東方新記伝 : リメイク版   作:黒鉄球

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ちょっと興がのって連日投稿になりましたw


第十話 秘密と涙

 

 

「少し質問いいかしら」

 

フランなでなでタイムに興じていた俺の時間は終わりを告げた。パチェさんが神妙な眼差しで俺を見て質問をしようとしていたから。何を聞きたいのか、それについては心当たりしかない。

 

「俺の身体の秘密……だろ?」

 

パチェさんは「ええ」と一言置いてから言葉を続けた。和やかな空気が一変した。魔理沙も霊夢も咲夜もフランまでもが俺の話を聞こうと耳を傾けていた。

 

「貴方の身体は規格外すぎるわ。脳を治すなんてあり得ないわ。それにあなたの心臓なんだけど、一時的に(・・・・)止まってたのよ?要するに一度は死んだと言う事よ。なのに何故あなたは生きているのかしら?」

 

「人の心臓が一度停止してまた動き出すなんて奇跡の話聞いたことない?……って誤魔化しても聞かねぇんだろ?」

 

「当たり前でしょ。一度止まった心臓がまた動き出したのもそうだけど、一人でに肉体が再生する(・・・・・・・・・・・)。これも奇跡だとでも言いたいのかしら?」

 

こいつ全員が疑問に思ってること全部言いやがった。っていうか俺が言わなかったこと全部言いやがったよ。いや、霊夢はまだあのこと(・・・・)を聞いてないな。

 

「それにあんた、雷を使ってたわよね。ずいぶん使い慣れていたみたいだけど。それについても聞きたいわ」

 

案の定、ここぞとばかりに質問を重ねて来た。確かに気になるよな。『霊力が多いだけの木偶の坊』なんて言ってた俺が雷撃を扱い、更に復活までしたのだから。そりゃあこうなるよな。

 

本当は語りたくない。俺の秘密を聞いたらこいつらが俺をどういう風に見るか怖いからだ。でも俺は元々それを覚悟してこいつらの前に現れたんだ。ここで言わなきゃこいつらも納得しないからな。筋は通さないとな。俺は一度息を吐いて、話を切り出した。

 

「……御察しの通り俺は霊力が多いだけってわけじゃない。俺にはちゃんと能力が備わってる」

 

「!」

 

一同驚いていたが俺は無視して話を続けた。

 

「俺の能力は【自然を操る程度の能力】とでも言えばいいのか。この世界じゃなんたらの程度って言うんだろ?俺は自然に働くものを操ることができる。自然治癒、自然災害、そして超自然現象。自然に関するものなら俺は操れるんだ。雷を出したのもその一端だよ」

 

「まって。そしたら辻褄が合わないわ。だって頭を飛ばされて死んだはずの人間が能力を発動して復活なんてあり得ないもの。不自然だわ。………!!!」

 

パチェさんは即座に反論をしたが自分の発言のどこかで気付いたかのように眉間にしわを寄せた。こいつほんと頭いいな。察しがよすぎて怖いんだが。

 

「おいパチュリーどういうことだぜ?」

 

「いいかしら。人は傷を負った時や治すときは必ず体力を消費するものなの。それが自然の摂理で当たり前のことなのよ?」

 

「それがどうしたんだ?」

 

「3日前の咲夜と美鈴の傷を治したのは皐月よ。美鈴が言ってたけど傷は重症だったはずよ?なのになぜ美鈴は元気なまま館内へ入って来たのかしら?普通自然治癒能力を向上させたのなら体力もそれに比例して減るはずでしょ?どうだったの?美鈴、咲夜。貴方たちの体力はどうなった?」

 

パチェさん改めパチュリーがどんどん当たりを引いていく。流石に恐怖通り越して感心したわ。良かったこいつがあの時の敵(・・・・・)じゃなくて。だとしたらあの時以上に苦戦を強いられていただろうからな。

 

「た、確かに身体がすごく軽かったです」

 

「普通ならダメージの蓄積も含めて身体は動かないはずだものね。それなのに不自然なくらい動けたわね」

 

「つまり皐月の能力は自然の理そのもの(・・・・・・・・)を操れるのではないかしら?」

 

パチュリーの推理が終わり、それと同時に全員が俺の方へ向く。どうやら推理が当たってるかどうかを求めているようだ。ま、ここまでにて答えないってことはないから信用してほしい。

 

「正解だ。俺は自然を操れる。でも同時に『不自然』をも操れるのさ。不自然なものをまるで自然なようであるかのように。しかも俺の意思とは関係なく発動するものもある」

 

俺の能力は自然を操れる。だがそれは自然の理をも操れるということ。俺は言葉を極大曲解をして自然の摂理から外れた存在になってしまった。自然という言葉に属しているものすべてを。

 

「それが……再生能力、ということですか?」

 

「それもだけど、俺自身は自然の摂理から切り離されちまってる。本来なら輪廻転生の理で俺は死んだら生まれ変わるはずなんだ。なのにこうして『神条皐月(・・・・)』として生きている。つまり俺は怪我じゃ絶対に死なない、魂も切り離せない完全な不死ってわけだ。しかも俺は死に直結する怪我を負ったら能力が勝手に発動して死なない程度に回復する。しかも超スピードで細胞の一つ一つから全てを。そして峠を越えたら今度は俺の意識が覚醒して怪我が治ってくってのがいつもの流れだ。どうだ?不自然だろ?でもこれが俺の能力の全貌なのさ。死にたくても死ねない、気付かれたくなくても気付かれ、そしてバケモノと忌み嫌われる。それが例え家族であったとしてもだ。だってそうだろ?そんな奴がいたら厄介者にするのが自然だからな」

 

「あんたならそれを書き換えられたんじゃないの?その自然を操ればあんたは……」

 

「霊夢、お前はほんといつもこういうところは鋭いよな。でもダメだ」

 

「なんで!」

 

「俺の能力の使えない所は『人の思う自然は操れない』ってとこでね。以前操ろうとして出来なかった。幾つかのパターンを試したけど駄目だった。それにほら、お前らの思う自然ってのが変わってないのが何よりの証拠だろ?」

 

俺のこの言葉を聞いて、全員が言葉を詰まらせた。そう、概念を見たり行使したりはできる癖に人類に根付いた『自然とは何か』という認識を変える事は不可能なのだ。そのせいで俺は何度も命を狙われ、何度も死のうとした。その度に復活し続けた。外傷がダメなら溺死も試した。だがダメだった。死なない措置として水中で呼吸ができるようになってしまったからだ。

 

なら魂はどうか?そう思って過去の文献を漁って死を呼ぶという桜を探したこともあった。その桜を見つける事は叶わなかったがそれと同時に進めていた臨死体験の法を編み出して魂を召そうとしたが結局寝て起きたかのように普通に起き上がってしまった。今度は老衰すればもしかしたらと思いわざと俺の時間を早めたこともある。不自然に年を取らせて。結局500年進めても姿が変わらず、死ねなかった。これにより俺は絶対に死ぬことができないということが分かった。

 

「さて、以上が俺の話だがどうだ?流石に化け物だと忌み嫌うだろ?」

 

俺は自虐気味に笑い、自分に対して化け物と呼んだ。いくらこいつらが優しくともこいつらは俺を忌み嫌うだろう。

 

「……わけないじゃないですか」

 

美鈴が体を震わせながら何かを言っていた。最初の方が聞こえなかったがこいつは何を言ったんだ。

 

「お前何言ったんだ?」

 

「嫌うわけないじゃないですかって言ったんです!」

 

「?!」

 

何言ってんだこいつ?今の話聞いてたのか?俺は死なないんだぞ?不自然な事を起こせるんだぞ?それなのに嫌わねぇってどうやって…………。

 

「だって皐月さんは私達の事を助けてくれたじゃないですか!自分が化け物だと思われるリスクを顧みず、私達の傷を治して、私の事を身を呈して庇ってくれたじゃないですか!!傷ついて再生してしまうのを見られるリスクを顧みずに助けてくれたじゃないですか!!!そんな人を嫌いになれるわけないじゃないですか!!!」

 

「…!」

 

涙を流しながら俺に向かって『嫌いになれるわけがない』、か。

 

『なぁ、お前は俺のこと嫌わねぇのか?』

 

『どういう意図でそれを言ってるのか分からないけど私はあなたのこと嫌いにはならないわね』

 

『なんでだよ?」

 

『あなたが私の人生の恩人である限り、嫌いになれるわけないでしょ』

 

『……そんな大層なことした覚えないんだが』

 

『バカね。あの時あなたがいなかったら私は独りになってたかもしれないのよ?それに私は個人的にあなたのこと気に入っちゃったしね』

 

『………寝言は寝て言え』

 

『もしかして照れてるのかしら?』

 

『うっせぇな。明日早いんだろ?さっさと寝ないと怒られるぞ』

 

あの時(・・・)俺に一筋の光を当ててくれた言葉をここでもう一度聞くことになるとはな。二度と聞くことのない言葉だと思っていたけど……ここにもいたんだな。あいつ(・・・)と同じ物好きが。ふと、自分が寝ていたベッドに水滴が落ちたのが見えた。まさかと思って自分の目に手を触れるとそこは濡れていた。

 

「あれ……おかしいな。俺、なんで泣いて……」

 

「……それだけあんたが思いつめてたってことよ。安心しなさい。ここはあなたを受け入れるわ。あなたの過去になにがあったのかは聞かないわ。話したくないことだってあるでしょ。でもあなたにとっての幸せがここにはあるわ。過去に縛られないで、今を生きて。未来を見て。私達も一緒に行くから」

 

霊夢はそのまま俺の頭を撫でてきた。魔理沙達も俺のそばに立ち、柔らかな表情で笑っていた。俺は今こそ悟った。ここでは不死身だろうが能力者だろうが本当に全て受け入れる(・・・・・・・・・・)のだと。

 

「ありがとう……ありがとうみんな」

 

こんな時、俺はどうすればいいかわからない。あの時は恥ずかしくてそっぽを向いていたけど内心では嬉しかったんだ。利用するだけの関係ではなく、そこにはちゃんと信頼関係が築かれていたから。外の世界にいた頃は黒川さん以外、俺を化け物として利用してるだけだった。あの猪突猛進なおっさんは俺の受け皿になろうとしてくれてたと気づいたのはあの人が死んだ後だったからな。

 

そして今俺の目の前には俺を受け入れてくれる。それを当たり前としてくれる奴らがいる。そう思うと涙が止めどなく零れ落ちた。

 

「ほんと、ありがとうみんな」

 

俺は霊夢に頭を撫でられながら泣き続けた。

 

 

 

 




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