「お初にお目にかかります、コーイチ王」
「こちらこそドレイク殿」
当たり前だがドレイクもアニメやゲームと同じ顔をしていて、後にバイストン・ウェル制覇を目指すことになる領主だけに独特の存在感があったが、華琳ちゃんを嫁に持つ俺にはたいしたことはない。気圧されるようなことはなかった。
「本来ならばこちらから出向くべきであったでしょうが、なにぶんガロウ・ランや強獣の始末に忙殺されておりましてな。申し訳ない。不幸な誤解もあったようですが、これからは隣り合う領地同士、水に流して協力していきたいものですな」
「誤解ですかい? そちらの不始末で王を殺されそうになったのを水に流そうとは、ずいぶんと虫がよすぎやしませんかい?」
「貴様!」
ザンが軽く殺気を含ませながら挑発すると、ドレイクのそばに控えていたバーンが腰の剣の柄を握る。ふむ。抜きはしなかったか。
そしてドレイクはこの程度ではビビらない、と。けっこう場数を踏んでるのかね?
俺なんて恋姫世界で鍛えられてなかったら、この雰囲気だけで震えてそうなんだが。
「よい、バーン。コーイチ王、正式な謝罪は後ほどとして、まずはこれを見ていただきたい」
城の中庭が見える窓に案内される俺たち。
そこからはナムワンが飛び立つのが見えた。
うん。大きいな。あの強獣ルグウよりも大きい。たしか50
「ナムワンという」
「ここにくる途中でも見えたけど、うん。やはり飛ぶんだな。地上界の輸送ヘリの大きいやつみたいな感じか」
ここまでアルダムで飛んできてるんだから、もう見てるんだよね。攻め込むことも考えて上空からしっかり観察しながら来たんだし。
フィナやザンたちは実際に見て驚いている。前もって説明してなかったらもっとショックを受けていたかもしれない。
「さすがですなコーイチ王。いかにもオーラシップは兵やオーラマシンも迅速に運べるオーラマシンとなっておる。いかがですかな、あれの設計技術を譲渡しよう」
え? いるかどうかこっちに聞いてこないの?
問答無用でくれちゃうの?
「無論、これを謝罪とは申しませぬ。正式な謝罪はコーイチ王が御所望の物を用意しておりますぞ。リとは友好な関係を続けたいのでな」
この程度、只でくれてやるぐらいうちの技術はスゲーんだよ、ってことか。
さらには機械の館を案内すると言い出した。ゲームでもあった流れだけど、自分の方が強いとダメ押しをしたいのだろう。
もちろん、それは了承しておく。今回の目的である地上人に会えるからだ。
◇
ラース・ワウの機械の館は当然のようにリのものより大きかった。よく見ておこう。真似しやすそうな機械とかあったら参考にしたい。
しばらく機械の館を観察しているとオーラマシンの開発者ショット・ウェポンを紹介された。
軽く会話したところ、アニメと同じだと思う。こいつは野心家なのでヘッドハンティングはありえない。
「ショット、例のものを」
「よろしいのですか、あれは動かせる物では」
「かまわぬ。早くしろ」
ドレイクの指示で運ばれたのは1機のオーラバトラーだった。
アルダムやゲドよりも大きな機体。特徴的な頭部の飾り角。前半の主役メカであるダンバインによく似たシルエット……ってこれは!
「サーバインという。コーイチ王、我が方のドロが奪われ迷惑をかけた謝罪としてこれを受け取ってくだされ」
えええっ、これくれちゃうのかよ。
たしかにサーバインはプロトダンバインって設定があるから、ここに今あってもおかしくはないかもしれないけど!
コクピットハッチでもあるキャノピーを開けながらショットが補足する。
「言っておきますがこのサーバインは稼働に非常に大きなオーラ力を必要とします。簡単に動かせるとは思わないでいただきたい」
「なに、リの誇る聖戦士であるコーイチ王なら動かせよう」
ああ、そうか。きちんと謝罪をしたという形を見せるとともに、動かせなかったら俺が恥をかくということか。
たしかに聖戦士伝説でもサーバインの必要オーラ力は高かった。だけど聖戦士伝説の
ってよく見たら操縦席、OVA――総集編ビデオのオマケともいう――版の立ち乗り式のやつじゃねえか!
まさか『喰われる』ことはないと思うが……まあいい、どうせセーブはしてある。
「面白い。乗ってみていいか?」
「うむ。念のために看護の者を呼んでおけ。コーイチ王に万が一があってはまずい」
ドレイクめ。気を使うフリをして俺が倒れることが前提とか笑わせる。
だぁがしかし!
俺ってば
ただその操縦席なんだけどさ、兜や鎧をつけたままじゃ乗れないタイプなんだよな。パイロットの体形もかなり限定されるし。胸に被さるパーツを考えると女性も無理かもしれない。聖戦士伝説でヴァルキリアが乗ってきた時は操縦席は普通のタイプに変更してるのかな。
む。眼鏡も駄目なの? 思考伝達用の頭部装備に干渉する?
仕方ないな。
「え、コーイチさん?」
「なんと……」
「美しい……」
眼鏡を外した俺の顔に注目が集まる。
勘弁してくれ。俺は素顔を見られるのは苦手なんだっての。
王が弱みを見せるわけにはいかないから、それを顔に出さないように注意しないといけないのがさらにツライ。
「お、お父様、その方は?」
って、なんだかギャラリーに女の子が混じってきたんだけど。
その子も見覚えのある顔。
「おお、リムル。リの国のコーイチ王だ。粗相のないようにな」
「これはコーイチ王。ドレイク・ルフトの娘、リムル・ルフトにございます」
リムル・ルフト。
マーベルの顔が濃いから最初はリムルがヒロインだと思っていた者も多いよね。俺もだよ。OVAだと転生者がちゃんとヒロインになってるしさ。マーベルどこいった?
で、このリムル、恋に生きるのは構わないけどそのせいでまわりに迷惑をかけまくる非常に面倒な子だったりする。
その残念なリムルがなんでここに?
聖戦士伝説ではこんなことなかったのに。
っと、真っ赤になりながらもリムルが挨拶してくれたので返さなきゃな。
「俺はコーイチ・アマイ。紹介されたようにリの王だ。よろしく」
「は、はい! よろしくお願いします!」
あんまり見つめないでほしいが、そうとも言えず逃げるようにサーバインに乗り込んだ。
カシャカシャっと兜、胸当て状のパーツが俺に装着される。……あれ、なんか視界が変だ?
これってもしかしてサーバインの目が見ている風景?
「どれどれ」
座らされていたサーバインを立たせ、軽く動かしてみる。なんだろう、アルダムとはかなり違うな。
「まさか、こうも簡単に起動するとは……」
「コーイチ様……」
サーバインの耳が拾った音も聞こえてくる。驚いているな禿。ざまみろだ。
リムルの声が熱っぽかったのは気にしない方向でいこう。
さすがにこのまま飛行試験ともいかないので再びサーバインを座らせて、操縦席を後にする。
「たしかにゲドより少し疲れるな。あのコクピットも変な感じだ。これ、このまま持ち帰ってもいいのか?」
「……さすが聖戦士殿でございますなコーイチ王。どうぞお持ちくだされ」
ドレイクもショックを受けたのか、先程までの覇気がない。
まあ、サーバインをくれたのは褒めてやってもいいのだが。と偉そうに思っておこう。
「お父様、お話が」
「う、うむ。コーイチ王、すまないが儂はこれで。ショット、ゼットと関羽の紹介を頼んだぞ」
リムルに引きずられるようにドレイクは去っていった。
ショットはサーバインのチェックをしようとしていたがドレイクに命じられてそれを中断。
「コーイチ王、お身体は大丈夫か?」
「言ったろう、少し疲れると。それともドレイク殿はその程度では済まないような物を謝罪の品にしようとしたのか?」
「い、いえ……実はここにはまだ2人ほど地上人がいるので紹介します。1人はコーイチ王ほどではありませんが強きオーラ力を持ち、聖戦士と呼ぶに相応しい者です」
都合が悪いのだろう、あからさまに話を変えるショット。まさかマジで喰われる可能性があったんじゃないだろうな?
まあいい。やっと関羽に会えるか。
◇
呼びに行った兵が連れてきたのは予定どおり、ゼット・ライトと関羽だった。
関羽の衣装はバイストン・ウェルのものになっていたために、大陸とフランチェスカのどちらから召喚されたのはまだわからない。
どちらから召喚された方を俺は望んでいるのだろう。
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