見せかけた愛染は、人気のない山の中に密かに降り立って身を隠した。

 

「さってと……今日もよろしく頼むよぉ」

 

 愛染がそう呼び掛けたのは、懐から取り出した、「氷」のタイラントのクリスタルであった……。

 

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