転生とらぶる   作:青竹(移住)

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番外編051話 凛の夢 7話

 ふと凛が気が付くと、視界に入ってきたのは一面の桃色。

 空気が桃色などというのではなく、木に咲いている桃色の花だ。

 一面が桃色の花で覆われているその光景は、美しい桜の木が林立しており、空からは太陽が暖かな日差しを降り注いでいる。

 見るからに花見日和の光景に、一瞬意識を奪われた。

 

「どうやら、今日はベッドシーンとかじゃなかったみたいだな」

 

 凛は、隣から聞こえてきた声に視線を向ける。

 そこにいるのは、自分の親友……どころか、ベッドで何度も肌を重ねることになってしまった存在である綾子がいた。

 綾子がここにいるということは、例に寄って例の如く、これはアークエネミーの記憶なのだろうと理解する。

 

「そうね。……けど、桜があるってことは、やっぱりこの景色って日本よね?」

「だと思う。それも、あの城には見覚えがある。多分、ここは京都の二条城だ」

「つまり、アークエネミーは京都の英雄? まさか、あんなに規格外の存在が日本にいれば、嫌でも情報は入ってくるわよ。そもそも、顔立ちからして白人系の人種でしょ?」

「そう言われてもな。あの城はTVとか本とかで見覚えがあるし、そもそもああいう城は日本独特の城だろう? 外国でああいう城はないだろうし」

 

 呟き、綾子は周囲を見回す。

 そこでは、10人や20人どころではない。100人単位の人間がそれぞれ花見を楽しんでいた。

 その中には、今までの夢でアークエネミーと情事を重ねていた者の姿もある。

 

「アークは……」

 

 呟き、周囲を見回す綾子だったが、求める人物の姿はなかなか見つからない。

 

「あ、いた」

「え? どこにだ?」

「ほら、あそこ」

 

 凛の視線の先には、10歳に満たないような少女……いや、幼女に懐かれているアークエネミーの姿があった。

 何やら軍服のような服を着ているその少女は、ウサギの耳をピコピコと上下に動かしては、無表情でアークエネミーへと視線を向けている。

 何を話しているのかは相変わらず聞き取れないが、それでもアークエネミーが少女を相手に心を許しているのは確実だった。

 

「……ねぇ、綾子。何だか私、嫌な予感が……」

 

 その光景を見て、思わずといった様子で呟く凛。

 綾子の方は、まさかと首を横に振る。

 

「アークエネミーがロリコンなんてことはないと思うよ」

 

 そう言い切れるのは、抱かれた時にアークエネミーが人よりも大きな自らの胸に執着……というのとはちょっと違うだろうが、それでも好んでいるように見えた為だ。

 ロリコンであれば、そのようなことにはならないだろう。

 そんな綾子の言葉に、胸の大きさに多少のコンプレックスがある凛は微妙な表情を浮かべつつ……やがていつものように意識が途切れるのだった。


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