第7階層の空を彼女は飛行する。胸には不満が溢れていた。
(ほんと頭固いのよ!セバス様にユリと良い勝負だわ)
筆頭である彼へのものだ。あんなに否定することないと言うのに。それでも彼女は諦めない。自分たちは7人だ、そして駄目のは今の所1人、自分も合わせてあと6人もいる。壮行会をやるには十分な人数だ。そして、次に声をかける目星もつけている。
(フェリだったら)
ある意味、七罪最年少の人物、精神性であれば未熟である彼女であれば、簡単に釣れるかもしれないと目論見、その場所を目指す。
そこは一言で言えば、墓地であった。と言ってもそれは一般的なそれではなかった。この墳墓の第1から、第3階層にあるものでもある墓地と言えば、墓石を思い浮かべるだろう。しかし、ここは違う。墓石ではなく、変わりに無数の武器、剣、槍、斧、杖、以外にも弓なども混ざって――それらが灼熱の大地に刺してあるのだ。その数も凄まじく、ざっと見た限りでも軽く千を超えている。
彼女が知る事ではないが、それもまたかつてのギルメン達による悪ふざけの賜物であった。この地はナザリック地下大墳墓に攻め込んだ者たちの墓場だと、そして戦士の墓場であれば、墓石は武器であると相場は決まっているというノリであったのだ。だが、彼女はそれを知らないし、別に今は必要ない知識でもあった。
彼女の記憶によれば、この墓地自体が仲間の1人の守護領域だ。あの子供は直属部隊所属であると同時にここの墓守も兼任している。もしも、墓泥棒等が出たら、それを討伐するのが仕事の1つだ。
(いたいた)
やはりそこにいた。無数の武器の中でひと際目立つ存在。まるで、この世界の巨人、それも人間が蟻程度の存在になってしまいそうな程の体躯を誇る種族が使っていたであろう巨大な剣、それを誰にでも分かるよう伝えるとしたら、ミッドタウン・タワー、54階層を誇り、248.1メートルの高さであるかつて、リアルに存在したであろう建物と同じくらいと言えば良いだろうか?
他と同じく大地に突き刺さっているその刀身に背中を預けて眠りこけている少女。声をかける予定の人物だ。
彼女はその前に降り立ち、気楽に声をかける。
「フェリ~ちょっといい~?」
声をかけて20秒ほど、少女はその目をゆっくりと開き、その眼が目前の自分を捉えたと思うと、同時に嫌悪がその瞳に宿る。
「レヴィアノール、…………何?めんどいのはやだ」
明らかに不機嫌であった。どうやら彼女は休憩中のようであった。それを言ったら自分もそうであるけど、今は考えることではない。
「あたし達で壮行会やらない?」
「めんどい」
一言の拒絶であった。いや、こいつに関しては予め予想できたことでもある。彼女は次の手段に出る。
「お菓子もいっぱい用意するわよ。それもベルがね」
「…………」
無言であったが、その言葉に反応する素振りが見れて満足感があった。フェリアネスとは、本当に子供っぽいと自分も思う。この少女は甘いものが好物なのであり、同時にそれを作るのが得意な同僚のお手製のものであれば、基本的に動きたがらない彼女が飛び出す位好物なのだ。
(よしよし、このまま)
「で、どうかしら?やりたいと思わない?壮行会?」
「…………お菓子って本当?」
「あたしは嘘はつかないわよ」
息をするよう偽りを口にする。実際彼が参加するかどうかはまだ未定であるからだ、それでもここでも今は関係ない。
「やっぱり良い。めんどいし、寝たい」
(あれ?)
これはおかしい。彼女はそこで、話題を変えようと試みてみる。何かほかに方法はないかと思っての事だ。
「そう言えば、あんた、何抱きしめているの?」
「これ、人形」
「いや、それは見れば分かるから」
彼女が抱いているのは、一目した限りでは2頭身であった。そこまで、身長が高くない少女の胸に収まっているので、そこそこ大きいと思われる。
よく見れば、それは立派なローブを纏った骸骨でもあった。
(よく見なくてもアインズ様よね、あれ)
それは、絶対の支配者であり、大恩ある人物である。そして、彼女の知る限りフェリアネスが何か抱いて眠るという事はなかったはずである。
「本当にどうしたの、それ?流石に気になるんだけど?」
「…………眠れなくなった、あの時から」
(ああ、そういう事)
大体の予想はついたが、少女の言葉に耳を傾ける。事は、主が自分たちへの罪滅ぼしとして自殺しようとした時からだという。確かにあの出来事は衝撃であったし、自分たちも相当落ち込んだものだ。
(確か)
真っ先に立ち直ったのは、仕えている人物と個人的にも親しかった彼だ。落ち込んでいる暇はないと言っていたような気がする。
(それにしてもねえ、フェリが)
まさか、その事をそこまで気にしていたというのは、驚きである。それも無理はないかもしれない。この少女だって、主の事を慕っている、それこそ親の様にだ。
「それで、アルベド様に相談したら……作ってくれた。それから眠れるようになった」
「そう、それは良かったじゃない」
(やっぱりアルベド様はお優しい方よね)
守護者統括である彼女は慈愛の塊ではないかと自分は時々思う。それであるならば、彼女を応援すべきだろう。しかし、迷っていた。
(あいつの事もあるし。中々難しい問題だわ)
これから先の自分の立ち位置を決めかねるレヴィアノールであった。だが、それとは別に諦めていないこともある。今は何としても壮行会が先なのだ。