レミリアが大暴れしてから約30分ほどで宴会はいつのまにか戦場へと変貌を遂げた。レミリアの一方的な
そして当の本人であるレミリアは30分もぶっ通しで暴れまわったからだろう、疲れ果てて今は美鈴に背負われて眠りについていた。境内には無数のクレーターがあるがこのうちの半分以上がレミリアの戦果。残りは魔理沙のマスパと霊夢の怒りの一撃によってできたものだ。俺は我関せずを貫き通し、散りゆく黒い羽根や妖精達を尻目に酒を飲んで現実逃避をしていた。目をつけられるの確実にとばっちりが来るからな。
「ゴルァ!今私に弾幕打ち込んだやつ出てきなさい!ぶっ殺してやるわ!」
「わー、はくれいのみこがおこってるー」
「にげろー!おにみこだー!!」
「お前らかああああああああぁ!!」
「ま、霊夢だし久々に酒も入ってるから仕方ないぜ。魔理沙さんには関係ないけどな!」
「いや、お前もやらかした一人でしょうが。クレーター製造機め」
いつのまにか戦場から安置へと帰還していた魔理沙が盃を傾けながら言った。魔理沙も酷く酔っていたのか「褒めてんのか?照れるぜぇ」とか言いながら酒を飲んでいた。どうやら『クレーター製造機』という言葉を『クレーターを作るくらい強いなお前』という意味として解釈しているようだった。しかもかなりドヤ顔しているのがちょっとイラっときた。素面だったら間違いなくこいつを殴ってる。
「まあまあ、落ち着いてください皐月さん。酔っ払いの話は半分冗談くらいに聞いておかないともちませんよ?」
美鈴はよいしょ、とレミリアを背負い直しながら言った。一瞬だけ何かを憂う表情をしていたのを俺は見逃さなかったが敢えて聞かなかった。なんとなく予想がついていたから。レミリアのアホ。
「そもそもの原因はレミリアが大暴れしたせいだろ。
「それも酔っ払いのせいですよ。ほら、そこで羽根を散らして天寿を全うした鴉天狗のせいです」
美鈴が示した方向には某地球人のように蹲り、倒れている鴉天狗の成れの果てがいた。フランがしゃがんで「大丈夫〜?」と声をかけている。こら、離れなさいフラン。変態が感染るぞ。ていうかとっとと起きないと巻き添え食らうぞ。
「う〜ん。全然起きないなー。遊んでもらおうと思ったのに」
前言撤回。そのまま朝まで寝ていて欲しい。てか寝てろ。でないとフランのおもちゃにされる、もしくは霊夢に追い打ちを食らう羽目になる。だが、後処理も面倒臭いから正直誰か持ち帰って欲しい。
「妹様、それから離れたほうがいいです。変態が感染りますから」
「お前実は結構怒ってるな?辛辣にもほどがあるだろ」
謎のシンクロを生み出した俺と咲夜はもしかしたら思考回路が似ているかもしれない。こんなところで似ていても悲しいだけだが鴉天狗の諸君よ、同情はしないからな。全ては
「いいえ、私は怒ってませんよ?あまりにも突然だったので恥ずかしかったのと少し嫌な気分になっただけなので」
世間ではそれを怒っているというのだが。突っ込もうと思ったが「何もいうな」という目線をひしひしと感じたためそれはやめた。
「咲夜、そろそろ帰るわよ」
いつのまにか物を片していたパチュリーが言った。この短い会話の間に片付けられるような量ではなかったのだが何をしたのだろうか。ちょっと気になる。
咲夜は「はい」と一言だけ言い、会釈をして帰った。美鈴と背負われたレミリア、それを見て肩で息をするパチュリー、その横を歩くこぁと咲夜。その後ろをトテトテとついていくフラン。こんな景色は昔からしたらありえない光景だっただろう。狂気に侵され、外に出すことを許されなかったフランと共に、並び立って外を歩くというのは夢のひとつだっただろう。今回の異変での犠牲者は誰一人としていない。まさに最高の形の結果を迎えた。そしてこれからも彼女らとの交流は続くだろう。だから俺は手を軽くあげ、今まで口にしたことのない言葉を口にした。きっと、こうするのが正解だと思ったから。
「またな、お前ら!」
その声に反応するかのようにフランはクルリと振り向き、大きく手を振って「またねー!」と言った。咲夜と美鈴は身体を半回転させ、軽く会釈をして步を進めた。こぁとパチュリーは疲れているのかそのまま進んで行ってしまったが、これくらいでいい。こぁは男性恐怖症だし。……っていうかどうやって乗り切ったんだろうか。今度聞いてみよう。そう心に決め、俺は踵を返して真後ろで暴発しまくっている霊力を止めるために步を進めた。
「お前らー、そろそろお開きだ!今から止まらない奴は全員俺の一撃で沈めるからなー!」
電撃を右手に集めながらそう告げ、俺の初めての宴会は幕を閉じた。この後、約1名だけこんがり肉に調理されたが……そんなことは気にしない。止まらなかった奴が悪い。それがたとえ家主でも、な。
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「……よろしかったのですか?
「ええ、構わないわ。今は……今日はやめておくわ」
とある神社を上空から二人の人影が見下ろしていた。それは飛んでいるのではなく、浮いているわけでもなく、動かぬ目がたくさんある空間の中から覗いていた。方や金色の尾を
「彼と話す機会なんて、それこそ
九本の尾を持つ女性は「そうですか」と一言だけ呟き、皐月の方へ視線をやった。彼女の抱いた第一印象は『不貞の輩』だった。膨大な霊力を有していて、尚且つ嘘をついて博麗神社に転がり込んでいた。更に今回の異変で隠していた能力を発動して異変解決の立役者となった。敵が味方かは別にしても
「紫様」
「何かしら藍?」
「なぜ、貴女はあの男に肩入れするのですか」
故に問うた。何故幻想入りを許し、娘同然に大切にしている霊夢の家での居候を許しているのか。興味本位ではなく、
「………いずれ分かるわ。彼が霊夢の側にいるという意味が貴女にも」
八雲紫はそう言ってはぐらかした。八雲藍は納得の言った顔をしていなかったが追及はしなかった。一つの思惑を胸に仕舞い込み、件の男、神条皐月から目を離した。
「それじゃあまたね、皐月くん。また会いましょう」
そう言い残し、八雲紫はスキマを閉じた。