転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1108話

 教会。……そう、教会なのだろう、これは。

 だが、普通の人が一般的に思うような教会のイメージとは違い、今俺達の目の前に建っている教会からは何か不吉なものを感じさせる。

 

「これが言峰教会。聖杯戦争の監督役がいる場所よ。……私にしてみれば怪しげな神父にしか見えないけど」

「シロウ、私はここで外敵に備えます。アークエネミーにもこちらに残って欲しいのですが?」

 

 チラリと凛の方を見ながら尋ねるセイバーに、凛は少し考えた後で頷く。

 

「ま、いいでしょ。何かあったら念話で呼ぶことも出来るし、セイバーがここに残る以上、アークエネミーを連れていくのも納得しないでしょうから」

「はい。今は一時的に休戦をしてはいても、貴方達が私達の敵である事に変わりありません。そうである以上、アークエネミーをシロウと一緒にさせる訳にはいきません」

「……らしいわよ? アークエネミーも、随分とセイバーに気に入られているわね」

「そういう意味じゃないのは分かってるだろうに。まぁ、いい。そういうことなら俺もここで周囲を警戒しよう。確かにここで教会諸共に攻撃されるような事があれば大変だしな」

「そう? そんな馬鹿な真似をする人やサーヴァントがいるとは思えないけど。……まぁ、アークエネミーを相手にどうにか出来るサーヴァントが来るとは思えないから、その辺は安心出来るわね。じゃ、行きましょ衛宮君」

「あ、ああ。じゃあセイバー、外は頼むな」

「ええ、お任せ下さい。誰であろうとも教会に手は出させません」

 

 衛宮はセイバーと短く言葉を交わし、凛と共に教会の中へと入っていく。

 そうなると、当然残るのは俺とセイバーの2人のみ。

 周囲には沈黙が満ち、2月の夜の寒風吹きすさぶ音のみが響く。

 

「セイバー。お前は何で受肉したのか分かるか?」

 

 最初にその沈黙に耐えられなくなって口を開いたのは俺だった。

 受肉。少なくてもランサーは霊体化出来る状態のサーヴァントだ。

 それに比べて、俺とセイバーは受肉した状態。

 これはサーヴァントとして考えれば、非常に不利な状況だ。

 ランサーとかが見せたように、霊体化すれば壁とかを関係なく移動出来る。それでいて、こっちの攻撃は通用しないというおまけ付きだ。

 勿論受肉にも利点はある。基本的にはサーヴァントの肉体というのは魔力で作られているものなので、サーヴァントの維持にマスターの魔力が必要なくなる。

 いや、セイバーの場合はどうか分からないけど、少なくても俺と凛の場合は凛の魔力消費量は皆無に近い。

 それどころか、俺の魔力生成のスキルで凛は魔力を無尽蔵に使える状況になっている。

 セイバーと衛宮のその辺の関係が気になって尋ねてみたのだが……

 

「何故貴方にそれを教える必要があるのです? アークエネミー、忘れていませんか? 先程もメイガスに言いましたが、私達と貴方達は一時的に休戦をしているに過ぎません。この教会での出来事が終われば、再び敵同士となるのです」

「敵同士、ねぇ。言っちゃ悪いが、衛宮が遠坂と敵対出来ると思うか? 寧ろ衛宮が一方的に遠坂に狩られる関係になるんじゃないか?」

 

 純粋に魔術師としての力量でも、そして心構えでも。どちらにせよ衛宮は凛に劣っている。

 衛宮は多少身体を鍛えているようには見えるが、それでも普通の人間としては多少、といった程度でしかない。

 そもそも、身体を鍛えているという意味では凛だって八極拳を修めているしな。

 そんな衛宮が、凛に勝てるかと言われれば……俺は迷いなく否と答えるだろう。

 

「その時は、当然私がシロウを守る」

「……まぁ、そっちがその気ならそれもいいさ。ただ、その時は俺もお前の敵になるってのを忘れるなよ?」

 

 セイバーにとっては面白くない言葉だったのだろう。俺の方へと1度視線を向けると、もう俺がいないかのように振る舞い、誰か敵が来ないかどうかを見張る為に周囲を見回す。

 ここに聖杯戦争の監督役がいるんなら、確かに手を出してくる奴がいるかもしれないが。

 いや、寧ろ監督役だからこそ迂闊に手を出せないと言うべきか……

 ともあれ、結局その後二十分程の間、俺とセイバーの間で会話はなかった。

 セイバーにしてみれば、衛宮が聖杯戦争に参加するのかどうかが疑問なんだろうな。ブラウニーとか呼ばれているらしく、色々な意味でお人好しらしいし。

 そもそも、今夜の俺とランサーの戦いに居合わせてしまったのも、弓道場の掃除を遠坂に言い寄っていたあのワカメに押しつけられたからって話だし。

 そのお人好し過ぎる性格を考えれば、魔術師同士の殺し合いでもある聖杯戦争に参加するのは難しいだろう。

 もっとも衛宮が魔術師であった以上、何だかんだとこの聖杯戦争に巻き込まれた可能性は高い。

 

「お、出てきたな」

 

 やがて教会から出てきた凛と衛宮。

 凛の方はいつも通りだが、衛宮の方は何だか妙に消耗しているように見える。

 ……監督役ってのが俺の後見人扱いでもある人物らしいけど、話すだけでそこまで消耗する奴なのか?

 何だかんだと俺が会った事はないが、そう考えると会わない方がいいんだろうな。

 

「シロウ、大丈夫ですか?」

 

 そんな衛宮を見て、セイバーが真っ先に駆け寄っていく。

 その様子は、こう評しては色々と失礼かもしれないが、どこか犬を思わせる。

 もっとも、犬は犬でも容易に相手の喉笛を噛み千切るだけの力を持った軍用犬とかだろうが。

 

「あ、ああ。大丈夫だ。……それよりもセイバー。俺はこの戦いを見過ごせない。だから、マスターになる事を受け入れようと思う」

「シロウ、では!」

「ああ。……ちょっと頼りないマスターかもしれないけど、よろしく頼む」

 

 そう告げ、セイバーと握手を交わす衛宮。

 

「これで良かったのか?」

 

 そんな2人を見ている凛へと声を掛けると、当然だとでも言うように小さく頷きを返してくる。

 

「色々と訳ありな相手なんだろ?」

「それは否定しないわ。けど、これで衛宮君も歴としたマスターよ」

「……凛の性格を考えれば、何だかんだと一緒に行動したりしそうな気がするけどな」

「そんな筈ないでしょ。ここまで連れて来てあげたのは、あくまでも衛宮君が魔術師として頼りないからよ。中で綺礼の話を聞いてマスターとして認められた以上、もう明日から敵同士よ。次に会ったらケリを付けさせて貰うわ」

 

 そう告げる凛の様子は、本気でそう思っているようにも見えるが……ここで例のうっかりが出ないといいんだけどな。

 

「……ちょっと、何よその目は」

 

 何かを感じ取ったのか、ジト目を向けてくる凛。

 

「いや、何でもない。ただちょっと凛のお人好しさ加減が心配になっただけだよ。……で、これからどうするんだ?」

「どうするって……帰るに決まってるでしょ。朝になる前に家に戻って、少しでも体力を回復させなきゃ。アークエネミーのご飯も作る必要があるでしょうし」

「……あ、そうか。アークエネミーが受肉状態で食事を食べられるって事は、セイバーも食事が必要なのか」

「そうですね。食事をすれば多少ですが魔力を回復しますから」

「へぇ、じゃあ衛宮君もセイバーの分の食事を頑張って作らないとね」

 

 そんな風に会話をしながら道を進んでいくと、やがて別れ道へと到着する。

 

「衛宮君、セイバー、ここで別れましょ。分かってると思うけど、次に会った時には敵同士よ」

「無論です。私も手加減など致しません。全力でお相手します」

 

 セイバーが強い意志の籠もった視線でそう告げ、それに俺も凛も納得して家へと帰ろうとした、その時……

 

「あら……もう帰っちゃうの? 夜はまだまだこれからだというのに」

 

 そんな声が周囲に響く。

 何ら迫力のある声ではないが、不思議と意識を惹き付けるその声の聞こえてきた方向にいたのは、10歳程の少女だった。

 白髪のその少女は、その場にいる全員の視線が自分に集中したのを見て満足そうに笑みを浮かべる。

 

「こんな時間に、どうしたんだい? 迷子かな?」

 

 衛宮が少女の方へと近寄っていくが、それを見た少女は小さく笑みを浮かべてから一礼する。

 

「初めまして。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと言えば分かるかしら?」

「何ですって!?」

 

 その名前に聞き覚えがあったのだろう。凛の表情が驚愕に歪む。

 ……うん? セイバーの表情も驚きで固まっている?

 それに疑問を覚えている間に、凛がアインツベルンの話を進める。

 曰く、聖杯の入手を目指す魔術師の家系で、毎回マスターを聖杯戦争に送り込んでいる、と。

 

「つまり、あの女の子もマスターなのか?」

 

 聖杯戦争がどんなものなのかを言峰教会で聞いたからだろう。信じられないとばかりに告げる衛宮に、イリヤと名乗った少女は笑みを浮かべて口を開く。

 

「そうだよ、お兄ちゃん。だけど、私は聖杯より楽しみにしてた事があるんだ」

 

 ニコリ、と笑みを浮かべながら告げるイリヤだったが、そこから感じられるのは少女らしい可愛らしさではなく、得体の知れない不気味さ。

 

「それはね……お兄ちゃんを殺す事。……おいで、バーサーカー!」

 

 その言葉と同時に、イリヤの背後に巨大な質量の何かが現れる。

 まるで岩の如き頑強な肉体は、どう見ても英霊の枠を超えた迫力すら持っていた。

 

「イリヤスフィール!」

 

 瞬間、声を上げたのはセイバー。

 何故か必死なその呼びかけに、イリヤは小さく笑みを浮かべて口を開く。

 

「バーサーカー、セイバーももう1人のサーヴァントも、皆纏めて叩き潰しちゃえ!」

「■■■■■■■■■■■!」

 

 それは、返事というよりも咆吼、あるいは雄叫び。

 そんな声を発しながらこっちの方へと近づいてくる。

 

「凛、下がってバックアップを!」

「シロウ、下がって!」

 

 俺とセイバーが、共に前に出る。

 一瞬だけ交わされる視線。

 お互い戦いに生きる身である以上、それだけで軽い意思の疎通は可能だ。

 つまり、この場は共闘すると。

 

「邪魔するなよ」

「そちらこそ!」

 

 その言葉と共に、俺は右側から、セイバーは左側からバーサーカーへと向かう。

 バーサーカーが迎撃の対象としたのは、セイバー。

 確かにセイバーは見るからに武器を持っている動きなのに対し、こっちは無手。その判断は普通に考えれば間違ってはいないが……

 

「甘く見て貰っては困るな!」

 

 岩を無理矢理剣か斧の形にしたような、そんな武器をセイバーとぶつけ合っているバーサーカーに向かって、俺はその懐へと飛び込む。

 

「はああああぁあぁあぁあぁぁっ!」

 

 雄叫びと共に放たれた一撃は、筋力A++、敏捷A++、格闘のダメージを増加させるスキル勇猛のランクB、そして何より、対英雄ランクBのスキルによって、バーサーカーの巌の如き巨体を容易く貫く。

 放たれた俺の貫手の一撃は、間違いなくバーサーカーの皮膚を破り、肉を裂き、骨を砕き、その下にあった心臓をも破壊する。

 バーサーカーの巨体の為、俺の右腕が肩の辺りまでその肉体に埋まったが、その手が破壊した心臓の肉片諸共掴み取り、強引にバーサーカーの身体から引き抜く。

 

「■■■■■■■■■■■!」

 

 先程と同様の咆吼。……ただし、それは明らかに弱くなっており、心臓を抉りとられたまま地面に膝を突き、そのまま倒れ込む。

 

「アークエネミー!?」

「一旦下がれ!」

 

 驚愕に驚くセイバーにそう告げ、俺もまた一旦後方へと下がる。

 何故か、今の一撃でバーサーカーを殺せたような気がしなかった為だ。

 掌に握っていたバーサーカーの心臓の肉片を地面に投げ捨て、驚愕で目を開いているイリヤの方へと視線を向ける。

 ……そう、俺が後方へと一旦退いたのは、バーサーカーが死んだにも関わらず、そのマスターであるイリヤが驚き以外の表情を浮かべていなかったからだ。

 本来であれば、間違いなく恐怖やその類の表情を浮かべている筈が、浮かんでいるのは驚愕のみ。

 それも、驚きは驚きでも予想外の驚きではない。予想の範囲内とでも言いたげな驚き。

 ……何だ? サーヴァントが死んだ以上、イリヤの聖杯戦争はこれで終わった筈だ。

 だというのに、全く残念そうな様子も、怯えた様子も見せない。

 

「どうしたんだ? お前の戦いはこれで終わったというのに、全く堪えた様子が見えないが」

 

 いつでもお前を殺せる。そんな意味を込めて、つい先程バーサーカーの心臓を貫いた右手を前に出す。

 

「おい、ちょっと待て! アークエネミー、お前あんな子供をどうにかするつもりなのか!」

「ちょっと衛宮君、危険だから前に出ないで!」

 

 衛宮が俺とイリヤの間に立ち塞がり、大きく手を左右に広げる。

 

「……何のつもりだ? これは聖杯戦争。つまり、殺し合いの戦争だが?」

「それでも、俺はこの子を殺す事を許す訳にはいかない!」

『どうする、凛? いっそ衛宮もこの場で始末してしまうか?』

 

 衛宮の様子を見ながら凛に念話で尋ねるが、凛がそれに答える前に事態は動く。

 

「ふふふ。私のバーサーカーがこの程度でやられる筈がないじゃない。何てったって、私のバーサーカーはヘラクレスなんだから!」

「何ですって!?」

 

 驚愕の声は凛から。

 ただし、セイバーもまた唖然とした表情を浮かべてバーサーカー……ヘラクレスの死体へと視線を向け、衛宮も驚愕の表情を浮かべていた。

 

「けど、驚いちゃった。そっちのサーヴァントのお兄ちゃん、まさか一撃でヘラクレスを3回も殺すなんて思っていなかったわ。ちょっと油断したようね」

「……3回殺す?」

 

 何を言っている? そんな俺の思いは、次の瞬間にはっきりとする。

 まるでビデオの映像を逆回しにしているかのように、ヘラクレスの傷が消えていったのだ。

 

「蘇生魔術の重ね掛け!?」

「あははは。正解よ、凛。凄いでしょ、私のヘラクレス。……けど、今日のところはお兄ちゃんの顔も見られたし、凛とも顔を合わせた。バーサーカーを一回で何度も殺すだけの力を持ったサーヴァントの存在も知る事が出来たし、何より……セイバーをこの目で見る事が出来たから、もういいわ。帰りましょ、バーサーカー」

「■■■■■■■■■■■!」

 

 バーサーカーが雄叫びを上げながら立ち上がり、そのままイリヤの側へと向かう。

 既にその左胸には一切の傷が存在しておらず、イリヤは悠々とバーサーカーと共に俺達の前から姿を消したのだった。




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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