転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1071話

 恭順派の本拠地が見つかったという情報は、当然俺達シャドウミラー以外にもアメリカの方へと知らされていた。

 エザリアは早速とばかりに交渉を申し出たのだが、予想通りにアメリカの態度は固かった。

 それも当然だろう。アラスカはアメリカからは目と鼻の先。文字通りの意味で庭先も同様の場所だ。マブラヴ世界を色々な意味で混乱に陥れていた組織の本拠地がそんな場所にあったとなれば、当然アメリカにしてはこれ以上ない形で面子を潰されたも同然。

 なら潰された面子を自分達の手でどうにかしたいと思っても、おかしくはない。

 で、当然の如くこちらからの協力要請を断ってきた訳だ。

 それでも高圧的な態度じゃなかったのは、お互いの力関係を理解しているからこそなんだろうが……その状況でも断るというのが、現在のアメリカがどれ程怒っているか……それこそ、怒髪天を衝くとった様子なのかを示している。

 ただ、幾らアメリカが怒っていたとしても、恭順派に狙われているのが俺達である以上はこっちとしても引き下がる訳にはいかない。

 エザリアの交渉により、結果的には一部隊のみ本拠地の襲撃に参加する事が可能となる。

 ただし、俺の参加は却下らしい。

 一応友好国の代表を戦場に連れて行くのは危険だという話だったが、そもそも俺はこの世界の国の代表とは違って、普通に最前線に出ている。

 ……というか、俺とニーズヘッグがシャドウミラーの中で最大の戦力なのだ。

 これまでハイヴ攻略やBETAとの戦いで幾度となく証明してきたというのに、それを理解した上でこういう事を言ってくるとなると、恐らく俺に見られたくないものがあるのだろう。

 例えば、ソ連以外にもアメリカのどこぞの会社なり金持ち辺りが恭順派に協力していた証拠とか、な。

 まぁ、それ自体は驚くべき事ではない。寧ろ納得出来ると言ってもいい。

 それこそアメリカという広大な国の中で、政府が全てを完全に把握しているというのがそもそも無理があるのだから。

 特に今は、BETAによって国を追われた難民もかなり集まってきている。そういう者達を含めて色々と不安定になっているのは間違いないだろう。

 当然そういう奴等の中には素性の怪しい者が混ざっており、それが恭順派だとしてもおかしな話ではない。

 

「……そういう状況なんだけど、どうする? どうあっても向こうはアクセルを作戦に参加させる気はないみたいよ」

 

 エザリアからの報告に、思わず溜息を吐く。

 さて、どうしたものか。俺が参加しないならしないでどうとでもなりそうではあるんだが、嫌な感じはまだしている。

 ただ、この嫌な感じというのが念動力によるものじゃなく、あくまでも俺の兵士としての経験からくるものだというのが微妙なんだよな。

 いや、確実に何かが起こるというのは予想出来る。だが、念動力が危険を知らせてくるものではない以上、そこにあるのはそれ程大きな危険ではないという事になる。

 つまり、シャドウミラーの最大戦力である俺がいなくてもどうにかなるかもしれないという訳だ。

 この微妙な感じが、どうしようかという迷いになるんだが……それでも、この経験から来る勘を信じないという訳にもいかない。もしそんな真似をすれば、それこそ俺自身がこれまで経験してきた幾つもの修羅場を軽んじる事になるのだから。

 それに……

 

「向こうが参加を断っているのは、この姿のアクセルアルマーなんだろう? なら……」

 

 呟き、俺の全身を白炎が覆い、次の瞬間には俺の姿は20代の……このマブラヴ世界ではアクセル・アルマーと認識されている姿から、初めてネギま世界に行った時の10歳前後のものへと変わっていた。

 

「この姿の時の僕なら向こうも分からないよね、エザリアお姉ちゃん」

 

 そう声を掛けた途端、ピキリ、とエザリアの動きが固まった。

 それこそ、鬼眼で麻痺や石化の効果でも受けたのではないかというくらいに。

 そのまま30秒程が経ち、やがてギギギ、とまるで壊れたブリキ人形のような動きで再稼働を始める。

 

「……アクセル……」

 

 まるで地獄の底から聞こえてくるような声を聞いただけで、エザリアが何を言いたいのかは分かった。

 俺もまた、同じものを感じていたのだから。

 

「止めておこう」

「そうね、そうしてくれるとこちらとしても助かるわ」

 

 お互いに短く言葉を交わしただけで、それ以上は一切言及しない。

 俺としても、今のは有り得ないというのは自分で一番分かった。

 もっとも、この姿の俺をアクセル・アルマーだと認識させないという意味では、ありと言えばありか?

 ……唯一にして最大の問題は、俺自身がこの役を演じきれるかどうかという事だ。

 自分でやっていて、思わず地面を転げ回って暴れ回りたいくらいの、おぞましい感じすらしたのだから。

 それを考えると、某真実はいつも1つのバーロゥ少年探偵は、よくもああやって子供を演じられると、尊敬すらする。

 エザリアにしても、どこか得体のしれないような相手を見るような目でこっちを見ているんだが……混沌精霊本来の姿を出している時よりも、この子供の姿の時にそんな目で見られるとは思いもしなかった。

 ただ、取りあえず気持ちは分からないでもないとだけは言っておこう。

 俺にしても、こういう風な自分を傍から見るような事があれば、エザリアと同じような気分になるだろうし。

 

「とにかく、この姿なら俺をアクセル・アルマーと認識はされないだろうから、アメリカが行う恭順派の強襲作戦に参加してもおかしくはないな?」

「それは……確かにアクセルの言う通りに問題はないだろうが、それ以前に子供がこんな作戦に参加するとはっ! という風に向こうに却下されないかしら?」

「一応この世界では前線とかだと子供でも戦場に出てたから、それ程心配する必要はないだろ?」

 

 アメリカやオーストラリアといった、完全に安全圏にいる国々では子供が兵士になるような事はない。

 いや、自分から戦場に出て行きたいという趣味の者もいるから完全にいないとは言えないが、それでも基本的にはいないと思ってもいい。

 日本に関してもこれは同様だ。俺達が来る前であればいずれ学徒動員とかにもなっていたかもしれないが、今の日本はBETAとの戦闘領域を重慶ハイヴ周辺に……更には、そこを拠点としてよりBETAの勢力圏内で行われている。

 それ故に、今の日本では一般の学生が動員されるような事はない。

 まぁ、以前講演した斯衛の学校とかはあるが。

 だが、それ以外の……それこそユーラシア大陸に存在している、BETA勢力圏と接している国々ではそうもいかない。

 今でこそ俺達シャドウミラーを経由して輸入した兵器とかで何とかなっているが、それ以前には普通に子供の兵隊がいた筈だ。

 その辺を突けば何とか俺の存在もアメリカに認めさせる事が出来るだろう。……そう思っていたのだが、それに返されたのはエザリアの呆れた視線。

 

「あのね、アクセル。確かにこのマブラヴ世界では子供が兵士として戦っているという現実はあるわ。けど、それでも15歳とかそのくらいからよ? 今のアクセルみたいに、10歳になるかどうかというくらいの年齢で兵士だと言い張るには無理があるわ」

「……そうか?」

「ええ、そうよ。そもそも、15歳くらいならまだ兵士としての訓練も出来るでしょうけど、今のアクセルの年代で兵士としてやっていけると思う? 他の兵士を助けるどころか、無駄に足を引っ張って味方を殺す事にもなりかねないわ」

 

 なるほど。ネギま世界とかで認識が多少ズレていたか。向こうの世界だと普通に子供が戦っていたりするからな。

 いや、その子供が俺だったり、ネギだったり、小太郎だったり……ああ、なるほど。その手も当然あるか。

 ふと、思いつく。俺達の知り合いにはこういう時にこれ以上ない程の実力を発揮する人物がいると。

 それはともあれ……

 

「一応シャドウミラーだからで通してみてくれ。……何となくそれで通りそうな気がするし。それと、麻帆良の近右衛門に交渉して長瀬と……ああ、夏美のアーティファクトは使えるな。けど、夏美を借りるとなると護衛も必要か。なら、小太郎。この3人を借りられないか打診して欲しい。この3人なら、例えこの世界の兵士であったとしても容易に出し抜ける」

「なるほど。まぁ、他の世界から傭兵を雇うというのは以前のハイヴ攻略でもやったから、前例がないという訳ではないけど……当然アメリカには知らせない、隠密行動なんでしょう?」

「当然だ。じゃないと、わざわざあの3人をこっそりと雇う必要がないからな。アメリカが何かを隠そうとしているのなら、こっちはそれよりも前に秘密を確保すればいいだけだ」

「けど、そうなるともしその3人がアメリカ軍の特殊部隊か何かに見つかったりしようものなら、下手をすれば命に関わるわよ?」

 

 心配そうな表情を浮かべるエザリア。

 シャドウミラーだけではなく他の世界の相手も心配するようになったのは、同じ年代のスティングやアウルを養子とした影響だろうか。

 だが、俺はそんなエザリアの言葉に首を横に振る。

 

「確かに夏美だけならそっちの心配もあるだろうが、だからこそ護衛として夏美と仲のいい小太郎を一緒に雇う。長瀬は元々忍者として高い能力を持っているから、それを考えれば心配はいらないし。……最大の心配は、麻帆良で仕事をしている長瀬をどうやって雇うかだが……それに関しては交渉に期待する」

「随分と簡単に言ってくれるわね。けどまぁ、期待されるのは悪い気分じゃないし、あの長瀬とかいう子も確かに麻帆良の警備についているけど、まだまだ新米だから致命的に忙しいって訳じゃないしね。それと、あやかと千鶴の2人を連れて行くわよ?」

 

 その辺は予想していた。何だかんだで、あやかにしろ千鶴にしろ、麻帆良との関係は深い。特に雪広財閥と那波重工はM.M.と手を切った麻帆良にとっては色々な意味で重要な取引相手だろう。

 シャドウミラーと並んで……あるいはそれ以上に生命線と言ってもいいかもしれない相手だ。

 そんな財閥や会社の令嬢を連れて行くとなると、色々な意味で向こうに……近右衛門にとってはプレッシャーだろう。

 

「その辺は任せた。実働班は……一応俺の名代って事でコーネリアを出して、他に数人ってところか」

「……そこまで慎重にする必要もないと思うんだけど。向こうの戦力はあってもガン・ルゥやリニアガン・タンク、戦術機といったところでしょう?」

 

 心配のしすぎだと言ってくるエザリア。

 確かに真っ向から戦えば、俺達がどうこうする以前にアメリカ軍だけで片が付くだろう。

 だが、そもそも相手は恭順派。テロリストなのだ。当然こっちの期待したように真っ正面から戦ってくれる筈がない。恭順派にしてみれば、まさにここが分水嶺。自分達が生き残るか滅ぼされるかの瀬戸際だ。

 そう考えれば、どんな手段でも使ってくるだろう。

 それこそ、爆弾を抱えて突っ込んで来るとかくらいは平気でしそうだ。

 外であれば意味のない攻撃かもしれない。だが、本拠地に生身で乗り込んだ時にそんな奴等が……それこそ纏まって襲ってくれば、大きな被害を受けるのは確実だろう。

 正直、そういう時こそシャドウミラーの主戦力でもある量産型Wが一番使いやすい戦力だと思うんだが……

 何しろ、死んだとしてもこっちに被害は殆どないのだから。

 いや、量産型Wが死ぬんだから被害はあるが、すぐにまた数十人単位で生み出せるし。

 

「向こうは死に物狂いだろうからな。こっちも相応の準備を整えるくらいはしておくさ。それより、交渉の方は頼んだ」

「ええ、そっちは任せておいて頂戴。……マブラヴ世界では散々好き勝手にやってきたけど、それもここまでよ」

 

 フフッと冷たい笑みを浮かべるエザリア。

 ……何気に、恭順派に対して思うところがあるのか?

 まぁ、その気持ちは分からないではない。戦場で戦った場合、シャドウミラーの面子が死ぬということはまず有り得ないが、テロだけは別だ。

 戦場であればいつ攻撃されてもおかしくはないので、常に気を張っている。

 だが、テロとなると日常生活の中で突然行われる攻撃である以上、確実に防ぐという事は不可能に近い。

 あるいは、シャドウミラーの全員が俺のように物理攻撃が効果のない身体であったりしたら……

 

「ぶっ!」

「ちょっ、いきなりどうしたの?」

 

 突然噴き出した俺を見て思わずといった様子で尋ねてくるエザリアに、何でもないと首を横に振る。

 

「いや、ちょっとな。もしもシャドウミラー全員がこの世界のテロではどうにもならないような身体を持っていたら……つまり、全員が混沌精霊だったりしたらどうなるかと思ってな」

「……」

 

 ポカン、とするエザリア。

 いつもはクールビューティを体現したようなエザリアの間の抜けた姿に、思わず笑みを浮かべる。

 自分が笑われているのに気が付いたのだろう。慌てて口を閉じたエザリアはジト目を向けてきた。

 

「あのね、全員が混沌精霊だなんて……どんな凶悪な組織よ」

 

 溜息を吐きつつ告げるエザリアに、混沌精霊である俺も思わず納得してしまったのは当然なのだろう。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:355
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1180

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