ナザリック地下大墳墓第9階層の一室にて、6人の人物が集まっていた。いや、この表現は正確ではない。何故なら人など一人もいないのだから。
丸テーブルに椅子が6脚並べられ、その上には書類の束にティーセットと、これから何かしらの話し合いをするのは明らかであった。
「では、会議を始めましょうか」
そう口にしたのは煌びやかな純白のドレスを身に纏いし悪魔、額の角に頭から伸びるアホ毛、腰から生えた黒い翼さえ装飾品に見える守護者統括という地位に立つアルベドであった。
「ええ、進行は頼みますよ」
残りの5名を代表して言葉を返したのは、スーツ姿に腰からこちらはどう見ても既存のどの生態系にも当てはまらない尻尾を生やし、この集まりの中で唯一眼鏡を顔に掛けた悪魔、第7階層守護者デミウルゴスである。
残りの4人にしても個性的な装いでこの集まりにおける統一感というのは一切ない。
「では、まずはアインズ様の配置についてですが、冒険者として城塞都市エ・ランテルに向かって頂くというものでよろしいでしょうか?」
「異議なし」
「異議なぞあるはずがありません!」
「異議なしですね」
「異議なしだね」
「異議 なし」
「では、それで決定といたしましょう」
開幕すぐに可決する内容。それはかの方を思えば当たり前であり、その認識がこの場の者達に共有されていることを彼女は嬉しく思う。
「では、次ですが、アインズ様のお付きを誰にするか……」
「アルベドで決まりでしょう」
「シャルティアしかいないじゃないか」
自分の言葉を遮って、勝手に提案するのはモノクルを顔に掛けた男性と民族衣装に身を包む紫の瞳を持つ女性であった。両者は互いに睨みあい、こちらの存在を無視して勝手に言い争いを始める。
「てめえ、馬鹿じゃねえのか?」
「そっくりそのままお言葉をお返しします」
「アインズ様のお付きだったら。シャルが一番に決まってんだろ」
「アルベドが相応しい、それ以外にありますか?」
そこで、吸血鬼を推す女性は一度舌打ちをする。これ以上つづけても仕方ないと判断したらしい。
「一応、理由を聞こうかい?」
「ええ、良いでしょう」
彼はそこで一度、自分へと視線を向けてきた。その目は言っていた。
(任せなさい)
不安しかないのであるが、それは言えずに彼は続ける。
「先の件でアインズ様がアルベドを連れて行った件からも分かる通りその戦術的相性はとても高い。もっと言えば、お二方は
「兄さん!!」
「テメエ! 適当こいてんじゃねえぞ!」
思わず頬が熱くなる。確かに告白はしたが、あの方から返事はもらえていない。だというのに義兄であるこの人物はそうであると言い切ってみせたのだ。
(もう)
そう思うしかできないのである。その間にも彼らの争いは激しいものになっていた。
「ウィリニタス! 前々から思っていたが、テメエは危険だ! アルベドが可哀そうだよ! こんな頭のおかしい兄貴がいて!」
「それを言ったらシャルティア様こそ不憫に感じます。見た目だけ大人でその中身はちんちんくりんなあなたが先輩だという彼女こそ不幸でしょう?」
「殺すぞ! 六目フクロウ!」
「下ろしますよ? 羽根つきガエル?」
このままでは本当に殺し合いになりそうである。ふと気づけば彼らと最も付き合いのある人物がこちらへと視線を投げかけていた。その目は一見、篝火のような不安定なものであるが、確かに謝罪の心があるものであった。
「ごめ んね アル ベド ちゃん デミ ウル ゴス くん こいつら すこし いや かなり バカ なんだ 」
見ればデミウルゴスもその状況に何もできずにただ見ているだけであった。確かに彼らに何かをを強く言うのは難しいかもしれない。
そこで扉が開けられる音が聞こえた。見てみれば居たのは階層守護者であるシャルティアであった。彼女は今にも殺し合いを始めそうな者達の内、女性へと声をかける。
「イブ、
「シャル助」
「その呼び方はやめんし。ウィリニタスも2人共、大切な会議の場で何をしていんすの?」
彼女はNPC達の中ではまごうことなく、最強の存在、その眼光にやっと落ち着きを取り戻したらしい2人はそれぞれの席につくのでった。
「シャルティア様に免じて、今日の所は見逃すとしましょう」
「て! ……分かったよ。アルベドとデミウルゴスも悪かったね」
「いえ」
「私たちの方はお気になさらず」
会議とは荒れるものであると統括である彼女は吸血鬼に多少感謝しながら、会議を再開するのであった。