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「皐月ー、そっち終わった?」
「終わってるぞ。ったく、面倒な廊下掃除やらせやがって……」
俺が幻想郷に来て2日目の昼、早速居候らしく家事に勤しんでいた。本当なら朝に終わらせるつもりだったのだが昨日の疲れが残っていたのか昼前まで眠っていた。ついでに霊夢も。
二人揃ってバカな事をやっているが霊夢曰く、大抵の日はこうなんだそうだ。クザン顔負けのだらけ具合である。誰かこのバカ巫女に天罰を。
なぜ俺が廊下掃除をしているのかというのはじゃんけんに負けたというだけの話。普通に悔しい思いをしただけ。当番制?初日だからいいんじゃね?
「お茶いれたけどいる?」
掃除を終え、居間でだらけてる俺に台所の掃除を終えたであろう霊夢からお茶の誘いが聞こえた。正直疲れたから願ってもないので返事をしておく。
居間から顔を出して返事をするとパタパタと足音を立ててやって来た。こうしてみると普通に気の利く娘に思える。魔理沙や紫の話を聞く限りじゃ怠け者なんだけどやはり自分の目で見ないと分からないものだな。
「きゃっ!?」
「は?」
掃除したばかりの廊下を靴下を履いて小走りするとどうなるか知っているだろうか?そう、転ぶのだ。すってんころりんするわけであり、大変危険だ。盛大に転びかけている霊夢の手元にはおぼん。このままいけば俺の顔面にぶつかる。やべぇ、かわせないわ。
「おぶっ!?」
見事に顔面キャッチを決めた。思いっきり鼻を打って、支えになっていた腕が地についた。
「………てめぇ何してんだこの野郎」
「あんたこそなんで廊下に顔だしてんのよ危ないでしょうが………!?」
とばっちりで怒られた……。こちとら湯呑みやら急須が乗ったおぼん叩きつけられてるんだけど。反射で
つーか腕重いんですけど?なんか柔らかい感触あるし。なにこれフニフニするんだけど。
「ひゃっ!?」
試しに手を動かすと霊夢が変な声をあげた。その瞬間察した。霊夢の体が俺の腕の上にあるということと、俺の掌の上には霊夢の胸部があることを。おぼんのせいで顔は見えないが多分怒ってると予想。ゆっくりと腕から重みが消え、おぼんが顔を離れた。
「…………」
顔を真っ赤にそめ、散乱している湯呑みや急須のことなど目にもくれず、俺を見ておぼんを振りかぶっていた。なぁラブコメの神様よ、こういう時俺はどうすりゃいいんだろうか。ひとまず謝らんと。
「………ごめんn「この………ヘンタイ!」
俺が謝罪を言い切る前にお盆を振り下ろして来た。鼻に激しい痛みがはしり、目の前が真っ暗になった……。こういう時、助けてこその神様だろう、が。
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鼻がズキズキ痛んだ事により、目を覚ました。体感としては午後3時といったところか。ふむ、約二時間ほど寝てたのか。そういえばなんで……ってそうか。俺霊夢の胸揉んだのか。……あ、あいつ今どこだ。
「…………」
どうやら掃き掃除をしていたようだ。俺が気を失ってる間に掃除していてくれていたようだ。霊夢が滑ったのが原因とはいえ俺もやらかしたしな……。今一度謝らなければ。
「なぁ、霊夢」
「……………」
俺の呼びかけに一切反応がない霊夢。聞こえなかったのだろうか?もう一度呼びかけて見た。しかし、
「…………」
完全に無視された。どうやら口も聞きたくないくらい怒っている、と推測する。さっきから掃き掃除が乱雑で葉が散らかってるという事も加味するとそうなのだろう。………非常に気まずい。誰でもいいからこの雰囲気ぶち壊してくれ。そして俺に謝らせてくれ。
「霊夢ぅぅぅぅ!!!魔理沙ちゃんが遊びに来てやったぜ!」
すいません誰でもとは言いましたがチェンジでお願いしますある意味空気ぶち壊れました勘弁してください。いや、目視はできてたんだ。空からなんか黒いの来てるなくらいには。でもさ、認めたくないじゃん?一番空気読まなさそうな知り合いが来たんだから。
「おろ?どうしたんだ?霊夢顔赤いぞ?」
………ね?だから嫌だったんだ。確実に地雷を踏む未来しか見えなかったから。案の定霊夢の顔真っ赤だし今にも爆発しそうだ。
「赤くなんてなってないわ!断じて!」
全力で否定して掃除を再開する霊夢。魔理沙のやつ絶対わけわからんくなってるぞ。
「?」
ほら、明らかにわかりませんって顔してる。そしてとてもご不満そうな顔だ。表情を変えず、俺の元へと歩いてくる魔理沙。まぁ霊夢から聞けそうになかったらそうなるよな。さて、どうごまかしたものか……。
「お前何したんだよ」
「まて、なぜ俺がやらかした前提で話が進んでんだ」
いや、間違ってはないんだけどこうも断言されると反論したくなるのが人間というものでつい口が滑ってしまった。適当に誤魔化すつもりが完全にやらかしてしまった。いや、まだ挽回のチャンスはある!
「ほらやっぱお前がやったんじゃねぇか」
普通にバレてらぁ……。分かってたよちくしょう!俺が反射で反応したから犯したミスだ。……素直に話すか。
「いや実は……」
俺は霊夢が激おこモードになった経緯を話した。大変恥ずかしかったが誤魔化しようがなかったので腹を括って話した。魔理沙の目がクズを見る目をしなければもう少しマシだったのだがな。
「このすけべ野郎め」
「狙ってやったわけじゃねぇっての。そりゃ悪いとは思ってるが……」
弁明の言葉が思いつかなくてモゴモゴしてしまった……。こういうのは可愛い子がやるからいいのであって俺がやっても気持ち悪いな。悲しい気持ちになってる最中魔理沙はため息をついて、
「なぁ霊夢」
「な、なによ……」
魔理沙が霊夢を呼んだ。魔理沙の声色で分かるが少し真面目に話をするようだ。内心にビビってる俺は口を挟まず、地蔵のように不動に徹する。
「皐月のやつ反省してるし、いつまでも意地張ってないで許してやれよ」
「………まだ謝ってもらってない」
霊夢の無視の理由は俺がまだ謝ってないと思ってるということが判明した。いや君が謝りきる前に気絶させたんでしょうが!と言いたいところだが俺に非があるのでその言葉は飲み込んでおく。下手すりゃ霊夢の怒り買いそうだし。
「謝りきる前にお前が殴ったんだろ?すぐに想像がつくぜ」
俺の思惑とは裏腹に俺の言わんとしたことをあっさり言った魔理沙。お前マジでふざけんな。一瞬でもいい奴だと思った俺の気持ちを返せ。
「あんなことがあったら殴るでしょ!」
「気絶させられたら謝るタイミング見逃すって。しかも無視してるし」
「じゃああんたは平気だっていうの!?」
「いや、マスパ撃つぜ」
「あんたの方が酷いじゃない!」
さらっと俺への死刑宣告してくるのやめてくんない?魔理沙め、一体何考えてやがる。
「もちろん時と場合によるぜ?そりゃ理由もなく揉まれりゃ問答無用でマスパ案件だけど、私に非があったら謝るぜ。で、今回は明らかに霊夢に非があるだろ。掃除したての廊下を小走りしてたらそりゃ転ぶだろうよ」
どうやら魔理沙は話の土台を構築していたようだ。何も考えてなさそうな感じだったのにいつのまにか説得の姿勢に入っていた。幼馴染ってのもあってこういうのはうまく運びやすいのだろうか。
「で、でもあいつの手の位置はどう説明をつけるのよ!」
自分の非を認めたくないのか反論をする霊夢。昨日は信用するとか言ってたのにちょっと悲しくなった。いや裏切ったのは俺か。しかしこのやり取り、どんな結末になるのか気になるから黙っていよう。
「大方腕を支柱に廊下から顔でも出してたんだろ?それで霊夢が滑っておぼんを顔に叩きつけた。その勢いで腕が崩れて霊夢の胸の位置にって考えるのが自然じゃないか?私にはワザとやったとは到底思えないぜ」
俺から聞いた話を織り交ぜながら説得をしている。魔理沙のやつ、ちゃんと考えて発言してくれてるのか。なんだよ、やっぱりいい奴だったんだな。
「っ!………確かにそうかも。でもだからって許さないわ」
自分にも非があったのを認めた霊夢だが、やはり少し納得がいかないのだろう。そりゃそうか、女子の身体はそこまで安くないもんな。なら男として取るべき行動は限られるな。何か十字架を背負えばいい。それならば多分いける。
「じゃあ俺が…「皐月が一週間全ての家事をやるってのでどうだ?」
俺の言葉に被せて来た魔理沙。お前が俺の罰決めんの?ていうかさっきまで味方だったじゃん。そこまでは味方してくれないのね……。まぁやるけど。
「………わかったわ。それで手を打ってあげる」
この瞬間、俺の地獄の家事生活は決まった………。畜生。3日くらいにしようと思ってたのに魔理沙の野郎…………。
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今日から一週間の強制労働を課せられた俺はせわしなく動いていた。
「皐月、お茶頂戴」
「へいへい、ちょっと待ってろ」
霊夢に顎で使われ、
「私にもくれだぜ」
魔理沙に顎に使われていた。いや、君関係ないよね?ついでだからやるけどさ。
「皐月、私掃除で疲れたから肩揉みしてくれる?」
「私にも頼むぜ!」
「ちょっと待て、明らかに家事じゃないよなそれ」
今こいつら肩を揉めとか言った?明らかに雑用というか奴隷というかそんな扱いを受けてる気がする。しかも霊夢ならともかく魔理沙にまで………。ちょっとイラっときたからイタズラしてやるか。
「じゃあ魔理沙からやってやるよ。ついでに足もやってやる」
俺のこの一言に魔理沙は気がきくな、と一言いって素直に身体を預けてきた。俺はふつうに肩揉みをしてやった。なんの変哲のないただの肩揉みだ。鼻歌を歌って上機嫌になっている魔理沙は思いもしないだろう。この後の地獄を。さぁ
「え、おまっ!これ、超いてぇんだけど!?これマッサージじゃ……」
「れっきとしたマッサージですよ?足ツボマッサージっていう人によっては激痛の」
してやったりという顔をしているだろうな。調子に乗るからお灸を据えないとこいつは付け上がるということが先ほどわかったからな。容赦はしない。
「お前そんなの聞いてイデデデデデデ!!!ごめん私が悪かったからそれもうやめて本当に痛いんだって!!!!」
「馬鹿め、痛いということは疲れてる証拠。もってこいだろ?それともお前は
「そんな善意はいらねぇからもうやめてくれ頼むお願いします!!」
ふむ、流石にここまでなると自分でも可哀想に思えてくるからやめてやろう。いやぁスッキリしたわ、俺の心が。
「魔理沙あんた馬鹿でしょ、調子に乗るからそうなるのよ。あ、私はやらなくていいからね」
「言われなくてもやらんわ。一応罰を受けてる身だし。とはいえ魔理沙には助けてもらったから足ツボマッサージで礼をしてやる」
「ごめんなさい調子に乗りすぎました!これめちゃくちゃ痛いから勘弁してくれだぜ……」
多分無意識だろう。だからこそ恐ろしい。だいぶ痛かったのだろう、涙目でしかも上目遣いになって謝ってきた。なかなかの破壊力があったから危うくおぅふと反応するとこだった。魔理沙、恐ろしい子……!っと、もう夕方か。飯の準備しないとな。
「飯作るわ。ついでだし魔理沙も食ってけよ。さっきの詫びってことで」
「痛いのを我慢するぜ!!」
この瞬間思った。魔理沙は割と御し易い。仕方ない、キノコ使うか。
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夕飯を作り、案の定キノコ料理をめちゃくちゃ美味そうに食って満足して魔理沙は帰って行った。まったく、今日も疲れたな。昼からハプニング続きで騒がしかった。今までの人生でここまで騒がしいのは久方ぶりだ。これからの日常がこんなに騒がしいものになるのかと思うと疲れそうだが、俺の手にした日常だ。大切にしないとな。
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