転生とらぶる   作:青竹(移住)

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0977話

 3-Aの卒業パーティが開かれる会場は、当然の如くと言うべきか雪広財閥の方で借り上げた会場……という訳でもなく、那波重工やら近衛やらの権力云々という訳でもなく……

 

「まさかここで卒業パーティとはな。さすがに驚いた」

「ふふん、驚いたか。アクセルを驚かせる事が出来たんだから、サプライズパーティは成功という訳だ」

 

 そんな風に胸を張っているエヴァに対し、呆れた様に視線を向けたのはしょうがないだろう。

 そもそも、卒業パーティで俺に対するサプライズを仕掛けてどうするつもりなのやら。

 ……そう、ここはエヴァの住んでいるログハウスの地下に設置されている魔法球の中。

 当然ここにいるのは3-Aのメンバーのみであり、それぞれの両親とかはここにいない。

 保護者の中には魔法の関係者もいるのだが、全員が保護者のみのパーティの方に出ている。

 この辺、普通なら親子一緒でパーティに参加しそうなものだが……麻帆良の認識阻害の結界の件を考えると、色々納得出来るところではある。

 それにこの中で数日過ごしたとしても、外では数時間。その後で合流して二次会、三次会という流れになっているらしいから、そこまで問題はないんだろう。

 

「言っておきますけど、アクセル君にお酒を飲ませたりしては絶対に駄目ですわよ!」

「えー、何でだよいいんちょ。アクセルにも飲ませようよー」

 

 風香があやかにそう告げているが、そもそもアルコールは20歳になってからだぞ、お前達。

 

「アクセル君は非常に……それはもう、非っっっ常に酒癖が悪いらしいです。アクセル君の恋人のレモンさんやマリューさんから聞いた話ですが、ぶっちゃけると酔っ払ったアクセル君はその……近くにいる女の人に手当たり次第に手を出して、しかもその……」

「いわゆる絶倫で女の方が壊れてしまうくらいに求められるらしいわよ?」

「ち、ち、ち、千鶴さんっ!?」

 

 顔を真っ赤に染めながら言い淀むあやかに、千鶴が言葉を紡ぐが……そのあからさまな話の内容に、あやかの顔が更に赤く染まる。

 それを聞いてキャーキャーと黄色い悲鳴を上げている3-Aメンバーを眺めていると、俺の側にいたエヴァがジト目を向けつつそっと離れて行く。

 

「安心しろ。今飲んでいるのはアルコールじゃなくてウーロン茶だからな。別にそんな事にはならないさ」

「……言っておくが、本当に……本っっっっっっ当に、お前は酒を飲むなよ? ここでお前が酔っ払って手当たり次第に女に手を出してみろ。ものの見事に3-A全員がお前を止められずにお前のお手つきになるからな?」

「大丈夫です、マスター。私はガイノイドですので……」

「馬鹿者、そんな問題ではない!」

 

 茶々丸は相変わらずどこかずれているな。

 それが茶々丸らしいと言えば、らしいんだが。

 

「ちょ、ちょっとアクセル。あんたお酒飲んでないでしょうね? 言っておくけど、私はあんたに変な事されるのはごめんよ!」

「おおっとぉ、一番手はアスナが向かったぞぉっ! 高校卒業と同時に、処女も卒業か!? 一時期、アクセルとの間に怪しい関係があるとかないとか噂されてたけど、ここで本領発揮か!」

「ちょっ、朝倉。いきなり何言ってるのよこの馬鹿! あんたがそんな事を言ったら……」

「アスナさん? ちょおっと付き合って貰えますわよね?」

「ほらやっぱりいいんちょが出たぁっ!」

「ふふふ。全く、オジコンだったアスナさんがいつの間にかノーマルに戻っていたなんて……ただ、アクセル君にちょっかいを出すのは許しません……とは言いませんが、それでも順番は守って貰いますわよ?」

「べ、別にあたしはアクセルに妙な思い何か抱いていないわよ、だから離して、はーなーしーてーっ!」

『ドナドナドーナードーナー』

 

 連れて行かれる神楽坂に向かって歌う3-Aメンバー。……相変わらず色々な意味でチームワークがいい。

 そんな風に思った俺は決して悪くない筈だ。

 

「はい、アクセル君。このお料理私が作ってみたんだけど……どうかしら?」

 

 あやかに連れて行かれた神楽坂を見送っていると、そんな風な声と共に千鶴が唐揚げの乗った皿を差し出してくる。

 

「へぇ、美味そうだな」

「それはそうよ。アクセル君のために愛情をたっぷりと込めて作った唐揚げなんだから。はい、召し上がれ」

 

 外側はサクリとした食感で、中の鶏肉は非常に柔らかい。味もしっかりと染みこんでおり、幾らでも食べられそうな唐揚げ。

 

「うん、美味い。……けど、お前達の卒業パーティなのに、主賓が料理を作るってのはどうなんだ?」

「あら? なら四葉さんはどうなのかしら?」

 

 チラリ、とこの春から同僚となる四葉へと視線を向ける千鶴。

 その視線を受け止めた四葉はといえば、こっちの視線に気が付いたのかペコリと頭を下げてくる。

 

「まぁ、これから料理を本職にしようって奴だしな。その辺を考えれば、こういう機会は貴重なんだろうよ」

 

 もっとも、3-Aメンバーの事を考えれば、多少料理を作りすぎたとしても残るなんて事はまずないと思うが。

 

「ほらほら、アクセル君。こっちは私が作ったんだから食べてみてよ」

「あ、これは私よ」

 

 円と美砂も、千鶴に負けじと焼きそばとタラコパスタを差し出す。

 2人共微妙に似ている料理だな。

 いや、どっちも美味そうなんだが。

 そして事実、焼きそばにしろタラコパスタにしろ、どちらも十分過ぎる程に美味かった。

 味にうるさい奴なら色々と文句を言うんだろうが、そもそも俺の舌はそんなに上等なものじゃない。それにたっぷりと愛情を込められたと言われれば、それを不味いと言える筈もなかった。

 

「なんつーか、お前等は……本当にそいつでいいのか? 大体お前達以外にも恋人を何人も侍らせているような男なんだろ? よくそんな男を3年間も想い続けてたな」

 

 どこか呆れた声を掛けて来たのは長谷川。

 自称一般人の長谷川にとってみれば、俺とあやか達、そしてレモン達との関係は魔法以上にファンタジーな感じなんだろう。

 もっとも、その長谷川も電子精霊とかいうのを使いこなすようになっていて、とてもではないが一般人という枠に入れられないような状態になってると思うんだが。

 本人は必死に否定してるけど、間違いなくこっち側の住人になりつつあるよな。

 

「あら、長谷川さんも恋をして、愛を知ればきっと分かるわよ? そうなれば、その人の欠点ですらも愛しく思えるって」

「……お前が言うと本当に洒落にならないんだから、止めろよな。どうみても18歳って年齢じゃねえだろ」

 

 最後はボソッと口の中だけで呟いた長谷川だったが、今の千鶴がそれを見逃す筈がない。

 瞬動まで使って長谷川の真横に移動し、笑みを浮かべながらどこからともなく取り出した長ネギを手に、口を開く。

 

「オホホホホ。何か言ったかしら?」

「うわぁっ! な、何も言ってない言ってない。気のせいだよ。だからその長ネギを離せおい。それをどうするつもりだ!」

「あら、分からないのかしら? 女の子には色んな秘密があるのよ? ……まぁ、長谷川さん曰く、私は女の子じゃないらしいからその秘密に関しても適用されないのかもしれないけどね?」

 

 千鶴の表情は笑みを浮かべているが、その身体から放たれている迫力……あるいはプレッシャーと呼んでもいいようなものは、長谷川の戦意を軒並み奪っていた。

 必死に目を逸らしてこっちに助けを求める長谷川だが、生憎とその状態の千鶴に対して迂闊にちょっかいを出すとこっちまで致命傷を負いかねないので、スルーさせて貰う。

 ちなみに、円や美砂もまた俺と同意見なのだろう。そっと長谷川から目を逸らしつつ、お互いの料理を口に運んでは味の批評をしていた。

 

「あああああああ、そ、そう。そうだよ。別に年齢がどうとか言いたいんじゃなくて、那波はアクセルの恋人って言うか新妻に見えるって事を言いたかっただけなんだよ」

「……あら?」

 

 ゴゴゴゴとプレッシャーを放っていた千鶴が、長谷川の言葉を聞いた途端、長ネギの動きをピタリと止めた。

 そしてどこか照れたように赤く染まった頬に手を当てて恥じらいを見せる。

 その様子は、少し前の迫力満点の千鶴がどうとか言っても信じられないものだ。あるいは、直接自分の目で見ても信じられない。

 円と美砂は色々と長谷川に言いたい事があるらしいが、先程見捨てた手前それも出来ず、微妙に不機嫌な様子になっている。

 

「アクセル君、私が新妻ですって。どうかしら?」

「いやまぁ、傍から見るとそう思う奴も多いかもな」

 

 実際、千鶴の肉感的な身体や落ち着いた雰囲気を考えると、新妻と言われて否定出来る者の方が少ないだろう。

 千鶴のそんな雰囲気は、政治班として外交をする上でも非常に役立っているとエザリアから報告を受けている。

 まぁ、エザリアとレオン。どちらも気の強さというか攻撃的な面が強いし、千鶴と同時期にシャドウミラーの政治班として活動を始めたあやかにしても、どちらかと言えば強気な性格をしている。

 そういう意味では、このまま外交の経験を積んでいけば、千鶴はシャドウミラーの中でも間違いなく必須の人材になるだろう。

 

「あらあら、うふふ。……これは、夜が楽しみね」

「夜?」

 

 ふと呟かれた千鶴の言葉に思わず聞き返すと、何故か頬を薄らと赤くする千鶴。

 それは同時に、円や美砂までもが同様だった。

 ……何だ?

 一瞬疑問に感じたが、すぐにそれは消える。何故なら、先程あやかに連れて行かれた神楽坂が顔を引き攣らせながらこっちに近づいてきた為だ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ちょっとアクセル。いいんちょはあんたの管轄でしょ! いい加減助けに来なさいよ!」

「そうは言われてもな。まぁ、逃げ出したからいいんじゃないか?」

「いい訳、あるかーっ!」

 

 高校を卒業したというのに、全く落ち着いた様子のない神楽坂。

 以前と比べても外見は随分と女っぽく……

 そんな風に思っていると、不意に両脇から抓られる感触が。

 そちらへと視線を向けると、そこでは円と美砂の2人が両脇から俺の脇腹を抓っていた。

 

「アクセル君。私達がここにいるのに、アスナに目を奪われるって失礼じゃないかしら?」

「そうねー。……何、もしかしてアクセル君。アスナにまで手を出そうってつもりなの?」

 

 美砂の言葉を聞いた神楽坂が、反射的に後ろへと飛び退る。 

 その速度は瞬動でも使っているんじゃないかと言わんばかりのものだ。

 

「な、何よ。いいんちょ達がいるってのに、まだ女を増やそうっての!?」

「いや、ないから」

 

 あっさりとそう告げる俺の言葉に、だが神楽坂は何故かジト目を向けてくる。

 

「そうはっきりと言われると、それはそれで女としてのプライドが傷つくわね」

 

 俺に言い寄られるのは困るが、言い寄られないのも嫌、か。色々と複雑な女心って奴か?

 

「アースーナーさーん? 貴方、やっぱり……」

「わひぃっ、いいんちょ!? 撒いたと思ってたのに!」

 

 叫びつつ俺の前から離脱する神楽坂と、それを追うあやか。

 

「あはははは。卒業記念の勝負だよー。さぁ、賭けた賭けた!」

「いいんちょに食券5枚!」

「私はアスナに食券3枚ですぅ!」

 

 そんな風に、既に見慣れた感じで賭けが始まる。

 この辺は3-Aの見慣れた光景といえるな。

 皆で賭け事をする様子を眺めつつ、俺はエヴァの別荘で行われる卒業パーティ1日目を過ごしていくのだった。

 

 

 

 

 

 エヴァの別荘の中に用意された部屋。

 当然ながら男は俺1人だったので、一応他のメンバーとは違って少し離れた場所に部屋を用意されていた。

 小太郎やネギ辺りは色々と忙しいから、もう数日してから合流するらしい。

 そんな風に考えつつ空間倉庫から取り出した雑誌を読んでいると、不意に扉がノックされた音が聞こえてくる。

 何だ? 茶々丸か?

 そう考えつつ扉を開けると……

 

「アクセル君、少しよろしいでしょうか」

 

 そう言ってきたのはあやか。それも普段のあやかではなく、シースルーのネグリジェを身に纏っており、その下には扇情的な下着を身につけているあやかだ。

 

「あやか?」

「はい。今日は、その……アクセル君と共に夜を過ごす為に来ました」

「……自分で何を言っているのか、全てを分かった上での発言か?」

「勿論ですわ。それに、この件に関してはレモンさんを始めとした皆さんにも、きちんと前もって了解を貰っていますので」

 

 ……用意周到と言うべきか、それともはしたないと言うべきか。ともあれ、このまま部屋の外に置いておくのも色々と不味いので、部屋の中に招き入れる。

 正直な話、ここであやかを招き入れた時点でその後の展開は決まっていたのだろう。

 

「取りあえずそこに座ってくれ」

「はい」

 

 俺は部屋の椅子に。あやかをベッドに座らせて、改めて向き合う。

 お互いがお互いを見つめ合い、やがて数分の沈黙を破って口を開いたのはあやか。

 

「アクセル君。以前の約束……覚えていますわよね?」

 

 その約束というのが何を意味するのか。それを分からない程に、俺も鈍い訳ではない。

 高校を卒業し、それでもまだ俺を愛しているというのなら、それを受け入れる。確かに俺はそんな約束をしたのだ。

 

「私だけではありません。他の3人もこの3年間一時もアクセル君を忘れるような事はありませんでした。……この気持ち、受け入れて下さいますか?」

 

 俺の負け、だな。

 いや、これは勝ち負けの話じゃないか。

 座っていた椅子から立ち上がり、空間倉庫から時の指輪を取り出す。

 既に魔力が込められているこの指輪は、身につければその時点であやかを時の流れの外に置くだろう。

 

「あやか。……俺と共に、永久の時を生きてくれるか?」

「はい。私の全てはアクセル君と共に」

 

 そう告げ、差し出されたあやかの左手の薬指へと時の指輪を填める。

 その瞬間、ポロリとあやかの瞼から涙がこぼれ落ちる。

 それが悲しみの涙ではないというのは、幸せそうに微笑むあやかを見れば明らかだった。

 そのままあやかと随分と久しぶりの口付けを交わし……そのまま、そっとベッドへと押し倒す。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:290
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1167

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