転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1098話

 技術班が俺からの意見に従って新しい開発を始めてから数日。シャドウミラーの動きは色々と忙しくなってきていた。

 技術班の問題もそうだが、やっぱり何より火星攻略の動きが本格的になった事だろう。

 火星にいるだろうBETAの種類に関してレモンが夕呼に尋ねたところ、確かに可能性としては十分にありえるという返事を貰った。

 まぁ、可能性という言葉を使っているけど、実際にはほぼ確定で間違いないらしい。

 その話を聞き、既にエザリアやレオンを始めとした政治班は、国連やシャドウミラーの友好国と折衝を続けていた。

 反応としては基本的には賛成している国が多いが、中には下手に火星にちょっかいを出すと地球の方の攻撃が激しくなるのではないかと心配している国もある。

 

「その辺、どう思う?」

 

 映像モニタに映し出されている相手にそう尋ねるが、戻ってきたのは困惑した表情だった。

 

『そう言われても……私としては、崇継さんからこの話を聞いた時は正気なのかどうか疑いましたよ?』

「そこはせめて正気じゃなくて本気と聞いて欲しかったな」

 

 俺の言葉に、恭子が小さく笑みを浮かべる。

 

『ですが、いきなり火星のハイヴを攻撃すると言われましても、こちらとしては首を傾げざるを得ませんから』

「けど、火星が地球圏におけるBETAの本拠地みたいな場所なのは確実なんだろ?」

『ええ、今の学説ではそうなっていますね』

「なら、地球としても今のうちにそこを叩いておいた方がいいんじゃないか? 地球に飛んでくる着陸ユニットは月から飛ばされているものだろうが、月に向かってるのは火星から飛ばされている着陸ユニットなんだろ?」

 

 つまり地球には月から、月には火星から、という具合に補給されている訳だ。

 ただ火星に補給している場所がどこにあるのかは、今のところ不明な訳で。

 恐らく地球圏外からだろうというのが、BETAを研究している者達の予想だ。

 

『そう……ですね。確かにシャドウミラーが火星を落とせるのであれば、地球側としてもこれ以上ない喜びだと思います。ですが、反対をしている方々の気持ちもどうしても分かってしまうんですよ。なまじ現在地球上では人類有利の状態でBETAとの戦局が進んでいる以上、下手に火星にちょっかいを出せば、それもひっくり返されるのではないか、と』

 

 だろうな。けど、その地球での有利というのも俺達シャドウミラーがいたからこそのものだろうに。なら、もう少しこっちに協力的でもいいと思うんだが。

 

『それに……』

「それに?」

 

 何かを言い掛け、途中で言葉を濁した恭子に尋ね返すと、慌てて何でもないと首を振る。

 

『いえ、何でもないです。ただ、ふと思いついただけですから。火星のマーズゼロをシャドウミラーが占領したら、私達の戦いも少しは楽になるんだろうなって』

 

 あからさまに何かを誤魔化したような口調だったが、言いたくないのを無理に言わせる必要もないだろう。

 

『とにかく、安心して下さい。日本としてはシャドウミラーの提案には賛成です。いえ、寧ろどんどん火星を占領して下さいと言いたいくらいですね。ただ……あの国は……』

 

 再び言葉を濁す恭子だが、どこの国の事を言っているのかはすぐに分かった。

 火星は元々自分達の領土であり、歴史的に見てもそれは事実云々と言っている国の事だろう。

 例によって例の如く、その発表のすぐ後に大東亜連合が訂正会見という名の謝罪会見を行ったからな。

 ……お守りご苦労さんですと言いたくなるのは、きっと俺だけじゃない筈だ。

 日本とシャドウミラーの関係が良好なせいか、最近はシャドウミラーの方にも徐々にその矛先を向けてきているんだよな。

 で、その度に大東亜連合の国々が走り回っている訳で……MSとは言わないけど、何か食用品辺りを差し入れしておこうか。

 ネギま世界で魔法使いが作っている保存食の類は、半ばブランド化しているから喜んで貰えるだろう。これで少しでも気苦労が減ってくれる事を祈ろう。

 

「日本としてはオルタネイティヴ4の件もあるし、今は色々と大変な時期だろ」

『ふふっ、確かに。ただ……ああ、いえ。何でもありません』

 

 再び言葉を濁すのを見ると、恐らく何かあるんだろう。

 まぁ、その辺は俺にはあまり関係ないか。気になるのなら、後でレモン達に聞いてみればいいんだし。

 そう考えつつ時計を見ると、既に予定の時間になりつつあった。

 

「っと、悪いな。そろそろ次の予定があるんだ。この辺で失礼させて貰うよ。とにかく、火星の件ではよろしく頼む」

『ええ、分かりました。アクセルさんもシャドウミラーの代表として色々と大変だと思いますが、頑張って下さいね。また今度……もうすぐ日本では紅葉の時期なので、花見の時と同じく、また皆さんで来て下さい。特に醍醐寺の紅葉は見る者の心を震わせるので、是非皆さんで紅葉狩りと行きたいですね』

「それは確かに面白そうだな。花見の時みたいにまた皆で弁当を持って集まるのもいい」

『ふふっ、確かに。昼は太陽から降り注ぐ光で紅葉が煌めき、夕方には夕日で紅葉の色以上に真っ赤に染まり、夜にはライトアップされて……と、1日中楽しめますしね』

「それはまた、随分と力を入れてるんだな」

 

 恭子の言葉に思わずそう返すと、笑みを浮かべて口を開く。

 

『そんな余裕が出来てきたのは、やはりシャドウミラーのおかげです。以前は少しでも対BETA戦略に役立てなければならず、催し物の類は以ての外という空気が広まっていましたからね。その辺を考えれば、私達としてもアクセルさん達には感謝しかありません。その、ですね。……あの……紅葉狩りに皆で行くのもいいですけど、それだけじゃなくて……』

 

 うん? 何か言いづらそうにしている恭子の様子に、思わず首を傾げる。

 何かあるのか?

 そう思って尋ねようとすると、唐突に通信室の扉が開く。

 

「アクセル、まだこっちにいたの? 約束の時間はそろそろ……あら?」

 

 部屋に入ってきたレモンが、映像モニタに映し出されている恭子の顔を見て笑みを浮かべながら口を開く。

 

「あら、もしかしてお邪魔だったかしら?」

『い、いえ! そんな事は全然!』

「そう? けど、一応言っておくけど、もし貴方がこちら側に来るのであれば相応の覚悟が必要よ? それこそ世界を捨てるかのような」

『……それは、忠告でしょうか? それとも……』

「さて、ね。その辺は貴方の捉え方次第じゃないかしら? 私としては、もう随分長い事アクセルと一緒にいるんだから、もう何人増えても構わないと思っているし。……けど、それにはしっかりとした決意が必要よ? と念を押しておきたかっただけよ」

『肝に銘じておきましょう』

 

 いや、うん。まぁ……何を言っているのかは大体分かるけど、正直俺の前でそういう事を言うのは止めて欲しいな。

 だからって、俺のいない所でそういう話をして欲しいって訳じゃないんだが。

 そんな風に思った、その時。

 カランッという音が不意に聞こえる。

 何だ?

 レモンと恭子は気が付いていない様子で会話を交わしているので、そっちを受け流す意味でも音のした方へと視線を向ける。

 床に転がっていたのは……何だ、これは。ネックレスか?

 赤い三角形型の、宝石? 石? まぁ、何らかの鉱物の類だとは思うが、妙に目を引く。

 床に落ちているそれを拾い上げ……全く見覚えのないネックレスに、首を傾げる。

 レモンを含めた俺の恋人達の中でも、こんなネックレスをしているのを見た覚えはない。

 まぁ、全員の持っているアクセサリ全てを俺が把握しているのかと言われれば、答えは否だ。

 けどこんなに目立つネックレスの類を持っているのなら、当然見覚えがあって当然……そう思った、その時。

 ドクンッ! と俺の中の念動力が危機を教える。

 

「レモンッ!」

「何!?」

 

 俺の声に緊迫感が普通ではない事に気が付いたのだろう。恭子との話をすぐにやめてこっちの方へと……

 

「駄目だ! 来るな! 早く部屋から出ろ! 念動力が危険を知らせている! 何か……何か来るぞ!」

 

 その言葉に一瞬レモンが足を止め、映像モニタの向こうでは恭子がこっちで何が起こっているのか分からないといった表情を浮かべて眺め……

 

 ドクンッ!

 

 再び念動力の鼓動。

 何だ何だ何だ? 何が起きている? いや、違う。これか!

 手に持っているネックレスがこの異変の原因だと念動力が教え、そのネックレスを放そうとした、その時。ソレは起こった。

 

「ぐうううううううううっっ!」

 

 何の理由もなく、いきなり俺の身体が薄くなっていく。

 全身に走る激しい痛み。

 混沌精霊になってからは久しく感じた事のない痛みが身体の中で生じ、その痛みが激しくなるにつれて俺の存在が希薄になっていく。

 何だこれは、一体俺に何が起こっている!?

 

「アクセルッ!」

 

 俺の姿が徐々に消えていっているのに気が付いたレモンが叫び、咄嗟に俺の方へと走り寄ろうとする。

 

「来るなっ!」

 

 俺の叫び声にレモンの足が止まる。

 その間にも、俺の身体は痛みと共に希薄に……薄くなっていく。

 

「いいか、俺は絶対に戻ってくる。何があってもだ。俺が戻るべきはレモン達のいる場所なんだからな。ただ、ちょっと戻ってくるまでには時間が掛かりそうだから、俺が戻ってくるまでの間、シャドウミラーの指揮はレモンとコーネリア、エザリアで話し合って決めてくれ」

「……ええ。分かったわ。けど、いいわね? 何があっても絶対に私の……私達の所に戻ってくるのよ? もし約束を破ったら、絶対に承知しないから」

「ああ、分かった……また、な。愛してる、レモン」

 

 その言葉と共に俺の存在はホワイトスターの中から……そして次元の狭間から消え去ったのを感じていた。

 レモンが俺を見る目には絶対的な信頼のみが映し出されており、俺がここに戻ってくるという意思を身体の奥底で固めるのだった。

 

 

 

 

 

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 どことも知れない空間の中、俺の頭の中に強制的にそんな言葉が刷り込まれてくる。

 まるで俺の意思そのものを塗り潰すかのような知識の奔流。

 量産型Wの受けている疑似記憶や疑似経験はもしかしてこういうのなのか?

 そんな風に思いつつも、必死に俺の記憶を上書きしてこようとしている記憶に対して抵抗する。

 これが何なのか、それは既に分かっている。

 聖杯、サーヴァント、根源。

 これらが揃えばすぐに理解出来る。

 違う、来るな。そう、俺は俺、アクセル・アルマー。シャドウミラーの代表。レモン、コーネリア、マリュー、スレイ、シェリル、あやか、千鶴、円、美砂……

 そして俺の戦友達。

 ムウ、ギルフォード、イザーク、ムラタ、オウカ、エキドナ。

 シャドウミラーの次代を担うだろう存在。

 スティング、アウル、レイ。

 他にも幾つもの顔が思い浮かぶ。

 それらを必死に思い出しつつ、忘れないように固く、固く鎧で覆うようなイメージで守る。

 だが……それでも俺の中に入ってくる知識の流入、意識や記憶の塗り替えは終わらない。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 聖杯、サーヴァント、根源、魔術、魔法。

 黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ!

 俺は俺だ。アクセル・アルマーだ。サーヴァント? そんなのは知るか。消えろ、砕けろ、燃え尽きろ、破壊しろ、俺を蝕む全てを!

 必死にそう念じる事により、一瞬だけ記憶の侵食が緩み……安堵したその瞬間、今の反動だとでもいうように強烈な意識や知識の波が押し寄せてくる。

 負けない、俺は負けない。絶対にレモン達のいる場に戻る。こんな事では絶対に負けはしない。しない、しない、しない、しない!

 俺の中に入ってくるな。……いや、違う、

 意識と記憶の浸食を受け付けながらも、このままでは押し切られるだろう事を意識する。

 そう、追い返すんじゃない。それでは敵は敵のままにまだ残っている。

 つまり、敵は……喰らう!

 スライムを使って喰らうのではなく、己の意思の力で相手を喰らう。

 噛み砕き、食い千切り、爪で切り裂く。

 喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう、喰らう。

 勿論俺の中に入ってこようとしているナニカも黙って喰らわれている訳ではない。

 こちらが喰らった分だけあちらも喰らい、お互いに喰らい合い続ける。

 だが……俺は、負けない、必ずレモン達の下へと帰る為にも!

 喰らう、喰らう、喰らう、喰らう。

 自らの……アクセル・アルマーとしての全てを使って相手を喰らい……そしてやがて、俺の中にあった全てを喰らい尽くす事に成功し……俺の意識は闇へと落ちていく。

 完全に意識が闇に落ちる直前、『ふむ、まさかな』『予想外だったよ、これは』『溺死せずに済むだろう』といった声が聞こえたが……それが何なのかを理解する前に、俺の意識は完全に闇へと落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 感じる、感じる、感じる……それは?

 ふと、目を覚ます。

 感じるのは空気。自分の身体が地上へと向かって落ちているのに気が付く。

 自分? 俺? 僕? 私? それは一体何?

 考えている間にも地上は急速に近づいて行き……洋館の屋根を突き破って着地する。

 周囲にあるのはセンスのいい家具の数々。ただし、今の落下の衝撃で砕け散っているものが多い。

 どんな偶然が働いたのか、ソファに座るようにして落ちた自分に首を傾げつつ、近くにあった鏡の破片へと視線を向ける。

 そこに映し出されているのは、10代半ば程の少年の顔。

 赤い髪に、白人風の顔つき。

 自分の顔に手を触れると、鏡の中でも同じように自分の顔へと手を触れている。

 なるほど。これが自分の顔か、と納得していると、やがてドタドタという音が聞こえてくる。

 この部屋の扉の前で止まると、扉を開けようとして失敗。

 何度か叩いてそれも失敗したとなると……次の瞬間には扉が吹っ飛ぶ。

 そうして姿を現したのは、黒いロングヘアーをした女。

 年齢は自分よりも多少上だろうか。

 だが鏡に映った顔と同年代であるのは間違いない。

 何やら頭を掻きむしって……それも一段落したところで、こっちを見て口を開く。

 

「それで、あんた何?」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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