転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0969話

 シャドウの手に数人ずつ乗せられ、シロガネに運び込まれた捕虜達。

 その姿をよく見ると、やはり映像で確認したように魔法使いが2人程含まれている。他にも獣人……いや、この門世界では亜人だったか? ともあれ、亜人の兵士が7人、騎士らしき装備の男が1人といったところか。

 亜人に関しては、人間の顔に犬耳、猫耳といったものが生えている者もいるが、中には顔が犬――あるいは狼――そのままという者もいる。

 色々な意味でファンタジー色豊かな捕虜達は、シロガネの中にある一室で固まっていた。

 空を飛ぶという意味では竜騎兵がいる。だが今こいつらがいるのは、空飛ぶ戦艦の中であるシロガネの中だ。

 当然部屋の様子もこいつらが知っている門世界のものとは大きく違うらしく、恐る恐る机を触ったりしては驚きの声を上げていた。

 それでもやはりシロガネの中にいるのは不安なのか、一箇所に集まっているのは少し面白い。

 だが臆病だからこそあの戦闘の中で生き残り、こちらに降伏してきたのだろう。

 それだけに、部屋の中にある影から姿を現した俺に気が付くのは早かった。

 最初に気が付いたのは、ワードッグとでも表現すべき亜人。……やはり顔も犬系だけあって、嗅覚が鋭いのか?

 

「誰だっ!」

 

 影から姿を現した俺に向かって鋭く叫び、咄嗟に腰へと手を伸ばし……そこに自分の武器が存在しない事を思いだしたのか、武器を手にするのは諦めて鋭い視線でこちらを睨んでくる。

 武器がないのは、当然シロガネに乗艦させる時に武装解除した為だ。降伏した相手に武器を持たせておく程に甘くはない。

 

「誰だとはご挨拶だな。お前達が降伏したシャドウミラーの代表だよ」

「……シャドウミラー? それが俺達が戦っていた相手の名前なのか?」

 

 ……おいおい、もしかして敵である俺達の名前すらも知らなかったのか? 色々な意味でこの門世界の中でも有名になっていたと思うんだが。

 

「馬鹿っ! 降伏した相手の名前くらい覚えておけ!」

 

 短く叫び、ワーウルフの頭部を叩いたのは騎士。

 どうやらこの様子を見る限りだと、別に俺達の名前が広まっていない訳ではなく単純にこのワーウルフの頭が弱いらしい。

 にしても、この騎士とワーウルフの間にある空気は気安いものがあるな。

 普通騎士と言えば貴族の一員だったり、あるいは貴族に仕えている立場な訳で、兵士の……しかも亜人とはこんなに気安くないってのが、俺の知っているこの世界の情報なんだが。

 事実、このイタリカ以外の場所の多くでは亜人が差別されているって話だし。

 

「……失礼しました。私はアンテル・レープトと申します。この度は私達の降伏を受け入れて下さり、感謝しています」

 

 そう告げ、優雅に一礼する騎士。

 へぇ、どうやら本格的に騎士らしい。

 

「で、一応降伏は受け入れた訳だが……何を思って降伏した?」

「今の帝国には、もうついていけない。そう思いましたので」

「そうそう。捨て駒ってよく言うけど、まさか本当の意味で捨てられるとは思ってもみなかったよな。レープトの旦那がいなければ、俺達は間違いなく死んでただろうし」

 

 獣人が軽い様子でそう口にするのを聞く。

 どうやらこの集団は身分云々をあまり気にする者達じゃないらしい。だとすればこんな風に固まっている理由も分からないではない。

 

「捨て駒……というと、ここに展開していた戦力の事か?」

「ええ。少し前までそちらの動きに即時対応する為にここにいた戦力の殆どは、数日前にここを去りました。その代わりに派遣されてきたのが、ゴブリンやオークを引き連れた者です」

「それだ。そのゴブリンとオークを引き連れたって奴はお前達の中には……」

 

 レープトと名乗った男の言葉を考えるとまずないだろうと思いながらも尋ねると……

 

「そちらからの攻撃で行方不明です」

 

 行方不明。まぁ、ぶっちゃけ死んだのをそう誤魔化しているだけだろう。事実、メギロートやイルメヤ、シャドウの攻撃を食らって無事に済むとはとても思えないし。

 だが、あっという間にこいつらに対する興味が失せていく気分になったのはしょうがないだろう。ゴブリンやオークを操る能力を持った相手を捕虜にして、分析出来ればいいと思っていたんだが。

 少し前であれば、魔法の分析の為に魔法使いはこっちで引き取ったんだが、そっちに関しても既に大分間に合っているしな。ハイエルフ、ダークエルフの精霊魔法に関しても同様に。

 

「話は大体分かった。一応お前達は捕虜という扱いになって、この後エルベ藩王国に譲渡される事になるだろう。それまではここで大人しくしていろ。……言っておくが、迂闊な真似をしようとは考えるなよ。量産型……いや、俺達の軍の兵士が監視しているからな」

 

 その言葉を待っていたかのように、部屋の扉が開いて量産型Wが姿を現す。

 恐らくこの部屋の様子を監視していたブリッジ側――美砂辺り――の演出だろう。

 

「エルベ藩王国、ですか。……分かりました。私達としましても、妙な真似をしてどうこうされたくありませんから、出来るだけ大人しくしていたいと思います。皆も、いいな? 疑われるような行動は避けるように」

 

 レープトの言葉に皆が頷いていたが、その中で不意に先程の犬の獣人が口を開く。

 

「その、食事に関しては……」

 

 その言葉にレープトが何かを言おうとしたのを制し、口を開く。

 

「安心しろ、エルベ藩王国にお前達を引き渡すまではきちんと食わせてやる。もっとも、そこまで手の込んだ料理って訳じゃないけどな」

 

 シロガネの中にある施設を使えば、相応に美味い料理は作れるだろう。だが捕虜にわざわざそんな料理を食わせてやる程に優しくもない。

 レーションかハンバーガーのようなファーストフードでも食わせておけば十分の筈だ。

 それにしても、この門世界で一般に食べている料理よりは美味いだろうが。

 いっそマブラヴ世界で味が改善される前のレーション辺りを食べさせて……いや、それだと捕虜虐待になるか。

 まさかこっちがそんな風に思っているとは思ってもいないのだろうが、それでも驚きの表情を浮かべているのは、やはりこの門世界での捕虜の扱いは色々と酷いものがあるからか。

 

「さて、それでだ。何か俺達にとって有利な情報があるようなら、相応の見返りがあるが?」

「相応の見返り、ですか?」

「ああ。食事の質が上がったりとか、そういうのだ」

「……なるほど」

 

 俺の言っている意味を理解したのだろう。その話を聞いていた10人全員が何か考えるような態度を見せる。

 食事の質云々という話を聞いた以上は、ある意味当然なのかもしれないな。

 

「本来ここにいた筈だった戦力は周辺で反乱を起こしている国の鎮圧に回された、というのは言いましたよね?」

「ああ、言ったな」

「その中で、最も帝国軍が重要視しているのが、エルベ藩王国です。従属国としての規模も大きいですし、同時に今回の大量に反乱が起きた原因でもありますから。である以上、当然その鎮圧には大勢の戦力を回します」

 

 それは当然だろう。事実、こちらが上空からメギロートを使った偵察でもその辺の裏は取れている。

 

「その件はこっちでも掴んでいる。残念だが……」

「いえ、ここまではあくまでも前提です」

 

 俺の言葉を遮るようにして告げるレープトの言葉に興味を覚え、先を促す。

 

「それで、これに関しては確実ではなく、人伝の情報なんですが……実は、現在エルベ藩王国との戦いに派遣された帝国軍の中に、第2皇子がいるとか」

「……ほう?」

 

 確か第2皇子はディアボとかいう名前だったか。こっちで集めた情報によれば、頭は悪くないんだけど考えすぎて結局間の抜けた行動を取るとかなんとか。

 皇帝の器としては問題外だと、情報を分析したレモンは言っていたな。

 ……考えてみれば、モルトも色々な意味で哀れだよな。皇帝の後継者たるゾルザルは考えなしの馬鹿で、ディアボは考えすぎる馬鹿。そういう意味ではピニャ辺りが有能ではあるんだろうが……本人は皇帝になる気はないらしいし。

 まぁ、モルト自体が色々と残念な皇帝なのは事実だ。

 門という存在があるのはいい。だが、何の下調べもないままいきなりの侵略行為を選択したのだから。

 最低限こっちがどの程度の文化を持っているかを調べていれば、帝国の今の状況もなかっただろうにな。

 自業自得しか言いようがない。

 ともあれ、エルベ藩王国に向かっている帝国軍にディアボがいるというのは貴重な情報だ。

 基本的に文官よりであるディアボが何故帝国軍と行動を共に……あるいは率いている理由は予想するしかないが、大体分かる。

 そもそも、ゾルザルが俺によって殆ど半身不随といった状態になってしまった以上、今の帝国の皇位継承権の第一位はゾルザルからディアボとなったのだろう。だが武官肌のゾルザルと違い、ディアボはこれといった武勲を立ててはいない。なので、今それを欲している……といったところか。

 何の証拠もない予想だが、恐らくそう違ってはいない筈。

 

「分かった、この件に関しては食事のランクを一段階上げる事で報いよう。この部屋から出ない限りは好きに寛いでいて構わない。ただし、部屋から出るような真似をすれば命の保証は出来ないからそのつもりでな」

「は、はい。分かりました!」

 

 俺の言葉に本気を感じ取ったのか、レープトを始めとした捕虜の面々は大人しく頷く。

 それを横目で一瞥した後、再び俺は影のゲートを生み出してそこに身を沈める。

 レープト達が驚愕の声を上げていたが、まぁ、それに関してはいつもの事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 影のゲートから姿を現した俺を、ブリッジにいる面々は全く驚きの表情を見せないままに迎える。

 マリューはホワイトスターで幾度となく影のゲートを使っているのを見ているし、円や美砂にいたっては魔法の本場でもあるネギま世界の出身だ。

 

「マリュー、エルベ藩王国に派遣している量産型Wに連絡してくれ。向こうに回った帝国軍に帝国の皇子のディアボがいるらしい。出来れば捕虜にしてこっちに連れてくるようにしたい」

 

 その言葉を聞き、すぐに頷くマリュー。

 恐らくは俺と捕虜達の会話を部屋のカメラを通して見ていたのだろう。

 事実、今もシロガネの映像モニタの1つには、先程俺達がいた場所が映し出されているし。

 

「ねぇ、アクセル君。そのエルベ藩王国とかいう国にディアボって皇子がいるのを教えるのは駄目なの?」

 

 首を傾げて尋ねてくる美砂に、頷きを返す。

 

「それでもいいんだが、どっちの方が向こうに恩を売れるか……あるいは、俺達シャドウミラーの手柄になるかだな。それに、エルベ藩王国の戦力はあくまでもこの世界の一般的なものだ。そうである以上、当然ディアボを取り逃がす可能性も少なくない」

「……なるほどね」

「他にも、この戦争が終わった後の主導権に関しても関わってくるな。特に次期皇帝と思われる人物を捕虜にしたとなれば、その手柄は大きい。つまり、帝国の領土をエルベ藩王国を含めた諸国連合が占領した際に、こっちが主導権を握る事が出来る」

「けど、今までの帝国との戦いの経過を聞く限りだと、主導権は完全にシャドウミラーっていうか、異世界間連合軍だっけ? 私達にあるみたいだけど?」

 

 確かに美砂の言葉は間違っていない。だが、それでも……

 

「念には念をってな」

 

 さすがに俺達の戦力を知っている状況でこちらを裏切りはしないだろうが、この門世界の住人である事を考えるとどうしても念を入れたくなる。

 ……それもこれも、お互いの戦力差を理解していながらも未だに無条件降伏する様子を見せない帝国の事があるからだな。

 理解出来ない存在に対して攻撃的になるというのは、正直分からないでもないが。

 

「念には念を、ね。まぁ、元々向こうはこちらに返しきれない程の恩があるんだし、それを思えば今更その恩が1個や2個増えたところでどうという事もないんでしょうけど」

 

 笑みを浮かべながら告げるマリューだが、実際その通りだろう。

 このままエルベ藩王国を始めとした国々が帝国を滅ぼしたとしても、この地を統べるだろう連合国はシャドウミラーを始めとした異世界間連合軍に対しては頭が上がらない。

 それでも一応は独立国として扱われるのだから、帝国よりは大分マシなんだろうが。

 

「帝国も、自分から進んで虎の尾……じゃなくて、大魔王の尾を踏まなくても良かったのにね」

 

 円の呆れた様な言葉に、マリューと美砂の2人が頷く。

 ちなみに、俺の尻尾は普通にあるが……大魔王とか言われている割には、悪魔の尻尾じゃなくて竜の尻尾なんだよな。

 そんな風に話していると、不意に通信画面が開く。

 そこに映し出されたのは、量産型W。

 

『報告です。目標を捕らえました』

 

 エルベ藩王国に派遣している量産型Wから、ディアボの拘束に成功したという報告だった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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