北郷君が新オーラバトラーことゼルバインに乗り換えているワケだが、では彼の乗っていたダンバインはどうなったか?
そう! 聖戦士ダンバインの主役機である藤色のダンバインのことだ。
前回のドレイク軍とラウの戦いで、主役ダンバインは張遼のビランビー、呂布のレプラカーンという、
北郷君の保護を優先するために、爆発の危険のあるオーラコンバーター破損の機体を運ぶのをよしとしなかったのかな。
北郷君とヴァルキリアがラース・ワウを襲撃した時はフォウとバルバインでだった。そしてシルキー・マウ救出、
その後、ゼラーナと合流するためにナの国へ行き、シーラと謁見。本来ならその前に黒騎士との初遭遇、戦闘があるワケなんだけどそれはなかった。だってバーンはもう改心して綺麗なバーン。ズワァースはあるけどもちろんバーンには与えていないよ。
シーラと謁見した北郷君はゼルバインを拝領する。ゼルバインが手に入ったので地上人用というイメージのあるダンバインの回収が行われなかったようだ。直しても北郷君以外が動かせないからね。
もっともその頃にはうちの連中が藤色ダンバインを回収していたのだが。
ダンバインは既に修理、改修済み。色もリの国カラーに塗り替えようという話も上がったが、それは止めた。
それを塗り替えるなんてとんでもない。
だって藤色のダンバインだよ! 聖戦士伝説だって主人公用は残骸を回収、修理したトカマク機のリカラーで水色だ。なんかパチモン臭してスゴく安っぽく残念なのだ。
やっと手に入ったオリジナルカラーのダンバインなんだから見た目はそのままにするに決まってるでしょ!
俺用のオーラバトラーが完成するまではこのダンバインに乗ろうと思う。ゼラーナ隊がトルール城に現れたし、出番があるかな?
一応、あっちは俺への謁見を求めるって声明を出してやってきている。この期に及んで不意打ちだまし討ちとかしないはずだけど。
「ゼラーナの他にグリムリーか。オーラバトラーも展開していないし、戦闘の意思はないようだな。謁見の間に通してくれ」
グリムリーはラウの国が開発したオーラシップだ。ナムワンより大きい。火力は貧弱だが輸送能力が高く、オーラバトラーを10機搭載できるというのが売り。補給艦のイメージが強い艦だな。
あとアニメでは設定よりも大きく見えるグリムリーもいたので、大型のグリムリーもいるのかもしれない。ほら、あのグリムリーみたいに。あれ、どう見てもゼラーナの倍くらいあるように見えるんだが。あれなら横のハッチからだってボチューン屈まないでも発進できそうだ。
◇
謁見の間にきたのは北郷君、ヴァルキリア、ニー、キーン、それにチャム・ファウだ。ドワたちはゼラーナで留守番か。もちろん残ったクルーにも見張りはつけているよ。
「戦場以外で会うのは久しぶりかな。元気そうだね」
「そっちこそ。って、そんなのんきなことを言ってる場合じゃないんだけど」
「急ぎのようかい? 久しぶりに故郷の話でもしながら酒でも飲もうと思っていたんだが」
心友の一刀君とまたバカな話を肴に飲みたい。1周目のあの一刀君はもう消えてしまったんだろうか? それとも無事にフランチェスカに戻って暮らしているんだろうか?
会いたいなぁ。
「だからそういう場合じゃない!」
「あら? 送別会を邪魔しにきたのかしら」
いまだ湯上がりの色気を漂わせている嫁の嫌み。
そうなんだよね、北郷君関係なく、飲む予定は元からあった。
「華琳ちゃん、壮行会だからね。送別会でも間違ってないけど、さ」
ヨルムーンガントが完成した今、完成披露宴も兼ねて国を挙げての大規模なお祭り状態だったりする。ヨルムーンガント饅頭みたいな記念品を国民にも配布した。
もうすぐいなくなる俺たちに頼らないよう、あえて消え物にしたんだよ。
「残す者と最後の別れとなる者も多い。その別れの宴を邪魔はさせん」
「最後の別れ?」
「うん、俺たちが元の世界に帰るのに付き合わせることになっちゃうからね」
これを教えていいものか迷ったけど、スロットが増えているのでセーブも多く、うまくいかなくてもやり直しに問題はない。
道場でみんなで相談した結果、北郷君がどんな選択をするか試したい、ってことで今回は教えることにした。
ふふふ。ジャコバからの警告を伝えにきたつもりが、いきなりこんなことを切り出されて、北郷君も動揺しているな。
「地上界に?」
「そうだけど、そうじゃない。北郷君も気づいているだろう。バイストン・ウェルに召喚された者が2種類いるって」
「2種類?」
「正確にいえば3種類かな」
本当は4種類だが。俺だけさらに別だもんね。
少し考えた後、ハッと表情を変える北郷君。さすがにわかるよね。
「大きく分けると男と女に別れる。召喚された地上の女性について思うところがあるだろう? あ、みんな可愛いってのは当たり前すぎるから無しでね」
「関羽、曹操、孫権、呂布、張遼、馬騰。全員、三国志の人物と同じ名前だ」
「そう。みんな三国志の世界からきた武将なのさ。その名のとおりの強さだろ。呂布なんてまさに一騎当千だ」
うちの武将たちは
レベルとか関係なくステータスが化け物だよ、呂布ちゃんは。張遼だって神速は伊達じゃないとばかりに行動ゲージのたまりが速い。馬騰ちゃんに勝てたのだって彼女が病んでいたせいが大きいのはわかってるかな?
「古代の中国から召喚されたって言うのか?」
「そうだよ。召喚者の時間の差は他にもある。ショット・ウェポン、ゼット・ライトの2人は80年代の世界から召喚されているんだ。携帯電話見せたら驚いてなかったか?」
「そんな……でも、みんな女性じゃないか」
「そういう三国志の世界から召喚されたんだ」
武将がみんな美少女な三国志のギャルゲー世界から、ね。さらにいえば君が主人公のギャルゲー世界だ。もちろん教えないけどね。
どうせならこっちも有名人がみんな美少女だったらよかったのにね。聖戦士伝説なんてヒロイン不在なんだから。主人公の親衛隊ぐらいさあ、オーラバトラーを動かせるオーラ力の強い者を集めたらなぜか少女ばかりだった、なんて展開でもよかったのに!
「いくらなんでもそれは無理があるんじゃ?」
「事実だからね。バイストン・ウェルだってむこうじゃ信じてもらうのは難しいだろ。こっちの変な生き物に比べたら武将が女性ばかりの方が無理がない」
「言われてみれば」
と納得した北郷君だが「変ってのはなによ!」とチャムに蹴られてしまった。変な生き物の代表さんみたいな子にさ。
「フェラリオなんてむこうにはいないんだよ」
「そう。だからフィナにはこっちに残ってほしいんだってば」
「いやです。コーイチさんについて行きます」
ひしっと俺の頭に抱きつくフィナ。それを見たチャムは対抗心からか今度は北郷君の頭の上に座り、腕組みしてドヤ顔。
ううむ。フィナがついてきてくれるのは嬉しいが、あっちじゃフェラリオがいないから……恋姫世界のヨーロッパなら妖精ぐらいいてもおかしくなさそうだけど、ねえ。
「北郷君、三国志の年代だと日本は邪馬台国だよね。ヨーロッパは?」
「ええと、ローマ帝国あたり?」
「そんなもんだよなあ。そんな世界へ俺たちは帰るのさ」
ローマ帝国か。最近じゃ風呂のイメージだな。あと赤王。
そっちまで戦場を広げたくないけど、ドレイクたちがどこに出現するかが問題だ。
できればやつらと北郷君だけ、フランチェスカのある地上界へ出てくれるのが一番ありがたい。
「帰る方法があるっていうのか?」
「君たちが会ってきたフェラリオの長が業を煮やして、オーラマシンをバイストン・ウェルから排除する。その時に帰れる」
「な!」
今までで一番驚いた顔を見せる北郷君。そりゃそうだろうね。だってジャコバから世界を恐れさせ、震えさせるオーラマシンの排除を頼まれたのに、その本人が自分で排除を行うなんて聞かせられたら、ねえ。
「ジャコバ・アオンはなんと言っていた?」
「今のコモンの世界を憂いていた。機械の力で歪んでゆくって」
「だからバイストン・ウェルから全てのオーラマシンを無くさねばならない、かな」
「そこまで知って!?」
そりゃ聖戦士伝説は何周もしたからね。システム用のセーブデータを作ってくれない当時でも珍しいタイプだったから、事典を全部埋めるためには、項目を埋めたらちょっと前のセーブデータから別の選択肢なんてことはできず、最初から最後まで通しで全ルートクリアしなきゃいけないというマゾ仕様。しかも2周目以降でも名前以外の引き継ぎなし。
ああ、大変だったなあ。
「アの国のウィル・ウィプス、ラウの国のゴラオン、クの国のゲア・ガリング、ナの国のグラン・ガラン。そして、リの国のヨルムーンガント。これだけの巨大戦艦が完成した今、その戦いは大きく激しいものとなる。その決戦をジャコバ・アオンは耐えられない」
「それがわかっていて、なぜドレイクに手を貸すんだ!」
「それこそが望みだから」
うん。きっと俺今、悪役顔だね、計画どおりってさ。
絶句する北郷君たち。これがもし北郷君じゃなくてショウ・ザマだったら殴られてるだろうかね。
いい気分だ。ここはもう犯人バレしたサスペンスドラマのようにベラベラと喋るべきだろう。セーブ&ロードはそれでも秘密だけど。
「ジャコバが命がけで行うそれによって、俺たちは元の世界に帰る。全員が帰るにはそれが一番可能性が高い。余計なものもついてきちゃうが、それも覚悟の上なんだ」
「バイストン・ウェルを混乱させてまでか?」
「俺が混乱させたワケじゃない。俺はただ、積極的に混乱を止めようとしなかっただけだ」
いいわけになるけど、召喚されたのが俺だけだったらここまでしないで、ガラリアと地上界に出る時になんとか恋姫世界に出て、それで戻ってこなかったはず。華琳ちゃんや他の恋姫キャラまで召喚されちゃったからこうするしかなかった。
「なんでそこまでするんだ? こっちで王様にまでなったじゃないか」
「好きで王様になったワケじゃない。あっちにも大事な嫁さんたちがいるんだ。絶対に帰らなきゃいけないだろ。嫁さんたちと世界の安定なら、俺は嫁さんたちを選ぶ」
主人公キャラなら両方か、悩んだ末に世界を選ぶんだろうけどね。そんなんだったら俺は悪役ポジションでいい。
「ま、まだお嫁さんがいるの?」
「そうだよチャム。みんな可愛い、愛しい嫁さんたちだ。だから早く帰りたい。ああ、早く会いたいよ」
「カズトはそんな子、地上にいないよね?」
あら、チャムの質問にあっちの雰囲気が一変した。俺を責めるのではなく、北郷君に詰め寄る視線。なんとかリアだけでなく、やっぱりキーンもか。
ニーも知ってるのか視線を逸らしているし。リムルからも相手にされていないみたいだし、チャムもカズト君か。ダンバインきってのモテ男はどこへいったのやら。
「北郷君、なんなら結婚式を手配しようか? 約束だけだと死亡フラグになるから今の内に結婚しておいた方がいい。略式でいいならすぐにできる」
「ちょっ!」
「相手はガラリア、キーン、チャムでいい? まだ他にもいる?」
1周目で一緒に結婚式したのを思い出すなあ。それだけじゃなくて俺の嫁さんに手を出させない予防線でもあるおせっかいだったり。
「わ、わたしも?」
「私はヴァルキリアだ!」
「カズトと結婚!?」
断れそうにない雰囲気を悟ったのか、がっくりとする北郷君。
宴会のいい余興ができた。こらならグリムリーにいる彼女も顔を出す口実ができただろう。
ってか、なんでやってきてるんですかね、シーラちゃん?
◇
結婚式の準備に入ったゼラーナ隊と交代でグリムリーの乗員と会う。
「私に逆らい、ビルバインをカズト・ホンゴウに渡そうとした者たちへの抗議を示しています。私とコーイチ王の仲を周囲に知らしめるためでもあります」
「グラン・ガランでこなかっただけ、マシか」
「喜んではくださらないのですか?」
うっ、その悲しげな表情はズルい。
「そりゃ嬉しいよ。元気そうでよかった。そっちも忙しいんだろ? 抜けてきて大丈夫なのか?」
「バイストン・ウェルからいなくなる私ばかりを頼ってもナの国のためになりません。次の者を育てているのです。このまま私を排斥してくれてもいいのに」
あの責任感の強い聖女王とは思えないお言葉。ナの国のことは任せて重責から逃れられるという解放感からだろうか。まあ、後のことも考えているようではあるな。
「やっぱりバイストン・ウェルに残るつもりはないのか?」
「当然でありましょう。夫が行くというのですから」
うっ。さっきあんなことを言ったばかりの手前、残れとは言えそうにない。
嬉しいのもたしかではあるし。
「ふふ。むこうでも可愛がってあげるわ。ここへ来たのは会いたかった、だけではないのでしょう?」
「それが一番の理由です。コーイチ王にオーラバトラーを渡すためでもありますが。カズト・ホンゴウを慕う女性騎士によって、私の目がない隙にあの者に渡されても困ります。ビルバインを華琳が使うのならばコーイチ王にもオーラバトラーを渡したい。それが地上界でのグラン・ガランのためにもなりましょう」
「えっ、オーラバトラーくれるの! マジで!?」
「何故でしょう? 再会した私の顔を見た時よりも嬉しそうなのは」
ごめん。謝るから黒いオーラ力やめて。
シーラに会えて嬉しいってのも本当だから。今晩それを身体で証明するから!