転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1011話

 アンバール基地から20km程離れた場所。転移フィールドが消えると、俺の乗っているニーズヘッグと戦術機一個大隊36機、200人程の完全武装した兵士達がそこには存在していた。

 

『一瞬にして景色が変わった?』

『確かに。ここはどう見てもコロンボ基地じゃないのは、周囲をみれば明らかだし』

『転移、本当に一瞬で俺達はコロンボ基地から移動してきたのか。正直信じられないわ』

『シャドウミラーって……凄いのね』

 

 そんな風に兵士達が話している会話が聞こえてくる。

 戦術機に乗っている奴等も恐らくは同じように考えているんだろう。

 そんな軍人達の前に、ニーズヘッグのコックピットから降りて行く。

 その瞬間兵士達の視線が俺へと集まるが、今はそれどころではないだろうに。……いや、転移を体験したと思えばこんなものか。

 確かアラビア半島防衛戦の時に観戦目的で来た兵士達も似たような感じだったし。

 ともあれ、実際にここでこんな風にしていても全く意味がないので、話を進める。

 

「驚くのは分かるが、今はそれよりもアンバール基地だろう」

 

 その言葉で我に返ったのか、兵士達が自分の持っている武器を確認し始めた。

 ようやく我に返ったようだな。

 これでもう大丈夫だろう。そう思いつつ、ニーズヘッグの足へと手を触れ、空間倉庫へと収納する。

 

『おおおおおお』

 

 再び聞こえてくる驚愕の声に呆れつつ、しょうがないかと溜息を吐く。

 実際に転移を体験したり、あるいは戦術機よりは小さいとしても、15mの機体がいきなり現れたり消えたりするのだから。

 それでもすぐに我に返って戦闘の準備を進める辺り、BETAとの最前線にいる兵士達だけの事はあるのだろう。

 ちなみに今回のアンバール基地解放戦では、BETAとの戦いでは半ば主役になりつつあると言ってもいいガン・ルゥやリニアガン・タンクは存在していない。

 考えてみれば分かるのだが、その2機は両方共が遠距離からの射撃戦に特化している機体だ。である以上、基地の中でその実力を発揮すれば、間違いなく内部にも被害が及ぶ。

 国連軍としては、それは絶対に避けたいところだろう。当然中東連合軍、アフリカ連合軍にしても同様だ。

 その為、ここにいる戦術機にしても一応突撃砲を持ってきてはいるが、突撃砲はサブアームの方で持っており、その手には重斬刀やナイフを装備している。

 その辺の武器に関しては、個人の好みといったところか。

 同時に、向こうに鹵獲されただろう戦術機をあまり損傷させたくないというのもあるんだろう。何しろ、アンバール基地はマシュハドハイヴのすぐ近くにある基地だ。いつ大規模なBETAの侵攻があるのか分からないのだから。

 ……まぁ、今回に限って言えば、俺が誘い出されたBETAの全てを殲滅したから、半ば間引きをしたのと同じような感じになっているが。

 そんな風に考えている間にも、それぞれの準備は終わる。

 とは言っても、そもそも準備を整えた上でのシステムXNでの転移だ。それを思えば、数分と掛からずに準備を整える事が出来るのは当然だろう。戦術機部隊に関しては、転移で機体に悪影響が出ていないかのチェックとかをしてそうだが。

 

「アクセル代表、こちらの準備は出来ました。先程とは違う転移というのをお願いします」

 

 突入部隊の準備が出来たのか、チェントがそう告げてくる。

 

「分かった。……なら、集まってくれ。魔法での転移はシステムXNと違って、それ程広範囲に展開出来ないからな」

 

 正確にはやろうと思えば出来るが、そうすると魔力を大量に消耗するというのが正しい。一応このマブラヴ世界では魔力の消耗はそこまで激しくはないんだが、それでもネギま世界より多いのは事実だ。特に今回は俺自身が動くんじゃなくて、目の前にいる部隊のお守りに近い。

 それを考えると、どうしても何かあった時の為に魔力……SPは残しておきたい。

 幾らSP回復で自動回復するとしても、それは時間経過での回復だしな。

 

「分かりました。では……その、戦術機と生身の2つに分かれた方がいいですか?」

「そうだな……いや、魔力の消費を考えると長距離の転移は1度で済ませたい。皆纏めて頼む」

「分かりました」

 

 チェントが頷き、合図を送る。

 すると戦術機を含めて、ギリギリまで俺を中心にして密集してきた。

 兵士達が戦術機を見て微妙に不安そうな表情を浮かべているが……まぁ、20m近い戦術機のすぐ側にこうして集中しているのを考えれば、分からないでもない。

 なら早速……

 

「じゃあ、移動するぞ。まず最初は通信施設からでいいんだな?」

「はい。向こうの目と耳を潰してしまいたいと思います」

「分かった。……行くぞ」

 

 その言葉と共に、俺を中心にして影が広がっていく。

 戦術機を含め、この場にいる全ての者を包み込む程の大きさになった影は、そのまま影の上にいる者達を飲み込み始める。

 

「おわぁっ! な、何だこれは!」

「た、助けてくれぇっ!」

「ちょっと、落ち着きなさいよ。これは魔法だってアクセル代表が言ってたでしょ!」

「いや、けど……うわぁ、影に身体が沈んでいくこの感触はちょっと慣れないな」

「アメリア、俺が帰ってきたら結婚を……」

 

 ……誰だ、フラグを立ててる奴は。

 そんな風に思いながら、戦術機と共に影へと沈んでいき……次の瞬間には既に俺達の姿はアンバール基地へと到着していた。

 もっとも、ここで影から出ればすぐに見つかるので、現状ではまだ影の中にいるんだが。

 

「チェント、前もって打ち合わせしておいた通りの場所の影からそれぞれ現実世界に戻すぞ。それでいいな?」

「え? あ、はい。……はい? えっと、その、もうアンバール基地に?」

「正確にはアンバール基地にある影の中だな」

「……影の、中?」

 

 混乱している様子のチェント。既に軍人然としたものではなく、素の態度へと戻っている。

 まぁ、初めて魔法を体験したんだから当然と言えば当然か。

 だが指揮官であるチェントに混乱されたままだというのも色々と困るのは事実だ。

 それ故に、取りあえず落ち着かせる事にする。

 

「落ち着け。お前が詳しく理解する必要はない。取りあえず、既にアンバール基地の中にいるんだと思って貰えればいい。それで、これからどうする? まずは通信施設の占拠からなんだろう?」

「……あ、はい。ええ。確かに」

 

 俺の言葉でようやく我に返ったのだろう。やがて数度の溜息を吐いて頷く。

 

「まずは通信施設からお願いします。その後、制圧を予定している場所に順番に出していって貰えれば。それと、戦術機は格納庫をなるべく早く占拠して欲しいので、そちらも同時にお願いします」

「分かった。……なら準備はいいか? 早速行くぞ」

 

 その言葉に、影の中で部下達に視線を向けるチェント。やがて頷きを返したのを見て、影のゲートをそれぞれの前に繋げる。まず最初に影から出たのは、チェントの直属の部下と思われる兵士達。

 通信設備の整っている管制室へと姿を現し、いきなり影から姿を現した兵士達に驚いて身動きを止めているテロリストを次々に制圧していく。

 色々と情報を聞き出す為だろう。銃で撃ってはいるが、狙っているのは手や足といった部位だ。

 練度に関してはさすがと言うべきか、1分も掛からずに管制室の奪還を完了する。

 それを見たチェントが同時に影のゲートから出て素早く指示を出しているのを見ながら、次に俺は格納庫で戦っている戦術機へと視線を向けた。

 向こうにしてもいきなり影から現れた戦術機に対処出来る筈もなく、次々と抑え込まれていく。

 戦術機だけではない。リニアガン・タンクやガン・ルゥといった機体にしても、その辺は同様だ。

 まぁ、相手は所詮テロリストでしかないし、それに対するのは今まで最前線でBETAと戦ってきた精鋭部隊だ。それも、影のゲートでの奇襲を行っている以上、どう考えてもこっちの方が有利だった。

 中には敵襲を管制室の方へと知らせてたテロリストもいるが、その管制室は真っ先にこっちが占拠しているしな。

 そんな光景がいたるところで起きている。

 ちなみにその光景を見ている……というか聞いて、あるいは感じているのは、影から伸びているスライムを通じての情報だ。管制室の方にある映像モニタで見ている分もあるが。

 この基地の司令官も人質になってはいたが、既に突入部隊により救出されている。他にもやはりと言うか、当然と言うか、フェイズ5のアンバールハイヴを使った基地がこの短時間で完全に占拠される訳もなく、テロリスト共の手から逃げ延びて隠れ、機を窺っていた兵士達も行動を起こしている。

 驚いたのは、その兵士の中に俺がテロリストに襲われた食堂にいた者達が混ざっていた事だ。

 いや、この基地にいるのだから当然軍人だったのだろうが、まさか料理人までもがそっちに潜んでいるとは思わなかった。

 ちなみに、その部隊の指揮を執っていたのは俺にこの基地の案内をしていた中佐だったりする。

 恐らく俺が格納庫に向かった後、食堂にいた者達を纏め上げて潜伏していたんだろう。

 この辺、抜け目ない軍人であると言えるな。

 

「至急近くまで来ている部隊に突入指示を出せ。通信はこちらが完全に奪っているから、向こうに気が付かれる心配はない。奴らが使っている通信帯域には妨害電波を」

「既に完了しています」

「そうか、それと格納庫の方はどうなっている? 兵器にはなるべく損傷を与えたくない」

「現在戦術機部隊が順調に奪還を進めています。また、基地内にまだ残っていたこの基地の者も独自に行動を起こしてこちらに手を貸している模様」

「分かった、その調子で進めてくれ」

『中佐! 奴らがガン・ルゥを使って反撃してきています。このままでは基地内部に被害の出る恐れあり。撃破の許可を』

 

 通信機から聞こえてきたその声に、チェントは忌々しげに眉を顰める。

 

「反撃を許可する。ただし、基地施設にはなるべく被害が出ないようにしろ」

 

 この時にせめてもの幸運だったのは、テロリストが使ったのがリニアガン・タンクではなく、ガン・ルゥだった事だろう。

 コスト的な面で考えれば、ガン・ルゥよりリニアガン・タンクの方が数段高いのだから。

 ガン・ルゥは色々な意味で簡易的な兵器という面があるし、リニアガン・タンクはライセンス生産も出来ていない。マブラヴ世界の住人にしてみれば、是非とも欲しい戦力だろう。

 ……ぶっちゃけ、リニアガン・タンクの戦力的な評価は、ハイヴの外ではと言う条件はつくが、戦術機よりも上だ。

 主砲で突撃級の装甲殻を正面から貫通出来るという時点で戦術機よりも攻撃力に関しては上だろう。

 母艦級すら集中攻撃をすれば倒す事が出来るのだから。

 それ程攻撃力に優れているリニアガン・タンクだが、戦車である以上は当然その動きは鈍い。いや、マブラヴ世界の戦車に比べれば随分と上だが、それでも戦術機に比べれば機動性も運動性も圧倒的に下であり、同時に三次元的な運用も出来ない。

 それに比べれば、まだガン・ルゥの方がドリフト内部では戦いようがある。

 だからこそ、格納庫でテロリスト達が使う戦力として選んだのはガン・ルゥだったのだろう。

 ……ただ、ガン・ルゥは所詮数を揃えて遠距離から攻撃してこその兵器だ。戦術機相手に近接攻撃で正面から戦って勝てる筈もなく、次から次に制圧されていっている。

 だが……

 

「中佐、武器倉庫に向かった兵士達からの連絡です。守っていたテロリストの排除は完了しましたが、既に倉庫内に武器は殆ど残っていません」

「第3格納庫から連絡。テロリストがガン・ルゥを運びだそうとしているのを発見。何とか阻止に成功したそうです」

 

 次から次にそんな報告が入ってくる。

 ……なるほど。てっきりカシュガルハイヴに近いこの基地を壊滅させるのが目的だとばかり思ってたが、もしかして本命はこっちか? 格納庫でテロリストが言っていた、本当の目的云々という言葉が脳裏を過ぎる。

 どこぞの国か組織のバックアップを受けているとは思うが、それでも恭順派にしろ、難民解放戦線にしろ、日に日にその戦力やら士気やらは減っていく。特にテロをする上で必要になる武器なんかは値段は高いし、その割に運ぶのや隠すのは難しい。

 となるとわざわざ購入しなくても、ある場所から奪うのが手っ取り早い。

 勿論BETAを誘引してきた事を思えば、それだけが理由じゃないんだろう。一挙両得と言うか、どっちかが成功すれば取りあえずOKみたいな作戦だった。そう思うのは間違いじゃないだろう。

 それを理解したのか、チェントも表情を引き締めて叫ぶ。

 

「奴等に武器や戦術機を持ち出させるな!」

 

 管制室にいる者達は、その命令を素早く伝える。

 だが、テロリストがこの基地を占拠してから、既に数時間が経っている。その間にどれだけの戦力が運び出されたのかは……いや、待て。確かに戦術機とかを運び出すにしても、当然地上を移動しなければならない筈だ。だが、この上空は偵察衛星の類で監視されている筈。そんな中をどうやって運び出した?

 そんな風に思ったのだが、結局上空からこのアンバール基地を偵察していた衛星は特に不審な車両の類を……あるいは戦術機、ガン・ルゥ、リニアガン・タンクといった兵器の類が移動している光景を捉える事は出来なかった。

 これはシャドウミラーの方でも確認出来ていない以上、恐らくはジャマーやステルスといった類のものではないのだろう。

 ともあれ、それから1時間もしないうちにアンバール基地の解放は完了するが……戦術機7機、ガン・ルゥ23機、リニアガン・タンク9両、それ以外にも様々な兵器や武器が消えている事が判明する。

 

 

 

 

 

 ちなみに、突入時に無駄に死亡フラグを立てていた兵士は無事生き残っている事を確認した。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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