転生とらぶる   作:青竹(移住)

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1124話

 綾子の姿を見て、動きを止めた衛宮。

 何故そんな風になったのかは、当然理解出来る。

 聖杯戦争に参加しているマスターであれば、かならず持っている能力の1つ、サーヴァントのステータスを見る事が出来る能力。

 その能力で、本来なら見えるべき筈のないもの……綾子のステータスを確認したのだろう。

 

「……何でだ? 俺の目がおかしくなったのか?」

「違うよ、衛宮。衛宮の目は全然おかしくなっていない。正常だ」

「けど……美綴、じゃあ、何だってお前のステータスなんか……これじゃ、まるで美綴がサーヴァントみたいじゃないか」

「半分正解だ。今のあたしは、遠坂曰く半サーヴァントって存在らしい」

 

 綾子の口からその言葉が出た瞬間、衛宮は強い視線を凛の方へと向ける。

 衛宮もこの学校の男子の多くの例に漏れず、凛に片思い……とまではいかなくても、憧れの類は持っていた筈だけど、そういうのは一切感じさせない視線。

 

「遠坂、一体どういう事だよ? 何だって美綴が半サーヴァントなんてものになってるんだ?」

「……言っておくけど、別に私が強引に綾子をそういう風にしたんじゃないわよ?」

「そうだな。寧ろ遠坂がいなければ、あたしは死んでた可能性が高いんだ。遠坂を責めるのは筋違いだよ」

「けど、じゃあ何でっ!」

「お前に責任がないとは言えないな」

 

 このままでは話が進まなさそうなので、ズバリとそう告げる。

 

「……え?」

 

 その言葉の意味が分からないと一瞬呆気にとられた衛宮だったが、すぐに前の休み時間に俺が話した事を思い出したのだろう。愕然とした表情を美綴の方へと向ける。

 

「まさか……慎二が?」

「半分正解だ。昨日、あのワカメがライダーに魂喰いをさせようとして綾子を襲わせた。丁度そこに俺達が駆け付けて、魂喰い自体は防ぐ事が出来たが、その戦闘の影響で綾子は俺がライダーに受けた傷から飛び散った血が顔に掛かり、更にその内の何滴かを飲んでしまった」

「……血を?」

「ああ。俺の血には魔力が濃密に圧縮されているらしくてな。それで綾子の体内で俺の魔力が暴走して死にそうだったのを、凛が一生に一度しか出来ない儀式を使って何とか死ぬのを防ぐ事が出来た。その結果、綾子は何とか生き延びられたが……代わりに半サーヴァントとも言える状態になってしまった訳だ」

 

 一生に一度という場所で凛と綾子の頬が微かに赤らんだけど、衛宮がそれに気が付く事はなかった。

 まぁ、処女じゃないと出来ない儀式なんだから、俺の言い分はそれ程間違っている訳じゃない筈だ。

 そんな2人はそのままに、改めて視線を衛宮に向けて言葉を重ねる。

 

「分かるな? これは昨日あのワカメを聖杯戦争からリタイアさせておけば起きなかった。そして、衛宮はあのワカメを庇い、その責任を持つとまで言った。……俺が前の休み時間に言った言葉の意味が分かったか?」

「……そんな、慎二が? 何でそんな……」

 

 俺の口から出た言葉はかなりの衝撃だったのだろう。衛宮が数歩後退る。

 

「アーク、そこまで衛宮を責めなくても……確かにあたしはこんな風になったけど、あの時に死ぬよりはこのままの方が絶対マシだったんだからさ」

「……美綴……」

 

 笑みすら浮かべて告げる綾子に、衛宮は何も言えずただそれだけを呟く。

 

「ほら、衛宮も。確かに色々と思うところはあるけど、それでも今言ったように死ぬよりはマシなんだからさ」

「けど、俺が……俺が慎二を守る為に行動したせいで……」

「そうだな」

「アークッ!」

 

 俺の言葉に、綾子が責めるように叫ぶ。

 確かに普通に人として見た場合、衛宮の行動は正しいんだろう。

 けど、聖杯戦争は魔術師同士の戦い。普通の人ではただ相手の餌になるだけだ。

 特に衛宮のようにお人好しであれば、幾らでも利用出来るだろう。

 事実、意図した訳ではないとしても、あのワカメは自分が死ぬ、あるいは聖杯戦争からリタイアするところだったのを、衛宮に助けて貰っているのだから。

 もっとも、別に俺は衛宮を助けたいからこういう事を言ってる訳じゃない。

 

「衛宮は聖杯戦争のマスターだ。それも、セイバーという強力なサーヴァントを持っている……な。それが易々と敵に利用されるような事になったら、こっちの被害も大きくなる」

「……」

 

 俺の言葉に黙り込む衛宮。

 事実、衛宮が召喚したセイバーというのは、凛曰く最優のサーヴァントと言われているらしい。

 凛も元々は俺じゃなくてセイバーを召喚したかったらしいし。

 その辺を考えれば、やっぱり衛宮にはもう少ししっかりと判断して欲しいと考える俺は、それ程間違ってはいないだろう。

 

「俺は……」

「お前が友人を思ってああいう行動に出たのは理解出来る。だが、結局それが原因でこの結果になったんだ。お前が言ってた責任、どうするつもりだ?」

「俺が……俺が慎二を止めてみせる!」

 

 まぁ、そうなるよな。

 ただし、こいつの場合は非道に徹しきる事が出来ない。

 間違いなくあのワカメを生かしたままどうにかしようとするだろう。

 これが普通の戦いであれば話は別なんだろうが……残念ながら、これは聖杯戦争だ。

 

「そうか。止められるなら止めてみせるといい。ただし、俺が先にあのワカメに遭遇したら、次はお前が何と言おうと奴の命は貰う」

 

 その言葉に、衛宮だけではなく綾子までもが表情を変える。

 まぁ、これはしょうがない。衛宮はともかく、綾子は幾ら普通の女子高生にしては鍛えているといっても、昨日までは殺す殺されるというのとは全く関係のない一般人だったのだから。

 一応凛にその辺を聞いてはいるんだろうが、それでもすぐに納得出来る筈がない。

 それでも表情を歪めるだけで言葉に出さないのは、凛からその辺を言い聞かされていたからだろうな。

 

「……俺は、そう簡単に人を殺すというのを納得出来ない」

「なら、綾子が人間を辞めさせられる事になったのは納得出来るのか? お前が納得するかどうかが問題じゃない」

 

 結局その後も衛宮は話を譲らず……昼休みは終了し、その場は自動的に話が流れるのだった。

 

 

 

 

 

 放課後、今日もまた昨日と同じように、俺と凛は結界の起点を見つけては消去していく。

 正直、いい加減この結界も何とかしたいんだけどな。

 毎日放課後に同じ事を繰り返すというのは色々と面倒臭いし、何より聖杯戦争における時間を無駄にしてしまう。

 

「この結界も慎二が?」

 

 俺達と一緒に行動している綾子の言葉に、俺は小さく肩を竦める。

 

「恐らく、だけどな。ただ、葛木や柳洞の件がある。そっちを調べないと確実とは言えないと思う。……それより、綾子は部活の方はいいのか?」

「ん? ああ。何か最近物騒だからって事で、部活は原則禁止になったんだよ。確かHRで言ってただろ?」

「そうだったか? 色々と聖杯戦争の件を考えて話を聞き流していたからな」

 

 特に葛木は、証拠の類はないけど色々と怪しい人物なのは間違いない。

 もっともその件に関しては今日の夜に柳洞寺に行ってみれば判明するだろうが。

 そんな風に綾子と話をしながら凛が結界の起点を処理するのを待っていると、やがて凛がジト目でこっちを見てくる。

 

「あんた達、私だけを働かせて自分達は楽しくお喋りとか……随分と羨ましいわね」

「そうは言ってもな。俺には結界の起点を魔力で処理するとか出来ないし。綾子にいたっては昨日まで魔術の事を全く知らない素人だったんだぞ? そんな俺達にどうしろと? まぁ、どうしてもやれって言うんならやってもいいけど……その場合はここを物理的に破壊するとかになるぞ」

「それはやめて。ただでさえ色々と面倒事が起きてるのに、更にそんな真似をするなんて。この地のセカンドオーナーとして許可出来ないわ」

「だろ? なら俺と綾子は凛のやる事を見守るしか出来ない訳だ。それに、護衛という意味もあるしな」

「護衛?」

「ああ。最初にランサー、次にライダーにそれぞれ襲われてるからな」

 

 ライダーと聞いて綾子が微かに嫌そうな表情を浮かべる。

 まぁ、自分を殺そうとした相手なんだから無理もないか。

 それでもこの程度で済んでいるのは、致命的な何かをされる前に俺が助けに入った為だろう。

 ……そう言えば。

 

「あのワカメ、結局今日は来なかったな」

「そりゃそうでしょ。綾子を襲った場面をアークエネミーに見られてるのよ? どうしたって学校に来られる訳がないでしょ。来れば酷い目に合うのは確定なんだし」

 

 起点を消しながら告げる凛に、確かにと頷く。

 実際、今日あのワカメが来ていれば、衛宮がいようがいまいが、その命を奪う……というところまではいかなかったかもしれないが、間違いなく手足の2本や3本はへし折って、聖杯戦争からリタイアしていただろうし。

 それに、この結界に関しても結局はライダーの仕業なのかどうか、はっきりしていないんだよな。

 そんな風に考えている間にも結界の起点の対処は進み、最後に屋上にあった起点を処理して、取りあえず今日の日課は終わった。

 

「そう言えば珍しく今日は屋上でサーヴァントが出てこなかったな」

「……そう何度も何度も襲われてらんないわよ」

 

 俺の言葉に憮然とした様子で呟く凛。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 何だかんだと、ランサー、セイバー、バーサーカー、ライダーという4人のサーヴァントと戦っているのに、未だに明確な決着がついたことはないのだから。

 

「で、今日は柳洞寺に行くんだよな?」

「ええ。食事を済ませてからだけどね。あそこは1級の霊地だから、多分サーヴァントがいるのは間違いないと思う。可能性としては、アサシン、アーチャー、キャスター。……後は、本拠地のはっきりとしていないランサーのマスターが潜んでいる可能性もあるわね。まぁ、その中で最も可能性がありそうなのは場所柄、キャスターでしょうけど」

 

 そう告げた凛の言葉に、ふと気が付く。

 今、本拠地がはっきりしていないという言葉でバーサーカーが抜かれていた。

 セイバーは衛宮で、ライダーはワカメ。そのどっちも本拠地が分かるのはいいし、ランサーが不明なのもいいだろう。けど……

 

「バーサーカーの本拠地は判明してるのか?」

「ええ。正確な場所は分からないけど、冬木の郊外の森にアインツベルンの城があった筈よ。多分そこね」

「……なら、そっちを先に倒してしまった方が良かったんじゃないか? 純粋な戦力では1対1で勝った事もあるんだし」

 

 これがランサーやセイバーのように自分の意識がある相手であれば、話は別だ。

 戦闘経験を十分に活かした戦闘スタイルを持っているのだから。

 だが、バーサーカーはそのクラス故に戦闘スタイルは力押しの単純なものになる。

 少なくても、俺が戦ったアインツベルンのヘラクレスはそんな感じだった。

 であれば、蘇生魔術の重ね掛けがあるとしても倒すのはそう難しくはない。

 これ以上ない程に俺と相性ピッタリの相手なのだ。

 ……まぁ、蘇生魔術以外にも奥の手があったりすれば話は別だけど。

 その辺を告げると、それが理由なのだと凛が言う。

 

「相手はあのヘラクレスよ? 当然蘇生魔術以外に奥の手が何個もあると考えてもいい筈よ」

「だから後回しにしてる、と?」

「ええ。アークエネミーを抜かせば、恐らく今回の聖杯戦争で最強のサーヴァント。そうである以上、アークエネミーと戦っている時にいらないちょっかいを出してくる相手がいると、一気に戦局が混乱するわ。そして、ちょっかいを出してくるだろう相手の最有力候補が魔術を使った絡め手を得意としているキャスターで、気配を殺す事に長けているアサシン、遠くからの遠距離攻撃を得意としているアーチャーなのよ」

「……2人の話を聞いていると、また見事なまでに相性の悪い相手だけが存在の確認をされてないんだな」

 

 呆れたように呟く綾子の言葉に、確かに……と同意する俺と凛。

 残っているのがセイバーやランサーなら近距離での武器だから、どうにでも出来る。

 ……ただし、遠距離攻撃用の宝具を持っていれば話は別だが。

 ライダーは、その機動力を使って一撃離脱をする可能性があるから、ちょっと厄介ではある。

 ただ、やっぱりキャスター、アサシン、アーチャーの3つに比べればまだマシだと言えるだろう。

 

「とにかく、そういう理由で今はまず残りのサーヴァントを確認しておく必要があるのよ。それが今日行く予定の柳洞寺って訳。綾子は悪いけど家で待ってて貰うわよ?」

「……頼まれてもそんな危険な場所には行きたくないよ」

 

 そう告げる綾子。

 綾子の性格ならそうだろうな……と考えつつ、起点の処理が終わった事もあって屋上を出ていくのだった。

 

「さ、まずは夕飯の準備ね。スーパーに寄ってから家に帰るわよ。腹が減っては戦は出来ぬって言うし」




アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    ???

撃墜数:1183

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