眩い七色の光に包まれている俺。気がつくとみんながいなくなっていた。
おかしい。
こんな演出、初めてなんだけど。
今までは『はじめから』を選んだ時だっていきなり開始だった。
これが新たな世界への道ってこと?
……
もう少しでそれが思い出せそうなところへ、ウィンドウが開いてメッセージが表示される。
『クリアボーナスを全て適用します』
クリアボーナス?
2周目だったらたぶん引継ぎが定番なんだろうけど、それはもう俺の能力でやってるし……。
『かね×2、適用しました』
金?
所持金が倍になるってこと?
日本円と恋姫世界のお金のどっちが俺の所持金扱いになる?
『けいけん×2、適用します。スタート時にのみ、記憶の損失なしに使うことができます。使いますか?』
はい <
いいえ
え? 使うと記憶の損失があるの?
でも今だけはそのペナルティなしで使えるのか。よくわからないけど使っちゃおう。どんなものか確認しておいた方がいいだろう。
はい、と。
『けいけん×2、適用しました』
『???×2、適用しました』
あれ? 使ったらどんな効果なのか解説なしなの?
それに???ってなんだよ。
ステータスがランダムで倍になってたりするのか?
セーブスロットの数だったら少しは楽になるかな。
選択がおわると貂蝉の声が聞こえた気がした。
……なにを覚えているとどうなんだって?
なにかで聞いたことがあるフレーズだったけどなんだっけ。
◇ ◇ ◇
「ん? 始まったのか?」
七色の光が消えていたので辺りを見回せばそこは狭い密室。というか狭すぎる。まるでなにかの操縦席のような座席に俺は座っていた。
あれ? この内装、どっかで見覚えがあるような。
正面にある開いた扉は透けていて向こう側が見える。
で、天井には黒く丸い装置。これってたしか……。
思い出そうと悩んでいると外から大きな鳴き声が聞こえる。そっちを見れば怪獣と言っていい存在がそこにいた。
「ドラゴン? 恋姫世界じゃないのかよ!」
真・恋姫世界なら出てきてもおかしくはないはずの龍ではなく、大きな翼を持った西洋竜の姿だ。咄嗟に左右の操縦桿を握ると椅子がブルッと反応。天井の黒い円盤にチカチカっとスパークが走る。
「動くのか?」
まるで俺の声に反応したかのようにキャノピーが閉まる。
あ、わかった!
この形、知ってるよ俺!
俺は知っている。
このコクピット。
外に見えるドラゴンも!
この操縦席は巨大――というにはちょっと小さいかもしれない――ロボット、オーラバトラーのコクピット。
機体の名前はゲド。空で叫びながらこっちに向かってくるのはドラウゲン。両翼を広げれば十メートルは超えているだろう巨大生物だ。
「これはっ! 聖戦士伝説!?」
思わず俺も叫びながらゲドを動かす。
操縦? ああ、オーラバトラーの操縦は操縦桿やフットペダル、スロットルも使うけど、天井にある黒い円盤状のオーライメージプロセッサが俺の思考を制御脳に伝達してオーラバトラーを動かしてくれるんだ。あのスパークはその作業中の証。
強い意志とオーラ
聖戦士伝説でもいきなり
戦乱の恋姫世界で何度も生死の境に直面し、こんな状況に少しは慣れていた俺は悩むよりも先にドラウゲンと戦って安全を確保することを選択、ゲドを飛ばすことに集中する。
オーラバトラーはマントのように背中に背負った大きなオーラコンバーターと蜻蛉のような翅によって自在に飛行が可能なのだ。
よし、これでドラウゲンと戦える。
ここが本当に聖戦士伝説の世界かどうかを確かめる前に死ぬわけにはいかない。
まだ『セーブ』もしてないんだしさ。
「いける!」
なんとか思いどおりに動かせるようだ。
コンバーターの右横に取り付けられた鞘から剣を抜き、ドラウゲンを斬りつける。翼を狙ったその一撃は見事に飛竜を切り裂き、敵は墜落していった。
強いぞゲド! アニメでは活躍なんて全くしてないからここはやはり『聖戦士伝説』の世界と見ていいだろう。
聖戦士伝説か。
俺も大好きな『聖戦士ダンバイン』。ファンタジーな古いロボットアニメだ。
聖戦士伝説はそのシミュレーションゲームなんだけど肝心の戦闘シミュレーション部分は残念な出来で、ファンからはアドベンチャーパートの分岐の多さで評価されていたりするゲームなのだ。
アニメに準ずるロウルートと、ゲームオリジナルの展開が楽しめる悪役寄りのカオスルートとかね。戦闘パートを除けば評価は高いよ。
ダンバイン好きな俺はやりまくったよ。全ルートクリア、辞典フルコンプのために何周も何周もさ。真・恋姫以上にやりこんだゲームだったりする。
でもさ、新たな世界ってこの聖戦士伝説の世界?
道ってまさかオーラロード?
たしかにそんな
俺さ、少しどころかかなり英雄譚か革命の恋姫世界を期待してたのに!
女だらけどころか、男ばっかりじゃんこのゲーム!
華琳ちゃんたちに会えるんだろうか……?
「あれ……?」
なんか妙に疲れている。瞼が重い。
ああ、そうか。
このゲド、弱いくせにオーラ力の消耗はすごいんだっけ。
ん? でもそのゲドが動かせたってことは俺のオーラ力、大きいんじゃね?
それにこの展開、まさか俺が聖戦士伝説の主人公であるシュンジのポジション?
そりゃ聖戦士伝説は主人公の名前変えられたけどさあ……。
そんなことを考えながら俺の意識は遠くなっていった。
◇ ◇ ◇
うーん、ここはベッドの上だろうか?
ならばお約束を言っとかないといけないとオタクの血が騒ぐな。
「知らない天井だ」
エヴァの世界よりはマシだといいんだけどな。
とりあえずここ最近染みついた習慣でセーブウィンドウを呼び出して『1番』にセーブ。
あれ? 上書きしていいか聞いてこないな?
セーブスロットを確認しようとしたら、俺の意識が戻ったことに気づいたおっさんたちが声をかけてきた。
厳つい髭もじゃのおっさんがここ『リの国』の国王、ゴード・トルール。巷では賢王なんて呼ばれている。拳王ではない。注意されたし。
疲れた顔の爺さんはオウエン・アグライト。リの国の家老。
ごっついおっさんはザン・ブラス。騎士団長だ。
現在地はたぶん城内のはずなのにみんな鎧を着込んでいる。聖戦士伝説では鎧姿のグラフィックしかなかったもんなあ。
ついさっきまで美少女に囲まれていただけにこの落差は大きい。
浮気を疑われることはなさそうでいいけどさ。
「よろしいですかな、聖戦士殿」
「マジで俺が聖戦士か……」
恋姫世界の時のようにモブや第三者的ポジションでスタートじゃないのかね。
まああっちには主人公の一刀君がいたんで俺がそのポジに成り代わるなんてありえなかったんだけどね。
「伝承のとおりならば間違いないかと」
「光と共に現れたけど、それだけで聖戦士って……」
あ、高いオーラ力が必要なゲドを動かせたのも証明になるんだっけ。
でもあのゲド、聖戦士伝説だと隣の領主ドレイク・ルフトからのレンタル品でもう返却しちゃってるはずなんだよなあ。
「ええと、つまり俺は元のとこに帰るためにここで戦働きをすればいいんだな? いいよ。他に行くアテなんかないし、選択肢はなさそうだ」
「さ、さすが聖戦士殿。異様にものわかりが早いですな」
俺の理解の速さに呆気にとられるゴードたち。漫画的表現ならでっかい汗が描かれることだろう。
だがそりゃ当然だ。やり込んでいる俺は知ってるからな。
主人公ポジなんて大役、この俺に勤まるか不安でメッチャ緊張してるけどさ。
……んん?
ここでザンのザンの息子の騎士見習い、レン・ブラスを紹介されるはずなんだけどいないな。
見習いの癖にリの騎士団では主人公の次に強くなるやつで、ルートの選択では敵になっちゃう重要キャラなのに。
ルート選択か。
聖戦士伝説は分岐が多いゲームだ。だいたいは覚えている自信があるけど、どのルートに行くとしますかね?
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