「いいのか、オウエン?」
「跡継ぎのために新しい妻を娶ってくれと要請していたのをお気にしていたのでしょう。ゴード前王は亡き王妃を一途に愛してなさいましたからな」
「原因じゃなくて、さ。本当に俺が王なんかやらなきゃいけないのか?」
「ゴード前王の命ならば。私は王の禅譲を発表する手続きを行います」
ゲームの時みたいにゴードが死んだならともかく、生きてるうちにかよ。
俺たちが地上界にとばされた時のためにゴードには後添えを用意してやらないといけないな。嫌がらせとしてもね。
「その前に、ドレイクからオーラマシンの入手と自国開発の準備をしなきゃいけないだろ。技術者を集めろ」
「そうでしたな。さすがコーイチ王」
「サーラ、俺は皇一。なんか王様にされたみたいだ、よろしく」
「王様にされた、かい。くくく、いいだろう。コーイチ王の目耳となってやるよ」
サーラは密偵としてゲームでは大活躍だからね。
美人だし華琳ちゃんも喜びそう。
……華琳ちゃんどうしてるかな。指輪の無くなってしまった左手薬指を眺めてため息。
「皇一さん?」
フィナの心配そうな声に我に返る。
気づかいのできるフェラリオだ。もしかしたら俺の嫁さんたちよりもやさしいかもしれない。
「サーラ、俺の他に地上人がきてないか情報を集めてくれ。地上界に帰る方法もな。ついでに他国の技術者でいいのがいたらスカウトしてきてくれ」
「わかった。新王からの初任務だ。やってみせるよ」
俺のように華琳ちゃんたちがここに召喚されるかもしれないという僅かな希望とともに謁見の間を出て行くサーラ。
「さて、コーイチ王の物語どおりならこの後、ドレイクからガロウ・ラン討伐の書状が届くのでしたな」
「ついでにゴード王を亡き者にしようという、ね」
「先に王が禅譲しちまって、やっこさんどんな顔をしますやら」
ただ、このタイミングで隣国の賢王が死んだとして、なにかドレイクに得になることがあったのかは気になるところだ。王不在で混乱した地の平定を大義名分にして攻め込むつもりだったのだろうか?
それとも、己の下克上に横槍を入れられるのを恐れた?
俺が悩んでいると伝令が現れる。ラース・ワウの使者がやってきたようだ。
「コーイチ王の物語、信憑性が高まってきましたな。新王としての初仕事ですぜコーイチ王」
「マジか。いきなり俺が王として会うの?」
やってきた使者は俺の物語、ゲームと同じく女戦士ガラリア・ニャムヒー。
ニャムさんは敵前逃亡した騎士を父に持つ苦労人だ。たしかそのせいで騎士ではないんだっけ?
「ゴード王はいかがなされたか?」
「聖戦士殿のことは知っておられるだろう。リのためを思い、深謀遠慮をもって禅譲なされたのだ」
オウエンがそれっぽいことを言ってるが、サーラのことがショックでその場のノリで俺を王にしたとしか思えん。
「俺がコーイチ。新たにリの王にさ……なった」
「……はっ。ドレイク様にもそのように報告いたします。こちらがドレイク様より預かった書状にございます」
さすがというべきか。ガラリアは混乱しつつも任務を果たそうとする。
書状の内容はガロウ・ラン残党討伐の協力要請。
なのだが、まだ俺はこっちの文字が読めないので察したオウエンが受け取って要約してくれた。漢文ならもう読めるようになったってのにさ!
ゲームどおりに助勢を約束するとニャムさんはすぐに帰っていく。王の交代をすぐに知らせなきゃいけないってことなんだろうね。
「いやはやコーイチ王の物語が本当になったことを驚くべきか、ゴード前王の慧眼に恐れ入るべきか、迷うとこですな」
「さすがゴード前王です」
どうやら俺の話を完全に信じてくれたようだ。それに伴って俺の話をすぐに信じて王の座を譲ったゴードの評価が上がったみたい。
やっぱり後添えを探してやろう。……未亡人になったパットフットとかいいかもしれない。できればあの影の薄いピネガン王は助けたい気もするけどね。
◇ ◇ ◇
ガロウ・ランとの決戦はゴード王、レンという2人の戦力を欠いて苦戦する。……かと思ったんだが。
「ザン、そっち……そちらの方は?」
「私はマスタードラウゲン、傭兵にございます」
騎士団長ではなく俺が聞いた謎の人物、仮面の男が答えた。
……つうか、あんたゴード王だよね!
騎乗している飛竜はゴード王のだし、髭もそのまんまじゃないか。
正体バレバレな仮面はいかにもダンバインというか聖戦士伝説らしいけどさあ。
みんな気づかないフリをしているのは優しさなんだろうか。
思いっきりツッコミたいけど俺も我慢するしかなさそう。
「そ、そうか。よろしく頼む」
「うむ。任せてくれ」
王の重責から解放されてはっちゃけたのだろうか?
それとも妻と子を奪ったガロウ・ランとの決戦にはどうしても出たかった?
悩む俺を他所に「がはははは」と豪快に笑うゴードならぬ傭兵マスタードラウゲン。
彼のステータスを見るとなかなかの高数値。ゴードってこんなに強かったっけ?
すぐに退場してしまうのであまり記憶にない。
ああ、聖戦士伝説だと同じ人物でも仮面をつけたら能力が上がるのでそれもあるのかね。
「ルグウが3匹もおりますな」
ザンの言うとおり、あの巨大な強獣ルグウが3頭もいた。他にはグライウィングのミューが3機。
「本当にやられるのですかな?」
「ああ。手間だろうけど作戦どおりにやらせてくれ」
戦闘を開始すると俺たちはライフルやパンツァードラグーンによるアタックでルグウとミューのDP――耐久力。聖戦士伝説じゃない他のゲームだとHPってされることが多い――を削りながら、目的のポジションへと誘導していく。
聖戦士伝説に対応したのか俺のウィンドウも以前からのセーブだけでなく、敵や味方のステータスが見れるようになっているので便利だ。他のやつはこのウィンドウ持ってないみたいだし、これもうチートと言っていいんじゃないの?
「ナラシ、そいつはもう攻撃しないでくれ!」
「了解しましたっ!」
削りきって倒さないように注意しながら騎士たちが連携して逃がさないように陣形を作らせて準備完了。その間に俺のレベルは上がり2レベルになった。
『LEVEL UP!』
俺の頭に短く鳴り響くレベルアップの音と同時にウィンドウが現れる。
この感じだと貰ってる経験値は聖戦士伝説のままみたいだな。クリアボーナスの『けいけん×2』ってなんだったんだ?
敵の反撃で俺たちも被弾してはいるけどまだ大丈夫だ。致命傷にはなっていない。
「よし! ブレスだ!」
外れないでくれと祈りながらブレスをPドラグーンに発射させる。今まで使わなかったのは、敵にこの攻撃があるのを悟らせないためなのだ。
飛竜の口から放たれたそれは一気にルグウ3頭、グライウィング1機をまとめて仕留めることに成功した。
『LEVEL UP!』
メッセージウィンドウの出現とレベルアップ音。
うん。ちゃんとレベルも上がってる!
聖戦士伝説にはある有名なテクニックが存在する。
複数の敵を同時に仕留めることで経験値が異常に増えることを利用した急速レベルアップ技だ。
……バグじゃないよ、仕様だ。他のバグが修正されたベスト版でも残ってたからね。
これがないとレベル上げが作業化してかったるいんだよ。
今回はそれを使って経験値を豪快に稼ぎ、俺は92レベルとなっていた。
聖戦士伝説における本来の最高レベルは40でカンストなのだが、この技を使えばそれを超えることができる。
まあ、あまり上げすぎるとステータスの表示がおかしくなるんだけどさ。
戦闘終了後、警戒していた上にカンストオーバーまでレベルアップして感覚も鋭くなった俺は突然の火球にも対応でき、回避することに成功。道場に行かずに済んだ。ここで死んで華琳ちゃんたちに会ってきてもよかったんだけどね。
すぐに発射方向へと駆けつけた騎士たちがドロを捕獲する。さて、ドレイクはどう出るかな?
◇
「どうやら、我らから奪われたドロがコーイチ王を襲ったようだ。申し訳ありません」
頭を下げるバーン。きっと心の中では悔しがっているんだろうな。
「ドロを操縦していたのはガロウ・ランではなくコモンなのだがな。しかもドレイク殿のところの兵だと自供している」
「賊の戯言です! 信じなさいますなコーイチ王」
「ふむ。なればこやつらはオーラマシンもろともこちらで始末する。そちらから奪われたオーラマシンにて我が王が狙われたこと、どう落とし前をつけていただけるのか、楽しみにしておりやすぜ」
最後に地が出たザンがニヤリと笑ってバーンを恫喝する。
「ははは。ザン、そうバーンをイジメるな。ドレイク殿は貴重なオーラバトラーを貸してくれたと聞く。きっとそのオーラバトラーをお詫びとして寄贈するぐらいしてくれるさ。それともそんな旧型じゃなくて、開発中と噂の新型オーラバトラーかな?」
そっちの企みはお見通しだよ、って俺もついでにね。
ゲドでも嬉しいんだけどくれないかね。
「なっ!?」
「バーン、これは貸しだ。ドレイク殿によく伝えておいてくれ。賢王がなにを察して俺に王位を譲ったのかをな」
華琳ちゃんをイメージしながらできるだけ偉そうに言い放つ。
けど華琳ちゃんだったらもっと要求したかな?
ああ、早く会いたいよ。
ガロウ・ランを倒したにもかかわらず逃げるように去るドレイク軍。
これで聖戦士伝説の第1章は終わりか。
この先はどうするかずっと悩んでいるんだけど、ロウとカオス、どっちのルートに行けばいいんだろう?
……華琳ちゃんなら間違いなくカオスルートかな。
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