東方新記伝 : リメイク版   作:黒鉄球

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部活動忙しすぎてちまちま書いてました黒鉄球です!

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第三話 枕は高くして寝たい

魔理沙との弾幕勝負が終わった頃、俺はあることを思い出した。

 

「そういえば寝床どうしよう」

 

紫と魔理沙の登場により、有耶無耶になった寝床探しである。霊夢の話じゃ妖怪が蔓延ってるから野宿はオススメしないと言っていた。もちろん自ら妖怪の食料になりたい奴は別だが。

 

出来れば某Fクラスのような家はお断りしたいが幻想郷の建築物は基本木造建築らしい。紫曰く、「あなたのところでいう江戸から明治にかけてかしらね」だそうだ。200年以上前なのかよと舌を巻いたがまぁこの際暮らせればいいんじゃね?とか思ってきた。

 

「あれ、塩ないのか。それじゃあ……って胡椒もないし。どうなってんだこの家」

 

そんな中俺は博麗神社でお料理中である。理由は腹が減ったからというのもあるが幻想郷と弾幕勝負のことを教えてくれたお礼、というのが名目。霊夢からは泣いて喜ばれた。だが調味料不足が過ぎる。どうしたものか……適当な野菜炒めとスープでも作るか。

 

 

 

 

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「え、なにこれすごい豪華なんだけど」

 

「いやただの野菜炒めとスープとご飯なんだけど」

 

俺の作った料理に目を輝かせる霊夢に呆れてツッコミしてしまった。コンソメや塩胡椒がなかったため味付けは醤油ベースで適当に作って、野菜炒めは書いた字の如く炒めただけ。あと申し訳程度の山菜のおひたし。紫の言う通り備蓄品少なすぎて焦ったけど異様に山菜が多かったところをみるとこいつ地味に採取してやがった。ナイスです。

 

「いや本当に美味そうだぜ!きのこが入ってないのが残念だがな」

 

「博麗家でこんな豪華なご飯が出てくる日が来るなんて。異変でも起きるのかしら」

 

しみじみとした雰囲気が紫から漂ってきた。どうやら霊夢は本当にかつかつの生活を送ってるようだ。自業自得とはいえちょっと同情した。あと魔理沙、お前の基準はキノコの有無なのか。

 

「そんなことはどうでもいいわ!早く食べましょう!」

 

どうやらもう待てないらしい霊夢犬はよだれがダラダラである。誰も取らないから普通に待てばいいのに。

 

 

 

 

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ご飯を食べながら紫に調味料のことを聞いた。どうやらこの幻想郷には地球の7割ほどを占める海がないという。だから必然的に塩はないという話だった。それにコンソメや胡椒もまだ普及していないらしい。ただ、紫がまれに外の世界のものをこちらに輸入してくるというが霊夢はそれを目当てにしすぎて輸入を止めたらしい。バカだろ霊夢。

 

「仕方ないじゃない……。紫が美味しいもの持ってきてくれるの割と楽しみにしてたんだもん」

 

俺の横で食器を拭く(・・・・・・・・・)霊夢がつぶやいた。所変わってまた台所。食べ終わったものを片付けるのもまた俺の仕事。という事にしたが霊夢が流石に悪いと言ってきたので食器拭きをお願いした。

 

「だからって自分で飯を作らない理由にはならないだろ。カップ麺ばっか食ってたんだろ?」

 

「たった3分で出来るなんて凄いわよね!」

 

こいつは備蓄品(野菜)をカップ麺のせいで腐らせたりしたらしい。こいつの反応見ればわかる。普通にアホだ。生活費をゲーム代に捧げてソルトウォーターと幸せな白い粉(砂糖)で生活してるバカと同レベル。同情で涙が出そうだ。

 

「栄養偏るしお前一人暮らしなんだから料理しろよ、あと仕事しろ」

 

「あ、じゃああんたここに住む?」

 

………what?いまこの子なんて言った?耳がおじいちゃんになっちゃったのかな?もう一度聞こうか。

 

「だから、あんたここに住むかって。私としては食を確保できるしあんたは住を確保できる。お互いに利点はあるわ」

 

聞き間違いじゃなかった。でも霊夢の提案は割と魅力的だ。家探しに苦労するのは目に見えてるしここは隙間風もないし優良物件とも言えるかもしれない。だが一つ問題がある。

 

「俺は願ったりだが男と一つ屋根の下で暮らすのに抵抗ないわけ?」

 

霊夢くらいの年頃になるとそういうのを思いっきり気にしだす。父親の服と一緒に洗濯したくないだとか父親うざいとかいいだす。なにそれ父親不憫すぎる。

 

「別にいいわよ。私の勘が言ってるもの。あんたは信用できるって」

 

「いやそんな不明瞭なもんでいいんか?」

 

「私がいいって言ったんだからいいのよ!で、どうすんの?」

 

ふむ……俺は気にしないしこいつも良いと言ってるから問題は解消された。確かにお互いに利点はあるから前向きに検討しても良いのではないかと思う。美少女と一つ屋根の下ってのが不安だがまぁ俺だし問題ないな。それに俺の蓑隠れには霊夢のそばの方が都合がいい。

 

「それじゃあ世話になろうかな」

 

「やったー!これで食のバラエティが増えたってもんよ!」

 

せめてそういうのは俺に聞こえない声で言って欲しいが霊夢の満面の笑顔を見るとそんなことは気にしなくなってきた。だいぶ甘くなったな俺。

 

 

 

 

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「じゃあ私は帰るぜ。霊夢、皐月、ごっそさん」

 

黒いとんがり帽子を右手で抑え、左手に箒を持った魔理沙が言った。どうやら俺が霊夢と話をしてる間に準備をしていたようだ。なぜかニヤニヤしているのか気になる。

 

「お粗末様。って作ったの皐月だけど」

 

「食材は霊夢提供だからかまわんだろ」

 

「お?早速夫婦漫才か?」

 

とんでもない爆弾を置きやがった。そうか、こいつさっきの話聞いてたのか。道理でニヤついてたわけだ。殴りたい、この笑顔。

 

「そんなんじゃないわ。皐月はただの居候よ」

 

「そうだぞ魔理沙、霊夢に失礼だからやめろ」

 

なにが失礼って俺みたいなのと夫婦って言われてるのが不憫だろう。俺が女子なら嫌だ。やっべ、目から汗が。

 

「面白くねーな。まぁいいや、じゃあな!勢い余って子供作るなよ!」

 

「だからてめぇはなんで爆弾を投下していくんだ!」

 

去り際の爆弾にツッコミを入れながらも内心少し楽しくなっている俺がいる。昔じゃありえないことだけど、うん、こいつらは信用できるからだろうな。面白い子たちだ。

 

「貴方達大変そうね。まぁ2人がいいのなら私は構わないけどね」

 

「ならその顔やめなさいよ。魔理沙と同じ顔してるわよ」

 

幻想郷の賢者はどうやら俺たち人間に近い感性をお持ちのようです。わーい、極悪非道な妖怪じゃないことを喜びたいのにこいつの笑顔も殴りたくなったぞ☆

 

「それじゃあ私も行くわ。皐月、楽しんでね」

 

最後に優しい声を残して紫はスキマ(目玉だらけの空間)へと消えた。先ほどまで騒がしかったからだろう。博麗神社にすごく寂しい雰囲気が漂った。ふと霊夢の方を見るとほんの少しだけ寂しそうな表情をした。なんだかんだ言っても魔理沙と霊夢は友達、別れが寂しいのは隠しきれないようだった。

 

「安心しろよ、どうせ明日にゃ騒がしくなる」

 

「なっ!なにに安心しろってのよ!訳わかんない!」

 

どうやらこういったことには恥じらいを覚えるらしい。是非ともその感情を大事にしてほしい。あとごちそうさまです。

 

「んじゃ、今後どうするか決めようか」

 

 

 

 

 

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役割は割とすぐに決まった。と言ってもそんなに分担はしていない。ただ俺が炊事と風呂掃除係になって、霊夢が洗濯をするというだけだ。境内の掃除は当番制にした。なぜ当番制にしたのかというと霊夢にサボりぐせをつけさせないためである。こうすれば早起きするだろうという魂胆だ。え?普通?知ってる。

 

「ねぇ、ごはんまだぁ?」

 

「もうちょいでできるから皿の用意しててくれない?」

 

今は夕ご飯時。なんちゃって焼肉のタレを作って野菜と絡めた野菜炒めを作ってる最中だ。霊夢はせっせと皿を用意して運んでも良いものを指示して居間に運んでいる。よし、出来た。盛り付けて持って行こう。

 

「………あんたの料理ってほんと美味しそうよね」

 

「そりゃどうも」

 

料理を褒めてくれるのは嬉しいけどヨダレを拭いてほしい。人が見ていないとはいえはしたないから。

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

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「……………もう食べられない」

 

「食いすぎなんだよバカ」

 

ものの十数分でご飯を完食した上にお代わりをしまくった霊夢は仰向けで倒れていた。そりゃあ掃除機並みの勢いで食ってりゃ苦しくもなる。

 

「だって、美味しかったんだもん」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけどもう少し落ち着いて食えよ。誰も取ったりしねぇから」

 

「そんなこと言ってる割には私より食べてるわよね?」

 

「ソンナコトナイデスヨ?」

 

起き上がってジト目で見てくる霊夢。だって仕方がないじゃない!食べ盛りの男の子だもん!まぁとはいえこのペースで食っていけばどう考えても飯が無くなる。考えないとなぁ。ってあれ?そういえばこいつ……。

 

「そういえばお前どうやって食料確保してんだ?」

 

「人里から貰い受けてたのよ。異変解決の報酬としてね」

 

どうやら妖怪退治をするとお金の代わりに食料が報酬として支払われていた。おそらく紫の計らいだろうな。こいつ金遣い荒そうだし。ていうかこいつ報酬腐らせたの?あの量の貰い物腐らせるって頭おかしいんじゃない?

 

「あんたその憐れみの目で見るのやめてよ。一応……反省してるし」

 

なんだか借りてきた猫のようにしょんぼりし始めた。なるほど、一応罪悪感みたいなのはあるようだ。まぁ多分俺が来なきゃこうはなってないだろうから素直に慰めたくない。

 

「そ、そうだ!あんた今日は疲れたでしょ?お風呂沸かすわよ」

 

バツが悪くなったのか話をすり替えようと試みたようだ。かなり雑なすり替えだけどまぁいい。その話に乗ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……やっぱ日本人には風呂だよなぁ」

 

俺は霊夢が沸かしてくれた風呂に浸かっていた。別に特別な効能があるわけではないと思うが疲れが出てる気がする。やはり風呂は最高だ。

 

「……今日は色々ありすぎたな」

 

ふと考えた。もし幻想入りしていなかったら俺はどこで何をしていたのだろうか。適当に日本を見て回っていたのかもしれない。もしかしたら国外へ行って平穏に暮らしていたのかもしれない。もしかしたら………戦いに明け暮れていたかもしれない。一人冷静になれる風呂場だからだろう。色んな仮定を考えてしまう。

 

だが俺はこうして幻想入りを果たした。妖怪に会い、巫女に会い、魔法使いに会い、弾幕ごっことかいう遊び(・・)もした。俺のことを知らない世界。俺の知らない世界。俺が家出を決め込まなければ知らなかった世界。そんな世界に身を投じて少し心が躍っている自分がいる。でもいつか俺の事を知ればみんな俺を見放すだろうという可能性は考えておかねばならない。

 

『気味が悪い』『面倒見きれないわ、化物』『お前は生きているだけで命を狙われるのさ、化物』『まだ生きてたのね』『君の力を貸してよ、僕の仲間になろう』『君の力はいらない……僕に利用されない力はいらない!』『あぁ、帰って来なければよかったのに』

 

いらん事を思い出した。向こうにいた記憶。あの目をした奴らの記憶。正直思い出したくもないものだが、定期的に思い出してしまう。冷静になればなるほどそれは色濃く思い出してしまう。

 

『君があの……?よろしくな!ガンガン頼るから!君も俺を頼ってくれよ!』『貴方のソレ(・・)は必要なもの。だから貴方が持ってるの。そして忘れないで。いつか必ずあなたを受け入れてくれる人がいる。私たちのように』『よかった………君は生きろよ、少年』

 

………嫌なことばかりではなかったな。俺を受け入れてくれたあいつら(・・・・)だけはあの目をせず、認めてくれた。だから俺は生きようと思ったんだったな。あいつらのように受け入れてくれる奴はいない。だから俺は自分の正体を隠してでもここにいたい(・・・・・・・・・・・・・・・・・)と思ったんだ。知らなければ、受け入れてくれるのだから。

 

さて、そろそろ出るとしよう。多分霊夢が布団を準備してくれてるだろうから。俺の幻想郷ライフは、色濃く楽しいものにしよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしこの思惑が直ぐ(・・)に瓦解するとは、思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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