転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1063話

 関西呪術協会での、シャドウミラーとの貿易による交渉。

 本来であれば、これは今日行われる筈だったのだが、酒呑童子の件があった為に当然それどころではなくなった。

 戦いそのものは終了したが、今回酒呑童子が引き連れてきたのは召喚された鬼ではなくて、本物の……肉体を持った鬼だ。

 召喚された鬼であれば倒せば元の場所に戻るだけだが、肉体を持った鬼であれば当然その死体が残る。

 それも、酒呑童子の肉体は俺がスライムで吸収したから全く残っていないが、引き連れられてきた鬼の死体は普通に残っている。

 そして今は、8月。……それも、盆地で熱い事で有名な京都。

 死体のまま放っておけば、腐って匂いやら虫やら……下手をすれば病気が広がる可能性すらもある。

 幸い鬼の死体があるのは鳥居の場所から入れる異空間だが、異空間だからこそ何か妙なアンデッドとかになったりしないとも限らない。

 その為、今は関西呪術協会が総出で鬼の死体を処分しているらしい。

 だが、これは関西呪術協会にとってもそれ程悪い話ではない。

 鬼の死体からは、強力な呪術や特殊な武器を作る為の素材になるものが取れるらしいし。

 ゲームとかでよくある、敵モンスターからの素材を剥ぎ取って武器にする感じだ。

 妖怪の中でも鬼は二足歩行で人間に近いから、正直微妙な気持ちがない訳でもないのだが……それを言うのなら、分類的には同じ鬼族だと思われるオーガとかを門世界で鹵獲して研究しているのが俺達シャドウミラーだしな。

 実際、そのオーガの研究で得られた技術によって新たに製造されている量産型Wの筋力は以前に比べて高くなっているのだから、文句を言えた義理でもない。

 詠春が酒呑童子の死体の行方を俺に尋ねたのは、そういう理由もあったのだろう。

 鬼としても最上位に位置する酒呑童子であれば、それは確かに素材としても極上の存在なのだから。

 関西呪術協会の長としての立場から考えると、詠春としても俺にそれを尋ねざるを得なかったという事か。

 ともあれ、そういう理由であやかが今日行う筈だった交渉は延期になった。

 とは言っても、元々俺達が京都に来たのは2泊3日の予定だ。予備というか京都の観光用に1日時間を作っておいたので、明日を交渉の日という事に調整し、今日は俺達……俺、あやか、円、神楽坂、近衛、桜咲の6人で京都の観光をしていたりする。

 鬼との戦いは結構濃密な時間だったが、実際には1時間も掛かっていない。

 それから風呂に――当然混浴という訳ではない――入り、外出の準備を整えたとしても、まだまだ午前中。当然それから観光に出掛ける時間は十分にあった訳だ。

 

「やっぱり京都に来たら清水寺には来ないとね」

「そうですわね。修学旅行で来た時にはここから飛び降りるとか言っていたお馬鹿さんがいましたし」

「ああ、いたいた」

 

 あやかと円の会話を聞きつつ、俺もまた清水寺の舞台からの景色を眺める。

 

「確かに夏の青々とした木々が見えるこの光景も素晴らしいですが、秋の紅葉や冬の雪景色も素晴らしいですよ」

「へー。刹那さん詳しいわね。やっぱりこっちの出身の人だから?」

「ええ。やはりこの景色は京都に住んでいた者として誇らしいものがありますから」

「うちもこの景色は好きやなぁ。小学校の時に麻帆良に引っ越した筈なんやけど」

「きっとこのかの記憶に残っているのよ。何て言ったっけ? 原風景? とか、そんな感じで」

 

 原風景って、こういう時に使う言葉だったか?

 神楽坂、桜咲、近衛の会話を聞きながら、思わず首を傾げる。

 いや、だがこうして聞いている限りだとそれ程間違っているようにも思えないのは事実だ。

 

「さて、じゃあ……どうする? 修学旅行の時のように音羽の滝に行くか?」

「アクセル君ナイス! ……って言いたいけど、縁結びは私やあやかの場合はもういらないしね」

「そうですわね。私の場合はアクセル君という恋人がいるからいいですが……あら? アスナさん。アスナさんはそういう相手がいないのですから縁結びの水を大量に飲んだ方がいいのではなくて? それこそお腹一杯」

 

 オーッホッホッホッホッホと高笑いするあやかに、神楽坂はぐぎぎ、と悔しげに睨み付ける。

 

「せっちゃん、せっちゃん。ウチらも縁結びは十分やな」

「え? ちょっ、このちゃん!? 何もそんな大声で……」

 

 近衛の言葉に、周囲にいた他の観光客達が驚きの視線を近衛と桜咲に向ける。

 完全にレズのカップルに間違われたんだろう。

 まぁ、何だかんだと美形な2人。それもお淑やかな大和撫子と、凜々しい雰囲気を放つ女だ。そんな風に興味深く見られてもおかしくはない。

 例えその実態が中身とはかなり違っていたとしても、だ。

 そして高慢系お嬢様と、ムキになってそっちに対抗している神楽坂。

 こちらの方も、その物珍しさから周囲の観光客の視線を集めている。

 

「何だかんだと、いつもと変わらない光景だな」

「ま、それは確かにそうね。大体、あれだけいろんな経験をしてきた私達よ? 魔法界に放り出された時とかに比べれば、こんなのは全然何でもないわよ。それに……」

 

 途中で言葉を切る円。

 まぁ、大体の予想は出来る。

 シャドウミラーとして経験してきたのは、ネギま世界で経験してきた以上に色々な意味で濃い……濃密とすら言ってもいいような時間だったからな。

 それに比べれば、清水寺で多少人の目を集める事がどうだって話だろう。

 もっとも、神楽坂、近衛、桜咲の3人は別に門世界での戦いとか、BETAとの戦いとかは経験した事がないんだけど。

 

「さ、それよりあの4人は色々と忙しいみたいだし、私達だけでも音羽の滝の水を飲みましょ。縁結びはもうアクセル君以外にはいらないし、学業も高校を卒業した以上はそれ程重要じゃない。そうなると残るのは健康だけね」

「健康……俺も必要か?」

 

 混沌精霊である俺に、通常の意味での病気は縁がない。

 あるとすれば、魔法的な意味での病とか、呪術とか……そんな感じか。

 だが、そんな俺の言葉に何かを誤解したのか円のジト目が向けられる。

 

「何よ。アクセル君ってば、私達がいるのに縁結びの水を飲んで、他にも女を囲いたいとか思ってるの? 確かに英雄色を好むって話は良く聞くけど、その辺も大概にしておきなさい。全員が全員私達みたいに物分かりのいい女って訳じゃないんだから、そのうち本気で刺されるわよ?」

「……いや。別にそんなつもりはないんだけどな」

 

 刺されても魔力や気といったものが関係していないような攻撃なら効果はない。そう言おうかと思ったが、もしそれを言えば色々と厳しい突っ込みが来そうで言葉を噤む。

 だが、俺の恋人としてまだ数ヶ月だが共に暮らしてきた円にしてみれば、その一瞬の躊躇だけでも俺が何が言いたいのかを理解したのだろう。

 思い切り俺の腕に抱きつき、夏の為に動きやすく涼しげなワンピースの胸がグニュリと潰れる感触を伝えてくる。

 

「全く、私やあやかがいるってのに他の女の事を考えるなんて。色々な意味で失格よ失格。罰として、何か奢って貰おうかな。ほら、清水寺に来る途中で美味しそうな餡蜜を出している店があったし。何気にネットとか本で紹介されている有名なお店らしいわよ」

「あー、餡蜜かぁ。うちも食べたいなぁ」

 

 ふとそんな声が聞こえ、そちらの方へと視線を向けると、そこにいたのはにこにこと朗らかな笑みを浮かべている近衛に、頬を真っ赤に染めている桜咲の姿。

 この2人、俺と円の話を聞いてたな。いや、聞いてたのは桜咲だけか?

 ただ、近衛辺りは天然でその辺の会話を聞き流していたりはしそうだ。

 そんな2人を見て、一度溜息を吐いてから口を開く。

 

「そうだな、こういう場合は男の俺が奢るってのがセオリーなんだし、行くか」

「え? その、いいんですかアクセルさん。私やこのちゃん、アスナさんまで……」

「別に金に困ってる訳じゃないしな」

「おー、アクセル君お金持ちなんやな」

 

 近衛の言葉に、小さく肩を竦める。

 実際、金持ちと言えばシャドウミラーは圧倒的なまでに金持ちだろう。

 普通に貿易するのでさえ中継貿易は労せずボロ儲けするのに、シャドウミラーの場合はホワイトスターが他の世界との貿易の中継地点と化してるからな。

 どの世界の取引相手にしても、相当な額を落としていっている。

 ネギま世界なんかは、麻帆良、雪広財閥、那波重工と、他の世界と比べると規模は小さいが、それでもその規模の組織3つだ。相当の額がこっちに入るのは当然だろう。

 

「ま、アクセル君のハーレムデートなんだし、奢るくらいはいいでしょ」

「ちょっ、ちょっと待ってよ釘宮! わ、わ、私もアクセルとデートしてるって事になってるの!?」

 

 がーっと頬を真っ赤に染めながら叫ぶ神楽坂に、桜咲が無言でこちらも頬を赤く染めながらコクコクと頷いて追従する。

 近衛だけは若干照れている表情を浮かべているが、他の2人程ではない。

 

「いややわー。照れるやん」

 

 そんな風にしながらも、若干嬉しそうに見えるのは俺の気のせいか?

 ただ、俺達の話が聞こえていたのだろう。周囲から向けられる視線……特に男が俺に向けてくる視線は色々な意味で攻撃的なものになっている。

 まぁ、それは当然だろう。あやかや円は既に言うまでもなく文句なしの美女と言ってもいいし、神楽坂にしても外見だけで考えれば間違いなく一級品の美女。近衛はこれぞ大和撫子と表現すべき感じの美女で、桜咲は美人というよりは凜々しいと表現すべき美人だ。

 全員が全員、色々な意味で人目を引く程の美形であるのは事実であり、そうなればそんな5人を侍らせているように見える俺は確かに嫉妬の対象になるんだろう。

 そうして、世の中出る杭は打たれるという言葉がある通り……

 

「なぁなぁ。ねーちゃん達。そんなチャラい奴放っておいて、俺等と一緒に遊びに行かねえ?」

「そうそう、こいつの家って京都でも結構有名な家なんだぜ? 普通の人なら見る事が出来ないような京都を見せてやるよ」

「あっちの奴には俺等がお話してお引き取りして貰うからよ。なぁ、いいだろ?」

「そうそう、今ならカラオケとかもこいつの家に最新の機種があるからさ」

 

 こういう奴等が湧いて出てくるのは、避けられない事実な訳だ。

 にしても、チャラい奴って……話の流れから考えて俺の事だよな? 幾ら何でも、こいつ等にチャラい奴とか言われるのは納得出来ないんだが。

 それに俺だって、あやかや円といった恋人にちょっかいを出されるのは面白くないし、神楽坂達にしても恋愛感情はともかく友情は感じている相手だ。

 こんなあからさまな馬鹿を相手にどうこうさせようとは思わない。

 

「はぁ」

 

 よって、これ見よがしに溜息を吐く。

 ナンパしてきた相手は、正に俺のそんな態度を待っていたのだろう。一斉に俺の方へと視線を向けて詰め寄ってくる。

 

「ん? 何だよ。自分がどういう立場にいるのか理解出来たのか? それが理解出来たんなら、お前はさっさと消え失せろよ。この姉ちゃん達は俺達が責任を持ってエスコートをするから」

 

 男達のリーダー格と思われる、京都で有名な家がどうとか言われていた奴が俺に向かってそう告げてくる。

 確かにこの男達はそれなりに喧嘩慣れはしているのだろう。事実、さり気なく俺を取り囲むように自分達の位置を調整している辺り、慣れた動きなのだから。

 恐らく、これまでにも同じような事を何度も繰り返してきた。そう見るべきか。

 ともあれ、こんな場所で俺がやるべきことは決まっている。

 

「消えろ。この女達は、お前達のような低脳……いや、地の底を這いつくばるという意味では底脳が相手に出来るような女じゃない。それとも知的じゃなくて痴的な容貌と表現した方がいいか?」

「んだこらぁっ!」

 

 反応が早い……と言うべきか、俺の言葉が終わるや否や拳を振るう男達。

 少し離れた場所からこっちの様子を見ていた他の観光客からは悲鳴が聞こえてきたが、この程度の相手にそこまで派手にする必要もない。

 3人が一気に殴り掛かってきたといっても、所詮は素人の生兵法でしかないのだから。

 炎獣や魔法といった手段を使わなくても、どうにかするのは難しい話じゃない。

 振るわれた拳を回避し、そのまま横を通り抜け様に足を引っ掛ける。

 すると当然足を引っ掛けられた3人は鍛えている訳でもないので、あっさり地面へと転がる。

 しかも、足を引っ掛けるタイミングを合わせた為に3人が全員同じ場所に、だ。

 一番下になった奴がぐえっといった悲鳴を上げているが、運が悪かったと思って諦めて貰おう。

 京都でも有力な家って話だし……詠春辺りに頼んで対処して貰うというのもいいかもしれないな。

 普通であれば借りになるのかもしれないが、今回の場合は絡まれたのは近衛も入っている。

 親馬鹿気味の詠春であれば、相手に対してどんな手段を取るのかは……想像するのも難しくない。

 そんな風に思いつつ、今の一瞬の交差で力の差を理解したのか化け物でも見るような目を向けてくる3人を鼻で笑い、餡蜜を食べるために移動するのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:355
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1180

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