転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0968話

 視線の先でメギロートが放ったサークル・レーザーが着弾し、ゴブリンやオークの集団を瞬く間に消滅させていく。

 30機近いメギロートが編隊を組み、空中から降下しながら地上にいるゴブリンやオークへと集団で放つサークル・レーザー。それを帝国軍が……それもろくに知能のない状態で肉壁役の前衛として操られているゴブリンやオークが防げる筈もない。

 

「うっ、見ていてあまり気分のいい光景じゃないわね」

「そうだな。だが、シャドウミラーの実働班として働く以上はこんな光景にも慣れて貰わないと困るし、いずれ嫌でも慣れる事になる」

 

 シロガネのブリッジで機器の操作をしつつ呟く円に、そう返す。

 現在、俺達は帝都に向けて侵攻中だったりする。こちらの戦力は今も見たように、空軍としてメギロート、地上軍としてイルメヤの無人機2種類が出撃している。

 勿論この侵攻を行っているのは俺達だけではない。エルベ藩王国を始めとして帝国軍に対して反旗を翻した部隊も、タイミングを合わせるようにして一気に攻撃を仕掛けている筈だ。

 そんな中、最大の戦力である俺達に対して帝国軍が用意した手段が、ゴブリンやオークといった洗脳されたモンスターだった。

 確かにこれなら戦力不足になった帝国軍でもどうにかなるだろう。

 特に俺達シャドウミラーと戦うとなると戦力の消耗は必須である以上、周辺諸国ではなく俺達にゴブリン達を向かわせたのも上手い手だ。

 ……さすがに帝国といえども、それなりに頭の切れる奴はいると見える。

 いや、意外とピニャ辺りの策だったりするのか?

 確かに俺達の実力をこれ以上ない形で知っているのはピニャなんだから、それはあるかもしれないな。

 ただ……捨て駒同然ではあったとしても、俺達に向けるにしては数が少なすぎたな。

 メギロートの降下しながらのサークル・レーザーの一斉射によりゴブリンやオークの被害が加速度的に増していき、更にそこに叩き込まれるのはイルメヤ部隊から放たれる無数のビーム・ガトリング砲。

 オークの中には盾を持っている個体もそれなりに見えるが、そんな防具でビームを防げる筈もなく、無数の死体を大量に作り出す。

 その光景に、円や美砂は気持ち悪そうな表情を浮かべる。

 ……今回の出撃で出てきているのが、シロガネのクルー以外は俺だけで本当に良かったんだろうな。

 もしもこの光景をコーネリアやイザーク辺りが見ていれば、恐らく叱責の1つや2つはされていただろう。

 あの2人は生真面目なだけに、厳しいところも多いし。

 ただ、それでも円や美砂は何も知らない普通の女子高生に比べればまだ遙かにマシだ。何しろ、この2人は魔法界で拳闘士として活躍していたのだ。当然その試合中に相手の血を見る事も少なくなかった筈だ。

 だからこそ気分が悪いと言いながらも、良くあるように吐いたりとかそういう風にはなっていない。

 俺はその辺色んな意味で飛ばしてこんな性格になったからな。色々と思うところはあれども、本当の意味で2人の気持ちを分かってやる事は出来ない。

 

「華の女子高生が、ゴブリンやオークの血や肉片とか、地面に散らばっている内臓を見てるとか……どんな冗談よ」

 

 意図的なものだろう。軽い口調で美砂がそう告げる。

 その表情が一瞬歪んだのが見えたが、その辺に関してのフォローをするにしてもこの戦いが終わった後の話だ。

 

「エルベ藩王国を始めとした、他の国の戦況はどうなっている?」

「量産型Wから入って来ている報告だと、どの戦線も問題なく進んでいるわ。既に何ヶ所かでは帝国軍が降伏しているところもあるみたいね」

「だろうな。特にこっちに捕まっていた捕虜がエルベ藩王国を通して色々と渡っている以上、その捕虜を使った揺さぶりとかもあるだろうし」

 

 結局ホワイトスターに攻めて来た一連の戦闘で捕虜となった帝国軍の者達は、軒並みシャドウミラーと繋がっている国に対して譲渡された。

 まぁ、捕虜の多くがゴブリンやオークだったのを考えると、最初に掴まえた捕虜の数に比べれば大きく減っているが、その母数が大きい分、人数的にもかなりの数になったのは事実だ。

 恐らく今頃は、帝都にいる貴族に対して色々と揺さぶりを掛けているのだろう。

 ……にしても……

 

「他の戦線では帝国軍が降伏しているにも関わらず、俺達を相手に降伏しないってのはどうなんだろうな?」

 

 寧ろ、純粋な戦力という意味では周辺諸国よりも俺達の方が圧倒的に勝っている。

 事実、今も視線の先ではメギロートが降下しながら地上にいる帝国軍にサークル・レーザーを放ち、イルメヤが地上を進みながらビーム・ガトリング砲で掃射しており、帝国軍の肉壁でもあるゴブリンやオークはその殆どが消滅している。

 それこそ戦力の消耗に関しては全滅するまで戦うのが珍しくもないマブラヴ世界の軍隊と似たようなものがあった。

 

「それはそうでしょ。アクセル、貴方が帝都でやった事を忘れたの?」

 

 そう告げられて思い出すのは、地震の時に第1皇子のゾルザルや皇帝のモルトを相手に優しく撫でてやったあの光景。

 なるほど、立場とプライドの高いあの2人があそこまで虚仮にされたら絶対に降伏は許さずに徹底抗戦を命じるのも分からないではない。

 あるいは、あの光景を見た貴族達が今俺達と対している軍の指揮官に任じられている可能性もあるか?

 

「なら、降伏を待つ必要も無いか。一気に奴等を蹴散らす。ここでグズグズしていれば他の国に帝都に対する一番槍を取られるかもしれないし、何より……」

「オーブ、ね」

「ああ」

 

 マリューの言葉に頷く。

 今回の戦いでも、当然オーブは自らが主力となるように作戦会議の場で要求してきた。

 それこそ、アークエンジェルを出してもいいとまで言ってきたのだ。

 それを色々とやり過ぎるのを心配して俺達が攻める事になったんだが、当然こちらの行動が鈍いようであれば、オーブとしても自分達が出撃すると言ってこないとも限らない。

 ……バルトフェルドがいるのを思えばそこまでいくとも思えないが、中には感情で突っ走る奴とかもいるしな。

 まぁ、さすがに幾ら帝国が許せなくても一般人を相手にどうこうするとも思えない。逆に貴族相手なら分からないが。

 それを思えば、やはりここで一気に畳みかけた方がいい。

 そんな風に考えている間にも、帝国軍の数はメギロートとイルメヤの攻撃により急激に減っていっているのが分かる。

 さて、ならそろそろこちらとしても仕上げに入るべきか。

 

「マリュー、仕上げだ。追加でシャドウを出撃させてくれ」

「分かったわ。美砂、量産型Wに出撃命令を出して頂戴」

「あ、うん。了解」

 

 マリューからの命令に、通信装置を起動させて艦内放送をしようとする美砂だが、やはりまだ操作の類には慣れていないのだろう。手間取っているのが分かる。

 一応前もってシロガネに配属されるというのは分かっていたし、マニュアルの類も読んでいた筈だが、やはり実物は違うという事だろう。

 

「円、貴方は格納庫の方に連絡を。シャドウの出撃準備を整えさせて」

「あ、はい」

「はい?」

 

 円の言葉遣いに、チラリと視線を向けるマリュー。

 それを見て何を言いたいのか分かったのだろう。慌てて言葉遣いを直す。

 

「わ、分かったわ」

 

 あやか達が正式に研修としてホワイトスターに来た、あの日。夜に俺の家で食事をした時に普段の言葉遣いについては丁寧になりすぎないようにと決まったのだ。

 勿論人前とかではTPOに合わせた言葉遣いが必要となるだろうが。

 ……まぁ、外向きの立場はともかく、内側では皆俺の恋人という流れになるんだから、マリューの気持ちは分からないでもない。

 今は色々とまだ微妙に態度が固いが、そのうち一緒に過ごせばいずれ馴染んでくるだろうとは思っている。

 いや、夜を共にする事になるんだから、嫌でも馴染んでいくというのが正しいだろうが。

 その辺に関しては、あやか達がきちんと高校を卒業してからの話だけど。

 そんな風に考えていると、やがて出撃準備が整ったのだろう。シロガネから10機程のシャドウが出撃していく。

 

「決まったな」

「でしょうね。駄目押しの一手以外のなにものでもないし」

 

 俺の言葉にマリューが同意し、事実シロガネに映し出されている映像モニタではビーム・ガトリング砲やクロスマッシャーといった攻撃が行われては、文字通りに帝国軍を一掃していく。……が。

 

「アクセル君、あれ!」

「ああ、見えている」

 

 美砂からの言葉に頷き、その光景へと視線を向ける。

 武器を手放し、両手を頭の上まで上げて完全に無抵抗の状態を示している兵士や騎士、あるいは魔法使いといった者達。

 どこからどう考えても降伏の合図だろう。これで実は命を捨ててでも徹底抗戦を行う為の合図だったりしたら、笑うに笑えない。

 

「どうするの? 取りあえず今は攻撃を中止しているけど」

 

 マリューの言葉通り、降伏を申し出てきただろう敵の周囲はイルメヤが囲み、メギロートとシャドウが空中に浮かんでいる。

 降伏してきた相手の数はざっと10人程か? 見た感じ、目には恐怖の色しかないように見えるし、何かを企んでいるようには見えないが。

 

「捕虜になっても、魔法使い以外はこっちだと使い道がないんだよな。エルベ藩王国辺りに渡すか?」

 

 魔法使いであれば、ゴブリンやオークを洗脳する方法辺りは興味がある。……ただ、問題はその使い手が降伏した中にいるのかどうか。

 何しろ帝国が現在シャドウミラーを相手にして唯一何とかなっているのは、このゴブリンやオーク達がいるからだ。

 ……まぁ、何とかなっているとは言っても、実際は帝国軍が負けるまでの時間を延ばす程度の効果しかないんだが。

 ただ、容易に自軍の数を増やせるという意味では大きい。

 シャドウミラーで言えば量産型Wがそれに当たるんだろうが、勝手に増えるゴブリンやオークとは違って、量産型Wは1人ずつ作り出さなければならないからな。

 もっとも、ゴブリンやオークをホワイトスターで飼うとかなると色々と問題が起きるのは間違いない。

 しかも洗脳というか、操るにしてもずっと操っていられる訳じゃないだろうから、それを考えればホワイトスターどころかアルヌスの丘でも問題しか起きそうにない。

 捨て駒としては色々と使い勝手が良さそうなんだが。

 そうは思うものの、シャドウミラーの組織としての性格を考えれば、いずれゴブリンやオークも技術班辺りによって品種改良されたり、あるいは改造されたりしそうだ。

 そもそも、量産型Wだって最初は使い捨てて当然の兵士だったのだ。だが、それがいつの間にか生身でも魔法が使えるようになり、シャドウミラー以外の軍隊では即座にエースと呼べるだけの実力を持つに至った。

 勿論性能が上がったからといって、生産コストまで上がった訳ではない。 

 確かに以前よりも若干コスト的に上がってはいるのだが、その辺はあくまでも誤差の範囲内に収まる程度だ。

 だがあまりにも量産型Wの性能が高くなりすぎた為に、使い捨てとしては勿体ないと感じるようになったのも事実。

 やはり使い捨てというのは、大量生産が出来て質より量の方が向いている。

 それを考えると、メギロートやイルメヤもまた同様に性能が高くなりすぎているという一面はあった。

 かと言って、わざわざメギロートやイルメヤのスペックを下げる必要性は今更感じられないし。

 まぁ、今はそんな事よりも降伏してきた奴等をどうするか、か。

 

「しょうがない。取りあえず奴等を捕まえてシロガネに運んでくるように量産型Wに命令してくれ。ただし、くれぐれも何か妙な事を企んでいないか気をつけて欲しい。もし何か怪しい動きをするようであれば各自の判断に任せると」

「……了解」

 

 どこか沈んだ様子の円の声。

 拳闘士としての活動では基本的に相手が死ぬような事はないし、降参すればそこで終わりだ。それに比べて、これは戦争。どうしても慣れないというのは当然か。

 それでも、あやかや千鶴とは違って拳闘士として活動した分、慣れるのは早い……と思いたいところだ。

 

「降伏してきた奴等の事情聴取に関しては……そうだな、俺がやろう」

「アクセル君が?」

 

 美砂が驚きの表情を浮かべつつこちらに視線を向けてくる。

 確かに普通に考えれば、一国の代表が直々に取り調べをするというのは有り得ない。

 いやまぁ、降伏してきた相手が敵国の元帥だったり大統領だったりすれば話は別だろうが。

 

「ま、他に暇をしている人員はいないしな」

 

 敢えて上げるとすれば、量産型Wか。だが、量産型Wはどうにも突発的な事態に弱い。判断不能になってブリッジに指示を仰ぐだけならまだしも、下手をすれば敵対行為として殺してしまう事も有り得る。

 それなら、最初から俺が事情を聞いた方がいいだろう。

 それに……

 

「この世界の住人が俺に危害を加えられるとは思えないしな」

 

 降伏してきた中には一応魔法使いもいたが、それでもこの世界の魔法使いにどうにかされる程に弱くはないつもりだ。

 

「取りあえず話を聞くだけだし、物騒な事にはならないと思うから行ってくる」

 

 そう告げ、影のゲートへと身を沈めていくのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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