転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1018話

 ボパールハイヴ。それは、インド領にあるフェイズ5のハイヴだ。スワラージ作戦で攻略失敗したハイヴと言えば、知っている者も多いだろう。もっとも、当時はフェイズ4だったらしいが。

 それでも多大な被害を出して攻略作戦が失敗したハイヴとして有名だ。

 勿論スワラージ作戦が完全に失敗だった訳ではない。宇宙軍が本格的にハイヴ攻略に参加してその基礎を築き、あるいは一時的にではあるが戦線を立て直す事に成功し、オルタネイティヴ3……霞の姉妹達により、BETAの情報をかなり入手出来たという点では作戦が完全に失敗したとは言い切れないところがある。

 ……まぁ、オルタネイティヴ3はかなり機密度の高い極秘計画だ。結果的にそちらが公表される事はなかったのだからしょうがないが。

 ともあれ、ボパールハイヴはオリジナルハイヴであるカシュガルハイヴのすぐ真下にあるハイヴで、マシュハドハイヴ、エキバストゥズハイヴ、敦煌ハイヴと同様に出来れば押さえておきたい位置に存在しているハイヴだ。

 

「……ボパールハイヴからですって? 敦煌ハイヴでも、マンダレーハイヴでもなく?」

 

 恭子が確認する意味で尋ねるが、斯衛は苦々しげな表情を浮かべたまま頷き、口を開く。

 

「はい、その辺に関しては間違いのない情報です。宇宙軍の方からの情報ですので」

「……まさか、近隣のハイヴではない場所からBETAが向かってくるとは思わなかったわね。それで、迎撃態勢は?」

「既に出撃可能な機体は出撃準備をしています。恭子様は……」

 

 斯衛としては、このままここから避難して欲しい。そう言いたかったのだろう。

 五摂家の1つ、崇宰家の次期当主有力候補の恭子の護衛を任されている身だ。当然の選択だと言ってもいい。

 だが……

 

「いえ、私も出ます。私の瑞鶴の出撃準備を」

「恭子様!?」

 

 五摂家の家に生まれたからこそ、恭子はこの場にいる者達を見捨てて自分だけ逃げるという選択肢は選べない。いや、選ばない。

 

「もしこの基地に十分な戦力がいるのであれば、私も避難を選択したでしょう。けど、今この基地の戦力はそれ程潤沢ではない筈よ。幸い相手は連隊規模。そうであれば、私や貴方達が協力すれば十分撃退は可能な筈です」

「恭子様! この基地にも戦力は十分あります。それこそ、この基地の戦力だけで襲ってきたあの異星起源種共を駆逐できるくらいには!」

「確かにそうかもしれないわね。けど、残念ながら私はここで逃げる訳にはいかないの。それに、戦力が十分だと本当に言える?」

 

 チラリ、と俺の方へと視線を向けながら斯衛に尋ねる恭子。

 ……なるほど。恭子が俺にした説明にはある程度のブラフが混じっていた訳か。

 まぁ、その辺に関しては不思議でも何でもない。そもそも、シャドウミラーと日本は友好的な関係を保っているとしても、全く違う国だ。……いや、世界すらも違う国なのだ。

 だとすれば、そこにある程度の秘密があるのは当然だろう。寧ろ、日本の見栄に近いと言ってもいいかもしれないが。

 

「……どうしてもお考えを変えては貰えませんか?」

 

 斯衛としての立場から、護衛の女はそう告げるしかない。

 もっとも、本人にしてもやはりBETAと戦えないのは残念なんだろう。色々と思うところはあるらしく、それが表情に浮き出ている。

 

「くどいわよ。この重慶基地を万が一にもBETAに再占領される訳にはいかないの。この地はカシュガルハイヴを攻略する上での重要な橋頭堡なのだから」

 

 確かに恭子の言っている事も事実だ。この重慶跡地……いや、基地はアンバール基地と並んでカシュガルハイヴに近い場所にある。

 まぁ、俺達が提案した敦煌ハイヴ攻略作戦を採用していれば、そこが最前線になって、BETAが攻撃するにしても敦煌ハイヴを目指した可能性が高いんだが。

 

「……分かりました。恭子様のご指示通りにします。ですが、恭子様だけを戦場に出す訳にも参りません。私も護衛として共に戦場へと赴かせて貰います」

「ええ、お願いね。頼りにしているわ」

 

 笑みを浮かべた恭子がそう告げ、視線を俺の方へと向けてくる。

 

「アクセルさんには……出来ればこの重慶基地から避難して頂きたいのですが」

「へぇ? てっきり俺にも戦闘に参加するように要求してくるかと思ったんだがな」

 

 どこか挑発的に告げたその言葉に斯衛は微かに眉を顰めるも、恭子自身は小さく笑みを浮かべて口を開く。

 

「そうですね。確かに正直な気持ちを口にすれば、そうして貰えると助かります。ですが、この件はあくまでもこちらの世界の出来事であり、何とか出来るだけの戦力もきちんとあります。出来るだけの力がないのならともかく、あるのにアクセルさんに頼ってしまっては、この先何かあったら……それこそ、BETAが数匹現れた程度でもアクセルさんに頼ってしまう事になりかねません」

 

 それは大袈裟だとは思うが、確かにシャドウミラーという戦力に頼る……いや、依存するという事になれば、このマブラヴ世界に待っているのは破滅しかないだろう。

 今のところは見捨てるつもりはないが、将来的にはどうなるか分からないのだから。

 だからこそ、例え自分達が血を流してでも、出来れば自分達でこの苦境を乗り越えたい。

 自分自身も避難しろと護衛の斯衛に言われたのと矛盾しているようだが、この場では自分と俺は立場が違うと言っているのだろう。

 そして、事実それは正しい。

 自らの血を流してでも、守るべき場所を守るか。

 

「お前、いい女だな」

「……は? え? な、な、何を急に!? ア、ア、アクセルさん!?」

 

 一瞬、何を言われたのか分からないとばかりにキョトンとした恭子だったが、次の瞬間には急激に頬を赤く染めて叫ぶ。

 周囲にいる者達は、非常警報が鳴って深刻そうな表情で話していた恭子がいきなり顔を真っ赤にして叫んだのを見て、意味が分からないといった表情を浮かべる。

 まぁ、そうだろうな。傍から見ていてそれを理解出来る方が難しいだろう。

 そんな恭子の横で、斯衛の女が溜息を吐きながら口を開く。

 

「アクセル代表、申し訳ありませんが恭子様はこう見えても非常に初心で純情な乙女です。出来れば、その類のからかいは止めて欲しいのですが」

「ちょっと如月、聞き捨てならない事を言わないで頂戴。まるで私が男の方と付き合った事がないみたいに……」

「あるのですか?」

 

 慌てたように言葉を紡ぐ恭子だったが、如月と呼ばれた斯衛の女はあっさりとそう返す。

 この辺、冷静な如月と慌てている恭子の差がよく出ている。

 

「その……崇継さんとなら……」

「それにしたって、話だけですよね? 別に深い関係になったという訳でもありませんし。……大体、そんな事になっていれば今頃大騒ぎですよ?」

「……」

 

 完全K.O.ってのはこんな感じなんだろうな。

 

「さて、恭子様が納得されたところで……」

「してないんだけど」

「な・っ・と・く・し・た・と・こ・ろ・で」

「……」

 

 再び貝の如く口を噤む恭子。

 この2人の関係が垣間見えてちょっと面白いな。ここまで案内された感じだと、恭子に振り回されっぱなしにしか見えなかったんだが。

 

「ともあれ、出撃をするのなら早いところ出撃しましょう。幸い私達の瑞鶴も念の為に運び込まれていますから、後は基地司令に許可を貰うだけです」

「……そうね。色々と……本当に色々と言いたい事はあるけど、それは後回しにしましょう。今はとにかくこの危機を乗り越えなくては」

「はい。そもそも、相手は2000から3000匹程度の連隊規模のBETA。今の私達であれば、それもハイヴの内部ではなく外での戦いともなれば、どうとでもなります」

 

 笑みを浮かべてそう告げる如月だったが、何だか言っている内容が色々と違ってきているよな。

 

「と、とにかく! この場は私達に任せて、アクセルさんは避難を……と言っても聞いてくれないのでしょうから、せめて基地内の安全な場所に避難して下さい」

「避難、か。だろうな。まぁ、本当にどうしようもなくなったら俺が出る事も有り得る。今はお前達の全力を見せてくれ」

 

 その声が聞こえたのだろう。周囲で俺と恭子の話を聞いていた者達が安堵の息を漏らす。

 いやまぁ、先程の男の話云々ってところで既にかなり緊張は解れてきてたんだけど。

 この辺、もしかして狙ってやったのか? そんな風に思いつつも、先程のやり取りを思い出せばそうではない。

 そう考えていると、不意に如月と視線が合う。 

 その瞳の中にあるのは、どこか悪戯っぽい色。……なるほど、恭子自身は別にそんなつもりはなかったが、如月の方はそれを狙ってやったのか。

 そんな真似をした理由が、単純に周囲で狼狽えていた他の軍人達の緊張を解く為か、あるいは単純に恭子をからかっていただけか。……何となく後者のような気がするな。

 

「ちょっと貴方。悪いけどアクセルさ……アクセル代表をどこかの部屋に連れて行って貰えるかしら? 出来れば外の様子を見る事が出来るような部屋がいいんだけど」

「は! 了解しました!」

 

 恭子よりも若干年下……まだ10代後半くらいの男の兵士が敬礼をすると、俺の前へと移動してきてビシリと敬礼をする。

 まだ結構若いけど、何だってこんなのがこんな前線も前線、最前線にいるんだろうな? 何らかの懲罰兵? そうも思ったが、男の態度からはそんな様子は見えない。

 となると、それ以外の理由か。

 まぁ、そこに細かく突っ込むつもりはないんだけどな。

 目の前にいる兵士を一瞥し、改めて恭子の方へと視線を向ける。

 

「じゃあ、俺は後ろからお前達の活躍を見守っている。何、心配する必要はないさ、相手はたかが2000から3000匹のBETAだ。俺も安心して見ている事が出来る」

「ふふっ、そうですね。では日本帝国斯衛の力を、思う存分見せて差し上げます」

「……恭子のパイロットスーツ姿を見られないのは残念だけどな」

「ちょっ、アクセルさん!?」

 

 最後に出た俺の言葉に、恭子の頬が再び真っ赤に染まる。

 まぁ、戦術機のパイロットスーツは誰かの趣味かってくらい身体のラインが思い切り出るからな。恭子のようにスタイルのいい女であれば、周囲の視線を集めるのは色々な意味で当然だろう。

 恭子にしても、その辺に関しては今までの生活で理解しているだろうに、何をそんなに慌てているのやら。

 ともあれ、顔を真っ赤に染めて俺を睨み付けている恭子をその場に残し、俺は兵士に案内されるようにして基地の中にある部屋へと導かれる。

 重慶ハイヴを使った基地ではあるが、まだまだ絶賛基地化の作業中だ。当然使える施設の数もそれ程多くはなく、それを示すかのように恭子と別れてから5分程度で目的の部屋へと到着する。

 

「ここです」

「ああ、助かった。お前も戻ってくれ。俺はここにいるからな」

「はっ! では、お気を付けて」

 

 そう告げ、去ってく兵士。

 その気配を感じながら、少し離れた場所に新たに現れた気配を察知する。

 こちらに対する敵意のようなものは感じないところから、放っておいても問題はないだろう。恐らくは恭子が基地司令に自分が出撃すると連絡した時に俺の件も連絡し、護衛と一応の監視を込めた人員を配置したってところか。

 幾ら日本とシャドウミラーの関係が良くても、結局は別の国だからな。その辺に関してはしょうがない。

 そう判断し、部屋にあった機器を操作して映像を映し出す。

 幸い、この部屋の映像モニタは各種前線にいる機体からの映像を転送出来るらしく、特に不都合はない。

 ……けど、何でこの部屋の映像モニタにそんな機能がついているんだ? もしかしてこの部屋は将来的には何か重要な部屋になる予定じゃないだろうな? 戦闘指揮を執る場所とか。

 そんな風に考えつつ周囲を見回すが、20畳程度の広さしかない部屋はそんなに重要な部屋になるとは思えない。

 まぁ、いいか。ここがどんな部屋になるんだとしても、俺には特に関係ないし。

 あっさりとそう判断し、再び映像モニタへと視線を向ける。

 するとそこには、帝国軍や斯衛の戦術機、リニアガン・タンクやガン・ルゥといった機体が多く並べられていた。

 戦術機の方は、第1世代機、第2世代機、第3世代機と各種世代の機体が大盤振る舞いだ。

 こうして見る限りだと、一番多いのはやっぱりガン・ルゥだな。

 この辺に関しては予想通りだった。そもそもリニアガン・タンクは輸入しかしていないし、戦術機は1機1機がかなり高価だ。それに対し、ガン・ルゥは1機辺りのコストが戦術機に比べると安く、それでいて遠距離戦に限定すれば戦術機に勝るとも劣らぬ性能を見せつける。

 ……まぁ、集団で運用するのが前提だが。

 やっぱりライセンス生産が可能になったのが大きいよな。

 そんな風に思う俺の視線の先で……リニアガン・タンクとガン・ルゥが遠距離攻撃を開始した。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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