転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1109話

「……行った、のかしら」

 

 バーサーカーとイリヤが消えてから数秒が経ち、凛が呟く。

 ヘラクレスとか、正直馬鹿じゃねえの? って言いたくなるくらい卑怯な感じだ。

 そもそも聖杯戦争の要素の一つでもある知名度補正とかで、思い切り有利だろ。それに比べて、俺は自分の真名すら思い出せないイレギュラークラスだぞ。

 もっとも、そのイレギュラークラスのおかげでステータスとかスキルは色々と凄い事になってるんだが。

 そっちは俺の生前が原因か?

 まぁ、なにはともあれ……

 

「そうだな、取りあえずバーサーカーとイリヤは撤退した訳だが……問題は別にある」

 

 凛に答えつつ、未だに俺の前に立ち塞がっている衛宮へと鋭い視線を向ける。

 

「俺は何も間違ってはいない。そもそも俺が聖杯戦争に参加するのは、この馬鹿げた戦いで被害を増やさない為だ。それなのにあんな小さな女の子を攻撃するなんて、アークエネミーの方こそ本気か?」

「当然だ。これは聖杯戦争なんだぞ? イリヤとか名乗ったあの女にしたって、全てを承知の上で聖杯戦争に参加しているんだ。なのに、殺せる時に殺さない……どころか、それを邪魔するとかなんのつもりだ?」

「だから、人を殺しちゃいけないんだ!」

「……話が噛み合っていないな。今も言ったが、これは聖杯戦争。魔術師同士の殺し合いだ。向こうもそれを承知の上で参加している。それに見ただろう? 向こうは完全にこっちを殺す気だった」

 

 正確には衛宮とセイバーにイリヤの殺意が向いていた気がするが。

 何かこの主従とイリヤには関係があるのかもな。

 

「それでもだ! 絶対にあんな小さな子供を殺すのは認められない」

「……本気か?」

「何がだ?」

「お前の言ってる戯れ言だ。本当にイリヤを殺さず……それどころか、お前の話を聞く限りでは聖杯戦争に参加している相手を誰も殺さずにこの戦いを終わらせると?」

「ああ」

 

 俺の問い掛けに、一瞬の迷いもなく頷く衛宮。

 それを見ながら、俺は凛に向かって口を開く。

 

「凛、この甘ちゃんは立派な聖杯戦争の参加者だな?」

「え? ええ。そうね」

「別に手を組んでいる訳でも、同盟を結んでいる訳でも、共闘している訳でもないな?」

「……そうね」

「なら……こいつをここで殺しても構わないか?」

「っ!? アークエネミー! シロウはやらせません!」

 

 俺の言葉を聞いていたセイバーが、例の見えない剣を手に俺と衛宮の前に立ち塞がる。

 

「やる気か? まぁ、確かに衛宮が殺されればお前の負けは殆ど決まる。……いや、凛なら俺以外にセイバーのマスターになる事も可能かもしれないぞ?」

 

 俺の魔力生成のスキルで、サーヴァントに送る魔力よりも多くの魔力が凛には流れている。

 つまり、もう1人くらいサーヴァントとの契約を結んでも魔力量的には問題ない筈だ。

 そういう意味でセイバーに尋ねたのだが……

 

「私を侮るな、アークエネミー! 私はシロウの剣となりこの聖杯戦争を戦い抜くと誓った身だ。そう容易く主を代えるとは思わないで貰おう!」

「……ほう? お前にも聖杯に対して何か願いがあるんだろう? その願いは衛宮と共にいる限り、まず間違いなく叶う事はないぞ? それでもか?」

「それでもだ。騎士は一度誓った事をそう容易く曲げたりはしない」

「なるほど。あくまでも俺とやりあう、と」

「無論」

「俺と凛、セイバーと衛宮。……勝敗は言わずもがなって奴だと思うがな。それでもやるって言うんなら……いいだろう。どのみちこれは聖杯戦争。サーヴァント同士が出会った時に戦いが起こるのは当然の事だ」

 

 拳を握り、いつでもセイバーや衛宮へと攻撃出来るように準備を整える。

 そしてお互いの緊張が増していき……

 

「待って!」

 

 俺が地を蹴ってセイバーへと間合いを詰めようとした瞬間、凛の声が周囲に響く。

 

「どうしたんだ、凛。聖杯戦争の参加者を前にしているんだぞ。ならやるべき事は1つだろう。それとも、もしかして凛も相手を殺すのは駄目という立場か?」

「違う……違うけど、衛宮君は今日聖杯戦争に関して知ったばかりなのよ。魔術師らしくない行動を取ったとしても、おかしくないでしょう?」

 

 ……さて、どうしたものか。

 実際、ここで衛宮を放っておけば、後々面倒な事になるのはほぼ間違いない。

 けど、凛がここまで言っている以上は無理強いも出来ない、か。

 

「今回だけだぞ? 次に衛宮に会った場合もなあなあで済ませようと言うのなら、こっちにも考えがある。令呪を全て使い切る覚悟を決めておく事だな」

 

 取りあえずこの場は退くと凛に告げ、拳の構えを解く。

 そんな俺を見て、凛は微かに安堵の表情を浮かべる。

 

「遠坂! やっぱり遠坂も……」

 

 凛へと嬉しげに声を掛ける衛宮。

 だが、こっちに近寄ろうとした衛宮を、セイバーが止める。

 

「シロウ、安易に近づいてはなりません。確かにあのメイガスは今日のところはこちらを見逃すと言いましたが、いつ気が変わるか分かりません」

「けど、遠坂がそんな事をするなんて……」

「いいえ。衛宮君、この場合はセイバーが正しいわ。それに、確かに今回はセイバーの言う通りに手を出さないけど、アークエネミーが言う通り、私と衛宮君が敵同士なのは変わりないのよ? その辺をきちんと理解した上で行動して欲しいわね」

「何でだ? 俺は遠坂と敵対するつもりはないぞ?」

 

 凛の言葉にあっけらかんとそう告げてくる衛宮だが……こいつ、本当に事態を理解しているのか?

 そんな思いは凛も一緒だったらしい。小さく溜息を吐いてから口を開く。

 

「もういいわ。とにかく、今はここで別れましょう。けど、忘れないで。明日からは私と衛宮君は明確な敵同士だという事を」

 

 冷然と告げる凛だったが、衛宮はそんなのは理解出来ないとばかりに口を開く。

 

「だから、俺は遠坂と敵対するつもりなんて……」

「無理よ。これは聖杯戦争だもの。どうしても私と敵対したくないというのなら、このまま真っ直ぐに教会に行って言峰に保護して貰いなさい」

「それは駄目だ。俺は聖杯戦争で酷い目に遭う人を増やしたくないんだ」

「……もういいわ。好きにしなさい。ただ、改めて言っておくけど、次に私と衛宮君が会ったりしたら、その時点で戦いが始まると思いなさい」

「……何でだ? 聖杯戦争ってのは、人の目のある場所じゃやらないんだろ?」

 

 心底不思議そうな表情を浮かべる衛宮だったが、既に凛としてもこれ以上は何も言うつもりはないのだろう。小さく溜息を吐いてから、その場で衛宮とセイバーへと背を向ける。

 

「そう思っているのなら、それでもいいわ。とにかく、自分の行動で後悔をしないようにするといいわ。アークエネミー、行くわよ」

 

 凛の言葉に頷き、無言でセイバーと衛宮に視線を向けてからその場で踵を返す。

 一瞬セイバーが後ろから斬り掛かって来る可能性も考えたが、この短い時間セイバーと接しただけでも典型的に正々堂々を重んじる騎士道精神の権化みたいな性格をしているのは分かる。

 そんなセイバーだ。幾ら何でもそんな真似はしないだろうと判断し、背中を見せたのだが……結局はその通りだった。

 

「凛、次にあいつらと会った時には……」

「ええ、分かってるわ。見逃すのは今回だけ。聖杯戦争がどんなものなのかは、今日の件で衛宮君も分かったでしょうから。それでも懲りずに動いてたりしたら……狩るわ」

「いいんだな?」

 

 一応念の為に聞いておくが、それに戻ってきた返事は無言の頷きだった。

 

「そっちはそれでいいとして、問題はバーサーカーね。正直ヘラクレスを持ってくるなんて思わなかったわ」

「確か、マスターはステータスを見る事が出来るんだったよな? ステータスは?」

 

 その言葉に、凛は憂鬱そうな表情を浮かべつつ口を開く。

 

「とんでもないわよ。さすが大英雄ヘラクレスってところね。筋力A+、耐久A、敏捷A、魔力A、幸運B、宝具A」

「確かに強いけど、俺の方が能力的には上だと思うが?」

 

 俺の能力は、筋力A++、耐久A+、敏捷A++、魔力EX、幸運C、宝具EX。ぶっちゃけ、幸運以外ではヘラクレスを超えている。

 

「それはそうだけど、あんたの場合はサーヴァントの切り札でもある宝具がEXなのに???とかになってて使えないでしょうが。それに対してヘラクレスはステータス的にはアークエネミーよりも低いけど、蘇生魔術の重ね掛けが厄介なのよ。迂闊に攻撃しても結局生き返るんだから」

「……まぁ、それは確かにな。まさか心臓を破壊して、更にその肉片まで掴み出してやったのに、あそこから生き返るとは思わなかった」

 

 未だに手には相手の心臓を破壊し、肉片を抉り取った感触が残っている。

 あの状態からでも蘇生するというのは、厄介以外の何ものでもない。

 

「しかも、イリヤは3回殺したって言ってたじゃない。つまり、重ね掛けされた蘇生魔術は最低でも3回以上って事になるのよ」

「……確かに厄介だな。けど、負けるつもりはないんだろ?」

「それは当然よ」

 

 一瞬の躊躇いもなく断言する凛。

 サーヴァントの俺とバーサーカーでは、宝具こそ使えないけどステータス的には俺が有利なのを考えると、総合的には恐らく俺が若干有利。

 マスターの凛とイリヤでは……イリヤの具体的な能力は分からないけど、それでも凛が魔術師として一流なのは間違いのない事実だ。

 イリヤにしても、話を聞く限りでは相当の腕利き魔術師なのは確実だろうが、10歳程度の子供だとたかが知れてる。

 

「なら、そんなに悩む必要はないだろ。……ああ、そう言えばバーサーカーのステータスがその数値だったって事は、俺の持ってる対英雄のスキルは効果を発揮してなかったのか? ……その割りには拳の一撃であっさりと心臓をぶち抜けたけど」

 

 俺の持つ対英雄のスキルは、相手の全ステータスを2ランクダウンさせるというものだ。

 なのに、ランクダウンさせられても全てがA以上であるのなら……少し薄ら寒いものを感じる。

 だが、凛は俺の意見を首を横に振って否定する。

 

「その心配はないわ。恐らく対英雄でステータスがランクダウンしても、その数値はマスターが見えるステータスには反映されないのよ。じゃないと、バーサーカーの場合、全ての能力がEXになってしまうじゃない。さすがにそんな反則的なステータス持ちを、アインツベルンの魔術師であっても制御出来るとは思えないわ。……ただでさえ、バーサーカーというクラスで扱いにくくなってるのに」

「だと、いいんだがな。俺も相手のステータスを見る事が出来ればいいんだが、それはマスターの特権らしくて出来ないらしいし」

 

 夜道を歩いていると、不意に冷たい風が凪がれてくる。

 

「凛、少し急いだ方がいい。もう日付も変わってるし、ここで体調を崩して風邪なんか引こうものなら、それこそ聖杯戦争に悪影響が出てくる」

「そうね、こういう時は暖かくしてゆっくり休むのが一番よ。幸い明日は日曜だし、多少寝坊してもいいのはラッキーだったわね」

 

 凛の朝の弱さを考えれば、確かに色々な意味でラッキーだったのだろう。

 学園のアイドル遠坂凛、知られざる素顔。……とか写真にして売ったら、物凄い稼ぎになりそうだ。

 まぁ、写真を売った代わりにガンドで撃たれる覚悟が必要だろうけど。

 2人が静かに道を歩き、やがて遠坂の家が見えてくる。

 

「さ、着いたわよ」

「ああ。……凛」

「うん? どうしたの?」

「一応聞いておく。次に衛宮やセイバー達に会った時、本当に戦えるな? 何かの理由を付けて見逃すといった行為をするつもりはないと、断言出来るか?」

「……ええ。何度も言ったと思うけど、衛宮君は聖杯戦争に参加している以上、私達の敵なの。だから次に会った時は容赦をするつもりはないわ。もし気軽に外を歩いてたら、問答無用で仕掛ける」

 

 どうやら本気か。

 衛宮と何らかの繋がりはありそうだけど、その言葉通りに出来るのなら問題は無いだろう。

 

「ただ、もしアークエネミーが今程に強くなければ、バーサーカーに対抗する為に手を結んだかもしれないわね」

「手を結ぶ、か。あんな絶好の機会にも関わらず、敵を倒す事を躊躇するような奴と手を結ぶとなれば、色々と大変な事になりそうだけどな。バーサーカーとの戦いでもセイバーに完全に任せないで出てこようとしている節があったし」

 

 あの時は俺がさっさとバーサーカーを仕留めたから心配はいらなかったが、もしも戦闘が長引いていたら自分の能力も弁えずに前に出てきて皆を巻き込み、致命的な損傷をもたらしていた可能性すらもある。

 正直、そんな事になるとは考えたくないが、衛宮の性格を考えればほぼ間違いなく起きていたと断言出来た。

 ……何で断言出来るのかは分からないが。

 

「ま、話は後よ。とにかく明日は日曜日で休みなんだし、疲れを取る為にもゆっくりと眠らさせて貰うわ。アークエネミーも、聖杯戦争はこれからが本番なんだから、よろしく頼むわよ?」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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