東方新記伝 : リメイク版   作:黒鉄球

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ちょっとずつ書いてたら長くなってしまった……。

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第九話 戦いの後で

 

 

 

「………知らねぇ天井だ」

 

寝起き一番の言葉はこれに限る。何故かって?知らねぇ部屋に寝かされてりゃこういうと相場は決まってる。どっかの死に戻り野郎も同じことしてたろ?多分気持ち的には一緒。さて、冗談は置いといていつもの確認をしますか(・・・・・・・・・・・)

 

俺はまず左手で右腕をチェックした。もちろんあるわけがない。傷口は完全に塞がってるがな(・・・・・・・・・・)。次に右側頭部に触れた。うむ、きちんとあるな(・・・・・・・)。眼球を動かしてみるか。しかし左しか動いてる感覚がない。ということはまだか(・・・)

 

傷の確認が終わった後、俺は状況を整理に入った。まずここを知らない。が、天井の色が血のような赤色だから多分ここは紅魔館?だと思う。相変わらず趣味の悪い場所だ。目に悪い。そして俺の身体はいつも通り再生した(・・・・・・・・・)。俺がここに寝かされてるってことはこの能力を見られたってことだろう。まぁ十中八九もうここにはいられないだろう。こんな化け物(・・・)と一緒にいたいなんて思う奴はいないからな。はぁ、相変わらず気味悪い再生能力だ。そのくせ中途半端と来たもんだ。ため息出まくるわ」

 

「起きたんですか!?」

 

「うおっびっくりした!!ってなんだ美鈴か脅かすなよ。つーかうるさい。俺怪我人だし起きたばっかなn「怪我は!?えーっと、目は見えますか?!何処かに痛みは?!あとは、あとは、えーっと、えーっと………」

 

「うるさいっつってんだろ静かにしろよ。あと人の話を最後まで聞け。気持ちはわかるが」

 

俺の横たわるベッドの左側で寝ていたであろう美鈴がそこにはいた。ずっと右側見てたから気付かんかったわ。何故寝ていたと予測したのかというと口元によだれが付いていたから。騒いだことに美鈴は謝り、俺は口元についたよだれを拭くように促した。

 

美鈴は恥ずかしがりながらよだれを拭いた。あまり見るものでもないので少し俯いたらそこに水滴が落ちたのを見た。またよだれでも垂らしたのかと思って美鈴の方を見たら涙を流していた。

 

「おい、どうした?俺に見られるのそんな嫌だったか?」

 

「違いますよ!確かに恥ずかしいですけどそんなことじゃないです!私……このまま皐月さんが目を覚まさなかったらどうしようって………」

 

どうしよう……ってなんだ?こいつまさかとは思うが俺の心配をしたのか?俺のこの能力を見たあとで?

 

「お前、俺の心配をしたのか?」

 

「当たり前じゃないですか!皐月さん死にかけてたんですよ!私を庇ったばっかりにあんな大怪我を負って……」

 

美鈴は涙を流しながらそう告げていた。俺はどうすればいいか、分からなかった。人に心配されるなんてのはあいつら(・・・・)以来なかった事だ。ましてや俺の再生能力を見たあとでなんて初めてだ。

 

「あの……」

 

こいつの涙に不自然さ(・・・・)は無い。ということは本当に心配をして、心から涙を流したということになる。「あの………」こいつは多分相当なお人好しなんだろう。もしくは根は心優しい女の子「あの!」美鈴がなんか言ってたので左を向いたら俯いて頭を撫でられていた美鈴がそこにはいた。誰に、そう、俺に。……え?

 

「え、あ、すまん。完全に無意識だったわ」

 

無意識的に女の子の頭撫でてたとかどこの千葉県民お兄ちゃん?何それ俺の目腐ってるの?いや腐ってたわ。てかお兄ちゃんでもないし俺()だし。……嫌なこと思い出したわ。

 

「い、いえ……。その…嫌ではないので………」

 

嫌じゃないんかい。そう思いながら何故か手を離す気にはならなかった。最初見たときから思ってたけどこいつ髪サラサラすぎんか。きめ細やかで撫でるたびになんかいい匂いするし。霊夢もだし紫もそうだけどなんで女の子っていい匂いするんですかね。

 

ちょっと変なことを考えていた時に複数の足音がすごい速さで走っているのが聞こえた。何事かと思ったのもつかの間、部屋の扉が勢いよく開けられた。その拍子に手を離し、美鈴は少し寂しそうにしていた。なんでやねん。てか誰やねん行儀の悪い。誰かはなんとなくわかるけど。

 

「皐月起きたのね!」

 

「霊夢うるさいぜ!皐月無事か!?」

 

「あなたもうるさいわよ魔理沙。もう少し静かにできないのかしら?」

 

「そういう咲夜も走ってたじゃない。私は飛んでたけど」

 

順に霊夢、魔理沙、咲夜、パ……パチェ?忘れたけど四人が来た。当主様とフランはきてないようだ。まぁフランはともかく当主が来てたら睨んでしまいそうだから来なくて正解だったかもな。てか三人ほど息が荒いんだが?そんな全力で走ってきたのかこいつら。

 

「うるさいぞアホ達。静かにしてくれ」

 

「できるわけないでしょ!あんた三日も寝てたのよ!」

 

「逆に三日で済んだのが謎よ」

 

霊夢のセリフにツッコミを入れるパチェさん(勝手に命名)。こいつかなり鋭いな……。いや、しかしなんだ……。

 

「三日も寝てたのか俺は。………15食食い損ねた」

 

「なんで1日5食計算なんだぜ……」

 

俺のセリフにツッコミを入れる魔理沙。いやぁ激闘の後3日寝たってなったら言わなきゃって思うじゃん。麦わらの船長のセリフだけど。それに俺5食食えんから青ざめた顔をするな霊夢。

 

「それより、怪我の具合はいかがですか?」

 

「右目と右腕がないことを除けば問題ないぞ」

 

咲夜からの質問をさも当たり前のように答えた。こう言っちゃなんだがどうせ治る(・・・・・)。俺はそれを知っているがこいつらは知らない。だからだろう。全員があまり思わしくない表情をして俯いていた。パチェさん以外。発言ミスったな。

 

「良かった、とはあまり言えない状態ね」

 

パチェさんは無表情のまま俺の頭と腕に目をやっていた。じっくりと観察するように。一瞬殺気を出しそうになったがなんとか堪えた。ふと扉の方を見るとそこには金色の髪がチラッとだけ見えていた。俺の知る限り金髪の髪は魔理沙と紫とフランしか知らない。身長的にはどう考えてもちびっ子だから誰かはすぐわかったけど。

 

「………」

 

頭だけひょっこり出したのはフランだった。申し訳なさそうな目をして、入りにくそうにしていた。これは俺が声かけないと入ってこないな。

 

「フラン。お前が今そこにいるってことは狂気は今どうにかなってるってことだろ。良かったな」

 

実のところ内心少しホッとしてる。心から良かったと思ってる。何故なら俺の半身を吹き飛ばしてでもなんとかしたかった狂気が目の前にある。いや、狂気に飲まれかけた少女と言うべきか。その少女が普通の状態でそこにいる。それだけで俺が身体を張った甲斐があったってもんだ。報われたな、俺。

 

「全然よくない!」

 

俺の言葉の後に出て来た言葉はフランの泣き声だった。

 

「全然、良くないよ………。私が、私のせいで皐月は、こんな………大怪我を…………。私の狂気が鳴りを潜めて、みんなと一緒に居られようになったけどそのせいで皐月は……。ごめんなさい………ごめんなさい……………」

 

フランは俺の前で懺悔を始めた。おそらく俺が寝ていた三日間を苦悩と共に過ごしていたんだろう。俺が死んでしまったら全部自分のせい、狂気を抑えられなかった未熟者とそう思ったのだろう。俺も馬鹿じゃない。フランの気持ちは分かる。嬉しさ半分、悔しさ半分ってとこだろうな。俺の目が覚めた嬉しさ、俺の腕と頭が飛んだ自責の念。この2つが重なったんだろうな。こんな小さな女の子が抱えるには早すぎるな。こういう時ってどうすりゃいいんだっけ?ああ、そうだ。

 

「フラン、ちょっとこっちこい」

 

俺は手招きをしてフランを呼んだ。最初は来なかったがずっと手招きしていると観念したのかフランは俺の方に歩み寄ってくる。俺の真ん前に来た瞬間俺はデコピンを食らわせた。

 

「コンニャロ喰らえ」

 

「うにゃっ!?……え?」

 

わけもわからず突然デコピンを食らったフランは額に手を当てていた。まぁ当然の反応だな。俺は自分の意図を説明し始めた。まぁこれ言ったら多分フランは反論するだろうけど。

 

「これがお前の罰だ。これでチャラ。これ以上の異論は認めん」

 

ぶっちゃけ俺はそこまで怒っていない。元々腕は吹き飛ばさせるつもり(・・・・・・・・・・・・)だったからな。そこに+αがついただけだし。そしてフランは俺の予想通りフランは反論をした。「それじゃ意味がない。私のしたことは……」と。この答えも予想通りだ。俺は真っ直ぐフランを見て、俺の答えを言おう。そうじゃないと、こいつには届かなさそうだ。

 

「気が収まらないってか?じゃあお前はその罪を一生背負え。自分のした事を悔いるのならそれを背負うのがフランの贖罪だ。気が収まっちまったらそいつは過去を忘れるのと変わらねぇ。罪の意識が無くなっちまうのと同じだ。忘れたら………何も残らないだろ?」

 

至極当然のことを口にした、はずだ。とてつもなく危険な能力を持った子だ。自分のしてしまったことをちゃんと教えて、次に活かせるように導くのが大人の役目だ。俺まだ18だけど。

 

「………お、」

 

「お?」

 

「お兄様ぁぁぁぁ!!!」

 

フランがなんかよくわからんことを叫びながら突っ込んできた。ねぇ待って俺怪我人なんだけどお願いだからダイブして来ないでください。

 

そんな祈りも虚しく俺の胸にダイブして来た。俺は呻き声を上げそうになったが年上の意地でなんとか堪えた。超痛かったけど。俺の胸の中でフランの啜り声が聞こえた。フランはその状態で話し出した。

 

「私……忘れないよ。自分の過去と向き合って………い、いづが………克服じでみぜるがら!!!」

 

フランはずっと泣いていた。なんだか泣かせてしまった感が否めないから、贖罪になるかわからないけど俺はフランの頭をそっと撫でてやった。少しでも落ち着いてもらえるように。だが一つ聞きたいことができた。うむ、これは聞かないとダメだ。俺の沽券に関わる。

 

「ところでフラン」

 

「……にゃに?お兄様?」

 

そう、俺は一つ疑問に思っていた。それはこれだ。

 

「その『お兄様』ってのはもしかしなくても俺の事か?」

 

「うん!お兄様はお兄様しかいないよ!」

 

この日より俺はフランのお兄様に任命されました。ま、悪い気はしないからいいけど。………俺に妹萌えはない、とだけ言っておこう。

 

 

 

 

 




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