転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1007話

 円からの通信で得た、マシュハドハイヴから数万匹のBETAがこのアンバール基地に向かっているという情報を聞いて、思わず首を傾げる。

 いや、確かにアンバール基地の一番近くにあるハイヴはフェイズ5のマシュハドハイヴであり、同時にBETAがハイヴを取り戻そうとするのも分からないではない。だが、何だって恭順派がテロを起こしている今、タイミング良く?

 ……待て。タイミング良く、だと?

 その言葉を内心で呟くと、ふとテロリストが言っていた切り札云々や本当の狙い云々という言葉を思い出す。もしかして……これか? 恭順派の奴らにしてみれば、BETAに殺されるというのは寧ろ望むところの筈。つまり、BETAをこっちに……

 

「円、そのBETAの前方に何か機体がいないか? 車だと突撃級に追いつかれるだろうから、恐らく戦術機」

『ええ、いるわよ。そう言うって事は、この裏については大体分かったの?』

「ああ。戦術機がハイヴに攻撃してBETAを挑発。それでBETAをこっちに引き連れてきたってところか。……ハイヴ、それもこのアンバールハイヴから最も近い位置にあるハイヴだ。当然監視の類はしていただろうが、その辺をどうやって潜り抜けたんだろうな」

 

 普通であれば、トチ狂った戦術機がハイヴに攻撃しようとしてもその前に止められる。……下手をすれば撃破すらされるかもしれない。だというのに、今回BETAを引き連れてきている奴はどんな手段を使ったのかは分からないがそれを可能にした。

 恭順派にしろ難民解放戦線にしろ、随分と追い詰められている筈なんだが、よくこんな作戦を実行出来るだけの余裕があったな。

 どこぞの国が後ろにいたりする、という可能性もあるのか?

 だが、今のこの状況はどこの国にとってもベストな筈だ。今ここで恭順派を暴れさせて人類を危機に陥れる事によって得をする国なんてないと思うが。

 

『どうやってハイヴに攻撃したのかは後で考えるとして、今はその基地よ』

「だろうな」

 

 外からはBETAの襲撃、中はテロリスト。内も外も敵だらけって感じだな。

 BETAが近づいて来ているにも関わらず、警報の1つも鳴らないのも既にその辺をテロリスト共に抑えられているからだろう。

 恐らく基地内部でテロリスト共に対抗している者もいるだろうが、まず間違いなくBETAの接近には気が付いていない。

 そもそも気が付いたとしても、テロリスト共は間違いなくここと同様に格納庫を占拠して、戦術機やリニアガン・タンク、ガン・ルゥを押さえている筈だ。そうなれば当然この基地の軍人にBETAをどうにかする手段はない。

 ……そう。このアンバール基地所属の軍人には、だが。

 当然俺はこの基地の軍人ではないので、どうとでも対処は可能だ。空間倉庫の中には、例によって例の如くニーズヘッグやサラマンダーが入っているしな。

 唯一の心配事は、俺がBETAを倒すと中東連合軍やアフリカ連合軍の面子を完全に潰してしまうことだが……まぁ、このままだと基地が落ちるのを考えれば、面子を潰されるよりはマシだよな。

 この基地を失うとなると、中東・アフリカ方面は一気に橋頭堡を失う事になる。

 アンバール基地はオリジナルハイヴであるカシュガルハイヴのすぐ近くにあるという事で、いずれ色々と重要な場所になる筈。

 ……実際カシュガルハイヴを攻略する際に重要になるのは、隣接しているマシュハドハイヴの方だろうが。

 それでもアンバール基地はこの地方の最終防衛線という意味もある。

 

「しょうがない、俺が出る」

『……それが一番でしょうね。ニーズヘッグだけで大丈夫? ニヴルヘイム……とまでは言わないけど、シロガネは出した方がいいんじゃない?』

 

 円の意見に考える。

 確かにBETAの相手をするのにはニーズヘッグがいれば十分だろう。だが相手の数が数万となると、フレイヤを使わない限り倒すのは非常に面倒だ。

 だからと言って、この状況でMAP兵器であるフレイヤを使う許可を取る訳にもいかないし、無許可で使うのは後々の問題になるのは間違いない。

 だが……

 

「シロガネで来ると言っても、どうやってだ? もうBETAが近くまで来ている以上、俺がホワイトスターまで戻っている余裕はないぞ?」

 

 そう、それが最大の問題だった。

 ニヴルヘイムであれば、システムXNを搭載している以上は転移が可能だ。だがシロガネに転移装置は搭載されていない。

 今まではニーズヘッグがあるから特に困る事もなかったが、この戦いが終わったらニヴルヘイムに搭載しているのと同じシステムXNをシロガネにも搭載した方がいいかもしれない。

 シロガネの代わりにニヴルヘイムを転移させるにしても、あっちは機動要塞だけにメギロートやイルメヤ、シャドウといった戦力を積み込むのや、ニヴルヘイムを動かす要員の量産型Wを乗せるのにも時間が掛かり、出撃準備が整う頃には既に戦いは終わっているだろう。

 その辺を考えると、やはりニーズヘッグだけで戦うしかない、か。

 幸いニーズヘッグで地上戦……いや。地上すれすれの位置で戦っていれば、間違いなくそのBETAはその習性からニーズヘッグを狙ってくるしな。

 BETAの誘引という意味では、ニーズヘッグはこれ以上ない程の能力を発揮する。

 

「本来ならいらないって言いたいんだが、一応念の為にシロガネでこっちに直接向かってくれ。国連の方に政治班の方から連絡を入れておくのを忘れずにな」

『ええ。……アクセル君も気をつけてね』

 

 心配そうな表情を浮かべる円だが、そもそもBETA程度が幾ら集まったとしてもニーズヘッグにかすり傷すら付ける事は出来ないだろう。

 まぁ、心配されるのは愛されているという実感が湧くからいいんだが。

 ともあれその言葉を最後に、通信を切る。

 次にやるべきは空間倉庫からニーズヘッグを取り出す事。

 幸いここは格納庫である以上、戦術機よりも小さいニーズヘッグを取り出すのは問題がない。

 特にこの格納庫は地上へと出る為のエレベーターが設置されているので、わざわざシステムXNで転移する必要もない。

 そうしてニーズヘッグを取り出し、そのまま空中を飛んでコックピットの中へ。念動力のスキャンにより機体が起動。

 そのまま機体を動かしてエレベーターの方へと移動する。

 あるいはこの状態でもまだ生き残っているテロリストの類はいるかもしれないが、既に戦術機が全機破壊されており、ここは戦術機専用の格納庫である為かリニアガン・タンクやガン・ルゥの姿もない。つまり、何が出来る訳でもない訳だ。

 エレベーターが上がっていき……ものの1分も掛からずに、ニーズヘッグの姿はアンバール基地の地上へと姿を現していた。

 

「どうやら、まだここから見える範囲には来ていないようだな」

 

 安堵の息を吐き、ツイン・ドライブで空中へと浮き上がる。そのままエナジーウィングも展開し、ヒュドラのスラスターをも使ってすぐにBETAの向かってくる方向……マシュハドハイヴの方へと向かっていく。

 30秒と掛からず見えてきたのは、こちらに向かって真っ直ぐ撤退してくる戦術機。しかもF-15Eって、F-15の中でも最新型だろうに。本当に、どこからこの機体を手に入れてるんだろうな。そんな風に思いつつ、次第に近づいて行くF-15Eとニーズヘッグ。

 こっちの姿を確認したのだろう。F-15EはBETAを挑発して誘引する目的で手に持っていた突撃砲をこちらへと向けてくる。だが……甘いっ!

 エナジーウィングと左側ヒュドラのスラスターを使い、機体を斜めにして突撃砲の攻撃を回避する。同時に、F-15Eとすれ違い様にエナジーウィングで腰の辺りを切断。F-15Eは、腰から上下を真っ二つにされ、上半身と下半身がそれぞれ別の方向へと転がっていく。

 一応殺してはいないが、ここで生き残れるかどうかは純粋にあのパイロットの運だろう。

 出来れば生き残って、情報をこっちに引き渡して貰いたいところだが……難しいだろうな。アンバール基地からの応援が――敵味方にせよ――くれば、もしかしたら生き残る事が出来るかもしれないが。

 

「さて、取りあえず背後からの攻撃を心配する必要はなくなった。そうなると、次はお前達の番だな。嘲笑する虐殺者の名を持つこの機体の力……存分に味わって貰うぞ!」

 

 その言葉と共に、10km程の彼方からBETAがこちらを目指して進んでくるのを映像モニタで確認する。

 BETAが占領した地域は基本的に徹底的に均されてしまう為、山はおろか丘の類もなくなる。それだけに、BETAがこっちに接近してくる様子は嫌という程に確認出来た。

 

「まずは、小手調べにこれでも食らえ! メガ・バスターキャノン、発射!」

 

 その言葉と共に、ニーズヘッグのヒュドラ後方に装備されているメガ・バスターキャノンから膨大な量のビームが放たれる。それこそ、どこのハイメガキャノンやバスターライフルだって感じの膨大なビームは、まっすぐF-15Eを追って来て、そこからニーズヘッグに狙いを変えたのだろう突撃級の群れを一掃する。

 例え強靱極まりない装甲殻を装備していようとも、このビームの前では意味がない。装甲殻諸共にビームに飲み込まれ、消えていく。

 

「続けて、こっちだ。……バリオン創出ヘイロウ、起動」

 

 その言葉と共に、ニーズヘッグの背中に装備されているバリオン創出ヘイロウが起動。ヒュドラ後方に装備されている、もう1つの強力な攻撃兵装であるブラックホール・ランチャーへと莫大なエネルギーが流れ込んでいき……

 

「ブラックホール・ランチャー、発射」

 

 その言葉と共に、重力波砲が放たれる。

 メガ・バスターキャノンに勝るとも劣らない程の威力を持つその重力波砲は、先程の攻撃に何とか当たらずにこちらに向かってくる突撃級の残りを圧縮し、殲滅する。

 

「これで突撃級の殆どは消えたな」

 

 2発……たった2発の攻撃ではあったが、今の攻撃によってBETAの先方部隊たる突撃級は殆ど壊滅状態近くまでその数を減らしていた。

 それでもまだそれなりに生き残っているのが、BETAの数を物語っているのだろう。

 まぁ、それでも……俺の、そしてニーズヘッグの敵じゃないけどな。

 そのままツイン・ドライブ、エナジーウィング、ヒュドラのスラスターを使って、既に前線が崩壊している突撃級の群れの残骸へと向かって突っ込んで行く。

 

『燃える天空』

 

 ヒュドラに内蔵されているグレートグランドマスターキーの効果により、大量に込められた魔力が何のロスもなく魔法を発動する。

 何故か魔法を使う際には殆ど魔力のロスが存在しないこのマブラヴ世界だが、それでも多少のロスはある。ホワイトスターが5倍、10倍と魔力が必要なのに比べると、1.5倍とかその辺だが。それでもロスはロスである以上、戦闘をする上では少しでも魔力の消耗を押さえた方が効率がいいのは事実だ。

 そして生き残りの突撃級の多くが、通常よりも多く魔力を込めた『燃える天空』により消滅……いや燃滅していく。

 本来であれば処理に困るはずのBETAの死体は、生み出された炎によって全てが炭と化していく。

 そんな炎熱地獄とも言える光景を何とか突破した突撃級もいたが、突撃級は背後からの攻撃には弱い。

 

「ファントムッ!」

 

 そんな俺の言葉と共に、ヒュドラから48機全てのファントムが射出され、T-LINKシステムによるコントロールで突撃級の背後から攻撃を行い、屍へと変えていく。

 ビームソードを展開したまま背後から体内に入り込み、そのまま装甲殻を貫通して前へと出たり、あるいは連続して放たれたビーム砲が背後から次々に着弾して物言わぬ骸へとその姿を変える。

 数分と経たない間に、数万を誇るBETAの先陣である突撃級はその全ての命が奪われ、何もない荒野へとその骸を晒す事になる。

 T-LINKシステムを使ったレーダーで生きている存在がいない事を確認し、ファントムをヒュドラへと戻す。

 

「これで一番厄介な突撃級は始末したな」

 

 思わず漏れる安堵の息。

 実は、今回テロリストの誘引により襲ってきたBETAの中で最も厄介なのは突撃級だった。別に倒しにくいとか強敵だとかそういう理由ではなく、ただ単純に機動力が高くて数が多い為だ。

 ニーズヘッグを無視するのであれば、その速度のままアンバール基地へと向かって突っ込んで行き、その結果として全てを殺す前に基地に被害を与えていた可能性もある。そういう意味での厄介さだ。

 ちなみに次点で厄介なのが中衛にいる小型BETA。こちらも純粋に数の多さからだな。

 普通の戦術機であれば、難敵として認識されている要塞級、光線級は俺にとっては寧ろいい獲物でしかない。

 

「ともあれ、次は中衛だ。俺がこのBETA共を片付ける頃には、基地の方も何とか一段落していればいいんだけどな」

 

 希望的観測に過ぎないと思いつつ呟き、そのままBETAの中衛……要撃級や戦車級といった存在が集まってこちらに移動してきている方向へとニーズヘッグを向けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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