Re:艦これ×ペルソナ4   作:じんた

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戦闘回です


もう一つの影

――警告、シャドウの出現を確認。鎮守府周囲の警戒を厳とせよ!

 

――繰り返す、シャドウ出現、警戒を厳とせよ!

 

>鎮守府内には大淀の放送が響き渡る

 妖精さん達も慌ただしく飛び回り、シャドウの侵攻に向けて準備を進めている

 

>前回は七里海岸の離れた場所だったが、今回は本丸の鎮守府に出現した

 先の戦いとは、勝手が違う

 

鳴上「シャドウは!?」

 

明石「分かりません! ですけど、此方の警戒網には引っかかってます!」

 

明石「……うぇ!? なな、なんですかこの反応!?」

 

明石「て、敵の方向、指定できません!」

 

長門「分からないだと!? どういう事だ!」

 

明石「分かんないんですー! 霧のせいなのか……敵の数が多すぎるのか……」

 

天龍「……うっし、艤装展開出来たぜ?」

 

響「此方も、何時でも行けるね」

 

夕立「霧で何も見えないっぽい……」

 

鈴谷「マジで何も見えないね…… それに敵の位置も分からないなんて……」

 

球磨「球磨センサーも役立たずになってしまったクマ」

 

鈴谷「球磨センサーって何……」

 

吹雪「お、遅れました! 吹雪、何時でも行けます!」

 

漣「同じく漣! 馳せ参じましたぞー!」

 

>この鎮守府を守るべく、艤装を使用できる艦娘が集結した

 総力戦だ……!

 

真壁「鳴上君! 舞鶴は問題ないわ!」

 

鳴上「分かりました。じゃあ真壁さんは……」

 

真壁「現場の指揮を執ります。鳴上君こそ安全な場所へ」

 

鳴上「そ、そういう訳には……」

 

夕立「……来た!」

 

真壁「各自応戦開始! 鎮守府と味方への誤射だけはしちゃだめよ!」

 

球磨「無茶言うクマ……」

 

天龍「ぼやくなよ! 砲戦開始だァ!」ドォン

 

>戦闘が始まった……

 

>……自分もペルソナを使えるか試してみよう

 

工廠妖精s「おまちになって」

 

鳴上「よ、妖精さん?」

 

工廠妖精s「ひみつへいきをさしあげです」

 

工廠妖精s「かならずおやくだちですので」

 

鳴上「ちょ、ちょ……」グイグイ

 

真壁「鳴上君!? どこ行くの!?」

 

>こっちが知りたい……!

 

鳴上「す、すぐ戻ります!」

 

―――

 

――これは、戦闘なのか?

私が知っている艦隊戦とは程遠い。こんなものが戦闘であってたまるか……!

 

鈴谷「うりゃー!」ドォン

 

吹雪「当たってください!」ドォン

 

???「グオオオオォォ!」ヒュン

 

鈴谷「ま、また外れた……!」

 

漣「やっぱ霧の中じゃキツイっすー!」

 

球磨「テーブルが飛んでるクマー!」

 

漣「というかシャドウ不気味ー!」

 

???「……!」ジオ!

 

夕立「わ、わっ!?」バシャン

 

夕立「な、なにさっきの!? 危なすぎっぽい!?」

 

霧の中を艦娘達は懸命に索敵し、敵を砲撃するが、当たらない

なのに新型――此方ではシャドウと呼称されていたか

シャドウは霧の中で、的確に此方の位置を把握し、高速で移動する

そして何もない空間から、炎や電撃を自在に生み出し、艦娘達を追い詰める

 

……滅茶苦茶だ。霧の中での交戦、敵の攻撃方法

全てが分からない。私の今までの経験は、何の役にも立っていない……

 

天龍「チッ、やっぱ此処の練度じゃキツイか…… 響!」

 

響「ん…… 了解」チャキ

 

天龍「オラオラァ! そんだけフラフラ飛んでりゃ幾らでも当たらァ!」ドォンドォン!

 

響「……遅いよ!」ドォン!

 

???「ギッ、ギギ……」フラ…

 

天龍「長門!」

 

長門「主砲斉射! ……ってぇー!」ドゴォン!

 

???「ギッ!?」ドガァン!

 

真壁「……!」

 

真壁「や、やった! 一体倒した!」

 

天龍「……あぁ」

 

長門「一体だけ、な」ギリ

 

……そうだ、敵は一体ではない

 

明石「何ですかこれ!? た、大量に敵影確認!」

 

新型の深海棲艦がここまでの物だったとは……

……いや、これほどの物だと分かっていたんだ

霧の中から生還した艦娘達は皆、口を揃えて「霧の中は危険だ、新型は近づかない方が賢明だ」と話していた

問題は、それを軽んじていた私達提督の責任なんだ

 

真壁「……こんなの」

 

目の前で対峙して、彼女達が言っていた事が本当の意味で理解出来た

こんなもの、こんなのもは、勝ち目が……

 

鳴上「皆待たせた!」ザアァァ

 

鳴上「 ペ ル ソ ナ ! 」カッ

 

―――

 

吹雪「う、うえぇ!? し、司令官!?」

 

漣「ブーッ!?」(吹き出し)

 

響「な、何であの人海に出てるの!?」

 

長門「あ、アレは艤装か!? い、いやそれにしては小型すぎる。脚部部分しかないじゃないか!」

 

球磨「両腰に何かちっこいの付けてるクマ。……というかそういう問題じゃないクマ!?」

 

鈴谷「あ、あれ何!? あの背後のひ、人? とにかく何!?」

 

夕立「あれが提督さんの言ってた『ペルソナ』っぽい!?」

 

鳴上「天龍!」ビュン

 

天龍「お、おう!?」パシッ

 

鳴上「その眼鏡を使って指揮を頼む!」

 

天龍「……!」スチャ

 

天龍「中々粋な事するじゃねぇか! いいぜ! 任されてやる!」

 

天龍「後で話は聞くからな!」

 

鳴上「説明しただろ!」

 

天龍「……そーいえば」

 

響「あの話、本当だったんだ……」

 

鳴上「俺は出来るだけ、シャドウを引き付ける!」

 

???「グギャオオ!!」スラッシュ!

 

???「ガアアアアアア!」アギ!

 

>敵は多い。此方の戦力を遥かに上回る量だ

 だがそんな事で諦めるほど、自分は潔くない!

 

鳴上「――行くぞ!」

 

>妖精さんから託されたこの艤装があれば……!

 例え海の上だろうが……!

 

鳴上「届く!」

 

イザナギ「……!」斬!

 

???「グガッ!?」ブシュウゥ

 

鳴上「そこだ!」マハジオ!

 

イザナギ「……!」

 

>腕を振りかざし、力の収束を広範囲へと拡大させる

 

>皆の周囲を取り囲むシャドウに、これ以上近寄らせないよう雷撃で牽制する!

 

>距離が近ければ砲戦を行う艦娘は不利な点をこれでカバーする。霧で敵が見えないという不利は……

 

天龍「漣! 三時と六時方向! 吹雪、夕立! この前教えた通りに動け、狙われてるぞ!」

 

漣「ほいさっさー!」ドォン!ドォン!

 

吹雪「こ、こんな霧の中で!? や、やるしか……!」ギュン!

 

夕立「りょ、了解!」ググン!

 

球磨「凄い暴れっぷりクマ……」

 

長門「まさか提督が一番の戦力とは……」

 

長門「い、いや、戦況は覆りつつある!」

 

天龍「そうだぜ! 鳴上に続くぞ!」

 

―――

 

鳴上「……くそッ!」

 

???「ギギギギギ!!」ディア!

 

鳴上「またか……!」

 

球磨「か、回復してるクマ……」

 

響「……ジリ貧だね。どうする?」

 

天龍「どうも出来ねーだろ……、くそ」

 

>会敵から幾ばくか、確実にシャドウの数を減らしている

 恐らく、いや確実に、半分は倒したはずだ

 

>なのに敵の物量による侵攻は、艦娘達の燃料を、弾薬を、士気をも減らしていく……

 そして自分も、無傷で立ち回れるほど器用ではなかった……

 少なからず自分を含め、艦隊では負傷したものがいる

 

>加えて此方は霧の影響を緩和出来たとはいえ、同士討ちと鎮守府への被害を抑えるべく立ち回っている

 そんな中で負傷者だけで済んでいるというのは、ある種幸運だとも言える

 

>だがそんな幸運は何時までも続かない……

 響の言う通り、このままでは……!

 

鳴上「うおおおおお!!」タルカジャ!

 

イザナギ「……!」ギィン!

 

>どう動くにしろ、自分が先に折れてしまえば、そこで戦線は崩壊する

 自分だけは、絶対に倒れてはいけないんだ……!

 

漣「うぇへぇ…… お借りした追加艤装が……」ボロ

 

球磨「ぢくしょーグマ……」ボロ

 

真壁「私は……」

 

真壁「何も……、何も出来ない事が、こんなにも悔しいなんて……」

 

夕立「うう…… で、でも! これ以上は近づけさせないっぽい!」ドォン!

 

長門「その意気だ! まだ提督は戦っている! 私達も諦める訳には……!」

 

明石「ぜ、絶望的です…… こんなにひどい戦いになるなんて……」

 

鈴谷「……?」

 

鈴谷「ね、ねぇ? なんか変な音しなかった?」

 

吹雪「お、音ですか……?」

 

>……確かに聞こえる。戦闘音と波の音に隠れて、唸るような風切り音が確かに

 なんだ、これは……?

 

鈴谷「シャドウじゃない、何というか…… 」

 

吹雪「……艦載機?」ボソリ

 

響「……!?」

 

響「敵機艦載機接近! 対空警戒!」

 

天龍「霧の中だぞ!? 艦載機発艦させるなんてどうなってやがんだ……!?」

 

明石「シャドウの後方から、敵艦隊の影を確認!」

 

明石「も、もう…… シャドウだけで手一杯なのに……!」

 

天龍「……ヤベェ、マジにヤバくなってきた。あの敵艦隊、ありゃあ……」

 

響「フラグシップ……!」

 

>シャドウの後方、艦載機が飛び交うその奥

 そこには頭部部分が大きいシルエットに、霧の中でもハッキリと分かる程の黄色のオーラを身に纏う

 自分は知識でしか知り得ていないが、あれは恐らく……

 

>空母ヲ級、そのflagshipだ……!

 

>駄目だ。シャドウだけでさえ、これだけの被害が出ている

 これ以上敵味方入り混じった戦闘など、出来るはずがない……!

 

長門「全員、爆撃と雷撃に備えろ!」

 

>瞬間、海上は凄まじい爆音と共に、至る所で海水が弾け散る

 その瞬間は酷く長く感じとることが出来、生きた心地がしなかった

 

>……頼む。誰一人、ここで欠けてくれるな……!

 

―――

 

>霧の中を、攻撃を終えた艦載機達が主の元へ戻っていく

 その風切り音は、自分は生き延びたと感じさせると同時に、他の思考を覚醒させる

 

鳴上「皆! 大丈夫か!?」

 

吹雪「だ、大丈夫でーす……」ヨロヨロ

 

鈴谷「こっちも、だぃ、じょうぶ……」フラフラ

 

漣「し、死ぬる……」

 

夕立「い、生きてるっぽい……」

 

長門「皆、無事の様だな……」

 

>……全員無事、奇跡だと思った

 本当に良かった……!

 

天龍「……のヤロー、どういうこった……?」

 

響「……当ててこなかった、何故?」

 

>当てて、こなかった?

 意図してこちらに当てなかったと……?

 

響「此方にあるはずの雷撃行動が無かった。……端から狙われてなかったのかもしれない」

 

球磨「そー言えば爆撃も、こっちが巻き添え食った感じだったクマ」

 

鳴上「狙ったのはシャドウだけ、ってことか」

 

響「あり得ないけど、それなら辻褄が合う」コクリ

 

>その言葉通り、シャドウは先ほどの攻撃以降、此方へ襲ってこないどころか、姿形が一つもない

 

ヲ級「……」

 

>一体、どういうつもりなんだ……?

 

>黄金に輝く冷たい目は、此方の様子を見つめた後、やがて踵を返し霧の中へと姿を消した……

 

鳴上「助かった、のか……」

 

>実感の無いまま、二度目の霧の戦闘は終了した

 今回の戦いの真相は、この霧のように深く、酷くぼやけた幕切れとなった……




ヲッヲー
キリの良い所で切ろうとしたら、今度は少し長くなりました
なんだかジワジワと閲覧数など伸びてくれてて、嬉しい限りです
この先も見るぜ!っていう奇特な方は、コンゴトモ、ヨロシク……

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