聖戦士†有双 (恋姫†有双分岐ルート)   作:生甘蕉

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3話 ぶっちゃけた

 強獣との戦闘直前でしていた『セーブ』を『ロード』してやり直す俺。

 セーブスロットが増えたのは本当に助かるよ。しかも聖戦士伝説と違って城に戻らないでもちゃんとセーブできていたし!

 

 今度は油断せずにしっかりとガッターを倒す。

 ……倒したはいいけど、2人の姿が近くにない。

 

「あいつらとはぐれたってことは」

 

 たった3騎しかいないのに、敵の数も少なかったのに、はぐれたのはイベントだからなんだろう。

 そのイベントというのが。

 

 ほら聞こえただろう、小さな悲鳴が。

 

「見つけた」

 

 小さな妖精といった姿のミ・フェラリオがガッターに襲われている。

 ……身長8メット――1メットはだいたい1メートル――を超えるガッターがなんであんな小さいのを襲うんだ?

 大きさの比率を考えれば食ったって腹の足しにもならないことぐらいわかるだろうに。

 フェラリオの方だって高く飛んで逃げればそれで済みそうなもんなんだが。

 

 まあ、シナリオ上の都合ってやつか。このまま見捨てたんじゃ嫁さんたちに嫌われそうだし助けないとな。

 俺はフェラリオを追うガッターにライフルの照準を合わせて発射!

 見事に命中した。当たったのは硬い甲羅の部分でたいしたダメージはなかったようだが大きな鳴き声を上げながらガッターは逃げていく。倒してもいいのだが、今はこの子の保護が先か。

 

「大丈夫、味方だ。安心しろ」

 

 オレンジ色の髪のフェラリオの少女フィナ・エスティナと自己紹介をしあっていると戦いの音、というかガッターの鳴き声を聞きつけて王と騎士団長が到着した。

 彼らはもし俺が迷子になっても飛竜が城まで連れて帰ると考えていたようだ。

 

「その飛竜は賢いから安心してやしたが……フェラリオを保護、ですかい?」

 

「うん。駄目かな?」

 

「かまいませぬ。聖戦士殿の無聊を慰めるにはいいでしょう」

 

 ゴード王が許してくれてよかったよ。

 ゲームの方だと主人公は誰にも相談せずに勝手に仲間にするって決めちゃうんだ。自分が城で世話になってるってことを忘れてるのかね。

 

 ミ・フェラリオは翅を持つ30センチぐらいのまさに妖精そのものの種族。成長、というかランクアップするとエ・フェラリオという人間大の姿になって力も上がる。

 

 フィナは恋愛イベントこそないが、この聖戦士伝説のヒロインと言ってもいい存在でミ・フェラリオにしては珍しい控えめで大人しい少女だ。

 記憶喪失なのだが、そのわりにはフェラリオ関係の情報に詳しかったりする謎の少女。ゲームでも記憶が戻ることはなくて彼女の正体は最後まで不明だった。

 

「よろしく……お願いします」

 

 おっさんだらけの職場で暮らすことになりそうな俺としてはとても有難い仲間である。

 フィギュアを思い出すこの大きさなら嫁さんたちも浮気を疑うこともないだろう。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 城に戻った俺たちは国境付近でのガロウ・ランの集結を報告される。

 護衛の騎士もなく強獣狩りに行かされたのも、多くの騎士、兵がガロウ・ランを警戒のために動けなかったという理由だったようだ。

 

 ガロウ・ランってのは地下に棲む闇の種族でまあ、見た目はコモン――ゴード王たちの種族。所謂普通の人間種族――とほとんど同じ。ぶっちゃけ、賊って言えばそれまでの連中だ。金を払えばちゃんと働いてくれるのでスパイとして子飼いにする貴族階級も多かったはず。

 コモン、フェラリオ、ガロウ・ランの三つの種族がバイストン・ウェルにいる会話可能な主な住人である。

 

 ガロウ・ランは小説版のオーラバトラー戦記ではやっかいな敵で前半の悪役。

 聖戦士伝説でも奪ったオーラマシンや強獣を操って敵として出てくる。リの国はこいつらにずっと悩まされてきたんだよね。

 

 国境でそいつらが集結……真・恋姫の魏ルートの黄巾も似たようなことしてたな。春蘭が引っ張られていったっけ。

 国境を隔てた隣国を刺激しないよう、謁見隊を送った方がいいか俺にも意見を求められた。

 だってその隣国アの領地の領主ってのが、オーラバトラーを開発してゲドをレンタルしてくれたドレイク・ルフトなのだから。

 

「謁見隊に人員を割いてる余裕なんかないだろう。さっさとガロウ・ランを倒そう。むこうだって集結に気づいているだろうから現地で会うこともあるさ」

 

 今回の選択肢は実はどっちを選んでもあまり意味はない。

 だが謁見隊を送ることにすると、俺もそれに同行させられかねない。ドレイクなんて禿親父に面会するのなんてのは嫌だ。面倒くさい。

 なので謁見隊は送らないように意見した。俺の護衛がなかったんだし、人手がないってのも確かだもんね。

 ゴード王はそれに頷いて、すぐに国境付近の森林地帯へと出撃する。今回はさすがに他の騎士も一緒だよ。たったの3人だけどね。きっと本隊である俺たちとは別に兵も動いているんだろうけどさ。

 

 3人の騎士はロン毛のナラシ・ハモニ。髭面のラージャ・デスト。影が薄いバラフ・クリエだ。

 この中ではナラシが戦闘中の行動順が回ってくるのが一番早くて使える。レンがいないからリの騎士では主人公の次にくる速さだ。逆にラージャは行動順が遅い。

 この行動順を決める行動値――行動ゲージがチャージされる値――だが、これってレベルアップでも変わらないんだよね。ここも聖戦士伝説の不満点だったり。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 出撃して某谷の姫姉さまの愛機のような小型飛行機グライウィングや強獣に乗ったガロウ・ランたちを倒した俺たち。

 リーダーであるシン・ドロたちの操るルグウは思った以上にでかかったがなんとか倒せた。

 それよりも、人間を攻撃するのは恋姫世界で慣れていたとはいえ、やはりちょっと気が滅入る。ガロウ・ランには女性もいるしさ。割と美人なんだよ、やりにくい。

 聖戦士伝説の主人公って人殺しにも躊躇した様子もないんだよな。ゲームとはいえ、実際に考えるとヤバイやつだったんじゃなかろうか?

 

 戦闘終了後に現れる『ゲド』と『ドロ』。

 ゲドは俺が乗った巨人騎士(オーラバトラー)だ。茶褐色でバッタのような頭部を持ち、武器は剣だけという浪漫溢れる機体だね。

 ドロは『オーラボム』。触手の生えた円盤というかクラゲのような空中戦闘艇である。操縦には数人が必要なのに性能はオーラバトラーに劣る。

 ゲドに乗っているのはバーン・バニングス。ドレイク配下の騎士でゴード王と話をつけていた。ついでに俺も紹介される。

 

 バーンか。オーラバトラー戦記ではそこそこいいやつなんだけどなあ。

 ドロにはそのオーラバトラー戦記で主人公ジョクといい感じだったガラリア・ニャムヒーが乗っていた。

 

 バーンたちアの連中と別れトルール城に戻ると、再びゴード王に相談を受けた。今度の相談はオーラマシンを開発するかどうかというもの。

 

「この選択はこれからの大きな()を決めることになる。そんなものをいくら聖戦士とはいえ、余所者である俺なんかに聞いていいのか?」

 

「それがリのためであると思っております」

 

 うーん。これってこのまま俺の選んだとおりに決まるっぽいなあ。責任重大だ。

 だって、ここでオーラマシンを開発するかどうかでこの後のルートが大きく違ったものになるんだからさ。

 賢王というわりにはこの王様、ちょっと他人任せすぎじゃね?

 ゲームだとたしかこの次の戦闘で大怪我して「国を頼む」みたいなことを言って死んじゃうから、主人公が王様にされちゃうんだよね。

 

 俺が王様? 面倒すぐる。

 ま、いいや。セーブもしたことだし全部ぶっちゃけてみよう。このおっさんたちが道場へ行って記憶を引き継ぐことはないんだし。

 

 俺の死亡時、一緒に道場へ行き記憶を引き継ぐことができるようになる条件は、俺との性行為だったりする。

 なので当然男は不可だ。

 試したわけではないが、試すことは絶対にない。

 

「いいか? 俺はたぶんこの先の出来事を知っている」

 

「聖戦士殿? なにを言って……」

 

「いいから聞け。俺はこれとよく似た物語を知っている。似すぎているんだ。ただの偶然とは思えない」

 

 とりあえず物語ってことで話を進めよう。予言ってした方がよかったのかね? バイストン・ウェル的には。

 

「今のとこの違いはザン団長に息子がいてそれが騎士見習いをやっていたことぐらいだ」

 

 

 ◇ ◇

 

 

「以上が、俺の知ってる物語のだいたいの粗筋だ」

 

「なんと……」

 

「……そんな……ジャコバ様ならやりかねない?」

 

 俺の語った未来におっさんたちだけじゃなく、フィナまでもが衝撃を受けていた。

 記憶喪失でもジャコバは知っているのね。

 

「このままオーラマシンを開発しなければ、最終的にはリの国がバイストン・ウェルの覇者となろう。だが、それまでにドレイクの引き起こす戦乱で失われる者も多いはずだ」

 

「むう……。聖戦士殿の言葉を疑うわけでもないが、本当にそんなことが?」

 

 やっぱり疑うよね。そうじゃなきゃ賢王とは呼べないでしょ。

 信じてもらうには……ちょうど切れる手札があるな。

 

「ならばザン団長。あなたの配下にサーラ・ディップというガロウ・ランはいないか?」

 

「……それも物語に登場しやしたかい?」

 

「ああ」

 

 席を外したザン団長に驚愕の表情を見せるゴード王。

 あれ?

 ゴード王ってばザンがガロウ・ランを使ってることを知らなかったの?

 

「薄々気づいてはおりましたが……まさかガロウ・ランなどを使おうとは!」

 

「コモンだって裏切る者もいる。ガロウ・ランは金に対する忠義は確かなのだろう? 種族ではなく、個人を見て見極めた方がいい」

 

 手を強く握り締めてワナワナと震えるゴードにアドバイス。

 ゴード王は妻や子をガロウ・ランとの戦いで失ったんだっけ?

 だからといってガロウ・ラン憎しだけでやられても困るのよ。

 

「こいつがサーラだ」

 

 ザンに紹介される赤毛の美人がサーラ・ディップ。

 聖戦士伝説における主人公側の数少ない女性キャラ。

 だけどヒロインポジションをフィナに譲るのは戦闘には出せないのと、地上界に行くと出てこなくなるからだ。たぶん浮上時にバイストン・ウェルに置いてけぼりにされたんだろう。

 

「聖戦士殿は預言者ですかい?」

 

「知ってるだけと説明したろう。で、どうする。俺の物語を信じてくれなくてもいいけど」

 

「オーラマシンを開発する。そして、私は王の座を聖戦士殿に明け渡します」

 

「……は? いやいやいや、なに言ってんのさ!」

 

 聖戦士伝説の主人公がリの国王になることは言ったけどさ、なんで急に俺が王様にされるのよ。そうならないように「命が危険だから気をつけろ」って意味で話をしたんだよ!

 

「騎士団長がガロウ・ランを飼ってることにも気づかない老いぼれに国王は無理ですじゃ……」

 

「ゴード王!」

 

 いきなり老け込んじゃったゴード王。髪も髭も真っ白に変化ってのはいくらなんでも急すぎじゃね?

 そんなにサーラのことはショックだったのか。

 

「聖戦士殿のせいですぜ。責任取って王になってくれ」

 

「いや、ガロウ・ランを使ってたザンのせいでしょ!」

 

 抗議するもなし崩しに俺はリの国王にされてしまった。

 縁側で茶を啜ってそうな爺にクラスチェンジを果たしたゴード前王は……オーラマシンが地上にとばされ、自分が残されたら復活してバイストン・ウェルの覇王になりそうな気がビンビンするんですが。

 この狸め!

 

 




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