ダンジョンにこだわらないのは間違っているかもしれない   作:カツヲ武士

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他の作品がスランプ気味にも関わらず、なぜかコッチを更新だッ!

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地の文が・・・地の文がぁぁ!

嫌いな人は読み飛ばし!


第126話

ーーアイシャ視点ーー

 

アタシが何もしなくても、勝手にボールスが

ギルドを敵視してくれてるし、正妻様の声を

闇派閥による告発と勝手に勘違いしてくれた

のは助かる。だからこそ次の段階の話をしたい

と思ってるんだけどねぇ・・・

 

「でよぉ。ギルドの連中のやりようがよぉ!」

 

ボールスの愚痴を聞きウンウンと頷く連中。

いやまぁ、コッチに上がってきた魔物はほぼ

討伐したし、何故か下から来る奴らが居なく

なったからその程度の余裕は有るんだよ?

 

だけどねぇコッチは正妻様の命令で動いてるんだ。正直言ってあんたらの世間話に乗ってる余裕なんか無いんだよ。

 

だからこそ愚痴大会になりつつあるリヴィラの連中の会話をぶった切るっ!

 

「私らとしても最近のギルドの行動はアレでねぇ。連中はどうも歓楽街の権益まで狙ってるみたいなんだよ」

 

ぶった切ると言うよりは方向転換だが・・・

まぁ何も生み出さない愚痴よりはマシだろう。

 

アイシャの言葉を聞き、仲間内での愚痴を止め、続きを話せと言うような目を向けるボールスに、こんなに簡単に思い通りに動く連中でいいのかい?と不安を覚えてしまう。

 

だが、ボールスにはボールスの言い分がある。

 

それはアイシャが力ある冒険者だからだ。

 

冒険者は権力や政治力には反発するが暴力

には素直に従うところがある。

本人たちは武力と言い張るかもしれないが、

実際レベル1の新人に同じことを言われても

彼らは聞く耳など持たないだろう。

 

本人のレベルが高いということは、ソレだけ修羅場をくぐってきたと言う証拠でも有るし、アイシャの場合は歓楽街を統べるイシュタルファミリアの所属で戦闘娼婦の指揮官だ。

 

冒険者は暴力に裏付けされた社会的な権力

には反発しない。まさしく破落戸である。

 

ついでに言えばイシュタル・ファミリアと

何か有れば、地上での酒や女に不自由する

ことになる。

 

だからこそアイシャの発言は、冒険者にとってはそれなりの重みが加わるのだ。

 

「当然アタシらだって喧嘩を売られて

黙ってる気はない。かといってギルド

相手に戦争を起こすつもりもないよ?」

 

おどけて言うが、現状ボールス達はギルドに

不満は有れどもギルドと戦争する気はない。

 

「まぁ、そりゃそーだろうよ」

 

だからこそ冗談は冗談と受け止める。

 

「本当はこんなことになる前にアンタらに

接触したかったんだけどね。

まぁ良い機会だと思うことにするさ」

 

アイシャの言葉を受けて、察する

モノが有ったのだろう。

 

「あぁ、そう言うことかよ・・・そりゃなんつーか、確かにタイミングか良い悪いのかわかんねぇな」

 

頭を掻きながらそう言うボールスの目には、確かな理解の色がある。

 

(どうやら第五段階もうまく行きそうだ)

 

着実に進む計画を思い、正妻様にいい報告が

出来そうだとほくそ笑むアイシャ。

 

リヴィラの関係者はソレをギルドに対する

嫌がらせを思いついたものだと勘違いして

いるようだが、ソレは一向に構わない。

 

実際勘違いでは無いのだから。

 

「ボールスが予想した通り。アンタらと同盟を

組んで連中に嫌がらせを行いたいのさ。

具体的には、ここで取引された魔石や

ドロップアイテムをアタシらに売って

貰いたい。当然ギルドの買い取り価格に色を

つける準備はできてるよ」

 

ギルドとて無償で動いているわけではない。

魔石の専売やドロップアイテムの鑑定や

仲介などで利益を得ている組織だ。

 

そしてリヴィラの街の商人は、冒険者から安く

買い叩いたモノをギルドや他の店に売って、

その利鞘を主な利益としている。

 

つまり買取先はギルドである必要がない。

 

「なるほどなぁ。ドロップアイテムはともかく魔石はデカいだろうな」

 

ギルドの主な収益である魔石。

 

大抵の冒険者はドロップアイテムの方が

単価が高いものの、あれは嵩張る上に

公的機関による鑑定の必要が有るので

(リヴィラの街での鑑定を宛にしてはいけない)

必然的に売るのは魔石が多くなる。

 

とは言えココで取引される魔石は、大体

上層から中層へ向かう際に入手したモノ

や、リヴィラの街を起点にして稼いでいる

冒険者たちが売るものなので、良くて

下層のモノだ。単価としてはそれほど高くはない。

 

だが量がある。

 

一個100万ヴァリスの魔石が10個よりも

1個10万ヴァリスの魔石が千個の方が

総額が高いように、千個では利かない数の

魔石が取引されているのだ。

 

それらの供給がなくなれば、ギルドの経理は一気に破綻することになるだろう。

 

無論魔石の蓄えはあるだろうが、それだって各方面に需要が有るのだ。

 

魔石を供給できなくなったらギルドの価値は暴落することになる。

 

「まぁね。さらに言えばソレは別に

法に触れるわけでもないだろう?

そもそも商品を誰に売ろうが冒険者の

自由だしねぇ」

 

今までは、ただギルドが一番信用が出来る

と言うだけであって、そのギルドが信用

出来ないとなれば別の販売先を探すのは

当然と言える。

 

と言うか売り先が一つだけというのは商売の流れとしては不健全だ。

 

ファミリアとして考えても、今のギルドに対して不信感を持つ神は多い。

 

もしも自分の眷族が「イシュタルがギルドより高く買うって言うからイシュタルに魔石を売りたい」と言えば『別にいいんじゃない?』と答える神が大半だろう。

 

「そりゃそうだな。まさかギルドも派閥の

垣根を超えて、全員でギルドに魔石を売ら

ないなんざ考えねぇし、ギルドが何を言って

きても『いや、向こうの方が高いし』で

終わる話だ。いやはや、良く考えたもんだぜ」

 

ニヤニヤしながら顎をさする姿はまさしく悪党である。

 

まぁアイシャもわざわざ指摘しようとは

思わないが・・・

 

「そう言うことさね。因みにそこでギルドが魔石の買取価格を上げればどうなると思う?」

 

どうなるもこうなるもないけどね

 

「俺たちの懐が潤う。つまり得をするのは冒険者だ」

 

自分たちの懐が潤い、更にギルドに対して

効果的な意趣返しが出来る。

 

コレはリヴィラの冒険者にとっては魅力的な提案である。

 

「そういう事さ。ウチもその時に溜め込んだ

魔石を売り払ってしまえば損はないだろ?

ギルドが更に困窮することになるけどね」

 

ボールスに劣らぬ悪い顔をするアイシャを

見て、その場にいる全員がどうやらギルドは

イシュタル・ファミリアの逆鱗に触れた

らしいと理解した。

 

ある意味で利用される形となるが、

実際に高額で魔石やらアイテムを

買い取ってくれるなら冒険者としては

一切の損がない。

 

さらにイシュタルファミリアも、機を見て

魔石を放出して荒稼ぎする気だとわかれば

コレに反対する理由も無いように思える。

 

「言いたいことはわかった。俺らも

ギルドに一泡吹かせることが出来るって

言うなら特に反対意見はねえだろう。

だが正式な取り決めは今回の事態が

落ち着いてからにしてぇ。

感情で突っ走ってもロクなことがねぇし

管理する連中も何人か減っちまったしな」

 

そう言って寂しそうに周囲を見渡せば、

少なくない数の冒険者の死体が周囲に点在していた。

 

「あぁ、ソレはそうだろうさ。しっかり

考えておくれ。その間にこっちもギルド

の連中を上手く出し抜く方法を考えて

おくよ」

 

アタシらみたいな戦力があるならまだしも、

ココの連中に報復されたらたまったもん

じゃないからねぇ。

 

「あぁ、よろしく頼むぜ」

 

ギルドが直接的な力を持たなくても、

力を持つものを操ることは出来る。

 

実際に連中は今までそうやって迷宮都市に

君臨してきたのだ。

 

その軛から脱却しつつある彼女たち

イシュタル・ファミリアに対する

直接的な力の行使が無いのは、ソレが

出来るロキやフレイヤもギルドに対して

不満を抱いているからだ。

 

故に今が攻め時。正妻様の判断は間違っちゃいない。

 

そう再認識したアイシャは心の中で

ガッツポーズをする。

 

 

 

第五段階。クリア。任務完了。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー弟子視点ーー

 

 

『ぐらぁぁぁぁぁぁ!!』

 

『gyuooooooo・・・』

 

 

ふむ。削られた身体は回復しても体力と気力は戻らない、か。

 

さらに中途半端に神を狙うという知性が

あるせいで、勝てない相手との戦いに

不毛さを覚えていますね。

 

この様子ならアレも調教できるかもしれませんが・・・うん。珍しいですけど不要ですね。

 

現状マダオが優勢。戦闘においても私が

指示したように闇派閥が使う出入り口

とは正反対の方向で戦ってますし、

どうやらアレも手加減の練習をしている

ようですね。

 

うむ。そのくらいの向上心が無ければ

知性があるとは言えないし、とてもでは

ありませんが旦那様に見せることなどできません。

 

マダオが仕事をしている以上は私も

成果を出す必要がありますね。

 

「という訳でロキファミリア団長のフィン・ディムナ。貴方に頼みがあります」

 

マダオと原人の戦いを観戦している

くらいですから、暇なんでしょう?

 

暇なら働け。

 

「うわっ?!」

 

「・・・?!」

 

「お、おぉ?!」

 

金髪少年と金髪痴女、そして樽が驚きの

声を上げてますが、どうも私に気付いて

無かった様子。

伯師妹といいコイツらといい、此処を

どこだと思ってるのやら・・・

ダンジョンで隙を晒し過ぎじゃないですかねぇ。

 

「あ、エ、エインさんですか!シツレイしました!」

 

「・・・シツレイしました」

 

「申し訳ない!」

 

私に気付き、持っていた槍を手放して跪く金髪少年。それを見て同じように膝を折る痴女と樽。

 

しかし妙に固くなってますね?先程は萎縮はしていたようですが、ここまでへりくだるような感じでは有りませんでしたが?

 

そう思って自分の格好を見てみますが、特に何か変化したと言うわけでも・・・あぁ、狐殿との挨拶と沐浴が有ったのでローブを着てませんでした。

 

こいつらが旦那様が私のために作った服を見れば、その威に打たれ跪くのが当然ですね。

 

事情がわかってスッキリしたのは良いのですが、神への憎悪を刺激されていたとはいえ、師の弟子筆頭である私が意図せずに己の情報を晒すとは・・・未熟未熟、弟子未熟。

 

お叱りは後で旦那様に受けるとして、とりあえずココはコレで良いと言うことにしましょうか。いちいち問答するのも面倒ですし。

 

「えぇ、今は緊急時ですからね。その謝罪を受け入れましょう。あぁそれと直答を許可するのはフィン・ディムナだけです。他の二人は控えるように。良いですね?」

 

ここで剣術だなんだのと言われても面倒ですし。

 

「「はっ!」」

 

「えっと・・・はっ」

 

樽は不馴れながらも答えてますが、この痴女は・・・何なんでしょうね?前から思ってましたが、コレでは人形ではないですか。そりゃ人を愛する旦那様にも嫌われますよ。

 

まぁ私も態々何かを教える気は有りませんが。

 

「よろしい。では本題の頼みなのですが、

アナタ方が捕獲したそこのヘスティアを

ギルドへ差し出すのは構いません。

ですが今回の件が冒険者たちに広がってしまい、

ヘスティアやその眷族が他の冒険者に狙われる

ような状況にしたくはありません。

そうならないようにすることは出来ますか?」

 

私の頼みを聞き、怪訝そうに首を傾げる金髪少年。

 

先程は自分でヘスティアを犯人と断定したのに何故?というところでしょうか。

 

その辺は知ったかぶりをされて意図を勘違いされたら困りますからね。きちんと教えてあげましょう。

 

「簡単な話ですがね。ギルドにトカゲの尻尾切りをさせないため、ですよ」

 

私がそう言えば「なるほど」と納得したような顔をしました。

 

流石に組織を率いるだけあって、他の二人とは違いそこそこの理解力があるようです。

 

そもそも今回の件、確実にギルドは無関係ですが、あの黒い原人のことで彼らに情報の秘匿をしたと言う事実には違いがありません。

 

ソレを突いて、今回の件は「無知な神を利用したギルドが、自らに反抗的な態度をとっている冒険者を狙ったのだ」という構図を造るのが私の目的です。

 

大体にして眷族が一人しかいないヘスティアを追い詰めても何の得も有りませんからね。

 

旦那様の敵にして諸悪の根源たるギルドこそが標的なのです。そこを間違えてはいけません。

 

「なるほど・・・了解です」

 

うむ。意図を正しく理解しましたね?

 

こいつ等にとってもギルドは味方ではありません。探り合うくらいが丁度良いのですよ。

 

いや、旦那様の敵として一つに纏まって貰った方が良いですかね?そうすれば片付けが楽になりますし。

 

まぁいいや()

 

その辺は旦那様がご自身でやるでしょう。

あまり手を加えては叱られてしまうかも

しれませんからね。

 

さて、簡単ではありますが、ここでの話も終わったことですし、伯師妹の今後や旦那様との接触についても考えねばなりませんね。

 

あぁ、布を持っていかせて服飾に気を使うように教育もせねばなりません。

 

何せアノ原人のような格好では知性など認められませんからね。旦那様が恥をかいてしまいます。

 

考えるべきことはいくらでもあると言うのに・・・

 

『ぐらぁぁぁぁぁぁ!!』

 

「やかましい」

 

『gyu・・・・・・』

 

私の一撃で細切れになって爆散する原人。

 

だいたいさっきから「ぐらー」だの「ぎゅおー」だの五月蝿いんですよ。このマダオが!

 

考え事の邪魔です。少しは黙って戦えないのですか?さらに原人に至ってはあんなに醜い姿を晒して・・・狐殿の目が腐ったらどうするんですか。

 

コレだから魔物はダメなんですよ。

 

「「「・・・え?」」」

 

『・・・(えぇぇ)』

 

ふむ。とりあえずは良しとしましょう。いつまでも原人を引き摺ってもしょうがないですし、アイシャの仕事も終わったようですからね。さっさと帰りましょうか。

 

あぁ狐殿へ何か土産を持たせねばなりませんね。

 

マダオを見て喜んでましたから、爪か鱗でも差し上げましょうか?旦那様にも見てもらいたいですし。

 

『(めちゃくちゃ嫌な予感がするんだが)』

 

「・・・何をしてるんですか?さっさと帰りますよ」

 

狐殿へのお土産もありますが、マダオには伯師妹の相手をして貰う必要がありますからね。無駄な時間など無いのですからさっさと来なさい。

 

『ぐるぅ(・・・流石に理不尽じゃね?)』

 

「「「・・・」」」

 

さて、マダオも納得したところで戻りましょう。

あぁ一応釘を刺しておきましょうか?

 

「では先程の用件はよろしくお願いします。無論事を成した後に何かしらの補填は行いましょう。望みが有るならティオナかティオネに伝えるように。それでは失礼します」

 

私が吝嗇と思われてしまえば旦那様にも迷惑がかかりますからね。働いたなら対価を用意すべきでしょう。

 

私に支払えないモノを要求するような連中でも無いでしょうし、そもそもギルドへの対策はコイツらだって必要ですからね。

 

ヘスティア一人に押し付けて解決なんて認めることは無いでしょう?

 

「ハイッ!お疲れさまでしたッ!」

 

うむ。わざわざ教育する必要が無くて何より。

 

とりあえず姉妹が布を持ってくるまでに伯師妹のところにどれだけの数が居るのかを確認しましょうか。

 

今は大量輸送に向いたマダオが居ますしね。

 

『(なんか扱いがどんどん雑になっていくような気がするんだが・・・)』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「なんと言うか・・・突っ込みどころが多すぎるのぉ」

 

「・・・ならガレス。君がエインさんに意見を言ってみるかい?」

 

「断るっ!」

 

「アレがエインさんの剣術・・・凄い・・・」

 




弟子による兵糧攻めである。

魔石を溜め込んで放出すれば利益が出るとは
言ってるが、売るとは言ってないってお話。

つまりは冒険者とギルドへの離間が目的。
不信感を煽りまくるんですね。
だからヘスティア一人のせいにされても
困るし、主人公を追い詰めすぎると管理者が
来る可能性も有りますからね。

生かさず殺さずを目指すもよう。




本来拙作は地の文をなるべく押さえて、会話と心理描写で話を作っていく予定だったのですが、作者が未熟なため他作品との切り替えが上手くいっておりません。

作風にブレが有るのはその為です。

全体が歪みまくり中途半端なだらしない作品になってしまいますが、ソレでもシカタナイネって思ってくれるような読者様が居てくれたらなぁ~なんて思ったり思わなかったり。



未熟な作者でスミマセンデシタッ!



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