聖戦士†有双 (恋姫†有双分岐ルート)   作:生甘蕉

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31話 多島海

 バーン・バニングス。

 聖戦士ダンバインにおける序盤からの宿命の敵、つまりは主人公を付け狙うというか、立ち塞がるというか、なライバルキャラだ。

 

 黒騎士の正体としても有名だけどこの黒騎士、脚本の人が違う時なのかブレがある。

 自分を助けてくれた漁師を口止めのために殺害したかと思えば、姑息な手段を嫌って人質になったマーベルを解放してみせたりもするのだ。

 小説版ともいえるオーラバトラー戦記だと最後は主人公と戦わないで昔話してて、スパロボでも最近は仲間になることもある。

 

 だから綺麗なバーンに持って行きたい。

 だって漁師の殺害って情報漏洩の阻止が目的じゃなくてさ、無様に体育座りで泣いてた自分の姿を目撃したのが許せないってしか見えなくて、涙腺の弱い俺としては人ごとじゃないのよ。

 

 それにだよ、綺麗なバーンならリムルをまかせられるかもしれない。

 アニメ最終回でショウ・ザマに「その怨念を殺す!」されてもリムル・ルフトへの想いは残り、ラバーンに転生してもまたリムルの転生したレムルに心を奪われるのだ。

 

 ならばその想いかなえてあげよーじゃないか。

 うん、俺ってばキューピッド。……む、なんだか微妙に複雑な気分になるような。キューピッドは神話だとろくな矢の使い方をしてないもんなあ。

 

 ドレイクに放逐され、ショットに拾われて黒騎士となる前にサーラに捕まったバーンは俺の前。後ろ手に縛られてまるでお白州状態に座らされていた。

 

「ドレイクに捨てられたらしいな、バーン」

 

「カズト・ホンゴウさえいなければ……」

 

 項垂れていたバーンがゆっくりとこっちを見る。おおう、暗く濁った瞳。感じるオーラ力も憎しみでよどんでる。病んでるな。

 

「そんなに北郷君に邪魔されたのか。そんなに憎いのか」

 

「騎士である私がこのような……全てカズトのせいだ」

 

「いや、騎士とは笑わせてくれる。暗殺その他の後ろ暗い仕事にも手をかけていたくせによくも言えるものだ」

 

 ゴード王や俺の暗殺は防ぐことができたが、確実に実行犯だったはずの男だ。他にも表に出せない仕事を色々やっていたことだろう。

 

「そ、それは」

 

「自分の名を落としてでも尽くす騎士か? 日本人的にはそういう忠義も嫌いではないがな」

 

「ご主人様もわかってらっしゃる!」

 

 俺もけっこう尽くすタイプなんだよね。

 愛紗が頻りにうんうんって肯いている。自分も尽くすタイプだって言いたいのかな。

 

「自分の立身出世のために手段を選ばなかっただけだろ。呂布や張遼相手じゃそれも霞んじまったが。ま、北郷に負けたのはオレも同じだけどよ」

 

「馬騰は体調が悪かったせいも大きいでしょう。あとあの二人は私もほしいわ」

 

 馬騰と華琳ちゃんは冷めた感じで分析。

 ドレイクんとこに残っている地上人は最強武将の呂布に張遼。ダンバインの役どころだとジェリルとアレンという、ゲームでは滅多に味方にならないけど強い二人である。

 

「地上人に勝る強さもなく、裏付けのない誇りだけで騎士を名乗るバーン・バニングス。お前は俺を暗殺しようとした件にも関わっていたな」

 

 また俯いて黙ってしまったバーン。黙っていたら認めているようなもんだけど、言い分けしてもそれがこっちには通用しないこともわかっているんだろね。

 

「エレ王女がいなくてよかったわね。お前はピネガンの仇として殺される覚悟はあるのかしら?」

 

 蓮華、エレ王女を可愛がっていたもんなあ。責任ある家系同士ということなのか気が合っていたみたいだから。

 アニメのダンバインだとエレは黒騎士のオーラ力を抑えるために命を落としてしまうので、黒騎士=バーンはピネガンだけじゃなくてエレの仇でもあったり。

 

「エレちゃんの手を汚すまでもないだろう」

 

 腰に差してはいるけど、滅多に抜かない剣を抜く。これ、トルール王家の剣とかでむこうで兵士時代に使っていたのとは大違いの業物なんだよね。

 その名剣をバーンに向ける。

 

「覚悟はいいか?」

 

 返事はない。

 ここで命乞いをするのは騎士としてのプライドが許さないのか。

 恨みを告げる様子もない。

 

「落ちぶれていても、無様な死に様をさらしたくはないという程度の理性は残っているようね」

 

「そうか。騎士として死にたいか」

 

 俺にはそういうの、ちょっとわからない。死んだら道場行きなだけなので1回ぐらいカッコつけて死んでもいいのかもしれないけどね。

 なんか悔しいのでさっさと済ますことにしよう。慎重に狙いを定めて一気に剣を振り下ろす。

 恋姫世界でも剣は使っていた。集団戦ばかりだったが剣で敵を直接殺したこともある。

 こっちにきてからは自分ではなくオーラバトラーでだが、サーバインの基本武装は剣なのでずっと使っていた。限界突破(カンストオーバー)もしたし、そこそこの腕はあると思う。恋姫武将相手でもなければ簡単には負けないのではないだろうか。

 

 振り下ろした剣を軽く振って鞘に収める。毛をはらわなければいけないからね。

 そう、血ではない。

 俺が切ったのはバーンの首ではなく、やつの長髪。

 

「……どういうつもりだ?」

 

「怨念の騎士バーン・バニングスは死んだ。これより貴様はリムル・ルフトの騎士バーン・ババーン。生まれ変わって真の騎士道を示すがよい」

 

「な!?」

 

 いやあ、うまく髪だけ切れてよかったよ。失敗してもバーンだからまあいいやと思い切りやったのが成功した理由かな。

 調子に乗ってつけたバーンの新しい名前は魔球を開発しそうなのを提案しちゃったぜ。バニングスさんは魔法少女の友人だけでいいからね。

 

「姫君を護る騎士。男の夢だろ、断ることは許さん」

 

「私が裏切るとは考えないのか?」

 

 そりゃ考えてるよ。でも俺はやり直しができる。ならば浮上後の強敵を減らすことを試しておくのもいいかなって。

 

「できぬな。裏切ったらそれこそ騎士はもうやれん。そのように狡猾なだけの者を誰がほしがる? 傭兵としてだとていらぬよ」

 

 マスタードラウゲンことゴード王。正体を隠して傭兵ということにしているからそんな台詞になるのね。というか、傭兵って設定すっかり忘れていたんだけど。

 

「私が……リムル様の騎士?」

 

「リムル、騎士の儀式を。ザン、剣を貸してやれ」

 

「え、ええ」

 

 ザンから借りた剣で騎士の叙任を行うリムル。

 俺がこの剣を貸さないのは、そのままリムルにあげちゃった扱いになって、王家の剣をプレゼントされるということはつまり求婚ってリムルが突っ走りそうだから。

 

 リムルも初めてなのか固い動きながらバーンの肩に剣の平を乗せて軽く叩く。が、震えていので見ているのがちょっと怖い。

 ……せめて縛ってるのは解いてやれよ。

 それが悔しいのか、それとも感激してるのかバーンの目からは滂沱の涙。うん、生かしておいてよかったかな。俺だけが涙腺弱い男じゃないって証明できた。

 

「これが騎士の儀式? 面白いわね」

 

「むこうに行ったら春蘭たちにもやる? きっと喜ぶよ」

 

「そうね。考えておきましょう」

 

 桂花はどうしようかな。騎士ならば桂花には必要ないけど自分にないのは怒るだろうし。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ついてきたがるリムルをバーンに任せて城に残し、俺たちは多島海へと移動する。

 バーンが断髪してリニューアルしたのはうちの広報が国内外に発表した。これでさらに裏切りにくくなったはずだ。各地の掲示板に経緯が写真付きで貼られているのだから。

 あとやつにはオーラバトラーは与えていない。浮上されたら困るからね。

 

 多島海上のブル・ベガーにてドレイクと会議。バーンのことを告げたら「物好きな」と言われてしまった。まあ、それは本題ではない。

 ナブロを攻めるか、ナの国を牽制するか、それとも自国に戻って守りを固めるか、その選択を決めるのだ。

 

「リの国でラウの反撃に備えると? 消極的なのはシーラ女王との噂が関係しているのですかな?」

 

「ナの国は俺の策によって牽制できた。だがラウはナブロの砦を守り切って士気が上がっている。すぐにでも攻めてこよう」

 

 噂ってどんなのだろう。

 シーラちゃんと婚約したってのは知っているんだろうけど。

 それにシーラちゃんのファンクラブは俺との結婚なんて認めたくないようだってのがサーラ情報で届いている。

 

「今ならビショット殿と合流してラウを一気に攻め滅ぼすこともできましょうぞ」

 

「それではリの国の被害が大きい。ラウの国は執拗に我が国を攻撃しているからな。騎団が留守にしているリの国に確実に攻め込むだろう」

 

 聖戦士伝説のフォイゾンはドレイク軍よりもリの国に戦力を送っているような気すらしてくる。うちの方が簡単に倒せそうだから先に潰しておくつもりなんだろうか。

 

「たしかに、ナの国からもリの国への攻撃があるのは確定ですな」

 

「近衛騎士団には恨まれているようだからな。だがこちらが動かなければむこうからは動きづらい」

 

 こうは言ったけどどうだろ。聖戦士伝説ではリの国で守りを固める選択だとナの国の軍が攻めてくるんだよね。親衛隊がボテューンまで使ってさ。

 

「ここは俺に任せてくれないか?」

 

 聖戦士伝説ではドレイクが簡単に折れちゃうのが微妙な気もするけど、たぶん同じ反応を返してくれるんじゃないかな。

 

「うむ。ご自由に兵を動かしてもらいたい」

 

 ほらね。リムルをトルール城に残しているから彼女の安全のためにも我が国を囮にするわけにもいかないでしょ。

 先にリムルからのドレイクへの手紙を手渡ししたのも効果があったな、これは。会議はすぐにおわった。早くリムルからの手紙を読みたくてたまらないのだろうね。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 トルール城に戻り、ボウの報告を聞く。

 

「サーバインは無理だったか」

 

「はい。ダンバインのコンバーターの改良はできたのですが」

 

「サーバインは高性能すぎるから今のままでもいいか。ダンバインの全面的な改良も引き続き頼む」

 

 頼んでいたダンバインのコンバーターの交換は済んだようだ。これで北郷君のダンバインと同等の性能のはず。

 聖戦士伝説では改良型ダンバインという身も蓋もない名前のオリジナルオーラバトラーが出てくるので、それ狙いでボウには開発を続けさせる。

 

「ご主人様、やはりサーバインはご主人様がお使いになられた方が」

 

「いや、せっかく愛紗用に装甲のカラーも変更したんだ、使ってくれ」

 

 サーバインは黒から愛紗カラーに変更済み。盾も龍が彫刻されたものになっている。なんか俺用の時より強そうなのは気のせい?

 

「だからと言って王がブラウニーⅡでいいのですかい?」

 

「王がオーラバトラーで出る方が珍しいって。今の騎団なら俺の出番はない。ああ、稼ぐために強獣狩りには出るよ」

 

 クリアボーナスの『かね×2』のためにもね。

 聖戦士伝説に出てないオーラバトラーがあれば乗ることも考えないでもないけど、多忙なボウにそれを願うのも無理がある。

 シーラちゃん、北郷君だけじゃなくて俺にもビルバインくれないかなぁ。

 

 




バーンの処理が長くなってしまった……
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