転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0955話

 キケロの屋敷で行われていた午餐。停戦に関しての交渉も行われる予定だったその午餐は、招待されていた貴族とアウルのトラブルにより決闘へともつれ込む事になった。

 帝国の貴族にしてみれば自分達を侮辱したアウルを許せなかったんだろうし、アウルにしてみれば自分達の住んでいる場所を襲ってきた帝国に対して怒りを持っていたのだろう。

 ある意味、当然の衝突だった訳だ。

 俺の場合はどうしてもシャドウミラーに所属している影響か、アウルに対して味方してしまうが。

 ともあれ、アウルの言葉に怒ったのは当事者の貴族だけではない。午餐に参加していた他の貴族達も同様にその言葉を聞いていた為、結局は屋敷の主でありホストでもあったキケロや、停戦交渉を勧めていたピニャにしても他の貴族からの要求に応えざるを得なくなった。

 ある意味で、最もこの決闘を歓迎していないのはこの2人だろう。

 キケロにしてみれば、この停戦交渉が上手くいかないとホワイトスターで捕虜となっている甥が戻ってくる事はないし、ピニャにいたっては俺達シャドウミラーがどれ程の戦力を持っている存在なのかというのをその目で確認しているのだから。

 それ故、2人は現在中庭で向かい合っているアウルと貴族にどこか心配そうな視線を向けていた。

 

「準備はいいな、貴様のような下賤の者を相手に私が剣を振るうのはどうかと思うが、これも貴族の誇りを汚された故。死んでも恨むなよ」

 

 20代後半の……それこそアウルより10歳近く年上の貴族の男が、腰の鞘から剣を抜き放ってそう告げる。

 年齢を考えると、あからさまに大人げないとしか言えない光景だ。

 ただ、その剣を構える仕草はそれなりに堂に入っており、ある程度の訓練を受けている人物だというのは間違いない。

 恐らく帝国軍の軍人か、あるいは軍人だった……といったところか。

 それに対するアウルは、口元に嘲笑を浮かべて貴族を見やる。

 

「俺達相手に、手も足も出ずに尻尾を巻いて逃げ出した蛮族国家の分際で、妙に偉そうだよな。貴族とか何とか言ったって、所詮は三流国家の無能貴族だろ。そんなお前等如きがシャドウミラーに逆らうなんてBETAの餌にでもなって出直してきたら?」

 

 ……挑発のつもりで言ったんだろうが、BETAとか言ってもこの場にいる者達の中だとシャドウミラー関係者やホワイトスターで映像を見たピニャくらいにしか意味が通じないと思うぞ。

 まぁ、BETAの意味は通じなくても、蛮族とか三流、無能といったキーワードに対して面白いように反応しているが。

 貴族は顔を怒りで真っ赤に……いや、既にどす黒いと表現してもいいような顔色になりつつ、口を開く。

 

「貴様、その言葉を後悔させてやるからな! それよりも、武器はどうした! まさか、素手で私に挑むつもりではあるまいな!」

 

 そう、貴族の言葉通りにアウルは見て分かる武器の類を一切持っていない。

 ここで見て分かると表現したのは、その指には魔法発動体でもある指輪が嵌まっている事や、懐には技術班が開発した小型の拳銃を持っているからだ。

 アウルの場合、シャドウの操縦をしている時もそうだけど、生身でも射撃能力が高いんだよな。そんなアウルがシャドウミラー製の拳銃を持っているんだから、決闘相手の貴族なんかはあっさりと倒せるのは間違いない。

 何かの間違いで銃弾を使い果たしたとしても、魔法という手段も残っているし。

 

「はんっ、お前程度には勿体ないけどな」

 

 そう告げ、取り出した拳銃。

 大きさ自体はそれ程でもないが、威力の方はお墨付きという代物だ。

 だが逆に言えば、そのお墨付きの威力故に容易く相手を殺してしまうだけの威力を持っている訳で……

 

「アウル、ここで相手を殺してしまえば後々面倒な事になる。殺さないように気をつけろ」

「……貴様らぁ……」

 

 一応の忠告としてアウルに声を掛けたのだが、それが気にくわなかったのだろう。決闘相手の貴族はアウルを睨み付け、次に俺を睨み付け、そして最後に再びアウルを睨み付ける。

 他の貴族達も同様に、拳銃というこの世界では何かの玩具のようにしか見えない武器を手にしたアウルに対して嘲笑を向けていたのだが、俺の言葉に怒りで顔を真っ赤に変えた者も少なくない。

 これ以上お互いの挑発をするのは不味いと判断したのだろう。ピニャが前に出て口を開く。

 

「では、これより決闘を始める! お互い、正々堂々とした戦いを行うように。……始め!」

「うおおおおおおっ!」

 

 ピニャの合図と共に、貴族の男が剣を振りかぶりながらアウルとの距離を縮めて行き……

 パァンッ、という軽い音が周囲に響き渡ったかと思うと、次の瞬間には男の持っていた剣が根元から砕ける。

 それを見た周囲の貴族達は何が起こったのか分からないような表情を浮かべ、同時にアウルと決闘している貴族の男もまた同様だった。

 

「おおぉっ……う?」

 

 走り寄っていた為に、その勢いを殺す事が出来ず……更には緊張の為か刀身の根元から先端が無くなっているのには全く気が付いた様子もないままに剣を振り下ろすが、そもそも刀身の存在しない剣で攻撃出来る筈もない。

 振り下ろされた剣は……いや、剣の柄は、当然ではあるが全くアウルにダメージを与えられない。

 その時になってようやく男も剣の状態に気が付いたのだろう。何が起きているのか分からないといった表情を剣の柄に向けるが……

 パァンッ!

 再び響く銃声。

 同時に地面に何かが落ちるかのような音が遅れて周囲に響き、その音のした方へと視線を向けると、そこでは地面の上に座り込んでいるかのような貴族の男の姿。

 

「え? な、なんだ……痛い? 痛い……痛い痛い痛いっ!」

 

 太股を押さえて泣き叫ぶ男。

 剣を持っていたのは貴族の嗜みだったりしたのだろうが、さすがに午餐に参加するのに鎧を着てくる訳もない。

 いやまぁ、シャドウミラーの技術班が開発した拳銃が鎧程度で防げる筈もないのを思えば、全身を甲冑で固めてきていたとしても結果は変わらなかっただろうけど。

 つい数分前まではアウルに向かって罵詈雑言を口にしていた周囲の貴族達が黙り込む。

 そんな静寂に包まれた中、太股から血を流しつつ地面を転げ回って泣き叫んでいる貴族の男の悲鳴のみが響き渡っていた。

 

「あいつの手当をした方がいいんじゃないか? 幸い、見た感じでは大きな血管を傷つけてはいないみたいだから、そうそうすぐに死んだりはしないだろうけど」

 

 アウルの事だから、その辺は狙ってやったんだろうな。ここで貴族に人死に出せば、こっちの計画も色々と台無しになるし。

 

「っ!? 誰か、すぐにその者を静かな部屋へ! それと医者を呼べ!」

 

 ピニャの指示が下されると、ようやく我に返ったのだろう。警護の兵士と思われる者や、あるいはメイド、執事といった者達が忙しく動き回る。

 

「ま、こんなもんだろうな。幾ら自分の腕に自信があっても、この世界の住人が俺達に勝つなんて事はまず無理だろうし」

「……アクセル殿、今のは一体何を?」

 

 そう尋ねてくるキケロの様子に、思わず感心する。

 他の貴族のように騒ぐだけではなく、冷静に今何があったのかを確認しようとしているのが分かったからだ。

 なるほど、ピニャがわざわざ停戦交渉を行う為の人物として引き出してきただけの事はある、か。

 そんな風に考えつつ、空間倉庫からアウルが使っているのと同じ武器を取り出し、キケロへと見せる。

 

「なっ!? い、今一体どこから……」

「気にするな。で、これが俺達の世界でも一般的な武器である銃というものだ」

 

 ……一般的、か?

 いやまぁ、ネギま世界を除けば銃が一般的であるのは間違いない事実だから、嘘は言っていない。ただ、シャドウミラーの中では魔法を使う者が多いのも事実だが。

 何しろ空間倉庫を使える俺と違って、銃というのは目に見えて危険な武器だ。それを持ち歩いているのを知れば、当然警戒する。

 だが、魔法発動体は指輪やピアスのようなアクセサリ型の物も多いし、使い捨てだと初心者用の玩具のような杖もある。

 ネギま世界の住人であればまだしも、それ以外の世界ではそれらを危険物と認識出来る者の方が少ないだろう。

 ああ、そういう意味では魔法があるこの世界だと寧ろ拳銃の方が怪しまれにくいのかもしれないな。

 

「そうだな……分かりやすく言えば、弓や弩といった武器の進化した形だと言えば分かりやすいか?」

「弓? その小さいのが、ですか?」

「そうだ。その辺は進化の影響によるものだと考えてもいい」

 

 正確には色々と細かい違いがあるのだろうが、ファンタジー世界の住人に対してする説明としてはそれ程間違っていない……と思う。

 

「見て分かる通り、軽量でそれ故に取り回しがしやすい。威力に関しても、剣の刀身を一撃で破壊したのを見れば言うまでもないだろう? そんな武器でも、俺達が主力にしているものに比べれば玩具……は言い過ぎだが、実際それだけの性能差がある兵器を使っている」

 

 拳銃を渡されてメギロートやイルメヤ、シャドウを倒せと言われて、理不尽だと感じないような奴は基本的にいないしな。

 生身での戦闘を得意としているムラタでも御免被るだろう。

 エヴァやフェイト辺りなら、魔法で何とかしそうな気がするが。

 

「俺が何を言いたいのか、分かって貰えたかな?」

「……ええ、存分に。ピニャ殿下は知ってたのですな」

「ああ。アルヌスの丘に行った事がある。その時に見た景色は絶対に忘れられん。どう足掻いても帝国がシャドウミラーに勝てるとは思えない。だというのに、今の帝国は周辺の国々との戦いが広まっていて一枚岩ですらない。キケロ卿、私が一時停戦を求める気持ちを分かって貰えたと思うが」

 

 ピニャの言葉が周囲に響き、その言葉はキケロだけではなく、周囲で今の一方的な決闘を見ていた貴族達の耳にも入っていた。

 ふむ、多少焦ったが……こうして目の前で俺達の実力を直接見せつける事により、どちらの立場が上なのかをはっきりとした形で示せたというのはいい結果だっただろう。

 報告だけ、あるいは言葉だけを聞いていただけでは実感出来なかった現実をその目に焼き付けるということには成功したが……

 ただ、これ程の騒ぎを起こしたのは、さすがに色々と不味いか。血気盛んなのは分かっているし、アウルがホワイトスターに対する愛着を持っているからこそ、侵略してきた帝国を許せないという気持ちは嬉しい。

 それでも結果的には上手く事が収まったとしても、やはりここはイザーク辺りに叱って貰う必要があるだろう。

 ……いや。イザークの血の気の多さを考えれば、エザリアの方がいいのか?

 決闘に勝ったとはいっても、苦々しげな表情を浮かべているアウルを眺めつつ、そう考える。

 そんな俺の耳に、早速とばかりにピニャやキケロへと話し掛けているレオンの声が聞こえてきた。

 

「さぁ、取りあえず余興は終わりましたし、停戦についての協議を始めましょうか」

 

 この辺の如才なさ、あるいは機を見るに敏というのはレオンならではだよな。

 一連のやり取りで、ピニャはともかくキケロがシャドウミラーを含めた異世界間連合軍に対して抱いた畏怖や恐怖といったものを利用し、交渉を優位に進めようというのだろう。

 実際、キケロは先程俺の口から出た説明を聞き、銃という武器を初めて見て、最初に俺達に会った時に浮かべていた自信に満ちた表情は既に消え去っている。

 ピニャは小さく溜息を吐いて口を開く。

 

「キケロ卿、向こうは向こう、帝国は帝国だ。確かに色々と思うところはあれども、今はとにかく停戦を纏める方向で交渉を始めよう」

「う、うむ。そうですな、ピニャ殿下。……みっともない姿を見せました。では、レオン殿、早速ですが交渉を始めましょう。皆、余興はここまでだ。屋敷に戻って午餐の続きを楽しんで欲しい!」

 

 若干元気はないままだが、それでも先程に比べれば随分とマシになったキケロがそう告げ、レオンと共に屋敷の中へと入っていく。

 貴族の1人が重症を負ったというのに、すぐに流せる辺り大物ではあるんだろう。

 他の貴族の者達にしても、すぐ近くで血を……それも、自分達の仲間の1人が怪我をしたにも関わらず、まだ興奮している者もいるが、屋敷に戻っていく。

 なるほど。帝国の貴族も馬鹿にしたものじゃないな。

 

「どうしたんだよ、アクセル」

 

 感心した様子で屋敷に戻っていく貴族を見送っていると、ふとスティングから声を掛けられる。

 

「いや、帝国貴族の中にもそれなりに有能な者はいるんだなと思ってな」

「そりゃあそうだろ。幾ら何でも、全員が全員昨日のゾルザルとかいう奴と同じならここまで大きくなる前に自滅しているだろうし」

 

 ……そりゃそうか。

 そんな風に会話を交わしつつ、俺達もまた屋敷の中へと戻る。

 交渉に関してはレオンに全面的に任せてある以上、特に俺がどうこうする必要はないしな。

 結局この日は、この午餐の後で他の貴族の晩餐にも招待され、レオンが思う存分弁舌を振るって向こうを振り回す事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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