ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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待っててウイニングボール(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

功海「内浦に現れた怪獣! こいつがまた強くて、俺と克兄ぃは大弱り。だけど曜と梨子の協力のお陰で、ぶっ倒すことに成功したぜ! 千歌たちのAqoursにも新しい子たちが入って、さーて今回は何が起こるかなー?」

 

 

 

 内浦の草野球場。ここで十名前後の、野球のユニフォーム姿の中年男性たちがうさぎ跳びでグルグル回っていた。

 

「厳しい道をッ!」

「厳しい道をー!」

「みんなど根性ッ!」

「みんなど根性ー!」

 

 この集団に、棒で地面をバシバシ叩きながら喝を入れているのは克海。――そんな彼に、様子を目の当たりにした功海が告げる。

 

「医学的見地から見てさ、うさぎ跳びは膝に悪いよ」

 

 デェーンッ!

 と、克海がショックを受けた。

 

 

 

 夜には克海は、『四つ角』で『根性論』なる本を読み込んでいた。

 

「最強のチームを作る方法……根性と気合いが全てだ……!」

 

 そこに千歌が横からマネジメント論の本を差し込む。

 

「今時根性論じゃチームは引っ張れないって」

「マネージメントぉ!?」

 

 デェーンッ!

 と、克海がショックを受けた。

 

 

 

 朝には、『四つ角』に来た曜に克海がユニフォームの依頼をしていた。

 

「胸に大きく気合いの文字を入れてほしいんだ」

「……克兄ぃ、率直に言うね」

「何だ?」

「ダサい」

 

 デェーンッ!

 と、克海がショックを受けた……。

 

 

 

『待っててウイニングボール』

 

 

 

 再び草野球場。克海の所属する内浦の町内会の野球チームが、トレーニングに勤しんでいる。それをAqoursの五人と功海が遠巻きに見守っていた。

 

「克兄ぃ、珍しく熱くなってんなー」

「近所の噂になってるよ。万年ビリのホワイトベアーズが、本気になってるって」

 

 千歌に続いて、曜がつぶやく。

 

「高校の時以来だよね。克兄ぃがあんなに熱心なの」

「ねぇ、どうして克海さんはあんなに野球に一生懸命なの?」

 

 梨子のみならず、花丸やルビィも不思議そうな顔をしている。事情を詳しく知らない彼女たちに、曜が説明を始めた。

 

「ああ、梨子ちゃんたちは知らないか。克兄ぃね、高校までは名ピッチャーとして有名だったんだよ」

「えっ、そうだったんだ」

「そういえば昔、お姉ちゃんがそんなこと言ってたような……」

 

 功海にまだ慣れておらず、花丸の陰に隠れがちのルビィがつぶやいた。

 曜とともに功海が、当時の克海について語る。

 

「大学野球からもスカウトがたくさん来るほどの実力だったんだぜ。だけどその年に、ウチの旅館で働いてた人が齢で辞めちゃってさ、人手が足りなくなっちゃったんだよ。母さんはアイゼンテックに勤めてるし、克兄ぃはウチのために大学行かなかったんだよな」

「そんなことがあったなんて……」

 

 克海の野球を断念した過去を知り、表情を曇らせる梨子。彼女に代わって花丸が問い返す。

 

「でもだからって、何で今になって特訓始めたずら?」

「それがさ……あの監督の熊城って人」

 

 功海がチームの中心で指示を出している、一番恰幅が良く年齢の行っている老人を顎でしゃくった。

 

「あの人、次の試合で監督辞めちゃうんだって」

「えっ……!?」

「熊城さん、半年前に胃の手術をしたそうで、もう歳だってこともあって体力的に続けられないんだってさ。で、克兄ぃは最後の試合に勝って、熊城さんを胴上げしたいって頑張ってるんだよ」

 

 梨子たちは複雑な顔で、克海とは対照的にのんきな顔をしている熊城を見やった。千歌は功海に振り向く。

 

「熊城さんって、克海お兄ちゃんの高校の時の野球部の先生なんだっけ」

「ああ。克兄ぃの野球の才能を見出したのがあの人だよ。大学野球に行かなかった克兄ぃを草野球に誘ったのも熊城さん。だから、克兄ぃは熊城さんに恩を感じてるって訳だ」

「そうなんですか……。だったらなおさらですよね……」

 

 熊城のために必死になっている克海を案じながらも、今回ばかりは梨子たちもただ見守る他なかった。

 

 

 

 Aqoursも練習に行った後、『四つ角』に集まったチームに克海が焦り気味に呼び掛ける。

 

「綾香商店街との試合は明日です! この調子では間に合いません! 夜も特訓しましょうッ!」

「えぇッ!?」

 

 流石に動揺するチーム。その内の一人、ひげ面の男性が克海に言い返す。

 

「このままじゃ、へばって却って試合に差し障るよ」

「そうだよ。カッちゃんだって大分キテるよねぇ」

「俺はまだ大丈夫です!」

 

 無理を言う克海だが、チームメイトらは聞こうとしない。

 

「あー特訓はなしッ! しっかり休んで、明日に備えよう」

「それじゃ明日勝てません!」

「だから、勝つために休憩する」

「監督をッ! 胴上げで送り出したくないんですか!?」

「みんな気持ちはおんなじだって!」

「だったら休んでる暇なんてないでしょ!?」

「あぁ!? いい加減にしろよッ!」

「何ですかッ!」

 

 言い争いが過熱して、ひげの男性と取っ組み合いの喧嘩となる克海を止めようとするチームメイト。するとそこに功海が駆け込んでくる。

 

「克兄ぃ、ちょっと来て! ちょっと借りてくよ!」

 

 克海を力ずくで喧嘩から引っ張り出していく功海。

 

「何だよ!!」

 

 まだ頭に血が上っていて声が荒い克海だが、功海は構わずスマホの画面を見せつけた。

 

「山に怪獣が出たんだよ!」

「……こんな時にッ!」

 

 画面には、怪獣出現のパターンのバイブス波の数値が表示されていた。

 

 

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 山中には、全身筋肉と言っていいほどの屈強な肉体の怪獣レッドキングが山肌を砕いて暴れながら、綾香の市街に近づきつつあった。

 その現場へと車を走らせる克海と功海。

 

「もっと急いで!」

「これ以上はスピード違反になる!」

 

 焦る克海たちであるが、ちょうどその時にフロントガラス越しにレッドキングの姿が見えた。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

「「いたぁ!!」」

 

 即座に車を停め、外に飛び出す二人。

 

「町に降りてくる前に止めるぞ!」

「うんッ!」

 

 克海と功海は拳を鳴らし合い、ルーブジャイロを構えた。

 

「「俺色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 克海はクリスタルホルダーから水のクリスタルを選ぶ。

 

「セレクト、クリスタル!」

[ウルトラマンギンガ!]

 

 クリスタルをジャイロにセットして掲げる克海。

 

「纏うは水! 紺碧の海!!」

 

 レバーを三回引いて、水の柱に包まれる!

 

[ウルトラマンロッソ! アクア!!]

「うおぉぉーッ!」

 

 克海がロッソに変身し、功海は火のクリスタルを取り出した。

 

「セレクト、クリスタル!」

[ウルトラマンタロウ!]

 

 クリスタルをセットして、高々と掲げる功海。

 

「纏うは火! 紅蓮の炎!!」

 

 レバーを三回引き、火柱に包まれる!

 

「ウルトラマンブル! フレイム!!」

「はあぁぁーッ!」

 

 功海もブルに変身し、二人は音を立てて着地。その震動でレッドキングがこちらに気づいて立ち止まった。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

『うあああーッ!』

『であぁぁッ!』

 

 レッドキングへとまっすぐ突っ込んでいったロッソとブルが、パンチとキックを同時に打ち込んだ。しかしレッドキングは揺るぎもしない。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

『うッ!?』

 

 ブルの脇腹を殴りつけ、もう片方の腕でロッソを投げ飛ばす。単純な筋力ならば、レッドキングはロッソたちを大きく上回っていた。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

『うあッ!?』

 

 レッドキングは投げ飛ばしたロッソに近づいて掴みかかり押さえ込む。ブルが横から飛び掛かるも蹴り上げで迎撃された。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

『うわああぁぁッ!』

 

 ロッソはそのまま殴り飛ばされ、ブルは更にヘッドバットをもらって倒れ込んだ。二人がかりなのに散々に叩きのめされる兄弟。

 

『これならどうだぁーッ!』

 

 接近戦は不利と見て、ロッソはスプラッシュ・ボムを投擲して遠隔攻撃。レッドキングはこれをまともに食らう。

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

『もう一発!』

 

 有効と見て二発目を繰り出したロッソ。が、

 

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 レッドキングは腕をバットのように振って、水球を打ち返した! しかもブルの方へと飛んでいく!

 

『うわぁッ!?』

『まずいッ!』

 

 咄嗟に顔を背けたブル。ロッソは彼をかばって、水球を右肩に食らった。

 

『うわぁッ!』

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 更にレッドキングがロッソとブルにダブルラリアット! 二人の身体が宙を舞い、岩壁に叩きつけられた。

 

『ぐあぁッ……!』

「ピッギャ――ゴオオオオウ!」

 

 ダメージが重なり、カラータイマーが鳴って立ち上がれないロッソたち。一方のレッドキングも、一発目のスプラッシュ・ボムが大分効いたのかそれ以上の追撃を掛けずに背を向けて退散していった。

 

『ま、待て……!』

 

 ロッソたちはふらふらとしながらも起き上がってレッドキングを追いかけるが、高い山の陰に入り込んだ相手を追って回り込んだところで、

 

『あれ……?』

『いない……』

 

 レッドキングの姿を見失った。さっきまでいたはずなのに、忽然と消えてしまったのだ。

 立ち尽くすロッソとブルの様子を、ひよこ色のドローンがじっと見つめていた――。

 

 

 

 その後、『四つ角』で梨子と曜が克海の部屋に来た。

 

「克海さん……大丈夫ですか?」

「ああ……すまない」

 

 梨子が上半身を脱いだ克海の右肩、ブルをかばって負傷した箇所に湿布を貼ってあげていた。

 

「災難だったね、克兄ぃ。明日試合なのに、肩を痛めるなんて……」

「私たちがついてあげてれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」

 

 克海のことを自分たちのことのように心配する梨子たちに、克海が首を振る。

 

「気にしないでくれ。梨子ちゃんたちの時間を犠牲にしたくはないんだ」

「だからって、克海さんが犠牲になっていいってものじゃないですよ……」

 

 梨子と曜が深刻な顔つきで克海に説く。

 

「功兄ぃから聞いたよ。おじさんたちと喧嘩になったんだって? 夜まで練習しようだなんて言って」

「お言葉ですけど、それはおじさんたちが正しいですよ。無理を押して身体を壊してしまったら、元も子もありません……」

「私たちだって、オーバーワークはしないよう気をつけてるよ。克兄ぃだって、ちょうど今みたいなことになるって分かってたはずでしょ?」

「……だけど……!」

 

 それでも焦燥の感情の方が強い克海。するとそこに、

 

「ちょっといいかい。入るよ」

 

 外から声を掛けられた後に、件の熊城監督が襖を開いて入ってきた。

 

「監督!?」

「すまない、お邪魔だったかな」

「いえ、そんなことは……!」

 

 克海たちがたたずまいを直して、熊城に座布団を差し出す。腰を落ち着かせた熊城は話を切り出した。

 

「話は聞いてるよ。揉めたんだってなぁ。怪獣は出るし、君は肩を痛めるし……」

「すいません……」

 

 思わず謝る克海。しかし熊城は決して咎めずに、話を変える。

 

「テレビで見た。ここ最近現れる巨人……ウルトラマン。いやぁ、素晴らしいフォームで球を投げてた。君に似たフォームでね」

 

 一瞬ドキリとする梨子たち。

 

「……そうなんですか」

「長男だからなぁ~。君は何でも背負い込んでしまう」

 

 熊城が目を向けた先には、棚に飾られている、克海が高校時代に取得した野球の賞状やトロフィーの数々があった。

 

「人には、役目があります。まずは、その役目を果たすことだな」

「俺の役目は、先生をもう一度胴上げすることです」

 

 と返す克海だが、熊城は応じずに、持参した包みの中から古ぼけた箱を取り出した。

 

「これはね、ウチに代々伝わってきたものだ」

 

 紐を解いて、箱を開く熊城。中に入っていたのは……。

 

「妖奇星が落ちた時、飛び散った光。それをご先祖さまが拾った」

「これは……!」

 

 克海たち三人は驚いて目を見張った。

 入っていたのは、「烈」「雷」「刃」の三枚のルーブクリスタル。それぞれ別々のウルトラ戦士が描かれている。

 

「その晩、二人の光の巨人が夢枕に立った。そして、こうおっしゃった。然るべき時、然るべき者に渡せ――。然るべき者とは、君だったりして」

 

 克海の目をまっすぐ見つめる熊城。立ち会う梨子と曜は、どうしたらいいのかと内心うろたえる。

 しかし静寂を破ったのも熊城だ。

 

「……なぁーんてね! 冗談冗談」

 

 笑い飛ばしながらクリスタルを巾着袋に移し替え、克海に差し出す。

 

「私からの餞別だ。受け取ってくれ」

「いや……こんな大事なもの、いただけないです!」

 

 恐れ多くて遠慮する克海だが、熊城はグイと顔を近づけた。

 

「俺の餞別が受け取れないのか!?」

 

 そう言われては、克海も受け取る以外の選択肢がなかった。

 

「……いただきます!」

 

 こうして、新たに三枚のクリスタルが克海たちの手に渡った。

 

 

 

 翌日。試合直前に、ロッカー室前で功海と曜が克海と向かい合った。

 

「山地のあちこちに、バイブス波の観測装置仕掛けといた。またあいつが出たら、アプリですぐに分かるから」

「克兄ぃ、今日の試合、私たちAqoursも応援するからね!」

 

 曜はチアリーダー姿になってボンボンを振った。

 

「ああ。ありがとう」

「頑張れよ」

 

 最後に功海と拳を鳴らし合って、克海はロッカー室に入っていく。

 先にロッカー室に集まっていたチームメイトたちに、克海は開口一番に謝罪した。

 

「充さん、皆さん……昨日はすいませんでした! 俺、熱くなりすぎてました……」

 

 深々と頭を下げた克海に、ひげの男性は向かい合うと――おもむろに、忍者のように手と手を組んだ。

 

「え?」

「おめぇもやれよ」

 

 チームメイト全員が同じように手を結ぶと、ひげの男性は克海に呼び掛ける。

 

「監督に、最高の花道作ってやろうぜ」

「……はいッ!」

 

 克海は感激を覚えて、仲間たちに合わせてチームワークを結び直した。

 

 

 

 克海たちのチームが野球場に出てくると、観客席にいるAqoursの五人がボンボンを大きく振った。

 

「克海お兄ちゃん来た! がんばれー!」

「フレー! フレー! 内浦ホワイトベアーズ!」

 

 チアリーダーになり切った千歌たちの応援に手を振って答える克海たちは、ホームベースの前に並んで相手の綾香商店街チームと向かい合う。

 

「克兄ぃ……」

「克海さん……」

「克海……ファイトですよ」

 

 克海の試合を応援しているのはAqoursだけではない。果南やダイヤ、鞠莉も観客に密かに混じり、それぞれ別の席から見守っていた。

 

「礼ッ!」

「よろしくお願いしまーす!」

 

 そうして試合開始の挨拶が交わされ、いよいよ熊城監督の幕引きの如何を巡る試合が行われる――。

 

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