転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1105話

 放たれた槍の穂先を回避し、そのまま相手の懐の中へと入り込む。

 この辺は先程までと同じ流れだ。

 ただ、ここからが先程とは違っていた。

 槍を手元へと引き戻すランサーの手を狙って放つ蹴り。

 出来ればその手をへし折って槍を使えなく出来れば……と思っていたんだけど、残念ながら向こうにしてもそう簡単にはやらせてくれないらしい。

 それどころか、瞬時に手元に戻した槍の柄を使って俺の蹴りを防ぎ、更にはそのまま俺の足首に槍を絡めて放り投げる。

 英霊であるランサーの力で放り投げられたのだから、当然その飛距離は物凄い事になる。

 空中で体勢を立て直しながら周囲を見回すと、いつの間にか屋上からグラウンドの上まで吹き飛ばされていた。

 ちぃっ、凛は!?

 マスターをやられれば俺の負けは決まる。

 いや、マスターを失ってもすぐに消滅する訳ではないが、それでもこの戦いを勝つのは色々と難しくなるだろう。

 それに凛程にこちらに協力的で、魔術師として有能なマスターがそうそういるとも思えない。

 最悪、魔力に関しては俺の魔力生成がある以上問題にはならないが、優秀な魔術師というのが色々な意味で稀少だ。

 凛を守る為にもすぐに屋上へと戻らなければ! そう思って屋上の方へと視線を向けるが、俺の目が捕らえたのは屋上の柵を蹴って槍を構えながらこっちに突っ込んで来るランサーの姿だった。

 ……マスターを狙わずに、直接俺に攻撃を仕掛けてくる?

 その様子に一瞬疑問に思ったが、そもそもランサーは最初から好戦的だった。

 つまり、マスターを仕留めて一気に勝負を決めるんじゃなくて、戦い自体を楽しむタイプなんだろう。

 俺としては助かったが。

 グラウンドに着地し、こっちを追ってきたランサーを向かい合いながら凛へと念話を送る。

 

『凛、聞こえているな? こっちはグラウンドでランサーを迎え撃つ。こっちに援護に来てくれ』

『分かった。けど、相手も英霊なんだからくれぐれも注意してよ。こんな場所でやられたりしちゃ絶対に許さないからね!』

 

 戦闘意欲旺盛な凛の声に思わず笑みを漏らす。

 こうして考えると、何だかんだと俺も好戦的な性格をしているらしい。

 意外とお似合いのマスターとサーヴァントなのかもしれないな。

 

「うん? どうしたんだ? 何だか妙に嬉しそうだが」

「いや、俺はマスターに恵まれたと思ってな」

 

 俺の言葉に、ランサーはチラリと屋上へと視線を向ける。

 そこでは、凛が屋上から飛び降り、魔術を使って落下速度を落としながら地上へと下りてきているところだった。

 

「そうだな、確かにお前さんはマスターに恵まれているよ。少なくても臆病な俺のマスターよりは余程な。全く、本当に羨ましい限りだ」

 

 この言葉からすると、ランサーのマスターというのは余程に性格が合わないらしい。

 触媒なしで召喚すれば自分と相性のいいサーヴァントが現れる筈だが……そう考えると、このランサーは触媒を用意されて召喚されたのかもしれないな。

 まぁ、あのネックレスという触媒があって、その上で凛と相性のいい俺という存在を召喚出来たのは、凛にとっては色々と幸運だったんだろうが。

 

「そうだな、俺のマスターはその辺の有象無象と違うのは事実だ。羨ましかったら、こっちに来るか? お前みたいな奴なら歓迎するぜ?」

「はっ、それも面白そうだが、残念ながらマスターを裏切る訳にはいかねえな。忌々しい事に」

 

 ……一瞬だけ表情に浮かんだのは、間違いなく羨望。となると、何かマスターを裏切れない理由があるのか?

 

「何だか色々と複雑そうなバックボーンがありそうだな。けど、サーヴァント同士がこうやって遭遇したんだ。やるべき事は……」

「ああ、決まっている」

 

 俺の言葉にニヤリと笑って言葉を返し、ランサーは手元で槍を回しながら俺の方へと獰猛な笑みを向ける。

 

「さっきはあの狭い場所だったから間合いの狭いそっちが有利だが、ここでなら俺の方が圧倒的に有利だ」

「ふんっ、場所だけの問題じゃないってのを教えてやるよ。戦場が広いんなら、寧ろこっちとしても動きやすいしな」

 

 俺とランサーから離れた位置に凛が到着したのをパス越しに感じる。

 後方からの援護もある以上、こちらとしては本気で攻撃を行わせて貰う!

 

「行くぞ、俺の槍の冴えをその身で味わえ!」

 

 短く叫ぶや否や、ランサーは瞬時に間合いを詰めるべく地面を蹴ってこちらへと向かってきた。

 その敏捷さは、確かにランサーの英霊だけあって素早い。

 敏捷さがAだというのも納得の速度。

 だが……

 

「速度で俺に敵うと思うなよ!」

 

 こちらもまた前へと進み出る。

 屋上とは違い、戦場となった広さを十分に使えるのは俺もまた同じ。

 そもそも、純粋な敏捷さではランサーよりも俺の方が上だし、更には対英霊のスキルも持っている。

 こちらに向かって放たれる槍。

 その穂先は、まさに一瞬の煌めきを残して俺へと解き放たれる。

 顔面、首、胴体、手足。

 ほんの一瞬のやり取りにも関わらず、槍の穂先が俺に向かって放たれたのは数十に近い回数。

 その全てを回避し、あるいは腕で柄の部分を弾きながら間合いを詰めて行く。

 ちっ、純粋な速度では俺の方が上だが、槍の間合いが厄介だな。

 ランサーの、グラウンドの広さを十分に使うという言葉は決して口だけのものではなく、俺が間合いを詰めようとすると地面を蹴って間合いを開ける。

 確かに速度ではこっちが上だが、それでも圧倒的って程じゃない。

 そしてランサーも英霊らしく戦闘に関しては十分以上に経験があるのだろう。こちらが近づこうとするのを見るや否や、間合いを維持して自分の得意な攻撃を行い続ける。

 こうなると、武器が格闘の俺にはかなり厄介だな。

 幾ら筋力のパラメータが高く、一撃の威力が高いとしても、そもそも敵に攻撃を当てられなければ全く意味がない。

 

「けど、こっちもそう一方的にやられている訳にはいかないんだよ!」

 

 多少の被弾は覚悟の上で、無理に相手の間合いへと入って距離を縮める。

 俺の急所や、それ以外の場所を狙ってくる槍の動きを回避、弾き……そして、掴む!

 突き出された槍の速度は、普通の人間には目で捉える事も不可能だろう。当然それを掴むなんてのは論外だ。

 けど、俺は普通の人間ではなくサーヴァント。それも、向こうよりもステータスの高い上位者。

 なら、やってやれない訳がない!

 そんな思いで伸ばされた手は、先程とは違って限界に近い力を発揮していたランサーの速度をも凌駕し、槍の穂先を掴むことに成功する。

 

「はああああああぁっ!」

 

 そのまま強引に腕力を活かし、振り回し……地面へと叩きつけようとした時、手の中で握っていた穂先がいきなり回転する。

 ちぃっ!

 予想外の動きだった為に、そのまま掴んでいた槍が手の中からすっぽ抜けた。

 当然その槍の柄を握っていたランサーも同様に吹っ飛んでいき……やがて再び間合いを取られる。

 

「へっ、本気で化け物だな」

「化け物? こんなに純真な少年に何を言ってるんだ? 見るからにお前よりも年下だろ?」

「笑えねえ冗談だ。そもそも、俺達サーヴァントが死んだ時の年齢のままで呼び出される訳がないだろ。……まぁ、いい。こっちとしてもこのままお前に手も足も出ないまま引き下がるってのは面白くないからな。少し本気を出すぜ」

 

 そう告げ、これまで以上に地面を踏みしめるランサー。

 周囲に存在する魔力を、これでもかとばかりに吸収していく。

 水を飲むという行為でも、ここまで貪欲であればそれは醜く映る。そういう事だろう。

 ランサーの持つ槍がそれだけの力を発揮する何かをやろうとしているのだろう。だが、それをやらせる訳にはいかない。

 俺が1歩を踏みだし、ランサーが槍を手にして次の行動に移ろうとした、その時。

 

 じゃりっと。そんな音が周囲に響き渡る。

 いや、響き渡るというのは正しくはない。決して大きな音ではなかったのだから。

 だが俺にしろランサーにしろ、極度の集中状態にあった現状では、その音を聞き逃す筈がなかった。

 

「誰だっ!」

 

 周囲に響くのは、殺気の籠もったランサーの声。

 同時に、この場から遠ざかっていく足音。

 音の聞こえてきたのが、凛がいる場所とは正反対の場所だったのも致命的だったと言える。

 もし凛の側であれば、少なくてもこの戦いが終わるまでは凛が守ってやる事が出来たかもしれないし、その後は魔術の件を口に出せないように出来たかもしれないのだから。

 聖杯戦争の関係者だったり、サーヴァントのマスターであれば話は別だったかもしれないが……校舎の中に逃げていく足音を聞けば、相手が一般人だというのほぼ確実に思えた。

 

「ちっ、興が削がれた。今日のところはこの辺にしておくか。やるべき事も出来た事だしな」

 

 そう告げ、槍を消してから後方へと跳び、こちらに何も言わせずに霊体化するランサー。

 

「……とんだ放課後になったな」

「確かにね。……それよりも、アークエネミー、ランサーと戦ってどう思った?」

 

 俺の言葉に、後ろから近づいてきた凛がそう尋ねてくる。

 

「そうだな、さすがにランサーだけはあるってところか。純粋な身体能力ではステータスの関係もあって俺の方が上だけど、槍を使われると間合いを詰めるのが大変だ」

「あのまま戦っていれば、勝てたと思う?」

「恐らくはな。何だかんだと、終始こっちが押してたし。けど、対英雄のスキルがあったとしても、向こうは本気を出していないように思えた。どちらかというと、こっちの戦力の確認的な意味で。まぁ、結局途中で切り上げたんだから、どれくらい向こうが情報を得たのかは分からないけどな」

 

 もし本気で戦うのなら、宝具の類を使っていただろう。

 俺の宝具は未だに???と表記されて使用出来ない以上、もし宝具を使われていたら負けないまでもかなりのダメージを受けていたのは明らかだ。

 

「ふーん、じゃあ偵察に徹していたってのは本当なのね」

「ああ。ランサー自身は好戦的な性格のようだったから、多分マスターの命令なんだろうな。あそこでああもあっさりと退くとは思わなかったけど」

 

 パンパン、と制服に付いている埃を落とす。

 出来れば戦闘になる以上、ランサーが付けてた簡単な鎧とかが欲しいところだけど……いや、サーヴァント相手に鎧とかあっても無意味か。

 そんな風に考えていると、不意に凛の動きが止まって視線を校舎の方へと向ける。

 

「しまった! ランサーが何であの状態から退いたのか、それを考えれば……っ!? アークエネミー、急いで校舎の中に行って、さっき逃げ出した人を保護して。多分ランサーがあっさりとこの場から消えたのは、あの人の口を封じる為よ!」

「魔術は秘匿されるものなんだろう? それなら、ランサーに任せた方が楽じゃないのか?」

「いいから、行って! 令呪で命令されたい!?」

 

 これ見よがしに見せつけてくる令呪に、溜息を吐きながら頷く。

 

「分かったよ。じゃあ、ちょっと行ってくる」

 

 その言葉と共に地面を蹴って校舎へと向かう。

 生憎、俺は受肉している身だ。ランサーのように霊体化出来るんなら校舎の壁とかを無視して自由に移動出来るんだろうけど、俺の場合は普通に壁とかを避けていかないといけない。

 そうなるとステータスで俺の方が上だとしても、どうしてもこっちの方が不利な訳で……

 校舎の中に入り、耳を澄ます。

 幸い、夜の校舎だけあって音を出す存在は限られている。逃げる為に走って行くような足音を出す人物なんか、さっき逃げ出した相手しかいないだろう。

 そして耳を澄ましていると、すぐに校舎の中を走る足音が聞こえてきた。

 ちっ、結構離れているぞ。逃げ出した奴も、もう少し近くにいればいいものを。

 舌打ちし、そのまま床を蹴って移動する。

 これもまた、夜の校舎で誰もいなかったからこその幸運。

 俺が人間には出せないくらいの速度を出して走ったとしても、誰かにぶつかるような心配はいらない。

 そうして、みるみる足音の聞こえてくる方へと近づいていくと……

 

「悪いな」

 

 その一言と共に、刃が肉を貫く音。

 聞こえてきた声は、間違いなく先程まで俺と戦っていたランサーの声だ。

 つまりは……そういう事。

 走っていた足を止める。

 既に死んでいると決まってしまった以上、急いでも無駄だろう。

 寧ろ、この場でランサーと再会する方が色々と危険だ。

 死体すら残らないのは、色々な意味で哀れ過ぎる。

 そう考え、血の臭いがしてくる中ゆっくりと歩く。

 やがて強い鉄錆の臭いの中を進むと、そこには床に倒れている男子生徒と槍を手にしたランサーの姿があった。

 

「……じゃあな」

「ああ」

 

 短くそれだけ言葉を交わし、ランサーは霊体化して姿を消す。

 それを見送り……俺は急いで走る凛の足音が聞こえてくるまで、血の海に沈んだ不幸な男子生徒へと視線を向けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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