転生とらぶる   作:青竹(移住)

1154 / 4302
1100話&番外編045話 凛の夢 1話

 スキルのうち2つが不明というその一言に、とうとう凛は爆発した。

 

「ちょっと待ちなさい! 『???』って、それどんなスキルよ!? 普通、自分のスキルを見られないとか、有り得ないでしょ!? あんた、本当にどこの英霊なの!?」

「そう言われても、見られないものは見られないとしか言えないんだけど。理由に関しては聞くのなら……」

 

 その理由を告げようとすると、その前に口を開く。

 

「分かってるわよ。私の召喚ミスなんでしょ!? けど、幾ら何でも使い勝手が悪すぎない? 大体霊体化も出来ないとか、あんたを連れて……歩ける、わね?」

 

 改めてマジマジと俺の方を見ながら呟く凛。

 

「その服装はちょっと変わってるけど、どこか現代風だし。って事はあんた近年の英雄なのかもしれないわね。けど……近代で英霊になれるような活躍をした人とかいたかしら? それも、スキルを見ると完全に戦闘に特化しているような感じで」

「悪いけど……」

「ああ、はいはい。分かってるわよ。それ以上言わなくてもいいから。……ちょっと待って頂戴。休憩させて。さすがに予想外の事が幾つもありすぎて混乱してきたわ。優雅に、そうよ凛。優雅に振る舞うの」

 

 何やら呟いている凛の言葉通り、一旦待つ。

 俺にしてもこうして記憶を失った状態のままでここに放り出されたんだから、色々と考えを纏めたい事がある。

 まず、俺が誰なのか。

 我思う。故に我ありって訳じゃないけど、自分自身が誰なのかが分からないのは色々な意味で気味が悪い。

 凛が言ってたけど、この服装は英霊になるような者達が活躍したような時代のものではなく、あからさまに現代風だ。つまり、俺は間違いなく近代の英霊になる訳だが……

 だとすれば、俺がこの世界の日常生活の仕方を知っているのは、聖杯戦争の為に知識が送り込まれたからか? それとも単純に自分が今からそう大差ない時代に生まれた英霊だからその辺を知っているのか?

 分からない。分からないが……

 そんな風に頭を悩ませていると、凛の方でもやがて考えの整理がついたのだろう。何か覚悟を決めた目で俺の方へと視線を向けてくる。

 

「……よし。覚悟は出来たわ。整理は付いてないけど、覚悟は出来た」

 

 2回言ったのは、大事な事だからか?

 

「一応聞いて置くけど、アークエネミーとしては『???』となっているスキルは、どうすれば使えるようになると思う?」

「さて、その辺は俺にとっても微妙だな。恐らくという言葉を付けさせて貰うけど、記憶を取り戻せば使えるようになるんだと思う。多分、俺の根幹に関わっているスキルなんだろうし。それこそこのスキルがどんなスキルなのかを知れば、俺の真名が分かるように」

「……あんたのステータスを見る限りだと、恐らく知名度の方も相当に高いんでしょうね。早く知りたいから、思い出して頂戴。それとも、令呪でも使う?」

 

 チラリと、右腕の甲にある令呪を見せてくる凛。

 だが、俺はそれを検討して首を横に振る。

 

「止めておいた方がいい。令呪は3回だけのサーヴァントに対する絶対命令権だ。確かに可能性はあるが、俺が記憶を失ったのがサーヴァントとしてここに現れる前に原因がある以上、令呪を使っても回復出来ない可能性もある。それに……」

 

 チラリ、と凛の身体を見る。

 服の上からではよく分からないが、健康的な足を見ただけでもそれなり以上に鍛えられているのがよく分かった。

 それが分かったのだろう。ミニスカートから覗く足を隠そうとする凛。

 薄らと頬を赤く染めている凛に向かって言葉を続ける。

 

「これまでの短い時間凛と接してきたけど、その性格は大体予想出来る。聖杯戦争では俺に戦いを任せて凛はこの屋敷で指示をしている……なんて真似をする気はないんだろ?」

「ふっ、ふん。よく分かってるじゃない。当然でしょ。私を誰だと思っているの? 物事は常に優雅に運ぶのを信条としている遠坂凛よ」

 

 一瞬前の照れた表情はどこへやら。黒く艶のある髪を掻き上げながら自信満々の笑みを浮かべる凛。

 

『あたしを誰だと思ってるの? あたしは○○○○、○○○○・○○○よ!』

 

 一瞬、ストロベリーブロンドとでも表現すべき髪をした人物が脳裏を過ぎるが、それが誰なのかは分からない。

 顔には靄が掛かっているように分からないが、間違いなく俺と何か関わりがあるだろう人物。

 ……分からない。

 俺にとって大事な相手であるというのは既に分かっているのだが、それでも相手の詳細を思い出す事が出来ない。

 

「ちょっと、アークエネミー。どうしたのよ?」

 

 凛の声に、我に返って首を横に振る。

 

「ああ、いや、悪い。ちょっと何かを思い出せそうな、思い出せなさそうな……そんな感じだっただけだ。で、何の話だったか……ああ、そうそう。とにかくだ。凛も戦いに参加する以上、いつどんな危険があるのか分からない。いざという時の為に令呪は出来るだけとっておいた方がいい」

「……まぁ、アークエネミーがそう言うんなら、それでもいいけど……」

 

 若干不満そうにしつつも、凛としても令呪を使わなくて済んで多少はほっとしているんだろう。

 凛は改めて深呼吸をしてから、再び口を開く。

 

「それで……これが最後よ。あんたのステータスにあった宝具EX。つまりそれは、とんでもない、それこそあんたの切り札とも言うべき存在の筈。……それは、何?」

 

 嘘は許さないと言いたげな視線を向けてくる凛だったが、俺も別にそれを隠すつもりはない。ただ……

 

「全くの不明だ」

 

 そう真実を告げる。

 その言葉に、ピクリと頬を引き攣らせる凛。

 おい、優雅がどうこうってのはどうした。

 

「それは、何かしら。私を馬鹿にしている。そう思ってもいいの?」

「違う」

 

 このまま下手に誤魔化せば、それこそ令呪を使われそうな感じがして即座に否定する。

 

「これもさっきのスキルと同じだ。『???』という感じで隠されている。ただ、数は4つみたいだな」

「……」

 

 こっちの様子を探るようにしながら視線を向ける凛だったが、やがて嘘はないと判断したのだろう。小さく溜息を吐いて身体から力を抜く。

 

「宝具が4つってのも破格も破格だけど……ねえ、宝具が使用出来ないってのも、あんたが記憶を失っているから……なのよね?」

「ああ」

「なら、それこそ本当に令呪を使って記憶を取り戻した方がいいんじゃない? 聖杯戦争で宝具はサーヴァントの切り札、奥の手なんでしょう? ……そもそも、あんたは一体どうやって戦うのよ? セイバーは剣、ランサーは槍、アーチャーは弓って具合にクラスによって決まってるんだけど、アークエネミーだと何?」

 

 何、か。そう言われてもな。

 ただ、予想は出来ない事はない。

 

「魔力がEXで、筋力、敏捷がA++。で、スキルには格闘ダメージを向上させる勇猛がBであるのを考えると、恐らく魔力を使って格闘に活かしながら使うんじゃないか? 魔術のスキルは持ってないみたいだし」

 

 まぁ、???とやらが魔術だったりすれば話は別だが。

 

「……近代の英雄でそんな人、全く想像出来ないんだけど。本当に、あんた一体何者なのよ?」

「そう言われても、俺が返せる言葉は決まってるぞ」

「分かってるわよ、もう。けど、あんたみたいな色んな意味で桁外れのサーヴァントにいきなりポンッと出てこられた私の身にもなってみなさいよ。……そもそも、何であんたみたいなサーヴァントが出てきたのかしら? 普通なら触媒の類を使って呼ぶんだけど、今回は使ってないし……」

 

 凛の言葉に、俺もまた確かにと疑問に思う。

 この辺も記憶が回復すれば、召喚された理由が……うん? 何だ?

 そんな事を考えた時、ふとズボンのポケットの中で何かが自分の存在を主張したかのように感じた。

 これは……?

 それが気になり、ポケットから出したのは、宝石か鉱石の類がついているネックレス。

 俺には似合わなさそうなそのネックレスだったが、何故か凛が驚愕の表情を浮かべながら見つめている。

 

「おい、どうしたんだ?」

「ちょっとそれ見せなさい!」

 

 俺の言葉を無視するかのように、一気に座っている俺へと近づいてくると、手に持っていたネックレスを奪い取る。

 

「これは……いえ、でも違う? 魔力が入っていない。じゃあ、何で……もしかしたら……」

 

 それをじっくりと見つめながら何かを呟いていた凛が、再び俺の方に視線を向けてきた時には鋭い視線が俺を貫いていた。

 

「アークエネミー、答えて。何であんたがこれを持ってるの?」

「見覚えがあるのか!?」

 

 凛の言葉に、思わずといった様子で尋ねる。

 だが、凛はその問い掛けに答えないまま、じっと俺の方へと視線を向けていた。

 

「いいから、答えて。何でこれをあんたが持っているのかを」

 

 意地でも自分の質問に先に答えろって訳か。

 この様子を見る限りだと、あのネックレスは凛にとって何か重大な意味があるのだろう。

 それは即ち、記憶を失う前の俺と凛が何か繋がり、あるいは関係があった事を示している。

 とは言っても、こうして見る限りでは凛が俺の事を知っている様子はない。

 

「何度も繰り返して言うが、俺は凛が儀式を失敗したせいで記憶を失っている。その辺を詳しく知りたいのなら、もう少し儀式を丁寧にやるべきだったな」

「ぐっ、そ、それは……」

 

 言葉に詰まる凛に向け、次は俺の番だと口を開く。

 

「さて、次は俺の質問だ。そのネックレスに見覚えがあると思っていいんだな? 答えてくれ。俺の記憶の正体に迫る代物かもしれないんだ。それは、聖杯戦争を戦う上で凛にとっても重要な出来事だろう?」

「……父さんの形見よ」

 

 ボソリ、と呟く凛の声。

 

「それも、ただの形見じゃないわ。限界まで魔力を込めてある、この聖杯戦争を戦い抜く上で切り札とも言える礼装の1つ」

「つまり、俺は遠坂の血筋に連なる者だと?」

「そんな訳ないでしょ。あんたみたいなのが身内にいたら、私が知らない筈ないわよ」

「じゃあ、何でこれを俺が持っていたんだ?」

「分からない。分からないけど……多分、このネックレスが触媒の役目を果たしてあんたを召喚したんでしょうね」

 

 しみじみと呟く凛。

 俺というサーヴァントを召喚したのは、良かったのか、悪かったのか。

 自分で言うのも何だけど、戦闘力は確かに桁違いと言ってもいいが正体不明。霊体化も出来ず、アークエネミーとかいう物騒なクラス。

 色々な意味で怪しげでしかない。

 だが、凛はそんな俺に向かって何を言ってるのかと呆れたような視線を向ける。

 

「あのね、あんたが色んな意味で得体のしれない奴ってのは、もう分かってるわ。けど、あんたみたいに能力の高いサーヴァント、わざわざ手放す必要もないでしょ。……それに、黄金律のスキルがあれば多少なりとも金銭的な問題が解決するかもしれないし」

 

 最後にボソリと呟いた凛だったが、しっかりと聞こえているぞ。

 俺は招き猫か何かか?

 ともあれ、得体の知れない俺を相手にこうも言うんだから……中々肝が据わったマスターだ。

 

「とにかく、これからよろしく頼む……って事でいいんだよな?」

「そりゃあそうでしょ。あんた程得体が知れないけど、あんた程強力なサーヴァントも中々いないわ。こう言っちゃなんだけど、この聖杯戦争を勝ち抜くのにかなり有利になったのは事実よ。……まぁ、聖杯戦争は魔術師同士の殺し合いだから、あんただけじゃなくて、私も戦う必要が出てくるけど」

 

 正直な気持ちとしては、所詮人間でしかない凛には大人しくこの屋敷で待っていて欲しいという思いもある。

 何しろ、サーヴァントと魔術師が戦って勝つなんてのは、まず不可能と言ってもいいのだから。

 けど、少し話しただけで分かる。凛の性格から考えて、絶対に屋敷で守りに専念するという風にはしないと。

 

「……ところで、今更だが聞いておくか」

「うん? 何よ?」

「いや、凛は何を求めて聖杯戦争に参加するのか、とな。何か欲するものがあるからこそだろう?」

 

 だが、そんな俺の言葉に凛は何でもないかのように首を横に振る。

 

「別にないわよ?」

「……は? いや、待て。何か望みがあるから聖杯戦争に参加するんだろう?」

「別にそんなんじゃないわよ。ただ、手に入れられるなら貰っておけば何かの役に立つかな、とは思うけど。それより、あんたの方は何を聖杯に望むのよ? それこそ、何か望みがあって……いえ、こう言えば返ってくる言葉は決まってるか」

 

 既に諦めたと言いたげに告げる凛に、小さく肩を竦める。

 

「まぁ、そうだろうな。俺が記憶を失う前に何を聖杯に願っていたのかは分からないが、今は特に何かを願うって気持ちはない」

「受肉……とかは、必要ないだろうし」

 

 そもそも、何をどう間違ったのか、現状で既に受肉しているからな。

 

「ま、おかげで魔力の消費は少ないどころか、アークエネミーの方から送られてくる分で圧倒的に収支はプラスだし。……ちぇっ、本当ならここの片付けをやらせようと思ってたんだけど、ここまで魔力を貰っちゃそれも悪いわね。私も手伝うから、さっさと片付けちゃいましょ」

 

 そう告げ、えいやっとばかりに何かの破片を持ち上げる凛。

 ……ここの片付けを俺だけにやらせる気だったのか……

 そう呆れつつ、凛の方へと手を伸ばす。

 

「凛?」

「うん? 何? ……何よ、その手」

「この聖杯戦争、俺達が勝ち抜くぞ。よろしく頼む。お前のようなマスターを持てて、俺はきっと幸運なんだろうな」

「っ!? な、何よいきなり。……その、よろしくねアークエネミー。記憶、取り戻せるといいわね」

 

 そう言いながら、俺の手をキュッと握りしめるのだった。

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 ふと気が付いた時、凛は自分がどこいるのか全く分からなかった。

 

「ここは……私は確か家のベッドで寝た筈……」

 

 そう。自分はベッドで眠っていた筈なのに、今自分がいるのはどこかの教室。

 それも、冬木に住んでいる自分には全く見覚えのない学校の教室だ。

 本来であれば、自分の知っている学校は穂群原学園のみ。

 だが、今見ている光景は明らかに違っていた。

 そもそも、穂群原学園は共学だ。

 現在見ているような、女子生徒だけが通う女子校では絶対にない。

 

「これって、一体……どういう事?」

 

 首を傾げつつも、誰も自分に視線を向けてこないのは、向こうは自分を意識していないということなのだろうと判断する。

 

「だとすると、これは幻? それとも……」

 

 そこまで呟き、理解する。

 そう。契約したサーヴァントとの相性や繋がりの深さによっては、相手の記憶を追体験出来るのだという事を思いだしたのだ。

 

「じゃあ、これがアークエネミーの……記憶?」

 

 呟く。

 そう、自分の記憶ではない以上、これは間違いなくアークエネミーの記憶で間違いない。

 だが、そうなると……

 

「やっぱり、アークエネミーは私とそう変わらない年代の英雄? けど、そんな、私達の時代で英雄なんて……」

 

 首を傾げる。

 神代の時代であればまだしも、今の時代に英雄と呼ばれる程の者がいるかと聞かれれば、凛は否と答えるだろう。

 

「それにしても……何で女子校? アークエネミーは男なのに」

 

 呟くも、周囲を見回しても女ばかりで男の姿は全くない。

 

「もしかして女子校の教師だった……とか? いや、教師で英雄になるのってどんなのよ」

 

 結局それが分からず、改めて周囲を見回し……それに気が付く。

 

「でかい、わね」

 

 授業が始まる前なのだろう。

 教室の中にいる女子生徒達は、皆が楽しそうに話しているのが見えた。

 その中で凛が見てでかいと表現したのは、優しげな表情を浮かべている人物、活発な表情を浮かべている人物、目を細めにしている、背も高い人物、浅黒い肌は知人と似ているが、とある一部分に関しては比べものにならない程の大きさを持つ人物。

 

「……他の人も随分と大きい人達ばかりね」

 

 もしかしてアークエネミーは胸の大きい方が好きなのかしら? そんな風に考えていると、意識が再び消えていき……

 

 

 

 

 

「うーん……」

 

 目が覚め、ベッドの上で周囲を見回す。

 

「やっぱりアークエネミーの記憶……よね」

 

 そう呟くのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。