転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1042話

 ヒュンッという音もなく、放たれた銛は岩の間を移動していたタコへと突き刺さる。

 ……いや、そもそも海中なんだから風切り音とかする筈もないんだが。

 ともあれ、海中であっても俺の腕力で放たれた銛はタコへと突き刺さり、更には背後にある岩へも突き刺さる。

 その威力は、地上であれば岩をも砕いた……かもしれない威力。

 そんな威力の銛に突き刺されたというのに、タコは墨を吐いて何とか銛から抜け出そうとする。

 ちなみにこの前雑誌で見たんだが、タコ墨というのはイカ墨よりも旨味成分が多く、実際に味も美味いらしい。つまり、今俺の目の前で繰り広げられている光景は、上物の食材が海中に散らばっているのと同じな訳だ。勿体ない。

 何故イカ墨よりも美味い筈のタコ墨がそれ程料理には使われない――イカ墨のパスタとかは普通にあるけど、タコ墨のパスタとかは見た事がない――のかと言えば、答えは簡単。単純にタコから取れる墨の量が、イカに比べるとかなり少なく、身体の構造上取り出すのも難しいんだとか。

 まぁ、それは普通の料理人の話であり、四葉であれば上手い具合に料理をしてくれるだろう。……タコの体内にまだ墨が残っていれば。

 ともあれ、捕まえたタコはウツボやサザエといった獲物が入っている網へと入れる。

 さて、次の獲物は……出来ればアワビや岩牡蠣とかが欲しいところだが。

 そう考え、海草が生えている岩へと向かって潜っていく。

 5m程の距離を潜り、そのまま海草の中へと顔を突っ込み目標を探していく。

 アワビや岩牡蠣はその形状が形状だけに、どうしても保護色の如く周囲の岩に紛れており、見つけ出すのが難しい。影やスライム辺りを使えば簡単に見つけ出せそうではあるが、それだと風情が台無しだろう。

 そのまま数分。……混沌精霊である以上は息をしなくても海中で行動出来る俺は、そのまま岩を丹念に見ていって……あった!

 ようやくアワビを発見する。

 それも、手の平サイズのでかい奴だ。

 そっと手を伸ばし……この一瞬が勝負を分ける!

 アワビというのは危険を感じれば岩に強烈に吸着し、ちょっとやそっとでは取れなくなる。それこそ、素人であれば――俺も素人だが――マイナスドライバーのようにアワビを捕る為の器具で貝殻の部分を壊して売り物にならなくなる。

 勿論俺がアワビを獲ろうとしているには、純粋に食べる為だ。その為、貝殻の部分が多少壊れても問題はないんだが、出来れば綺麗な貝殻のままで獲りたい。

 その為に、アワビが岩に吸着する前に引き剥がす!

 混沌精霊としての能力を使い、指先をアワビの貝殻と岩の隙間に入れ、手に力を込めて上へと上げる。

 瞬間、アワビは岩から離れて海中を踊るようにユラユラと落ちてくる。

 よし。力の入れすぎで貝殻が壊れている事もないし、全く問題はない。

 正直、アワビならこの手段で獲れるが、岩牡蠣とかになるとお手上げに近かったりする。

 あっちは指を入れる隙間とか殆どないしな。それこそ、影槍辺りでも使わないと……

 ともあれ、今回はアワビを無事に取れたので良しとする。

 その後もサザエやアワビといった高級食材を獲っていく。

 ちなみに、ウニに関しては完全にノータッチだ。

 この辺の海にいるのは、いわゆるムラサキウニという種類のウニで、ウニの代名詞的な存在であるバフンウニの類ではない。

 ムラサキウニは棘が長く、鋭く、多く。

 それでいて中に入っている身は基本的にはバフンウニよりも少なかったりする。

 それと棘の問題もあって取り出すのが面倒だというのもあるな。

 市場自体に流れているウニとしては、ムラサキウニの方が多いらしいんだが。

 ともあれ、そういう理由でウニに関してはスルーしながら海産物を集めていく。

 名前もよく分からない魚を銛で突き……大分集まったところで、海中から上がる。

 

「ふぅ……ん?」

 

 溜息を吐きながら、ふと視線を向けると……そこにいたのはアルトとミハエル、そしてルカ。ランカ、クラン、後は……何て言ったか、ルカが好きな相手だったか、それとも付き合っている相手だったかの眼鏡を掛けた女の三人の姿もある。

 これでオズマがいれば、スカル小隊勢揃いって感じだな。

 どうやらクランの機嫌は直ったらしい。

 

「どうした、お揃いで。お前達は四葉の方に行かないのか?」

「あー……あれだけ人がいるとちょっとなぁ」

 

 ミハエルが苦笑を浮かべて視線を向ける。

 その視線の先には、確かに大勢の人が集まっている。ただし……

 

「寧ろ、ミハエルなら喜んで突っ込んで行きそうだが」

「おい、アクセル。危ない事を言うなよ。ようやくクランの機嫌が直ったんだからな」

「……へぇ? じゃあ、そういうつもりはないと?」

 

 海から上がりなら、そう口を開く。

 実際四葉の下には元3-A組が集まっており、非常に華やかな雰囲気を放っている。

 元々が美人揃いと言われていただけに、今こうして見る限りではアイドルや女優顔負けの集団だ。

 ……そう言えば、元3-A組ってそんな面子が揃ってるのに芸能関係で働いている奴がいないよな。強いて言えば、長谷川がネットアイドルをやってるくらいか?

 この辺の情報は以前ネギから聞いたんだが。

 

「あー……お、アクセル。随分と大漁だな」

 

 話を誤魔化すかのように、俺の持っている網の中に入っている大量の海産物へと視線を向け、そう告げる。

 いや、実際話を誤魔化そうとしているのは事実なんだろうが。

 それでも、ミハエルのその言葉により他の面々も視線が海産物へと集中する。

 まぁ、いいか。たまの海だ。ミハエルにしても五体満足に過ごしたいのだろう。

 

「……そうだな、ちょっと面白い遊びを教えてやるよ」

 

 そう告げ、網の中にあった中からサザエを1つ取り出して近くにある岩で貝殻を割る。

 すると出てきたのはサザエの身。

 本来はアワビの肝がベストなんだが、アワビはそれほど獲れてないからな。サザエを使わせて貰う。……一応サザエも高級食材ではあるんだが、今回は旅先という事で豪華にいかせて貰おう。

 その身を細かく切ってから空間倉庫から取り出した釣り糸で結んで、サザエの身が結ばれていない方の糸をその辺にあった枯れ枝に結ぶ。

 釣り針とかはついてないが、これで簡単な釣り竿の完成だ。

 合計6本の釣り竿を渡していく。

 

「アクセル、これで何を? 釣り針もついてないんだから、魚を釣るって訳でも無いんだろ?」

 

 釣り竿を手に尋ねてくるアルトに、こちらもまた空間倉庫から取り出したバケツを渡す。

 

「ま、論より証拠。そのサザエの身を岩の浅い場所に落としてみろよ」

「……まぁ、いいけど」

 

 理由を教えられていないのが不満なのか、不承不承ながらサザエの身を海中へと沈める。

 アルト以外のメンバーもまた、それぞれに別れて海中へとサザエの身を沈める。

 それから30秒も経たないうちにアルトの声が上がった。

 

「これは……カニか!」

「正解。まぁ、普段食っているカニとは大きく違うだろうけどな」

 

 いわゆる、タラバガニとかのような大きいカニではない。……まぁ、タラバガニは分類上はヤドカリの仲間らしいんだが。

 ともあれ、海中に沈められたサザエの身に集まってきたのは、1cm程度の大きさのカニ。それと小魚達。

 小魚はツンツンとサザエの身を啄み、カニはハサミでサザエの身を引き寄せようとする。

 

「今だ」

 

 その言葉と共に、アルトは沈めていたサザエの身を海上へと引き上げる。

 すると当然ハサミでその身を掴んだままのカニも釣り上げられ……

 

「ほら」

「お、おう」

 

 差し出されたバケツに、カニを入れる。

 

「……なるほど。何をさせたいのかは分かったけど、このカニどうするんだ?」

「勿論食うに決まってるだろ」

 

 その言葉が余程に意外だったのか、アルトを含めて驚きを顔に表していた。

 

「いや、食うって……これをか? どう見ても食うところとかないだろ」

 

 確かに身という意味では食うところはないかもしれない。それこそ、タラバガニとか毛ガニとかそういうのに比べれば、大きさの違いは一目瞭然だ。

 だが……

 

「このまま素揚げにして、軽く塩を振るとかなり美味いぞ。殻ごと食えるし」

「……殻ごと食べるんですか?」

 

 繰り返すように尋ねてきたのは、ルカと一緒にいた女。

 

「ああ、結構美味い。俺は酒を飲まないけど、飲む奴にしてみれば、海に来た時だけ味わえる最高のツマミらしい」

 

 まぁ、その言葉にも納得だけどな。実際、これ程小さいカニを手に入れるには海に来て自分で捕まえるしかないんだから。

 ヒュー。

 ふと、そんな口笛が聞こえてくる。

 その口笛を鳴らしたのは、ある意味予想通りにミハエル。

 そしてミハエルの視線は、丁度海から上がってきたスレイの方へ向けられていた。

 そう、海水により競泳水着のような水着が身体にピタリと張り付き、その豊満なボディラインが露わになっているスレイへと。

 

「ふんっ!」

「ぐおっ……」

 

 反射的な動きでミハエルの腹部へと拳を叩き込むクランと、それをまともに食らって岩の上に座り込むミハエル。……実は下が岩なんだから、微妙に危ないやり取りなんだがな。

 

「ふぅ。……うん? どうしたんだアクセル」

 

 俺に気が付いたスレイの言葉に、何でもないと首を横に振る。

 

「いや。……それよりも随分と大漁だな」

 

 スレイの持っている網の中には、魚や貝、タコといった獲物がギッシリと詰まっていた。

 さすがに俺の収穫量よりは少ないが、それでもかなりの量だ。

 スレイもまた、誇らしそうに持っていた獲物の入った網を上げる。

 

「そうだろう? さぁ、早速調理して貰おうか。……そっちは何をしてたんだ?」

「ちょっとカニ釣りをな。アルト、ある程度の量が釣れたら向こうに持ってこい。揚げて貰うから」

「あ、ああ。分かった」

 

 ミハエルの様子を心配そうに眺めているアルトをその場に残し、俺とスレイはそれぞれ大漁の獲物を持って四葉の下へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「うわっ、凄い動いてるわよこれ。ちょっと気持ち悪いくらいに」

 

 美砂が、炭火で網焼きにされているアワビを見ながらそう告げる。

 実際、下から炭火で炙られているアワビにしてみれば暴れるのも当然だろう。

 他にもサザエには醤油と酒を垂らして網の上に、魚は鱗や内臓をとるといった下処理をして網の上に並べられている。

 タコも塩揉みをしてヌメリをとってから、網の上に上げられていた。

 まさに海鮮バーベキューといった具合になっており、周囲に集まってきている者達はその匂いに思わず唾を飲み込む。

 それはアウルやスティングといった、食べ盛りの男だけではない。元3-A組の面々や、それ以外にも色々な世界からやって来た者達も視線をそちらへと向けている。

 やはり食欲はどの世界でも共通なのだろう。

 

――そろそろ食べ頃ですよ――

 

 焼きそばを焼いていた四葉の言葉に、焼いていたアワビを取り出す。

 先程まで暴れていたアワビだったが、今ではすっかりといい匂いをさせている。

 そのまま四葉がカレーを食べる為のスプーンを使ってアワビを殻から外し、肝と身に分けて包丁で切っていく。

 中が半生の状態のアワビは酷く食欲をそそる。

 アワビの定番といえば、やっぱり刺身だろう。コリコリとした食感はアワビならではのものだ。

 だがそのコリコリとしたアワビも、こうして火を通すと驚く程に柔らかくなる。

 個人的には刺身も好きだが、こうして火を通したのも負けないくらいに好きだ。

 ああ、ちなみに取ってきたアワビは全部こうして火に掛けている訳ではない。半分程は四葉が刺身にして、肝醤油を用意してくれている。

 勿論料理に関しては俺が取ってきたものだけではない。四葉が調理していた焼きそばやバーベキューといったものから、カレーにラーメンといったものまで存在している。

 ……一瞬、海の家か? と思った俺は悪くない筈だ。

 勿論かき氷やアイス、冷えたジュースやらお茶といった品々も存在しており、技術班が作った冷蔵庫や冷凍庫の中に入って砂浜に置かれている。

 ちなみにこの冷蔵庫や冷凍庫、動力源は何を隠そうMS用のバッテリーを改造したものを使っていたりする。

 いやまぁ、確かにMS関係のバッテリーは色々と効率がいい……良すぎるものだから、使い勝手はいいんだけどな。まさか家電製品にMS用のバッテリーを使うとは思わなかった。

 アグニのようなビーム兵器すら撃てるエネルギー容量のバッテリーだ。当然冷蔵庫や冷凍庫といった家電製品に使えば、年単位……下手をすれば十数年、数十年単位で使える代物となる。

 もしかして、これって色々とやっちゃったんじゃないか?

 そんな風にも思うが、ホワイトスター内でだけ使うという事にしておけば、一応は問題ないか? ないと思おう。

 下手に輸出すれば、その世界の家電メーカーが色々な意味で被害を受けて、下手をすれば経済全体にも影響しかねない代物だが。

 それに関しては取りあえず横に置いておいて、いよいよ本格的にバーベキューが開始される。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:350
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    ???
    ???

撃墜数:1179

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