転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0957話

 地震の揺れが一段落し、ピニャからの要請とレオンの思惑により、俺達は皇帝のいる皇宮へと向かっていた。

 尚、ピニャの離宮に務めているメイドや執事の類はそのまま離宮に残してきている。警備の兵士も俺達――正確にはピニャ――についてきた数名を除いてはメイドや執事の護衛として残してきた。

 メイドや執事が今の状況で城に行っても何かの役に立つ訳でもないし、しょうがないだろう。いや、怪我をしている者がいれば応急手当くらいは出来たか?

 かなり大きな地震だった事を考えれば、城の一部が崩れたり、あるいは怪我をした者もいるかもしれない。それを思えば多少は連れてきても良かったのかもしれないな。

 そんな風に考えつつ、城に到着したのだが……

 

「異様に混乱してないか?」

 

 呟いたのはスティング。

 実際スティングの言う通り建物の隅で頭を抱えている者もいれば、あるいは右往左往している者、パニックに陥って壁に頭を叩きつけている者、松明を手に叫び声を上げている者といった風に、まさに混乱の極地といった状況になっていた。

 石造りの城とはいっても、燃える物がない訳じゃない。松明を持って叫んでいる奴は、取りあえず高畑が気絶させてから松明を取り上げ、地面に寝かせる。

 俺は混沌精霊としての能力のおかげで暗闇の中でも全く視力に困る事はないが、他の面々はそうもいかない。その為、ピニャの護衛としてついてきた兵士へと高畑が取り上げた松明を渡し、視界を確保する。

 いや、当然城の中に入る時に他の兵士達も松明を手に持ってるんだけどな。

 

「で、どこに向かうんだ?」

「謁見の間だ。恐らく皇帝陛下はそこにおられる筈。もしそこにいなければ、寝室の方へ向かう必要があるだろうが……それにしても、ここまで誰も咎め立てしないとは情けない」

 

 周囲で混乱している兵士に視線を向け、溜息を吐くピニャ。

 兵士達にのみ視線を向け、右往左往している城のメイドや執事といった者達に対しては呆れた視線を向けていないのは、やはり非常時だからこそだろう。

 それだけ城を守る兵士の質が落ちている事の証明でもある。

 ……いやまぁ、そうなった原因は間違いなくホワイトスターやアルヌスの丘での戦いで帝国軍の多くが死んだり捕虜になったりした事や、あるいは従属国の反乱の鎮圧に向かわせた帝国軍が負けまくったせいなんだろうから、その原因を作った俺が言うべき事じゃないんだろうが。

 そんな風に思いつつ、本気で誰からも見咎められる事がないままに謁見の間と思しき巨大な扉の場所へと到着する。

 さすがに謁見の間の前ともなれば、兵士……いや、騎士か? ともかく、他の場所にいる者達とは違って混乱している様子はなく、しっかりと扉を守っている。

 

「ご苦労。皇帝陛下はおられるか?」

「ピニャ殿下!? はい、皇帝陛下も、ゾルザル殿下も現在は中におられます」

「そうか、では通してくれ」

「その、殿下。そちらは……」

 

 騎士が俺や他のメンバーを見てそう尋ねてくるが、ピニャは問題ないと首を横に振る。

 

「この者達は妾の客人だ。先程の地震と呼ばれる現象についての知識を有している故、皇帝陛下に目通りさせる為に連れて参った。身分の保障に関しては妾がしよう」

 

 皇女であるピニャにここまで言われてしまえば、騎士にしてもそれ以上食い下がる事は出来なかったのだろう。俺達の方を一瞥すると扉を開ける。

 その瞬間、部屋の中から叫び声が聞こえてきた。

 

「ですから、また揺れが起きるとアキエが言っているのです!」

 

 この声は……確かゾルザルとか言ったか?

 切羽詰まった様子なのは、やはり地震……待て。この地の住人は……少なくてもこの帝都に住んでいる者は地震という存在自体を知らなかった。なのに、揺れが起きると知っているだと?

 そんな風に疑問を思っている俺の横では、ムウが不思議そうな顔をして部屋の中を覗き込もうとしていた。

 

「どうした?」

「いや、アキエって名前……この世界にしては珍しいと思ってな」

 

 そんな風に言っている俺やムウの前で、ピニャが部屋の中へと入っていく。

 取りあえず話を一端中断してそれに続く。

 部屋の中は30畳程もの広さがあり、一段高くなっている場所には玉座が。そして玉座には50代から60代程の男が1人腰を掛けている。

 恐らくあの男がモルトなのだろう。

 そして周囲には騎士や貴族と思わしき者達が大勢おり、玉座の向かいにいるのは先程の声の主でもあるゾルザル。

 驚いたのは、ゾルザルが鎖を持っていた事だ。

 いや、鎖を持っているというだけでは特に驚くべき事ではないかもしれないが、その鎖の先には首輪を付けた裸の女が引きずられるようにして床へと倒れ込んでいる。

 

「……」

 

 奴隷がいると言うのは聞いていたが、こうして直接見ると気持ちのいいものではないな。

 シェリルが不愉快そうに眉を顰め、他の者達にしても同様に不愉快そうな表情を隠してはいない。

 高畑に至っては、いつの間にか手がポケットの中に収められており、いつでも居合い拳を放てる体勢をとっている。

 ……おい。魔法界では未だに奴隷が存在しているんだろうに、何でこの中でお前が一番爆発しそうなんだ。

 そんな俺達には全く気が付いた様子もないまま、ピニャは前へと歩み出て口を開く。

 

「皇帝陛下、兄上の言っている通りです。先程の揺れが再び起きるかもしれないという話です。このままでは城が崩れる危険がありますので、今は一刻でも早く避難を……」

「ほう、ピニャ。お前も再びの揺れについては知っていたのか。その者達からの情報か?」

「はい。先程の強い揺れがあったものの反動が起きると。……それにしても兄上もよくそれをご存じでしたね」

「アキエからの情報でな」

「……アキエ? 珍しい名前ですね」

「ああ、こいつだ」

 

 そう告げゾルザルが持っていた鎖を引っ張る。

 その先にいるのは、裸の女。

 ゾルザルの趣味の悪さに微かに眉を顰めるが……それは、次の瞬間には全て吹き飛ぶ。

 

「アクセル、代表?」

 

 そう。アキエと呼ばれた女が、俺を見てそう告げたのだ。

 それも、技術班が作った翻訳機を通してではなく、俺にもよく理解出来る言葉で。

 瞬間、俺は思い出す。このアキエと呼ばれていた女に見覚えがある事を。

 交流区画で俺がよく利用していた喫茶店の近くにあった各世界の小物を売っていた店の店員で、オーブの出身である事を。

 そして帝国がホワイトスターに侵攻してきた時に死体が見つからず、行方不明という扱いになっていた事を。

 最終的にはゴブリンやオークによる攻撃か、あるいは帝国軍の魔法使いによって判別出来ない程に死体が損傷させられたという扱いになっていたのだが……それがここにいた? つまり、なんだ。こいつらは、ホワイトスターで……シャドウミラーの本拠地で攫って行った人間を奴隷にしたというのか?

 

「っ!? お前!」

 

 それと同じ事に気が付いたのか、ムウが思わずといった様子で声を上げる。 

 だが……既にそれは関係無い。1歩を前に踏み出し、気が付けば俺の前にはゾルザルの姿。

 何が起きたのか分からない、そんな表情を浮かべてポカンと俺を見ている。

 そんなゾルザルの腕に……アキエの首輪から伸びている鎖を持っている腕へとそっと手を伸ばす。

 指がゾルザルの腕へと触れたその瞬間。周囲に血が弾け飛ぶ。

 俺に向かっても血の雫が飛んでくるが、そんな汚らわしいものを身体に付けたくもないので、触れる前に白炎を使って蒸発させる。

 

「……え?」

 

 何が起きたのか、全く分からずに呟くゾルザル。

 その視線が、俺の右手へと向けられ……次に自分の右手へと向けられ……そこに何も存在しない事を、自分の右手が肘から千切られて俺の手の中にある事に気が付き、悲鳴を上げる。

 

「ぎゃっ、ぎゃああああああああああああああああああっ!」

「やかましい、その汚い口で喚くな」

 

 肘から先が無くなった右腕を左手で押さえつけ、床の上を転がり回るゾルザル。

 その左足にそっと触れ……再び響くブチブチッという肉その物を引き裂く音と、膝の関節を捻切る際に響き渡る音。

 右腕の肘から先と、左膝から先がなくなったゾルザルは、既に声も出せない程に怯えきっている。

 周囲にいる帝国の貴族達からは何も声が出ず、唖然としているのを余所にそのまま過呼吸のような状態になっているゾルザルの耳へと手を伸ばし……再び周囲に響く肉を千切る音。

 

「ぎゃああああああああっ! た、助けろ、誰か俺を助けろ!」

 

 その悲鳴で我に返ったのか、数人の貴族が叫ぶ。

 

「その者共を捕らえろ!」

 

 そして兵士や騎士達が俺の方へと向かってくるが……

 

「ムウ」

 

 空間倉庫から取り出したサブマシンガンをムウへと放り投げると、それを受け取ったムウがトリガーを引いてこっちに向かってきていた兵士や騎士に弾丸の雨を降らせる。

 鎧に無数の穴が開き、10人以上いた兵士や騎士は数歩を進んだだけで床に倒れ込み、命を落とす。

 所詮は鉄を使っている鎧だ。シャドウミラーの技術班が開発したサブマシンガンやその弾丸を防げる筈もない。

 あるいは、兵士や騎士の鎧がロゥリィのハルバートと同じような神鉄とかを使った鎧でもあれば話は別だったのかもしれないが。

 いきなり地面に倒れ込んだ兵士や騎士に、何が起きたのか分からずに貴族達が唖然とする。

 いや、何が起きたのかというのは分かっているだろう。サブマシンガンから放たれた無数の銃声がそれを証明しているのだから。

 

「スティング、アウル」

 

 続けて2人の名前を呼び、同じく空間倉庫から取り出したサブマシンガンを放り投げる。

 

「俺の邪魔をする奴がいたら、誰であろうと仕留めろ」

「分かった」

「ああ」

 

 短く命令し、そのまま床を転がり回っているゾルザルに視線を向け、邪魔だなという感想を抱くと同時に、軽く力を入れて胴体を蹴る。

 あくまでも力を入れたのは軽くだが、それは俺にとっての軽くだ。

 無数の肋骨をへし折られつつ10m近くも床の上を水平に飛んでいき、壁へとぶつかり『ぐふぅっ』という奇妙な悲鳴を残して床へと落ちる。

 それを確認するまでもなく、次に向かう先は……ゾルザルの父親にして、この帝国の皇帝でもあるモルト。

 俺を見る表情が引き攣っている辺り、現在の俺がどれ程の怒りを胸に抱いているのかを理解しているのだろう。

 

「へ、陛下に何をするつもりだ! 陛下を守……っぐ!」

 

 言葉を最後まで言わせず、スティングのサブマシンガンから弾丸が放たれ貴族の命を奪う。

 それを見た護衛の騎士達が、俺とモルトの間に立ち塞がろうとし……

 再び連続して響く銃声。今度はスティングではなくアウルだが。

 ガァンッ、というよりはパァンッという軽い銃声音だが、それを理解することもないまま、俺の邪魔をしようとした騎士達が身体中から血を流して床へと倒れ込む。

 そんな騎士達を踏みつけ、モルトとの距離を縮めていき……

 

「さて、モルト。挨拶がまだだったようだから、自己紹介からさせて貰おうか」

 

 そう告げ、モルトの頬を掌でビンタするかのように叩く。

 パァンッ、という音はアウルの放った銃声に勝るとも劣らぬ程に謁見の間へと響き渡る。

 同時にモルトの口から流れ出る血。

 

「貴様っ!」

「黙れ、俺が話しているだろ」

 

 再び放たれる掌。

 往復ビンタ……というよりは掌底が幾度も繰り返され、その度にモルトの頬が腫れ、歯で切った口からは血が流れ出る。

 ようやく抵抗の意思がなくなったのを確認し、最後の一発とばかりに再度掌底をモルトの頬に叩きつけてから口を開く。

 

「俺はアクセル・アルマー。お前達が敵対しているシャドウミラー、延いては異世界間連合軍の代表を務めている男だ。以前にもこの挨拶はしたと思うが、あの時はサラマンダーに乗って空からだったからな。こうして直接顔を見せるのはこれが初めてか」

「ファ、ファフフェル・ファルファー?」

 

 頬が腫れ、口の中が歯で切れているせいか、禄に俺の名前を呼ぶ事が出来ない。

 だが、それに構わず俺は言葉を続ける。

 

「何で俺がここまで怒っているのか分かるか? お前の存在自体に苛ついているからだよ。身の程知らずにも俺達の本拠に攻め入ってきただけではなく、ホワイトスターにいた人物を攫って、しかも奴隷にしているだと? よくもここまで俺達の顔に泥を塗ってくれたな。……おい、聞こえているのか?」

「ふぁ……」

 

 へぇ、ここまでされても瞳に憤怒を宿したままか。ゾルザルとは器が違うってのは事実らしい。だが……

 そっとモルトの右耳に手を伸ばし……

 

「どうやら聞こえていないらしいな。ならそんな耳……いらないよな?」

 

 ブチィッ、という聞き苦しい音が周囲に響き、次の瞬間には俺の手の中にモルトの右耳が存在していた。

 

「がああぁぁぁっ!」

 

 悲鳴を上げるモルトをそのままに、次は右目へと指を伸ばす。

 

「俺達とお前達の実力の差を感じ取れないような、そんな目も……必要はないよな?」

 

 ツプリ、という感触と共に、ブチィッという音が……眼球から繋がっている視神経が切れる音がしたような気がした。

 

「が、が、が、あああああぁぁぁぁぁああぁぁぁあっ!」

 

 突然視力を失った右目を押さえ、雄叫びを上げるモルト。

 痛みのあまりに暴れまわり、玉座から床に転げ落ちつつ暴れ回る。

 

「少し黙れ」

 

 握っていた右耳と右目の眼球をモルトの目の前に落とし、それを思い切り踏みつける。

 潰れた体液がモルトの顔面に飛び散り……そして、次の瞬間、モルトは自分を保つ為か意識を失う。

 それを鼻で笑い、謁見の間を一瞥する。

 帝国の人間は全てが身動き出来ずに目を逸らし、未だに暴れているゾルザルの悲鳴のみが謁見の間に響き渡り、シャドウミラーのメンバーは何も言わずに俺に視線を向けている。ただ、高畑が今の俺の行動を見て不愉快そうな表情を浮かべていたが……これは高畑の性格を考えればしょうがないだろう。

 アキエは今の行動が原因なのか、はたまた気力が限界だったのか、ともあれ気を失っている。

 

「……ピニャ」

 

 俺の呼びかけにビクリとしたピニャだったが、やがてこちらに視線を向けてくる。

 そんなピニャに向かい、最後通牒の如く言葉を紡ぐ。

 

「交渉は全て白紙だ。今の俺達は帝国の如き愚物と話す舌は存在しない。……行くぞ、集まれ」

 

 その言葉にピニャが何かを言い返そうとしたのが分かったが、それを無視して高畑を含めたメンバーへと声を掛ける。

 すぐに俺が何をしたいのか理解したのだろう。全員が俺の回りに集まってきた。

 そしてピニャが何かを言う前に……そして帝国の者達が我に返る前に影のゲートを展開し、皇宮から……そして帝都から離れるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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